知っておきたい! 「秘密保持契約」の締結目的と注意したい条項のポイント

ビジネスを行うなかで、取引相手などとの間で締結される「秘密保持契約(NDA)」。
とりあえず締結しておくべき契約書として、内容についてはあまり注視されない傾向もありますが、実は注意すべき点が多いといいます。

そこで今回は、秘密保持契約について、締結する目的や注意すべき点を中心に、詳しくご紹介していきたいと思います。

「秘密保持契約」とは?

秘密保持契約(NDA)とは、英語では「Non-Disclosure Agreement」と言い、取引を行う相手方に対して、開示する自社の秘密情報についての取り決めを行う契約で、「機密保持契約」や「守秘義務契約」と呼ばれることもあります。

企業が存続していく上で、自社の秘密情報を漏洩させずに守ることは、非常に重要なことでり、秘密保持契約には秘密情報の漏洩を防いだり、漏洩してしまったときのリスクを抑えたりする役割があります。

企業間の取引において、秘密情報を一方的に開示するケースとお互いが各々の秘密情報を開示するケースとがあり、一方的に開示する場合を「片務契約」、双方が開示をする場合を「双務契約」と呼びます。

秘密情報の種類と秘密保持契約の必要性

秘密情報の種類は、大きくわけて下記の2種類があります。

<不納付加算税>

  1. 漏洩させることで価値が下がるもの
  2. 自社の「技術情報」や「研究情報」、「製品情報」、「営業秘密」、「マニュアル」、「ノウハウ」、など

  3. 漏洩させることで損害が生じるもの
  4. 「顧客リスト」や「見込み客リスト」に含まれる個人情報

これらは、企業にとって重大な秘密情報にあたりますが、他社と業務提携や共同研究を行う場合などにおいて、自社の秘密情報を相手方に開示しなければならないことがあります。

そのような際に、企業はこれらの情報が不必要に他へ流れてしまうことがないように、秘密保持契約を法的な手段として締結する必要があります。

また、秘密保持契約を締結する相手は、業務を委託する企業や協力会社などの法人だけでなく、弁護士顧問やコンサルタント、そして自社従業員との間で締結することもあります。

秘密保持契約の効果

秘密保持契約による効果は、おもに5つあります。

秘密情報の漏洩を防ぐ

秘密保持契約を締結することにより、相手に開示した自社の秘密情報について、相手企業が無断で開示することや、契約時に取り決めた目的以外での使用が禁止されます。

情報漏洩の際の損害賠償請求

秘密保持契約を締結することにより、相手の責めに帰すべき理由による秘密情報漏洩に対して、損害賠償を請求できるようになります。
秘密情報の漏洩は、大きな損害が生じる可能性があるため、秘密保持契約による契約違反による損害賠償請求は非常に重要だと言えるでしょう。

情報漏洩を未然に防ぐための差し止め請求

相手に秘密情報の流出に繋がる危険性のある行為があった時は、差し止め請求を行うことで、秘密情報漏洩を防いだり、損害を最小限に抑えたりすることができます。

秘密情報の活用範囲の指定

秘密情報を開示する側は、相手に対して秘密情報は必要最低限の範囲で利用して欲しいと考えますが、相手が企業の場合は有益な情報を自社の事業へ最大限活用したいと考えるものです。
秘密情報契約では、相手企業の都合のよい解釈を防ぐために、秘密情報の活用範囲について詳細に取り決めます。

秘密情報の返還

相手との取引が終了した際の、開示した秘密情報の返還についても規定します。

秘密情報の漏洩事例

秘密情報の漏洩による損害事例には、さまざまなものがありますが、よくある事例をご紹介しましょう。

<秘密情報の漏洩事例>

  • A社へ開示した自社の基幹商品の商品開発情報が、A社を退職した社員Bによって、転職先C社へと情報漏洩してしまった。C社はA社の競合企業であり、C社に漏洩した開発情報によりA社はC社に商品開発に関するノウハウが奪われ、自社基幹商品の売り上げが落ち込み倒産へと追い込まれた。
  • 顧客情報が協力会社の下請け業者から漏洩してしまったために、競合他社に見込み客を奪われ営業成績が大幅にダウンしてしまった。また、顧客の個人情報の流出が報道されたことにより、企業の世間からの信用が失墜してしまい、業績低迷へと追い込まれた。

秘密保持契約の注意すべき条項

秘密保持契約の注意すべき条項について解説します。

秘密保持の義務の範囲設定

秘密情報契約では、情報の取り扱い方法とあわせて、誰にまで開示してよいのかの開示範囲についても定めましょう。秘密保持契約書に開示範囲を明記することで、当事者間の認識の相違を防ぐことができます。

相手企業のなかでも、限られた人だけが秘密情報にアクセスできるようにして欲しければ、その旨を記載します。

また、秘密情報の提供を受けた企業は、第三者への情報開示は基本的に禁止されているものの、必要に応じて関連会社や業務委託先などに開示が必要となる場合があり、それらについても秘密保持契約で明記することが求められます。

秘密保持の情報の範囲設定

秘密情報を開示する者が、開示する情報のうち、どこからどこまでを「秘密情報」として取り扱って欲しいのか、情報の範囲を明確に定めましょう。
開示した情報について全てを秘密情報として扱って欲しいのであれば、その旨をしっかりと明記しましょう。

使用目的を明記

秘密情報の利用目的についても、必ず記載する必要があります。

不正競争防止法よって定められた「営業秘密」に該当しない情報は、秘密保持契約で目的外の使用禁止について定めない限り、法による制限がなされません。

開示する秘密情報について、何のために使用するのかについて、できるだけ明確に限定し、それ以外の使用を禁止する文言を記載しましょう。

秘密情報の使用期間とその後の取り扱い

開示した秘密情報を利用できる期間がいつまでなのか、一定の事由が発生した時なのか、開示者からの要請があった時までなのか、など使用期間について明記します。

また、秘密情報の使用期間が終了した後の取り扱いについて、秘密情報を返還するのか、破棄するのかについても定めましょう。

損害賠償と差止め/h3> 秘密保持契約に違反した場合、どのような損害賠償が発生するかについての条文は非常に重要です。 秘密情報を開示するにあたって、漏洩が生じてしまった時に受けるダメージについて考慮し、違反があった場合に相手方に責任追及ができるようにしましょう。 また、情報漏洩の発生の恐れがある場合の差し止めについても、漏洩による損害が拡大しないようにスピーディーに差し止めを行うことができるように、契約に明記しておくとよいでしょう。 秘密保持契約締結のタイミング

秘密保持契約の締結のタイミングは、秘密情報の開示を行う前が原則です。
秘密情報を開示する前に、情報の取り扱い方法も含めて、しっかりと擦り合わせを行いましょう。

秘密保持契約を行う前に開示した情報については、秘密情報としての扱いがされない恐れがあります。もし、開示してしまってから気付いた場合においても、開示済みの情報についても適用する旨を条項にもりこみ、秘密保持契約の締結を行うことをおすすめします。

秘密保持契約(NDA)について、締結する目的や注意すべき点を中心にご紹介しました。

秘密保持契約は、企業の財産とも言える秘密情報を守るための大切な契約です。

単にひな形通りの条項のままで秘密保持契約を締結するのではなく、将来に起こり得るリスクについて考慮し、少しでもリスクを軽減できるような工夫が必要です。

条項の追加を行ったり、対象や期間などをしっかりと明記したりするなど、秘密保持契約の条項の内容については議論されることをおすすめいたします。