ここでは定款の「目的」とはどのようなものか、書く際に押さえておきたいポイントや、注意点をご紹介します。また定款の目的の例文もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
定款の「会社の事業目的」
とは?
定款とは、会社を設立する際に必要になる「説明書」のようなものです。
定款には会社の事業目的や商号(会社名)のほか、本社の所在地、資本金の額、発起人の住所・氏名などを記載しなくてはなりません。これら5つは「絶対的記載事項」といい、定款を作成するすべての会社が記載しなくてはならない項目です。
また株式会社を設立して株券を発行する場合は、定款へ記載することで初めて効力が得られるようになります。
定款の内容のうち、書き方に悩む方が多いのが「会社の事業目的」です。
定款の「事業目的」を定める意味
定款の事業目的を書かなければいけないのは、「取引相手に信頼を与え、安定性を確保しなくてはならない」というのが主な理由です。
事業目的の項目では、以下の3点を押さえたうえで内容を決める必要があります。
- 適法性(ビジネスの目的が違法ではないこと)
- 営利性(利益を上げること)
- 明確性(誰が見ても事業の目的がわかりやすいこと)
これら3つが定まっていない場合、「取引相手への安定性が確保されていない」とみなされてしまいます。会社そのものの信頼にも直結する部分ですので、記載内容は精査・検討することが重要なのです。
会社は定款の事業目的に書かれた事業のみを行える
会社を設立した場合、定款の「事業目的」で書かれた範囲内でのみビジネスを遂行できます。
仮に事業目的に含まれていない事業を始めたいとなった場合は、定款を変更し、新たな事業内容を書き加えなければなりません。
仮に株式会社が定款を変更する場合、株主総会で「特別決議」が必要となります。さらに、法務局への定款変更費用として、登録免許税が約25,000円かかります。
ただし、定款に初めから「将来的にこのような事業行う可能性がある」等の、拡大を予定している旨を記載している場合は別です。この場合、変更手続きも不要となります。
定款の目的の書き方!
必ず押さえておきたい
ポイント3つ
定款の目的には特に決まった書き方はありません。また事業目的の数に上限はなく、複数の目的を書いても大丈夫です。
ただし、定款の目的の書き方には押さえておきたいポイントもあります。
②誰でも理解できる言葉で、分かりやすく記載する
③事業展開の可能性がある場合は「前各号に付帯関連する一切の事業」と書き加える
定款の目的を書く際に押さえておきたい、3つのポイントをチェックしてみましょう。
①事業目的は5~10件程度にまとめる
前項で「定款の目的に書いていない事業はできない」と説明しました。
かといって、事業目的を何十個も羅列するのはおすすめできません。事業規模が大きい大企業ならば20~30個の目的を記載しているケースも多いですが、起業したての会社の場合は「何をやりたい会社なのかわからない」とマイナスイメージを抱かれる原因にもなってしまいます。
また会社の信用度が下がれば、取引の機会損失を生んだり、金融機関からの融資を受ける際に不利になったりする可能性もあるでしょう。
事業目的はメインの事業内容を中心とし、関連する事業も含めて5~10個程度に抑えるのがベストです。
また、1行目に書くのは「会社のメイン事業」がおすすめです。メインの事業を初めに記載すれば、会社の事業目的や内容が分かりやすくなります。
②誰でも理解できる言葉で、分かりやすく記載する
定款の事業目的は分かりやすい言葉で記載することが鉄則です。
定款は登記簿謄本から自由に閲覧ができます。そのため、中には「会社の事業目的、内容が知りたい」など、定款の目的事項を取引の判断材料にされるケースもあるのです。
定款の目的を書く際は、「明確性」を意識し、業界外の人からもわかりやすい文言を使いましょう。
③「前各号に付帯関連する一切の事業」と書き加える
起業する方の多くは、将来的に事業拡大を視野に入れていることでしょう。
具体的な事業が決まっている場合はその旨を記載すればよいですし、そうでない場合は定款の事業目的の最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」と付け加えておくとよいでしょう。
この文言を書き足すことで、事業内容について広い範囲での解釈が可能となります。事業目的の追加・変更手続きがなく事業の拡大がしやすくなる“魔法の言葉”といってもよいかもしれません。
定款の目的を書く時の
注意点とは?
定款の事業目的を書く際には、気を付けたいポイントもあります。特に、法人設立にあたって許認可や届出が必要な業種に関しては、決まった文言を定款の目的へ記載しなくてはならないケースがあるため、注意が必要です。
許認可、届け出が必要な業種は「定款の目的」に特定の文言を記載する
事業の中には許認可や届け出を受理されないと起業ができない業種もあります。そのような業種で法人を設立する場合、定款の目的欄へ所定の文書を記載しなくてはならないケースがあります。
- リサイクルショップ(せどり)
- マッサージ店
- 有料転職ポータルサイトの運営
→法人化には警察署からの許可が必要。定款の目的欄に「古物営業法に基づく古物商」及び「〇〇(扱う商品)の売買」との記載が必須
→あん摩マッサージ指圧師の届出をするために「マッサージ店の経営」と明記が必要
→厚生労働省から「有料職業紹介事業」の許可が必要。定款には「職業安定法に基づく有料職業紹介事業」の明記が必須
「非営利活動のみ」を記載することはできない
定款の認証が必要なのは株式会社などの「営利法人」です。そのため、定款の目的欄には「営利目的」を含むことが条件となります。
営利法人とは、事業によって発生した利益の分配などを目的としている法人を指します。
しかし営利法人として設立したにもかかわらず、利益の分配を目的としない慈善活動などの「非営利活動」がメインとなってしまっていれば、「会社としての趣旨」に齟齬が生まれます。
もちろん、営利活動を行いながら非営利活動(ボランティアなどの社会貢献、慈善活動)を行うのは全く問題ありません。あくまでも「営利活動をメインに据え置く」という意識を失わないようにしましょう。
定款の事業目的の
書き方例を紹介!
定款の事業目的の書き方のポイント、注意点を知ったうえで、「実際にどう書けばいいのか分からない」と感じている方もおられるでしょう。
このとき一番手っ取り早い方法は「同業他社の定款の事業目的欄を確認し、参考にすること」です。
また本項でも、業種別に定款の事業目的の書き方例をご紹介します。書き方の雰囲気やまとめ方などを参考にしてみてくださいね。
IT、インターネット関連事業の定款目的例
- アプリケーションソフトウェアの企画、制作、及び販売、保守業務
- コンピュータシステムの企画、開発、プログラミング
- インターネット上のWebサイト構築、コンテンツ企画開発
- インターネットを利用した各種情報収集、及び市場調査業務、広告宣伝業務 など
卸売・小売業、ネットショップ関連事業の定款目的例
- 〇〇(商品ジャンル)の販売
- インターネットを利用した〇〇商品の通信販売
- 古物営業法に基づく古物営業 など
サービス業やその他の定款目的例
- 〇〇の経営(ジム、ネイルサロン、学習塾など)
- 〇〇に関するコンサルティング業務(経営、投資、起業など)
- インターネットによる番組配信、及び広告業務(YouTubeチャンネル運営の場合)
なお、定款での事業目的の書き方が許可されるかどうかの基準は、法務局の担当者によっても変わります。
不安な場合は、事前に法務局へ相談してみることをおすすめします。
定款の目的は
「事業内容と将来の可能性」
を踏まえて書こう!
本記事では、定款の「事業目的」の書き方のポイントや注意点をお伝えしました。
事業目的の書き方や数には制限こそありませんが、会社の信用を得たり、手続きをスムーズに進めたりするにはある程度のポイントを押さえておくことが大切です。
また許認可・届け出が必要な事業に関しては、それらが通るようルールを守って書く必要があります。
何より定款の事業目的を書く際には、「自社が手掛ける事業内容と、将来の展開」を考慮した書き方を心掛けることが重要です。
同業他社を参考にしつつ、自社がどのような事業を手掛けるのか、将来的にどんな事業を展開していきたいのかを盛り込んだ内容を考えてみましょう。