バーチャルオフィスは会社設立のための「法人登記」ができるところがほとんど。
法人登記をしたあとは、法人用の銀行口座(法人口座)を開設するのが一般的な流れです。
「法人口座の開設にバーチャルオフィスを使えるの?」と疑問に思われるかもしれませんが、実際にバーチャルオフィスで法人口座を作成すること自体は、何ら問題ありません。
事実、バーチャルオフィスを利用し、法人口座を開設した方は多く見られます。
ただ、法人口座開設に必要な「審査」が厳しくなっているのも事実です。
そこで今回は、バーチャルオフィスを利用して法人口座を開設する際に知っておきたい知識や注意点などを解説。法人口座の開設手続きの流れや必要書類の例、審査落ちを防ぐためのポイントについてもご紹介します。
これから法人口座の開設をしたい方は、ぜひご参考になさってください。
「バーチャルオフィスで法人口座の開設は審査が厳しい」と言われる理由
「バーチャルオフィスで法人口座を開設したい」という方にまず知っておいてほしいのが、「なぜバーチャルオフィス利用時の法人口座開設審査が厳しいのか」という理由です。
事実、銀行での法人口座開設における審査基準は、2008年から厳しくなっているのが事実です。
そこには、
- 過去にバーチャルオフィスを使って開設した法人口座が犯罪で悪用され、法改正が行われた
- 法改正によって法人口座開設の基準が厳しくなった
という背景があります。
過去には犯罪防止を目的とした法改正があった
以前のバーチャルオフィスは、比較的誰でも借りられるシステムでした。
これを悪用し、バーチャルオフィスで架空の会社を立ち上げて法人口座を作り、犯罪がらみで得たお金をそこへ入金する……という事例が多発してしまったのです。
こうした悪用をきっかけに、2008年には「犯罪収益移転防止法」が改正されます。
法改正で法人口座の開設審査、基準が厳しくなった
犯罪収益移転防止法の改正では、「法人口座の開設審査」が厳格化しました。
それに伴い、「バーチャルオフィスで法人口座の開設は難しい」との噂も広まりました。
ただしこれは大きな誤解で、実際にはバーチャルオフィスでも条件を満たせば、法人口座を開設できます。
最近ではバーチャルオフィスでも法人口座が開設できる銀行も続々と増えつつあり、バーチャルオフィスで法人口座を開設している方は多数いらっしゃいます。
バーチャルオフィスだからといって、法人口座の開設をあきらめる必要はありません。
法人口座の開設にあたって知っておきたい知識
バーチャルオフィスでの法人口座開設は、法的にも問題ありません。
ただし実際にバーチャルオフィスで法人口座が開設できるどうかは、銀行によっても異なります。
また法人口座の開設には「審査」も必要になることを知っておきましょう。
「バーチャルオフィスでの法人口座開設」対応は銀行でそれぞれ違う
バーチャルオフィスでの法人口座開設は、銀行によって判断が分かれます。
①バーチャルオフィスでの法人口座開設ができる銀行
②バーチャルオフィスでの法人口座開設ができない銀行
③「融資の申し込み」を条件にバーチャルオフィスで法人口座開設ができる銀行 など
①のような銀行は、オフィス形態にかかわらず法人口座を開設できます。
一方、②のような銀行では、審査基準を満たしていたとしても法人口座の開設はできません。
また銀行の中には、③のように「融資申し込み」を条件に法人口座の開設を認めているところもあります。
バーチャルオフィスで起業される方は、必ず「バーチャルオフィスで法人口座が開設できる」と明言している銀行を選びましょう。
法人口座の開設には審査が必要
バーチャルオフィスで法人口座を開設できる銀行であっても、開設の申し込み時には「審査」があります。
審査では事業内容や開設の目的、資本金額などさまざまな項目をチェックされ、最終的な判断が下されます。
審査に通るためには、必要書類・資料を揃えるとともに、さまざまな対策を講じることが大切です。
この対策についてはのちほど、くわしく解説します。
法人口座を開設してみよう! 手順や手続きの流れについて
バーチャルオフィスでの法人口座開設ができる銀行を見つけたら、審査の申し込みをしましょう。
開設申し込みから法人口座開設までの流れは、以下のとおりです。
- 法人口座開設の申し込み&必要書類の準備
- 一次審査
- Webまたは対面での面談
- 法人口座の開設完了
1.法人口座開設の申し込み&必要書類の準備
法人口座を開設するには、法人の代表者が銀行へ申し込みをします。
銀行窓口に直接申し込むほか、近年はインターネット経由で申し込みができる銀行も多いので、勝手のよい方法を選ぶとよいでしょう。
ネット銀行の場合は「窓口申請ができず専用WEBサイトからのみ」というケースがほとんどです。
早めに申し込み時の必要書類を準備しておく
また、申し込みの際には「法人口座の開設に必要な書類」を準備しておきましょう。
必要書類の提出タイミングは、銀行によっても異なります。
いつ提出するのか分からない場合は、あらかじめ必要書類を揃えて準備しておくと安心です。
- 先にWEB申し込み&書類を提出する銀行
- 審査と電話面談を経て書類提出、本面談&手続きを行う銀行
- 面談後に必要書類を提出する銀行
必要書類の例
以下の書類は多くの銀行で提出を求められるので、準備しておくとスムーズに手続きができます。
- 会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書/発行後6ヶ月以内のもの)
- 定款
- 会社印(または法人銀行印)
- 会社印の印鑑証明書(発行後6ヶ月以内のもの)
- 代表者の実印
- 代表者実印(または法人銀行印)の印鑑証明書(発行後6ヶ月以内のもの)
- 代表者の身分証明書
- 会社の運営実態が分かる資料 など
また、新たに法人を設立した場合は以下の書類も準備しておくと役立ちます。
- 税務署に提出した「法人設立届出書」「青色申告承認申請書」の控え
- バーチャルオフィスの契約書
- 企業サイト(コーポレートサイト)のURL
なお、銀行によっては「会社案内、パンフレット」「会社の製品」など、会社の実態が証明できる証拠を求められるケースもあります。
必要な書類は銀行によっても異なるため、必ず確認しましょう。
2.一次審査
必要書類を提出したあと、最初の審査(一次審査)が行われます。
審査期間は銀行によって異なりますが、平均で1~2週間程度です。
審査基準に適合しない場合は、一次審査の時点で口座開設を断られる場合もあります。
3.Webまたは対面での面談
一次審査に通過できたら審査担当者との面談へと進みます。
面談は電話やWeb、対面で1~2回実施されるケースが一般的です。
面談では審査担当者が申し込み内容を改めて確認し、その後「法人口座開設の理由・目的」や「事業内容」、「起業の経緯」等のヒアリングが行われます。
4.審査通過、法人口座の開設完了
面談後に審査を通過した場合、その旨を伝える連絡(登録完了通知書)が届きます。
通帳やキャッシュカードの受け取り、および法人口座へのログイン情報を受け取れば、晴れて法人口座が利用できるようになります。
法人口座の審査に落ちないために心掛けたい7つのポイント
法人口座の審査基準は銀行によっても異なり、基準に合致しなければ「審査落ち」となります。
詳細な審査基準については公表されていませんが、以下のような理由で審査に落ちるケースが多いようです。
- 資本金額が低すぎて、信用がないと判断された
- 「事業目的が不明確」と判断された
- 「会社の活動実態が不明」と判断された
- 固定電話や会社のWEBサイトがなかった
- 本店所在地と銀行の住所が離れすぎていた
審査に通る可能性を上げるには、こうした“審査に落ちる基準”を把握しておき、回避することが重要です。
そのうえで、以下の“7つの対策”を講じるとよいでしょう。
資本金は300万円以上用意しておくと信用を得やすい
会社法では資本金1円以上から会社を設立できますが、資本金額が少なすぎると「信用に欠ける」として審査に落ちてしまう場合があります。
そのため、資本金は300万円以上用意しておくのが理想です。
株式会社の設立資本金として「300万円」はごく標準的な額であり、信用を得るために最低限必要な金額です。
もちろん、資金に余裕があるのなら300万円以上でもかまいません。
ただし資本金が1,000万円以上になると、消費税が初年度から課税されたり、住民税額がアップしたりする点には要注意です。
事業の目的・計画を明確に説明できるように準備しておく
法人口座の開設時には、会社の定款をチェックされます。
このとき、事業目的が不明確であったり、事業の今後の展望がわかりにくかったりすると、審査に落とされてしまう可能性があります。
銀行としては、実態がわからない法人に対し口座を提供するリスクを避けたいからです。
定款に記載する事業目的は、5~10項目程度に整理して記入するとわかりやすくなります。
また、事業計画書や会社概要などの補足資料を準備しておくのもおすすめです。
こうした資料があれば、会社・事業の実態を審査担当者へくわしく伝えやすくなるでしょう。
会社用の固定電話番号を準備しておく
申し込みに際して万全を期すならば、会社用の固定電話を用意しておくとよいでしょう。
会社の実態をはかるため、「会社に固定電話があるか」を審査基準として設けている銀行は多いです。
また審査基準にはなっていなくとも、固定電話を設置して信用性を高めれば、対外的な印象アップにつながります。
バーチャルオフィスの場合は「電話番号つきプラン(またはオプション)」を契約すれば固定電話番号を借りられるので、活用してみてもよいでしょう。
会社のWEBサイトを作成しておく
銀行によっては「WEBサイト(コーポレートサイト)を開設しているか」という審査基準を設けているところもあります。
会社のWEBサイトは信用性を示すだけでなく、事業の実態や会社概要を説明する“資料”としても役立ちます。
申し込み前に、会社のWEBサイトを作成しておきましょう。
自身でサイト制作ができない場合は、WEB制作代行に依頼して準備するのもおすすめです。
取引実績がある銀行で法人口座を開設する
法人口座開設の可能性を高めたい方は、個人事業主として使っていた銀行や、プライベートで取引のある銀行に申し込んでみるのもひとつの方法です。
すでに取引の実績がある銀行なら「信用性についての問題」をクリアしやすく、審査に通る可能性が高まります。
バーチャルオフィスの住所の最寄り銀行、またはネット銀行で申し込む
「登記をしたバーチャルオフィスの住所」と銀行の場所があまりにも離れすぎていると、審査に落ちてしまう可能性があります。
審査落ちを防ぐには、バーチャルオフィス住所の最寄り銀行で法人口座を開設するとよいでしょう。
それが難しい場合は、所在地に関係なく開設できるネット銀行を利用するのもおすすめです。
面談時には身だしなみを整える
法人口座開設の面談で良くない印象を与えてしまうと、審査結果にも影響が及ぶ可能性があります。
少しでも印象を良くするために、ラフすぎる服装は避け、ビジネス向けのフォーマルな服装を心がけましょう。
また面談時の態度にも注意が必要です。質問にはていねい、かつ真摯な対応を心がけましょう。
法人口座を開設するなら“信用性の高いバーチャルオフィス”がおすすめ
本記事では、バーチャルオフィスで法人口座を開設する際のポイントや注意点を解説しました。
- 銀行がバーチャルオフィスでの申し込みに対応しているか
- 審査に必要な書類、資料が揃っていて、しっかりと説明もできる
- 事業内容や目的、計画を明確に説明でき、信用してもらうための対策をしている
この3点を徹底したうえで申し込めば、法人口座を開設できる可能性が高くなるでしょう。
またバーチャルオフィスには、銀行と提携しながら「法人口座開設の紹介サービス」を行っているところもあります。
法人口座開設の紹介サービスを利用すると「必ずしも口座が開設できる」というわけではありません。
ただ、少なくともそのバーチャルオフィスは「銀行と提携できる信用性の高いバーチャルオフィス」と判断されやすいといえます。
また信用性の高いバーチャルオフィスなら、万が一紹介してもらった銀行の口座開設審査に落ちたとしても、別の銀行で申し込めば開設できる可能性があります。
より安心して会社設立をしたい方は、こうした銀行紹介サービスのある、信用性の高いバーチャルオフィスを選ぶとよいかもしれません。