個人事業主として事業を始めると、仕事に必要なさまざまな費用が発生します。
パソコンや事務用品など、仕事のために購入したことが分かりやすいものがある一方で、
「スマホ代やインターネット代は?」
「仕事相手との食事代は経費になる?」
「バーチャルオフィスの利用料は?」
など、経費として計上できるのか判断に迷う支出もあるでしょう。
個人事業主の経費を考えるうえで重要なのは、その支出が事業を行うために必要なものかどうかです。
また、自宅の家賃や通信費のように仕事とプライベートの両方で使用しているものについては、事業で使用した部分を合理的に分ける「家事按分」が必要になる場合があります。
反対に、個人的な買い物や生活費など、事業と関係のない支出を経費にすることはできません。
この記事では、個人事業主が経費にできるもの・できないものの基本的な考え方をはじめ、自宅家賃、パソコン、スマホ・インターネット、飲食代、交通費、バーチャルオフィスなど、判断に迷いやすい費用についてわかりやすく解説します。
個人事業主の経費とは?

1. 個人事業主の経費とは何ですか?
個人事業主の経費とは、事業を行うために必要となった費用のことです。
商品を仕入れる費用だけでなく、仕事で使用するパソコンや通信費、交通費、広告費など、さまざまな支出が経費になる可能性があります。
事業に必要な支出が経費になる
たとえば、次のような費用です。
- 商品や材料の仕入れ
- 事務用品
- 広告宣伝費
- 交通費
- 通信費
- オフィスの賃料
- Webサービスの利用料
ただし、支払ったものなら何でも経費にできるわけではありません。
その支出が事業に必要だったことを説明できるかが重要になります。
経費は所得を計算するときに差し引く
個人事業主の所得は、基本的に収入から必要経費を差し引いて計算します。
たとえば、年間の事業収入が500万円、必要経費が150万円であれば、単純計算では350万円が所得となります。
所得税は売上そのものに対して計算するわけではないため、経費を正しく記録することが大切です。
プライベートな支出は経費にできない
個人事業主だからといって、生活にかかった費用をすべて経費にできるわけではありません。
たとえば、仕事とは関係のない買い物や個人的な食事、生活費などは原則として経費にはできません。
一方、自宅の家賃やスマートフォン代など、仕事とプライベートの両方で使用している支出は、事業で使用した部分を合理的に分けて経費にできる場合があります。
経費にした支出は記録を残しておく
経費を計上するときは、何にいくら支払ったのか分かるように帳簿へ記録します。
領収書やレシート、請求書などの証拠書類も保存しておきましょう。
「経費になるか」だけでなく、事業との関係を後から確認できるようにしておくことも、個人事業主の経費管理では重要です。
2. 個人事業主が経費にできるもの・できないものの判断基準は?
個人事業主が支払った費用を経費にできるかどうかは、その支出が事業を行うために必要だったかを基準に考えます。
仕事に直接関係する費用であれば経費になる可能性がありますが、プライベートな支出は原則として経費にできません。
事業との関係を説明できるかがポイント
同じ支出でも、目的によって経費になるかどうかが変わることがあります。
たとえばカフェを利用した場合でも、
- 取引先との打ち合わせ
- 外出中の仕事場所として利用
など事業上の目的があるケースと、休日にプライベートで利用したケースでは性質が異なります。
「仕事に必要だった理由」を説明できるかを意識すると判断しやすくなります。
仕事と私生活の両方で使うものは家事按分する
自宅の家賃や電気代、スマートフォン、インターネット回線などは、仕事とプライベートの両方で使用することがあります。
このような費用は、事業で使用している割合を合理的な基準で分け、事業分を必要経費として計上できる場合があります。
これを「家事按分」といいます。
個人的な生活費は原則として経費にできない
食費や日用品、趣味の買い物など、事業と関係のない個人的な支出は原則として経費にはできません。
また、「仕事にも使えそう」という理由だけではなく、実際に事業で使用していることが重要です。
経費になるか迷ったときは、金額だけで判断せず「事業との関係を客観的に説明できるか」を確認しましょう。
3. 自宅の家賃や光熱費は経費にできますか?
自宅で仕事をしている個人事業主の場合、家賃や電気代などの一部を経費にできる場合があります。
ただし、自宅は生活にも使用するため、支払った金額のすべてをそのまま経費にできるとは限りません。
仕事で使用している部分を家事按分する
自宅の家賃などを仕事とプライベートの両方に使用している場合は、事業で使用している割合を合理的な基準で分ける「家事按分」を行います。
たとえば、自宅の床面積のうち25%を仕事専用スペースとして使用しているのであれば、床面積を基準として家賃の25%を事業分として考える方法があります。
重要なのは、なぜその割合にしたのか説明できる基準を設けることです。
電気代なども事業分を分けて考える
自宅でパソコンや照明などを使用して仕事をしている場合、電気代についても事業で使用した部分を経費にできる場合があります。
使用時間や仕事をしている日数など、実際の利用状況に応じた基準で按分します。
一方、水道代やガス代などは仕事内容によって事業との関係が薄いケースもあるため、一律に家賃と同じ割合で経費にできるわけではありません。
住宅ローンの元本返済は経費にならない
持ち家を仕事場として使用している場合は、賃貸住宅とは経費の考え方が異なります。
住宅ローンの元本返済そのものを必要経費にすることはできません。
一方、建物の減価償却費や住宅ローンの利息、固定資産税などについては、事業で使用している部分を経費として扱える場合があります。
自宅関連の費用は金額が大きくなりやすいため、事業で使用している範囲と按分の根拠を明確にしておきましょう。
4. スマホ代やインターネット代は経費にできますか?
個人事業主が仕事でスマートフォンやインターネットを利用している場合、事業で使用している部分を経費にできる場合があります。
ただし、プライベートでも利用している場合は、利用状況に応じて家事按分する必要があります。
仕事専用なら経費として計上しやすい
事業専用のスマートフォンやインターネット回線を契約している場合は、事業との関係が明確になります。
たとえば、
- 取引先との電話やメール
- Webサイトの運営
- オンライン会議
- クラウドサービスの利用
- SNSでの情報発信
など、仕事のために利用している通信費は経費になる可能性があります。
プライベートと共用している場合は家事按分する
個人用のスマートフォンを仕事にも使用している場合は、料金のすべてを経費にするのではなく、事業で使用している割合を分けて考えます。
インターネット回線についても同様です。
使用時間や利用状況などをもとに、合理的に説明できる割合で家事按分することが大切です。
端末の購入費は通信費とは別に考える
スマートフォン本体やパソコンなどを購入した場合は、毎月の通信料金とは経費処理が異なることがあります。
購入金額などによっては、購入した年に全額を経費にするのではなく、固定資産として計上して複数年にわたって減価償却する場合があります。
通信料金と端末の購入費を同じものとして処理しないよう注意しましょう。
5. パソコンやスマートフォンの購入費は経費にできますか?
仕事で使用するパソコンやスマートフォンの購入費は、事業に必要なものであれば経費にできます。
ただし、購入金額によっては、購入した年に全額を経費にするのではなく、固定資産として計上して減価償却する必要があります。
10万円未満なら原則として購入時の経費にできる
取得価額が10万円未満のパソコンやスマートフォンなどは、原則として購入・使用開始した年の必要経費として処理できます。
一方、10万円以上の場合は、原則として固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却します。
そのため、高額なパソコンを購入した場合は金額を確認してから処理しましょう。
青色申告では特例を利用できる場合がある
青色申告をしている個人事業主は、一定の要件を満たすことで「少額減価償却資産の特例」を利用できる場合があります。
この特例では、取得価額30万円未満の減価償却資産について、年間合計300万円まで取得した年の必要経費に算入できる場合があります。
適用期限や対象者などの要件があるため、利用するときは最新の制度を確認しましょう。
プライベートでも使う場合は事業分を分ける
仕事用に購入したパソコンでも、プライベートでも使用している場合は注意が必要です。
仕事と私生活の両方で使用している場合は、実際の利用状況などをもとに事業で使用している割合を合理的に分けます。
「仕事でも使っているから購入費を全部経費にする」のではなく、購入金額と事業での使用割合の両方を確認することが大切です。
6. 飲食代やカフェ代は経費にできますか?
個人事業主が支払った飲食代やカフェ代は、事業との関係が明確であれば経費にできる場合があります。
ただし、普段の食事など個人的な生活費は原則として経費にはできません。
取引先との打ち合わせなどは経費になる場合がある
取引先や顧客との打ち合わせ、商談などを目的として飲食店やカフェを利用した場合は、事業に必要な費用として経費になる可能性があります。
たとえば、
- 取引先との打ち合わせ
- 顧客との商談
- 仕事関係者との会食
などです。
経費として記録する場合は、金額だけでなく、誰とどのような目的で利用したのか分かるようにしておくとよいでしょう。
自分一人の普段の食事は原則として経費にならない
仕事中に食べた昼食だからといって、すべて経費になるわけではありません。
自分一人で食べる通常の朝食や昼食、夕食などは、仕事をしていなくても必要となる生活費と考えられるため、原則として経費にはできません。
「仕事の日に使ったお金」ではなく、事業を行うために必要だった支出かどうかで判断します。
カフェで仕事をした場合は目的を整理する
外出先のカフェを仕事場所として利用した場合などは、事業との関係を踏まえて判断します。
一方、カフェで仕事をしたという理由だけで、そこで購入した食事や飲み物がすべて自動的に経費になるわけではありません。
飲食代はプライベートな支出との区別が曖昧になりやすいため、利用日・相手・目的など、事業との関係を説明できる記録を残しておくことが大切です。
7. 電車代・タクシー代・ガソリン代は経費にできますか?
個人事業主が仕事のために移動した際の交通費は、事業に必要な移動であれば経費にできる場合があります。
電車やバスだけでなく、タクシー代や仕事で使用した自動車のガソリン代なども対象になることがあります。
仕事のための電車代やバス代は経費にできる
たとえば、
- 取引先との打ち合わせ
- 営業活動
- セミナーやイベントへの参加
- 出張
- 商品の仕入れ
- 現地取材
など、事業のために移動した際の交通費は経費として計上できる場合があります。
一方、プライベートな旅行や買い物など、事業と関係のない移動費は経費にはできません。
タクシー代も事業目的なら経費になる場合がある
仕事の移動でタクシーを利用した場合も、事業上必要なものであれば経費になる可能性があります。
領収書を保存するとともに、打ち合わせや出張など、何のために利用したのか記録しておくと分かりやすくなります。
自家用車を仕事でも使う場合は家事按分する
自家用車を仕事とプライベートの両方で使用している場合は、ガソリン代などの全額を経費にするのではなく、事業で使用した分を合理的に分けます。
走行距離や使用日数などを基準に、事業で使用した割合を計算する方法があります。
駐車場代や高速道路料金などについても、事業のために利用したものかを確認しましょう。
交通費は「どこへ行ったか」だけでなく、「何の仕事のために移動したのか」が分かるように記録しておくことが大切です。
8. バーチャルオフィスやコワーキングスペースの料金は経費にできますか?
個人事業主が事業のためにバーチャルオフィスやコワーキングスペースを利用している場合、その利用料金は経費にできる場合があります。
自宅とは別に事業用住所を用意したり、仕事をするスペースを確保したりするための費用であれば、事業との関係を説明しやすいでしょう。
バーチャルオフィスの利用料は経費になる場合がある
バーチャルオフィスでは、事業用住所や郵便物の受取・転送などのサービスを利用できます。
たとえば、
- Webサイトや名刺に掲載する事業用住所
- 仕事関係の郵便物の受取
- 郵便物の転送
- 電話転送・電話秘書
- 会議室の利用
など、事業のために利用しているサービスの料金は経費として計上できる場合があります。
コワーキングスペースの利用料も事業目的なら対象になる
コワーキングスペースを仕事場所として利用している場合も、利用料金を経費にできる場合があります。
月額契約だけでなく、必要なときだけ利用するドロップイン料金などについても、事業目的で利用したものであれば経費として考えられます。
勘定科目はサービス内容などに応じて判断する
バーチャルオフィスやコワーキングスペースの利用料について、必ず一つの決まった勘定科目を使用するわけではありません。
契約内容などに応じて「地代家賃」「支払手数料」「通信費」などで処理されることがあります。
重要なのは、実際のサービス内容に合った勘定科目を選び、継続して同じ基準で処理することです。
事業専用なら自宅住所を分けたい人にも選択肢になる
自宅で仕事をする個人事業主の場合、仕事場所そのものに大きな費用をかける必要がないケースもあります。
一方で、自宅住所をWebサイトや名刺などへ公開したくない場合には、バーチャルオフィスを利用して事業用住所を分ける方法があります。
事業のために必要なサービスとして契約しているのであれば、利用料金を適切に記録し、領収書や請求書なども保存しておきましょう。
9. 経費にした領収書やレシートは保存する必要がありますか?
個人事業主が経費を計上した場合は、その支出を確認できる領収書やレシート、請求書などを保存しておく必要があります。
確定申告が終わったからといって、すぐに処分してよいわけではありません。
経費の内容が分かる書類を保存する
経費に関する証拠書類には、たとえば次のようなものがあります。
- 領収書
- レシート
- 請求書
- 納品書
- クレジットカードの利用明細
- 銀行の取引記録
領収書がない場合でも、別の資料から取引内容を確認できるケースがあります。
重要なのは、いつ・どこに・いくら支払い、何のために使ったのか確認できるようにしておくことです。
書類には保存期間がある
帳簿や領収書などには、税法上の保存期間が定められています。
保存する書類の種類や青色申告・白色申告などによって期間が異なるため、自分に必要な保存期間を確認しましょう。
「確定申告が終わったから不要」と判断して処分しないよう注意が必要です。
電子データで受け取った書類にも注意する
メールで受け取った請求書やWebサイトからダウンロードした領収書など、電子的に受け取った取引情報については、電子帳簿保存法に対応した保存が必要になります。
紙に印刷しておくだけではなく、電子データとして適切に保存することが必要なケースがあるため注意しましょう。
日頃から領収書や請求書を整理しておけば、確定申告の時期になって慌てて一年分を探す手間も減らせます。
10. 個人事業主が経費を管理するときのポイントは?
個人事業主は、自分で売上や経費を記録し、確定申告に備える必要があります。
経費の管理を後回しにすると、確定申告の時期に領収書や取引履歴をまとめて確認することになり、作業が増えてしまいます。
事業を始めた段階から、できるだけシンプルに管理できる仕組みを作っておくことが大切です。
事業用とプライベートのお金を分ける
個人事業主は、事業用とプライベート用の銀行口座やクレジットカードを分けておくと管理しやすくなります。
仕事に関する入出金をまとめておけば、帳簿付けの際にも事業上の取引を確認しやすくなります。
必ずしも屋号付き口座である必要はなく、事業専用として管理することがポイントです。
領収書や請求書を日頃から整理する
経費を支払ったら、領収書やレシート、請求書などを保存します。
また、飲食代や交通費など、書類だけでは事業との関係が分かりにくいものについては、利用目的や取引先なども記録しておくとよいでしょう。
電子データで受け取った請求書や領収書についても、適切な方法で保存します。
会計ソフトを活用する方法もある
取引件数が増えてきた場合は、会計ソフトを利用する方法もあります。
銀行口座やクレジットカードと連携できるサービスを利用すれば、日々の取引を記録する負担を減らせる場合があります。
「経費にできるか」だけを基準に支出しない
経費にすると所得を計算する際に差し引けますが、支払ったお金そのものが戻ってくるわけではありません。
「経費になるから買う」のではなく、その支出が本当に事業に必要なのかを考えることも重要です。
また、経費になるか判断が難しい支出や金額の大きな取引については、税務署や税理士などへ確認するとよいでしょう。
まとめ

個人事業主は、事業を行うために必要となった費用を経費として計上できます。
パソコンや通信費、交通費、オフィスの利用料などさまざまな費用が対象になる可能性がありますが、支払ったものなら何でも経費にできるわけではありません。
経費になるか迷ったときは、「その支出が事業に必要だったことを説明できるか」を基準に考えましょう。
また、自宅の家賃やスマートフォン代、インターネット代、自家用車の費用など、仕事とプライベートの両方で使用しているものは、事業で使用した部分を合理的な基準で家事按分する必要があります。
個人事業主が経費を管理するときは、次のようなポイントを意識しましょう。
- 事業とプライベートの支出を分ける
- 売上や経費を日頃から帳簿へ記録する
- 領収書やレシート、請求書を保存する
- 事業との関係が分かりにくい支出は目的も記録する
- 電子データで受け取った書類は適切な方法で保存する
- 判断に迷う支出は税務署や税理士などへ確認する
自宅で仕事をする場合は家賃や通信費などを経費にできるケースがある一方、自宅とは別にバーチャルオフィスやコワーキングスペースを事業目的で利用している場合、その利用料金も経費にできる場合があります。
ただし、経費にできるからといって支払った金額がそのまま戻ってくるわけではありません。
節税だけを目的に支出を増やすのではなく、事業に本当に必要なものを購入し、適切に記録することが大切です。
経費の基本的な考え方を理解し、事業用のお金とプライベートのお金をできるだけ分けて管理しておけば、日々の帳簿付けや確定申告も進めやすくなるでしょう。
参考