個人事業主として事業を続けていると、売上や取引先が増えたタイミングで「そろそろ法人化したほうがいいのでは?」と考えることがあります。
法人化(法人成り)すると、個人とは別に株式会社や合同会社などの法人を設立し、法人を事業主体として事業を行うことになります。
一方で、
「売上がいくらになったら法人化すればいい?」
「法人化すると税金は安くなる?」
「株式会社と合同会社はどちらがいい?」
「個人事業で使っている契約はそのまま引き継げる?」
「自宅やバーチャルオフィスを法人登記に使える?」
など、実際に法人化するとなるとさまざまな疑問が出てきます。
法人化するタイミングは、売上や利益だけで一律に判断できるものではありません。 税金や社会保険、取引先との関係、事務負担、今後の事業計画などを含めて検討することが重要です。
本記事では、個人事業主が法人化するメリット・デメリットやタイミング、株式会社と合同会社の違い、必要な手続きや費用、法人登記に使用する住所までわかりやすく解説します。
個人事業主の法人化に関する基本的な疑問

1. 法人化(法人成り)とは何ですか?
法人化(法人成り)とは、個人事業主として行っていた事業を、株式会社や合同会社などの法人を設立して引き継ぐことを指す一般的な表現です。
法人化すると、それまで個人名義で行っていた事業を、新しく設立した法人を主体として運営していくことになります。
個人事業主と法人は別の事業主体
法人化というと、「個人事業主がそのまま会社へ変わる」というイメージを持つかもしれません。
しかし、個人と法人は別の事業主体です。
たとえば個人事業で使用していた、
- 銀行口座
- クレジットカード
- 取引先との契約
- Webサービス
- 事業用資産
- 許認可
などが、自動的に新しい法人へ切り替わるとは限りません。
法人を設立した後、それぞれ必要な変更や契約などを行います。
一人で法人化することもできる
従業員を雇っていない個人事業主でも法人化できます。
株式会社も合同会社も一人で設立できるため、
↓
自分一人で会社を設立
↓
一人会社として事業を継続
という方法も可能です。
法人化したからといって、必ず従業員を雇ったり大きな事務所を借りたりする必要があるわけではありません。
法人化したら個人事業の廃業手続きも確認する
個人事業から法人へ事業を移す場合は、会社を設立するだけでなく、個人事業側の手続きについても確認する必要があります。
税務署などへの法人設立に関する届出に加えて、個人事業の廃業に関する届出などが必要になる場合があります。
また、個人から法人へ事業用資産をどのように引き継ぐかなど、税務上の取り扱いにも注意が必要です。
法人化は単に会社名を付けたり法人登記したりするだけではなく、「個人で行っていた事業を、新しく設立した法人へ移していく手続き」と考えると分かりやすいでしょう。
個人事業と法人では税金や社会保険、会計、契約などにも違いがあるため、法人化する前に変更が必要なものを整理しておくことが重要です。
2. 個人事業主はいつ法人化を検討すればいいですか?
個人事業主が法人化を検討するタイミングに、「売上が○万円を超えたら必ず法人化したほうがよい」という一律の基準はありません。
売上だけでなく、利益、税金、社会保険、取引先との関係、今後の事業規模などを総合的に考えて判断する必要があります。
売上ではなく利益も確認する
法人化を検討するときに、「年商○○万円になったら法人化」という情報を目にすることがあります。
しかし、同じ売上でも事業によって必要経費は大きく異なります。
たとえば年間売上が1,000万円でも、
必要経費が200万円の事業
と、
必要経費が800万円の事業
では、残る利益が大きく異なります。
そのため、法人化による税負担の変化を検討する場合は、売上だけでなく、実際にどの程度の利益が継続して出ているかを見ることが重要です。
税金だけで法人化を判断しない
個人事業主には所得税、法人には法人税などが課され、所得や利益によって税負担の仕組みが異なります。
一定の利益が継続して出るようになると、法人化による税負担の違いを検討するケースがあります。
一方、法人を設立すると、
- 法人の会計・税務申告
- 法人住民税
- 社会保険
- 税理士など専門家への依頼費用
- 各種手続きや事務負担
など、個人事業とは異なる負担も発生します。
そのため、所得税だけを比較して「法人のほうが安そう」と判断するのではなく、法人化後に発生する負担も含めて比較することが大切です。
消費税も法人化を考えるきっかけのひとつ
事業規模が大きくなってくると、消費税について考える機会も増えます。
消費税の納税義務は基準期間の課税売上高など複数の条件によって判定されます。
また、インボイス発行事業者として登録している場合など、売上高だけでは判断できないケースもあります。
以前は「売上1,000万円を超えそうなら法人化すれば消費税を免税にできる」といった説明も多く見られましたが、現在は制度や事業者の状況によって取り扱いが異なります。
消費税だけを目的に法人化するのではなく、自分の課税状況を確認したうえで判断しましょう。
取引先や事業拡大を理由に法人化することもある
法人化の目的は節税だけではありません。
たとえば、
- 法人との取引を増やしたい
- 法人であることを取引条件として求められた
- 従業員を採用したい
- 融資や資金調達を検討している
- 共同で事業を行いたい
- 事業をさらに拡大したい
などをきっかけに法人化を検討することもあります。
利益だけを見ると個人事業を続けても問題がなくても、今後どのような事業にしたいのかによって法人化が適したタイミングは変わります。
法人化後の社会保険も考えておく
法人化を検討するときに見落としやすいのが社会保険です。
法人の事業所は、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となり、事業主のみの法人であっても、一定の要件を満たす場合は加入が必要です。
個人事業主のときとは社会保険の取り扱いが変わるため、法人化前に保険料負担も含めて確認しておきましょう。
法人化を検討するタイミングは、売上だけでは決められません。利益や税金、消費税、社会保険、取引先との関係、今後の事業計画などを総合的に比較することが重要です。
特に税金や社会保険まで含めた具体的な金額を比較したい場合は、法人化する前に税理士や社会保険労務士などの専門家へ相談するとよいでしょう。
3. 法人化するメリット・デメリットは何ですか?
法人化には、取引や資金調達、採用など事業を拡大するうえでのメリットがある一方、会社設立や社会保険、会計・税務などの負担が増えるデメリットもあります。
法人化すれば必ず得になるわけではないため、現在の利益だけでなく、今後どのように事業を成長させたいかも含めて判断することが重要です。
法人化する主なメリット
個人事業から法人化することで、主に次のようなメリットが考えられます。
- 法人名義で取引できる
- 法人との取引機会を広げやすくなる
- 法人名義で融資や資金調達を検討できる
- 従業員の採用など事業拡大に対応しやすい
- 所得が増えた場合に税負担を比較できる
- 役員報酬など個人事業とは異なる仕組みを利用できる
- 事業承継などを検討しやすくなる
特に取引先によっては、法人であることが取引条件となっている場合があります。
個人事業の規模が大きくなり、取引先や従業員など事業に関係する人が増えてきた場合は、法人化を検討する理由のひとつになります。
税金の仕組みが個人事業とは異なる
個人事業主には所得税など、法人には法人税などが課されるため、税金の仕組みが異なります。
また、法人化すると自分自身へ役員報酬を支給するなど、個人事業にはない仕組みもあります。
一定の利益が継続して出ている場合は、個人事業を続けた場合と法人化した場合の税負担を比較することも法人化を検討する材料になります。
ただし、法人化すれば必ず節税できるわけではありません。
法人化後の社会保険料や法人住民税、会計・税務にかかる費用なども含めて比較する必要があります。
法人化には設立費用がかかる
個人事業は比較的少ない費用で始められますが、株式会社や合同会社を設立する場合は登記などに費用がかかります。
さらに会社を設立した後も、
- 会計ソフト
- 税務申告
- 社会保険
- 専門家への依頼
- 法人用口座や各種サービスの管理
など、会社を維持するための費用や事務作業が発生します。
そのため、会社設立時に必要な金額だけでなく、法人を毎年維持するためにどの程度の費用や手間がかかるかまで考えておきましょう。
赤字でも一定の税負担が発生する場合がある
法人では、事業が赤字で法人税が発生しない場合でも、法人住民税の均等割など一定の税負担が発生する場合があります。
個人事業と法人では税金の仕組みそのものが異なるため、
「利益が出たときにどちらが有利か」
だけでなく、
「利益が少ない年や赤字になった場合にどのような負担があるか」
についても確認しておくことが大切です。
法人は個人事業より終了する手続きも複雑になる
個人事業と比べると、法人は事業を終了するときの手続きも複雑になります。
会社を閉じる場合は、単に営業をやめるだけではなく、解散や清算、登記などの手続きが必要になります。
そのため、
「とりあえず会社を作ってみよう」
ではなく、今後も継続して事業を行う予定があるか考えたうえで法人化することが重要です。
法人化には、法人名義での取引や資金調達、採用など事業を拡大しやすくなるメリットがあります。一方、設立費用や社会保険、税務申告、法人維持のコストなどは個人事業より負担が増える可能性があります。
税金だけで判断するのではなく、現在の事業規模と将来の事業計画を踏まえて、個人事業を続ける場合と法人化する場合を比較しましょう。
法人化の会社設立・手続きに関する疑問
4. 法人化するなら株式会社と合同会社のどちらがいいですか?
個人事業主が法人化する場合、株式会社と合同会社のどちらが適しているかは、設立費用や会社の運営方法、取引先、今後の事業計画などによって異なります。
一般的には、対外的な分かりやすさや将来的な事業拡大を重視するなら株式会社、設立時の費用を抑えて比較的シンプルに会社を運営したい場合は合同会社が選択肢になります。
株式会社と合同会社の主な違い
代表的な違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資者 | 株主 | 社員 |
| 経営者 | 取締役 | 業務執行社員など |
| 定款認証 | 必要 | 不要 |
| 設立時の登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
| 設立費用 | 合同会社より高くなりやすい | 比較的抑えやすい |
| 役員等の任期 | あり | 原則なし |
| 決算公告 | 必要 | 不要 |
| 株式による資金調達 | 可能 | 不可 |
| 知名度 | 比較的高い | 株式会社より低い傾向 |
どちらも法人であり、一人で設立することも可能です。
株式会社は対外的な分かりやすさを重視する場合に向いている
株式会社は広く知られている会社形態のため、取引先や顧客に会社の形態を理解してもらいやすいメリットがあります。
また、将来的に外部から出資を受けたり、株式を活用した資金調達を検討したりする場合にも株式会社が選択肢となります。
たとえば、
- 法人との取引を増やしたい
- 従業員を増やして事業を拡大したい
- 将来的に外部からの出資を検討している
- 会社としての知名度や分かりやすさを重視したい
といった場合は、株式会社を検討しやすいでしょう。
合同会社は設立費用を抑えたい場合に向いている
合同会社は、株式会社と比べて設立にかかる法定費用を抑えやすい会社形態です。
株式会社では定款について公証人の認証が必要ですが、合同会社では定款認証が必要ありません。
また、登録免許税の最低額も株式会社より低く設定されています。
そのため、
「一人で事業を続ける予定だけど法人にはしたい」
「会社設立時の費用をできるだけ抑えたい」
といった場合には合同会社も有力な選択肢です。
役員の任期や決算公告についても株式会社とは違いがあるため、小規模な会社を運営する場合には管理負担を抑えやすい面があります。
税金だけで株式会社と合同会社を選ぶ必要はない
「合同会社のほうが税金が安いのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、株式会社と合同会社はどちらも法人であり、会社形態が株式会社か合同会社かという理由だけで法人税の基本的な仕組みが大きく変わるわけではありません。
そのため、単純な税金の違いより、
- 設立費用
- 会社の運営方法
- 取引先との関係
- 資金調達
- 将来的な事業規模
などをもとに選ぶとよいでしょう。
将来どのような会社にしたいかで選ぶ
現在一人で事業を行っている場合でも、数年後には事業の形が変わっている可能性があります。
たとえば、
今後も自分一人を中心に小規模で運営する
のであれば合同会社、
従業員や株主を増やしながら会社を成長させたい
のであれば株式会社、
という考え方もできます。
ただし、合同会社から株式会社へ組織変更することも可能なため、最初に選んだ会社形態を永久に変更できないわけではありません。
株式会社と合同会社のどちらが適しているかは、法人化する目的によって異なります。対外的な分かりやすさや将来的な事業拡大を重視するなら株式会社、設立費用や運営負担を抑えながら法人化したい場合は合同会社が選択肢になります。
現在の事業規模だけでなく、数年後にどのような会社にしたいかまで考えて選びましょう。
5. 個人事業主が法人化するにはどのような手続きが必要ですか?
個人事業主が法人化する場合は、株式会社や合同会社を設立する手続きと、個人で行っていた事業を法人へ引き継ぐ手続きの両方が必要です。
会社を設立しただけで、個人事業の契約や資産、銀行口座などが自動的に法人へ移るわけではありません。
大きく分けると、次のような流れで進めます。
1. 会社の基本事項を決める
まず、設立する会社について基本的な事項を決めます。
たとえば、
- 株式会社・合同会社などの会社形態
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金
- 出資者
- 役員
- 事業年度
などです。
特に本店所在地は法人登記される会社の住所となるため、自宅を利用するのか、バーチャルオフィスなど別の住所を利用するのかも、この段階で決めておきます。
2. 定款を作成する
会社の基本的なルールを定めた「定款」を作成します。
株式会社の場合は、原則として作成した定款について公証人による認証を受けます。
合同会社では公証人による定款認証は必要ありません。
なお、紙の定款ではなく電子定款を利用することで、定款にかかる印紙税を抑えられる場合があります。
3. 資本金を払い込む
会社設立にあたって、定款などで定めた資本金を払い込みます。
会社設立前はまだ法人名義の銀行口座が存在しないため、発起人の個人口座などを利用して払い込みを行い、その記録を会社設立登記に必要な書類として準備します。
資本金は法律上の最低額だけで決めるのではなく、会社設立後の運転資金や事業内容なども考えて設定しましょう。
4. 法務局で会社設立登記を行う
必要な書類が揃ったら、本店所在地を管轄する法務局へ会社設立登記を申請します。
原則として、会社設立登記を申請した日が会社の設立日となります。
登記が完了すると、会社の登記事項証明書などを取得できるようになり、その後の法人名義の銀行口座開設や各種契約などを進められます。
5. 税務・社会保険などの手続きを行う
会社を設立した後は、登記だけで手続きがすべて終了するわけではありません。
事業内容や状況に応じて、
- 税務署への届出
- 都道府県・市区町村への届出
- 健康保険・厚生年金保険の手続き
- 従業員を雇用する場合の労働保険などの手続き
を行います。
提出先や期限がそれぞれ異なるため、会社設立前後に必要な手続きを一覧にしておくと管理しやすくなります。
6. 個人事業から法人へ事業を引き継ぐ
法人成りでは、新しい会社を設立するだけでなく、これまで個人で行っていた事業を法人へ移していきます。
たとえば、
- 取引先との契約
- 事業用資産
- 商品・在庫
- Webサイトや各種サービス
- 電話・通信サービス
- 賃貸借契約
- 許認可
などについて、名義変更や新規契約、譲渡などが必要になる場合があります。
取引先へ法人化したことを案内し、請求先や振込先なども必要に応じて変更します。
個人名義の契約を法人名義へ自動的に変更できるとは限らないため、それぞれの契約先へ確認しましょう。
7. 個人事業側の廃業手続きなどを確認する
個人事業を終了して法人へ完全に移行する場合は、個人事業側についても廃業に関する税務手続きなどを確認します。
また、法人化した年は、
法人化するまでの個人事業
と
会社設立後の法人
が同じ年に存在することもあります。
個人事業としての確定申告と法人の決算・申告は別に行うため、法人化した年は特に会計処理を明確に分けておきましょう。
個人事業主の法人化では、「会社を設立する手続き」と「個人事業を法人へ引き継ぐ手続き」の両方が必要です。
会社名や本店所在地などを決めて法人登記を行い、設立後は税務・社会保険などの手続きと並行して、契約や資産などを法人へ移していきましょう。
6. 法人化にはどのくらい費用がかかりますか?
個人事業主が法人化する場合、株式会社と合同会社では設立に必要な費用が異なります。 一般的には、定款認証が不要で登録免許税の最低額も低い合同会社のほうが、株式会社より設立時の法定費用を抑えやすくなります。
ただし、法人化では会社を設立する費用だけでなく、設立後に継続して発生する費用についても考えておく必要があります。
株式会社と合同会社では設立費用が異なる
主な法定費用を比較すると、次のようになります。
| 主な費用 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 3万~5万円 | 不要 |
| 定款の印紙税 | 4万円 | 4万円 |
| 登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
| 電子定款の場合の印紙税 | 不要 | 不要 |
株式会社の定款認証手数料は、資本金等の額などによって異なります。
また、紙で定款を作成する場合は原則として4万円の収入印紙が必要ですが、一定の要件を満たした電子定款では印紙税がかかりません。
そのため、自分で手続きを行うか専門家へ依頼するか、紙定款か電子定款かなどによって、実際の設立費用は変わります。
株式会社は20万円程度以上かかることがある
株式会社では、登録免許税だけでも最低15万円かかります。
さらに定款認証手数料などが必要になるため、法定費用だけでも20万円前後になるケースがあります。
紙定款を利用する場合は印紙税も発生します。
また、司法書士などへ会社設立手続きを依頼する場合は、法定費用とは別に専門家への報酬も必要です。
合同会社は株式会社より設立費用を抑えやすい
合同会社では公証人による定款認証が必要なく、登録免許税も最低6万円です。
電子定款を利用すれば定款の印紙税もかからないため、自分で設立手続きを行う場合は株式会社より費用を大きく抑えられることがあります。
そのため、
「一人会社として法人化したい」
「設立時の費用をできるだけ抑えたい」
という場合には、合同会社も選択肢になります。
資本金は会社設立の「費用」とは異なる
法人化に必要なお金を考える際、資本金と会社設立費用を混同しないようにしましょう。
資本金は登録免許税などのように手続きによってなくなる費用ではなく、会社設立後に会社の事業資金として使用できます。
現在は株式会社・合同会社ともに資本金1円から設立することが可能ですが、実際には会社設立直後の、
- 商品の仕入れ
- 広告費
- 通信費
- 各種サービス利用料
- 事務用品
- 事業用住所
などにも資金が必要です。
そのため、法律上設立できる最低額ではなく、会社設立後の運転資金まで考えて資本金を決めることが重要です。
法人化後に継続してかかる費用も考える
法人化を検討するときは、設立時の数万円・数十万円だけを比較するのではなく、会社を維持するための費用も考えておきましょう。
たとえば、
- 法人住民税
- 社会保険料
- 会計ソフト
- 税理士などへの報酬
- 法人名義の各種サービス
- 事業用住所・オフィス
- 登記事項を変更する場合の登記費用
などが発生する可能性があります。
特に法人住民税の均等割は、赤字で法人税が発生しない場合でも原則として負担が生じます。
法人化に必要な費用は、株式会社か合同会社かによって異なります。株式会社は登録免許税が最低15万円で定款認証も必要となる一方、合同会社は登録免許税が最低6万円で定款認証も不要なため、設立費用を抑えやすい会社形態です。
ただし、法人化を判断するときは会社設立時の費用だけでなく、社会保険や税務、会計など設立後に継続して発生する費用まで含めて考えましょう。
7. 個人事業で使っていた屋号・銀行口座・契約はそのまま使えますか?
法人化すると、個人事業主と新しく設立した法人は別の事業主体になるため、個人事業で使用していた銀行口座や契約などをそのまま法人名義として使用できるとは限りません。
法人設立後は、銀行口座やクレジットカード、取引先との契約、各種サービスなどについて、法人名義への変更や新規契約が必要か確認しましょう。
屋号と会社名は別のもの
個人事業主が使用する屋号と、法人登記する会社の商号(会社名)は別のものです。
たとえば個人事業で、
「○○デザイン」
という屋号を使用していた場合でも、法人化すると、
「株式会社○○デザイン」
「○○デザイン合同会社」
など、法人として使用する商号を決めて登記します。
これまで使用していた屋号と同じ名称を会社名に含めることもできますが、商号には登記上のルールがあるため、会社設立前に使用できる名称か確認しましょう。
個人事業の銀行口座を法人口座として使うわけではない
個人事業で使用していた個人名義・屋号付きの銀行口座が、そのまま法人名義の銀行口座になるわけではありません。
法人設立後は、必要に応じて法人名義の銀行口座を新たに開設します。
その後、取引先へ法人化したことを案内し、請求書や振込先などを法人名義へ変更していきます。
法人名義の口座開設には審査があり、登記事項証明書などの会社情報に加えて、事業内容を確認できる資料などを求められる場合があります。
クレジットカードや決済サービスも確認する
個人事業で使用していたクレジットカードや決済サービスなども、法人化したからといって自動的に法人契約へ変更されるわけではありません。
法人化後は、
- 法人カード
- 決済サービス
- ECモール
- 会計ソフト
- クラウドサービス
- 電話・通信サービス
などについて、それぞれ法人名義への変更や新規契約が必要か確認します。
事業用の支払いを法人名義へ整理しておけば、個人のお金と会社のお金を分けて管理しやすくなります。
取引先との契約は名義変更・再契約を確認する
個人事業主として取引先と締結した契約も、新しく設立した法人へ自動的に引き継がれるとは限りません。
法人化すると契約当事者が、
個人 → 法人
へ変わるため、取引先によっては契約変更や再契約などが必要になります。
法人化することが決まったら、取引先へ早めに連絡し、
- 契約名義
- 請求書
- 振込先
- 会社名
- 所在地
- 連絡先
など、変更が必要な情報を確認しておきましょう。
Webサイトやドメインなどの契約も忘れず確認する
Webサイトを運営している場合は、
- ドメイン
- レンタルサーバー
- Web広告
- SNS
- メールサービス
- 各種SaaS
などの契約情報についても確認しましょう。
サービスによっては契約者名を個人から法人へ変更できる場合もあれば、新しく法人契約を行う必要がある場合もあります。
法人化後も個人名義の契約が大量に残っていると、経理や契約管理が複雑になるため、法人化を機に一覧化して整理するとよいでしょう。
許認可は特に注意する
許認可が必要な事業では、個人事業主として取得していた許認可を、そのまま新しい法人で利用できるとは限りません。
個人と法人は別の事業主体であるため、新たに法人として許認可を取得する必要があるケースもあります。
また、法人化によって事業者名や営業所などが変わる場合には、変更手続きが必要になることもあります。
許認可が必要な事業では、会社を設立する前に管轄する行政機関へ確認しておくことが重要です。
個人事業主と法人は別の事業主体であるため、個人事業で使用していた銀行口座や契約などが自動的に法人へ引き継がれるわけではありません。
法人化が決まったら、銀行口座、取引先との契約、決済サービス、Web関連サービス、許認可などを一覧にして、法人名義への変更や新規契約が必要か順番に確認しましょう。
法人化するときの住所・法人登記に関する疑問

8. 法人化するときに自宅住所で法人登記できますか?
はい、個人事業主が法人化する際に、自宅住所を株式会社や合同会社の本店所在地として法人登記することは可能です。
新たに事務所を借りる必要がないため、法人化に伴う初期費用や毎月の固定費を抑えやすい方法です。
ただし、賃貸住宅やマンションでは法人登記が制限されている場合があるほか、自宅を本店所在地として登記すると、その住所が会社情報として公開されることにも注意しましょう。
賃貸住宅では法人登記できるか確認する
賃貸住宅を自宅兼事務所として使用している場合は、法人登記する前に賃貸借契約を確認します。
物件によっては、
- 住居以外の用途での利用
- 事務所利用
- 法人登記
- 看板や法人名の表示
- 顧客などの来訪
が制限されている場合があります。
個人事業主として自宅で仕事をしていたとしても、法人化後にその住所を本店所在地として登記できるとは限りません。
契約内容から判断できない場合は、大家や管理会社へ確認しましょう。
持ち家でもマンションの管理規約などを確認する
自分が所有する住宅であれば本店所在地として利用しやすいものの、マンションの場合は管理規約などによって事務所利用が制限されている場合があります。
また、住宅ローンや各種契約などについて確認が必要になるケースも考えられます。
「自分の持ち家だから何も確認しなくてよい」と判断せず、住宅に関する契約や規約を確認しておくと安心です。
自宅を法人登記すると本店所在地として公開される
法人化するときに特に考えておきたいのが、住所の公開です。
株式会社や合同会社では本店所在地が登記事項となるため、自宅を本店所在地として法人登記すると、自宅住所が会社の所在地として外部から確認できる状態になります。
また、国税庁の法人番号公表サイトでは、法人の基本3情報として本店または主たる事務所の所在地などが公表されます。
そのため、
自宅で仕事をすることには問題がない
ものの、
自宅住所を会社情報として公開したくない
という場合は、法人化する前に別の本店所在地を用意する方法を検討するとよいでしょう。
法人登記できることと許認可は別に考える
自宅住所で法人登記できたからといって、その住所ですべての事業を行えるとは限りません。
許認可が必要な業種では、営業所や事務所について独立性や設備などの要件が設けられている場合があります。
そのため、
法人登記できる住所
と
許認可上、営業所として認められる住所
は分けて考えることが重要です。
許認可が必要な事業を法人化する場合は、会社設立前に管轄する行政機関などへ確認しましょう。
個人事業主が法人化する際、自宅住所を株式会社や合同会社の本店所在地として法人登記することは可能です。
ただし、賃貸借契約や管理規約による制限、自宅住所の公開、許認可などについて確認する必要があります。
自宅で仕事を続けたいものの、自宅住所を会社の所在地として公開したくない場合は、法人登記に対応したバーチャルオフィスなどを利用して、仕事をする場所と会社の本店所在地を分ける方法も検討できます。
9. 個人事業で使っていたバーチャルオフィスは法人化後も使えますか?
法人登記に対応しているバーチャルオフィスであれば、個人事業で利用していた住所を、法人化後も会社の本店所在地として継続して利用できる場合があります。
ただし、個人・個人事業主としての契約と法人契約では、契約内容や必要な手続きが異なる場合があります。
法人登記を行う前に、利用しているバーチャルオフィスへ法人化することを伝え、契約変更や必要書類などを確認しましょう。
法人登記に対応しているか確認する
まず確認したいのは、利用しているバーチャルオフィスが法人登記に対応しているかどうかです。
事業用住所として利用できるサービスであっても、必ず法人登記まで認められているとは限りません。
将来的な法人化を考えている場合は、個人事業として契約する段階から、
- 法人登記に対応しているか
- 法人化後も同じ住所を利用できるか
- 法人契約への変更手続きがあるか
- 契約変更に費用がかかるか
などを確認しておくとよいでしょう。
同じ住所を継続できれば住所変更の負担を減らせる
個人事業から法人化する際に事業用住所まで変更すると、さまざまな場所で住所変更が必要になる可能性があります。
たとえば、
- Webサイト
- 名刺
- パンフレット
- 取引先への案内
- 各種サービス
- 郵便物の送付先
などです。
個人事業の段階から法人登記に対応した住所を利用し、法人化後も同じ住所を継続できれば、法人化と同時に事業用住所まで変更する負担を抑えられます。
将来的に法人化する可能性がある場合は、「今利用できればよい」だけでなく、法人化後も利用できるかという視点でバーチャルオフィスを選ぶことも重要です。
法人化する前に契約変更のタイミングを確認する
バーチャルオフィスを法人の本店所在地として登記する場合は、いつ個人契約から法人契約へ変更するのかも確認しておきましょう。
サービスによって、
法人登記前に所定の手続きが必要
法人設立後に登記事項証明書などの提出が必要
など、手続きの流れが異なる場合があります。
自己判断で先に法人登記するのではなく、会社設立のスケジュールが決まった段階でバーチャルオフィスへ確認するとスムーズです。
郵便物の宛名も個人から法人へ変わる
法人化すると、これまで個人名や屋号宛てだった郵便物に加えて、新しい会社名宛ての郵便物が届くようになります。
そのため、バーチャルオフィス側でも法人名で郵便物を受け取れるよう、必要な登録変更を行います。
あわせて、
- 郵便物の転送頻度
- 到着通知
- 来店受取
- 受け取れない郵便物
なども改めて確認しておくとよいでしょう。
レゾナンスなら個人から法人への切り替えができる
レゾナンスでは、個人・個人事業主としてバーチャルオフィスを利用した後に法人化した場合、個人契約から法人契約へ無料で切り替えることができます。
また、提供する住所は法人登記にも利用できるため、
↓
事業が成長して法人化
↓
同じ住所を会社の本店所在地として法人登記
という使い方ができます。
法人化によって事業用住所を変更する必要がなければ、Webサイトや名刺などに掲載している住所を変更する負担も抑えられます。
個人事業で利用していたバーチャルオフィスは、法人登記に対応しているサービスであれば、法人化後も継続して利用できる場合があります。
将来的に法人化する可能性がある場合は、法人登記への対応だけでなく、個人から法人への契約変更や費用、郵便物の取り扱いまで確認して選んでおきましょう。
10. 法人化するときの本店所在地はどう選べばいいですか?
法人化するときの本店所在地は、法人登記できるかだけでなく、住所の公開、郵便物の受取、許認可、今後の事業展開なども考えて選ぶことが重要です。
株式会社や合同会社を設立すると、本店所在地は会社の基本的な情報として使用されます。
設立後に本店所在地を変更することもできますが、移転すると登記や各種契約、取引先への案内などの変更が必要になるため、法人化する段階で長く利用できる住所を選んでおくとよいでしょう。
1. 法人登記できる住所か確認する
まず確認したいのが、その住所を会社の本店所在地として法人登記できるかどうかです。
自宅、賃貸オフィス、バーチャルオフィスなどさまざまな選択肢がありますが、物件やサービスによって法人登記への対応は異なります。
特に賃貸住宅やバーチャルオフィスを利用する場合は、契約前に法人登記の可否を確認しておきましょう。
2. 自宅住所を公開しても問題ないか考える
自宅を本店所在地として法人登記すれば、新たに事務所を借りる費用を抑えられます。
一方、本店所在地は登記事項となるため、自宅住所が会社の所在地として公開されることになります。
そのため、
自宅住所を会社情報として公開しても問題ない → 自宅登記を検討
自宅住所を公開したくない → 別の事業用住所を検討
という考え方もできます。
3. 郵便物を問題なく受け取れるか確認する
会社の本店所在地には、取引先や行政機関などから郵便物が届くことがあります。
そのため、住所だけでなく郵便物を継続して受け取れる環境が必要です。
バーチャルオフィスを利用する場合は、
- 郵便物の受取に対応しているか
- 転送頻度
- 到着通知
- 来店受取
- 受け取れない郵便物
なども確認しましょう。
4. 許認可が必要な事業は要件を確認する
法人登記できる住所であっても、その住所が許認可上の営業所や事務所として認められるとは限りません。
事業によっては、独立したスペースや設備などが求められる場合があります。
許認可が必要な事業では、会社を登記してから住所が要件を満たさないことに気付くことがないよう、法人設立前に管轄する行政機関などへ確認しておきましょう。
5. 長期間利用できる住所か考える
本店所在地を変更すると、法人の変更登記が必要になります。
さらに、
- Webサイト
- 名刺
- 取引先
- 金融機関
- 各種契約
- 許認可
などについて住所変更が必要になる場合があります。
そのため、法人化するときは現在の使いやすさだけでなく、今後も継続して利用できる住所かという視点も重要です。
個人事業の段階から法人登記に対応したバーチャルオフィスを利用している場合は、法人化後も同じ住所を継続できるか確認しておくとよいでしょう。
仕事をする場所と本店所在地を分ける方法もある
会社の本店所在地を決めるからといって、必ずそこで毎日仕事をしなければならないわけではありません。
たとえばオンラインで仕事が完結する一人会社などでは、
実際に仕事をする場所 → 自宅
会社の本店所在地 → バーチャルオフィス
という使い分けもできます。
一方、従業員が増えたり顧客の来訪が多くなったりした場合は、実際のオフィスを借りる方法もあります。
法人化するときの本店所在地は、法人登記の可否だけでなく、住所公開、郵便物、許認可、費用、将来的な事業展開などを含めて選びましょう。
自宅で仕事ができる事業であれば、仕事場と会社の本店所在地を分け、必要な住所機能だけバーチャルオフィスを利用する方法も選択肢になります。
まとめ

個人事業主の法人化は、単に会社を設立すれば完了するものではありません。
株式会社や合同会社を設立した後は、税務や社会保険の手続きに加えて、個人事業で使用していた銀行口座や契約、事業用資産、各種サービスなどを法人へ移していく必要があります。
また、法人化するタイミングについても、「売上がいくらになったら法人化する」という一律の基準があるわけではありません。
利益や税金だけでなく、
- 社会保険の負担
- 取引先との関係
- 資金調達
- 従業員の採用
- 今後の事業規模
- 法人を維持するための費用
などを含めて判断することが重要です。
そして、法人化する際に忘れず考えておきたいのが会社の本店所在地です。
自宅を本店所在地として法人登記する方法もありますが、自宅住所が会社情報として公開されるほか、賃貸住宅では契約上法人登記できない場合もあります。
自宅住所を公開したくない場合や、自宅を法人登記に利用できない場合は、法人登記に対応したバーチャルオフィスを利用する方法もあります。
特に個人事業の段階からバーチャルオフィスを利用する場合は、将来的に法人化しても同じ住所を継続できるか確認して選んでおくと、住所変更に伴う負担を抑えやすくなります。
レゾナンスでは、個人・個人事業主から法人への契約切り替えに対応しており、法人登記可能な住所を利用できます。
現在の事業規模だけで法人化を判断するのではなく、「これからどのような事業にしたいのか」を考え、法人化するタイミングや会社形態、本店所在地を選ぶことが大切です。
参考・確認先
法人化に必要な手続きや税金、社会保険などの制度は、法改正や制度変更によって内容が変わる場合があります。実際に法人化する際は、以下の公的機関が公開している最新情報もあわせてご確認ください。
- 法務局|商業・法人登記の申請書様式
株式会社や合同会社の設立をはじめ、商業・法人登記に関する申請書や手続き情報を確認できます。- 日本公証人連合会|定款認証
株式会社設立時の定款認証や手数料などについて確認できます。- 国税庁|納税義務の免除
消費税の納税義務が免除される事業者の基本的な条件などを確認できます。- 日本年金機構|新規適用の手続き
法人を設立した場合の健康保険・厚生年金保険の適用や手続きについて確認できます。- 国税庁|法人番号公表サイト
法人の商号・名称、本店または主たる事務所の所在地、法人番号などの基本3情報を確認できます。※法人化による税負担や社会保険料、個人事業から法人への資産・契約の引き継ぎなどは、事業者ごとに状況が異なります。具体的な判断については、税務署、法務局、日本年金機構または税理士・司法書士・社会保険労務士などの専門家へご確認ください。