個人事業主として開業するとき、最初に悩みやすいのが「どこを事業の拠点にするか」という問題です。
「賃貸マンションの住所を開業届に書いても大丈夫?」
「自宅住所をWebサイトや名刺に載せたくない」
「ネットショップを始めると住所を公開しなければならない?」
など、自宅での開業を検討している方には住所に関するさまざまな疑問があるでしょう。
個人事業主は、必ずしも専用のオフィスや店舗を借りなければ開業できないわけではありません。仕事内容によっては、自宅を拠点として事業を始めることも可能です。
特に、Web制作やコンサルティング、ライター、オンラインサービスなど、パソコンを中心に仕事ができる業種であれば、自宅で開業することで初期費用や毎月の固定費を抑えやすくなります。
一方で、「自宅で仕事ができること」と「自宅住所を事業用住所として問題なく利用できること」は分けて考える必要があります。
賃貸住宅の場合は契約内容や管理規約を確認する必要があり、事業を始めると開業届や請求書、Webサイト、ネットショップなど、住所を記載・公開する場面も出てきます。
また、来客や郵便物が増えれば、生活拠点である自宅と仕事を分けたくなることもあるでしょう。
この記事では、個人事業主が自宅で開業できるのかをはじめ、賃貸住宅を仕事場として利用するときの注意点、自宅住所を事業に利用する場合のデメリット、自宅以外の住所を利用する方法について分かりやすく解説します。
これから個人事業主として開業する方はもちろん、すでに自宅で仕事をしていて「このまま自宅住所を使い続けて大丈夫?」と気になっている方も参考にしてください。
個人事業主は自宅で開業できる?

1. 個人事業主は自宅を事業所にできますか?
個人事業主は、自宅を事業所として開業することができます。
個人事業主になるために、必ず専用の事務所や店舗を用意しなければならないわけではありません。
自宅で仕事を完結できる事業であれば、自宅を生活拠点としながら事業の拠点として利用することも可能です。
ただし、賃貸住宅やマンションの場合は、賃貸借契約や管理規約などによって事業利用が制限されていることがあります。
自宅で開業しやすい仕事もある
個人事業主の仕事内容によっては、専用のオフィスを持たなくても事業を始められます。
たとえば、
- Webデザイナー
- プログラマー
- ライター
- イラストレーター
- 動画編集
- コンサルタント
- オンライン講師
- EC・ネットショップ運営
- 各種オンラインサービス
など、パソコンやインターネットを中心に仕事ができる事業です。
顧客が日常的に訪問せず、大型の設備や在庫なども必要なければ、自宅を拠点にすることで開業時の負担を抑えやすくなります。
一方、店舗への来客を前提とする事業や、大型設備を使用する事業などでは、自宅での開業が適さない場合があります。
また、許認可が必要な業種では、営業所や事務所について個別の要件が定められていることもあるため注意が必要です。
持ち家なら自由に事業利用できるとは限らない
自分が所有している戸建住宅であれば、賃貸住宅のように貸主との賃貸借契約を確認する必要はありません。
ただし、持ち家だからといって、どのような事業でも無条件に行えるとは限りません。
たとえば、
- マンションの管理規約
- 用途地域などの法令上の制限
- 事業に必要な許認可
- 建物の用途
- 近隣への騒音や人の出入り
などを確認する必要が生じる場合があります。
特に分譲マンションでは、専有部分について「住居専用」とする管理規約が設けられていることがあります。
自宅を所有している場合でも、事業内容に応じて必要なルールを確認しましょう。
賃貸住宅では賃貸借契約を確認する
賃貸マンションやアパートで開業する場合に特に確認したいのが、賃貸借契約です。
物件によっては、
- 居住用に限定されている
- 事務所利用を禁止している
- 不特定多数の人が出入りする事業を禁止している
- 看板や表札の設置を制限している
といった条件が定められている場合があります。
自宅でパソコンを使って仕事をすることと、その住所を対外的な事業所として利用することでは、貸主や管理会社の判断が異なる可能性もあります。
「ほとんど自宅で仕事をするだけだから大丈夫だろう」と自己判断せず、契約内容を確認することが大切です。
自宅住所を事業で使う場面は意外と多い
自宅を事業所として開業すると、その住所を仕事で利用する場面が出てきます。
たとえば、
- 開業時などの税務上の手続き
- 取引先との契約
- 請求書などの書類
- 事業用の銀行口座や各種サービスの申込み
- Webサイト
- 名刺
- ネットショップ
などです。
ただし、すべての場面で同じ住所を一般公開しなければならないという意味ではありません。
住所の記載が必要なのか、一般公開されるのか、別の住所を利用できるのかは、それぞれの制度やサービスによって異なります。
この違いは、自宅開業を考えるうえで重要なポイントです。
自宅で開業するメリット
自宅を事業拠点にすれば、新しくオフィスを契約する必要がないため、開業時のコストを抑えやすくなります。
また、
- オフィスの家賃を抑えられる
- 通勤する必要がない
- 開業準備を比較的シンプルにできる
- 小規模な事業から始めやすい
- 事業が軌道に乗ってからオフィスを検討できる
といったメリットもあります。
初めから大きな固定費を負担せず、必要最低限の環境で事業をスタートできるのは自宅開業の大きな特徴です。
自宅で開業するなら住所の使い方まで考えておく
自宅で仕事ができるかどうかだけでなく、自宅住所をどこまで事業に利用するのかも開業前に考えておきましょう。
特に、
- 自宅住所をインターネットに公開したくない
- 取引先へ生活拠点を知られたくない
- 仕事の郵便物と私物を分けたい
- 自宅へ取引先や営業担当者が訪問するのを避けたい
- 引っ越したときの住所変更を減らしたい
という方は、事業用住所を自宅とは別に用意する方法も検討できます。
自宅で仕事をしながら、事業用の住所だけ別の場所にすることも選択肢の一つです。
「自宅で働く場所」と「事業で使用する住所」は必ずしも同じである必要はありません。
個人事業主として自宅開業を考える場合は、仕事内容だけでなく、賃貸借契約や管理規約、住所の公開範囲などまで確認しておくことが大切です。
2. 賃貸マンションやアパートでも個人事業主として開業できますか?
賃貸マンションやアパートに住んでいる場合でも、個人事業主として開業すること自体は可能です。
ただし、その賃貸物件を事業所として利用できるかどうかは、賃貸借契約や管理規約などによって異なります。
特に「居住用」として契約している物件では、事務所利用や店舗としての営業などが制限されている場合があります。
個人事業主として開業できることと、現在住んでいる賃貸住宅を自由に事業利用できることは別の問題として考えましょう。
まず賃貸借契約の「使用目的」を確認する
賃貸住宅で開業するときは、現在の賃貸借契約書を確認してみましょう。
確認したいのは、物件の使用目的や禁止事項です。
たとえば、
- 使用目的が「居住用」に限定されている
- 事務所・店舗としての使用を禁止している
- 営業行為を禁止している
- 不特定多数の人の出入りを制限している
- 看板や広告物の設置を禁止している
- 法人や屋号などの表示を制限している
といったルールが設けられていることがあります。
契約内容が分からない場合は、貸主や管理会社へ確認するとよいでしょう。
自宅でパソコンを使って仕事をするだけならどうなる?
自宅で仕事をする個人事業主といっても、事業の形態はさまざまです。
たとえばWebデザイナーやプログラマー、ライターなどが、自宅のパソコンを使って一人で仕事をする場合、店舗のように顧客が頻繁に訪問するわけではありません。
一方、
- 顧客を自宅へ招く
- 商品を大量に保管する
- 商品を自宅から頻繁に発送する
- 従業員が出入りする
- 看板を設置する
- 大きな音や振動が発生する
といった事業では、住宅としての通常利用とは状況が大きく異なります。
どこからが契約上の「事業利用」に該当するかは、契約内容や貸主・管理会社の判断によっても異なるため、自己判断は避けましょう。
開業届に住所を書けることと賃貸契約上利用できることは別
ここは特に混同しやすいポイントです。
税務上の手続きで自宅住所を記載できることと、賃貸借契約上、その物件を事業所として利用することが認められているかは別問題です。
税務上の届出が受理されたからといって、貸主から事務所利用の許可を得たことになるわけではありません。
そのため、「開業届に自宅住所を書けたから、この物件は事務所として使って大丈夫」と判断しないようにしましょう。
賃貸住宅を事業に利用する場合は、税務上の手続きとは別に賃貸借契約を確認する必要があります。
マンションでは管理規約も確認する
マンションの場合は、賃貸借契約だけでなく建物全体の管理規約などにも注意が必要です。
貸主が事業利用を認めていたとしても、マンションの管理規約で住居以外の用途が制限されている可能性があります。
特に、
- 来客が頻繁にある
- 共用部分を顧客が利用する
- 建物内に看板を掲示する
- 商品や荷物の搬出入が多い
- 他の居住者へ影響が出る
といった事業では、トラブルにつながる可能性があります。
集合住宅では、自分の部屋だけでなく他の居住者への影響も考えて事業を行うことが大切です。
無断で事務所利用すると契約上の問題になる可能性がある
賃貸借契約で事務所利用が禁止されているにもかかわらず、無断で物件を事業所として利用すると、契約違反を指摘される可能性があります。
「個人事業主だから会社ではない」
という理由だけで判断することはできません。
個人事業主であっても、物件の使用方法が契約条件に反していれば問題になる可能性があります。
特にWebサイトやGoogleマップなどへ自宅を事業所として掲載すると、貸主や管理会社だけでなく、取引先や顧客などにもその住所が事業拠点として認識されやすくなります。
事務所利用可能な物件を選ぶ方法もある
これから引っ越しと同時に開業するのであれば、最初から事務所利用が認められている物件を探す方法もあります。
たとえば、
- SOHO利用可能
- 事務所利用相談可能
- 店舗・事務所利用可能
などの条件が付いた物件です。
ただし、「SOHO可」であっても、来客や法人登記、看板の設置などについて個別の条件が設けられている場合があります。
物件を契約する前に、自分が予定している事業内容を伝え、どこまで利用できるのか確認しましょう。
自宅では仕事をしたいけれど住所は使いたくない場合もある
賃貸住宅で個人事業を始める場合、「仕事自体は自宅でできるけれど、自宅住所を事業用に使うのは避けたい」というケースもあります。
理由としては、
- 賃貸借契約上、事務所としての住所利用が難しい
- 自宅住所をWebサイトなどで公開したくない
- 仕事用の郵便物を自宅と分けたい
- 引っ越すたびに事業用住所を変更したくない
などが考えられます。
このような場合は、実際の作業は自宅で行いながら、事業用住所については別の方法を検討することもできます。
ただし、利用する住所によって、税務上の届出、許認可、Webサイトへの表示などの取り扱いが異なることがあります。
まずは「仕事をする場所」と「事業で使用・公開する住所」を分けて考えてみるとよいでしょう。
3. 個人事業主の開業届には自宅住所を書く必要がありますか?
個人事業主が開業する際の税務上の手続きでは、事業を行う場所や納税地などの住所を記載する場面があります。
自宅を拠点として事業を行う場合は、自宅住所を使用するケースが一般的ですが、必ずしも「仕事をする場所・事業用住所・納税地」のすべてを同じ住所として考える必要はありません。
どの住所を記載するのかは、それぞれの住所がどのような役割を持つのかを整理して考えることが大切です。
個人事業主には「納税地」という考え方がある
個人事業主の税務手続きを考えるうえで押さえておきたいのが「納税地」です。
所得税の納税地は、原則として住所地となります。
そのため、自宅で生活しながら個人事業を行っている場合は、自宅住所が納税地となるケースが一般的です。
一方、住所地以外に事業所などがある場合には、一定の手続きによって事業所等の所在地を納税地とすることもできます。
つまり、個人事業主だからといって「事業に関係する住所はすべて自宅住所でなければならない」というわけではありません。
納税地と事業所の所在地は別に考えられる
個人事業主の場合、
- 実際に生活している自宅
- 税務上の納税地
- 仕事をしている場所
- 事業用として利用している住所
が必ずしもすべて一致するとは限りません。
たとえば、自宅を納税地としながら、別に借りた事務所で仕事をしているケースもあります。
反対に、自宅で仕事をしながら、郵便物の受取やWebサイトなどへの掲載に別の事業用住所を利用するケースも考えられます。
ただし、用途によって利用できる住所の条件は異なります。
税務上の住所として使えるか、Webサイトへ掲載できるか、許認可上の事業所として認められるかなどは、それぞれ別に確認する必要があります。
自宅住所を税務署へ届け出ることと一般公開は別
と心配する方もいるでしょう。
税務上の手続きで税務署へ自宅住所を届け出ることと、その住所を自社Webサイトなどで一般公開することは別です。
税務署へ住所を届け出たからといって、それだけで自宅住所をWebサイトや名刺などへ掲載しなければならないわけではありません。
一方で、事業を始めると、
- Webサイト
- ネットショップ
- 契約書
- 請求書
- 名刺
- 各種サービスへの登録
など、別の理由で住所の記載を求められることがあります。
それぞれについて、住所の記載が必要なのか、一般公開されるのかを確認しましょう。
バーチャルオフィスを利用すればすべての住所を置き換えられるわけではない
自宅住所を公開したくない場合、バーチャルオフィスなどの事業用住所を利用する方法があります。
ただし、バーチャルオフィスを契約すれば、
- 納税地
- 開業に関する税務上の届出
- Webサイト
- ネットショップ
- 銀行口座
- 許認可
- 各種サービス
の住所をすべて無条件で同じ住所へ変更できるわけではありません。
制度やサービスごとに住所の要件が異なるため、「何のために住所が必要なのか」を確認して使い分けることが重要です。
開業前に住所の役割を整理しておく
これから個人事業主として開業する方は、住所について次のように整理してみると分かりやすくなります。
- 生活する住所はどこか
- 実際に仕事をする場所はどこか
- 税務上の納税地はどこになるか
- 取引先へ知らせる住所はどこにするか
- Webサイトなどで公開する住所はどうするか
- 郵便物をどこで受け取るか
- 許認可が必要な場合の事業所はどこにするか
特に自宅住所を公開したくない方は、開業してから考えるのではなく、事業を始める段階で住所の使い方を決めておくとスムーズです。
個人事業主の住所は「開業届に何を書くか」だけで考えるのではなく、税務・仕事場所・対外的な表示・郵便物など、それぞれの用途を分けて整理することが大切です。
自宅住所を事業で公開するときの注意点

4. 個人事業主は自宅住所をWebサイトや名刺に公開する必要がありますか?
個人事業主だからといって、すべてのWebサイトや名刺に自宅住所を必ず公開しなければならないわけではありません。
特にネットショップやオンラインで有料サービスを販売する場合は、特定商取引法に基づく表示について確認が必要です。
一方、名刺や一般的な事業紹介サイトなどについては、それぞれの用途を考えながら住所を掲載するか判断することになります。
名刺に住所を載せることは必須ではない
個人事業主の名刺には、
- 氏名
- 屋号
- 肩書き
- 電話番号
- メールアドレス
- WebサイトのURL
- SNSアカウント
- 住所
などを掲載できます。
ただし、一般的な名刺に住所を必ず記載しなければならないという決まりがあるわけではありません。
自宅を事業拠点としている場合には、プライバシーを考えて住所を掲載せず、電話番号やメールアドレス、Webサイトなどを連絡先として掲載する方法もあります。
取引先との契約などで住所が必要になった場合には、必要な相手へ個別に伝えることもできます。
一般的なWebサイトでも住所掲載が必須とは限らない
個人事業主がポートフォリオサイトや事業紹介サイトを運営する場合も、すべてのケースで自宅住所を掲載しなければならないわけではありません。
たとえば、
- 事業内容
- 実績
- プロフィール
- 問い合わせフォーム
- メールアドレス
などを掲載し、問い合わせをオンラインで受け付けることもできます。
ただし、Webサイト上で商品や有料サービスの販売・申込みを受け付ける場合には、別途確認が必要です。
単なる事業紹介サイトと、インターネット上で取引を行うサイトでは必要となる表示が異なる可能性があります。
ネットショップなどでは特定商取引法に注意する
個人事業主が通信販売を行う場合は、特定商取引法に基づく表示を確認する必要があります。
通信販売では、販売業者について一定の事項を表示することが求められており、事業者の住所もその一つです。
そのため、
「自宅で営業しているから住所を非公開にできる」
と一律に考えることはできません。
ただし、一定の要件を満たす場合には、請求があれば遅滞なく提供する旨を表示することで、一部事項の表示を省略できる場合があります。
実際にネットショップを運営するときは、販売方法や利用するECサービスだけで判断せず、消費者庁が公表している特定商取引法のルールを確認しましょう。
自宅住所を公開すると誰でも確認できる可能性がある
Webサイトへ住所を掲載すると、基本的には不特定多数の人が確認できる状態になります。
検索エンジンにページが登録されれば、事業名や氏名などから検索した際に住所が表示される可能性もあります。
また、一度インターネット上に公開した情報は、ページから削除したあとも検索結果や外部サービスなどに一定期間残ることがあります。
自宅住所を公開する前には、
- 顧客に自宅住所を知られても問題ないか
- 営業担当者などが訪問する可能性はないか
- 家族と生活している住所ではないか
- 将来的に住所を変更する可能性があるか
- 事業情報と生活拠点を分けたいか
なども考えておきましょう。
自宅住所を公開したくない場合は事業用住所を分ける方法もある
仕事自体は自宅でできても、自宅住所をインターネット上へ公開することには抵抗がある方もいるでしょう。
その場合は、仕事をする場所とは別に事業用住所を用意する方法があります。
たとえば、
- 賃貸オフィス
- レンタルオフィス
- シェアオフィス
- バーチャルオフィス
などが選択肢になります。
特にバーチャルオフィスは、専用の執務スペースを借りずに事業用住所を利用できるため、自宅やリモートを中心に働く個人事業主が住所を分けたい場合にも利用できます。
ただし、契約した住所をどの用途に利用できるかはサービスによって異なります。
Webサイトへの掲載、郵便物の受取、各種届出、ネットショップでの表示など、自分が利用したい用途に対応しているかを事前に確認しましょう。
「公開する住所」と「実際に仕事をする場所」は分けて考える
個人事業主の住所を考えるときに重要なのは、すべてを一つの住所にまとめなければならないと思い込まないことです。
たとえば、
- 普段仕事をする場所 → 自宅
- 税務上の納税地 → 自宅
- Webサイトに掲載する事業用住所 → 別の住所
- 郵便物を受け取る住所 → 事業用住所
という形になることもあります。
ただし、法律上の表示や許認可、金融機関・各種サービスへの登録などでは、それぞれ住所に関する条件が異なります。
「自宅住所を公開したくないから、とりあえず別の住所を書けばいい」というわけではありません。
何のために住所を記載するのかを確認し、その用途で利用できる住所を選ぶことが大切です。
5. 個人事業主が自宅住所を公開するデメリットはありますか?
個人事業主が自宅住所を事業用として公開すると、オフィスを新たに借りる必要がない一方で、プライバシーや来客、郵便物などの面でデメリットが生じることがあります。
特にWebサイトやネットショップなど、インターネット上へ自宅住所を掲載する場合は注意が必要です。
一度公開した住所は取引先だけでなく不特定多数の人が確認できる可能性があるため、「事業に使える住所か」だけでなく「公開しても問題ない住所か」という視点でも考えましょう。
自宅住所を不特定多数の人に知られる可能性がある
Webサイトなどに自宅住所を掲載した場合、そのページを閲覧できる人であれば住所を確認できます。
事業内容によっては、
- 顧客
- 取引先
- 営業担当者
- 求職者
- その他Webサイトを閲覧した人
などに、自宅の所在地を知られる可能性があります。
一人暮らしの場合はもちろん、家族と暮らしている場合には、自分だけの問題ではなく生活拠点そのものを公開することになります。
自宅住所を掲載する必要がある場面では、公開範囲や別の住所を利用できるかを事前に確認しておくとよいでしょう。
突然の訪問につながる可能性がある
Webサイトや名刺などに住所を掲載すると、それを見た人が実際に訪問する可能性もあります。
たとえば、
- 取引先が書類を届けに来る
- 顧客が問い合わせのために訪問する
- 営業担当者が訪問する
- 求職者が会社所在地だと思って訪れる
- 配送業者が事業用の荷物を届ける
といったケースです。
本人としては単に「事業用住所として掲載しているだけ」のつもりでも、相手から見れば会社や事務所の所在地として認識されることがあります。
特に来客を想定していない事業では、住所を公開するときに訪問の可能性まで考えておく必要があります。
仕事とプライベートの郵便物が混在しやすい
自宅を事業用住所にすると、仕事関係の郵便物も自宅へ届くようになります。
開業当初は少なくても、事業を続けていくうちに、
- 取引先からの書類
- 請求関係の郵便物
- 金融機関からの郵便物
- 行政機関からの書類
- 営業DM
- サービス事業者からの案内
などが増える可能性があります。
私用の郵便物と事業用の郵便物が同じポストへ届くため、重要な書類を見落とさないよう管理する必要があります。
家族と同居している場合は、家族宛ての郵便物も含めて管理することになるため、仕事用とプライベート用を分けたいと感じることもあるでしょう。
引っ越すと事業関係の住所変更が必要になる
自宅住所を事業のさまざまな場面で利用していると、引っ越したときに変更する箇所も増えます。
たとえば、
- 税務上必要となる手続き
- 取引先への連絡
- 契約情報
- Webサイト
- 名刺やパンフレット
- 請求書などの書式
- 銀行や決済サービス
- ECサービスなど各種アカウント
といった情報を確認し、必要に応じて変更しなければなりません。
どの手続きが必要になるかは利用している制度やサービスによって異なりますが、自宅住所を広く事業に利用するほど変更箇所も多くなりやすいでしょう。
検索すると自宅住所が見つかる状態になることもある
インターネット上に住所を掲載すると、検索エンジンなどを通じて住所を見つけられる可能性があります。
たとえば、屋号や事業者名を検索したときに、自社Webサイトの会社概要や特定商取引法に基づく表記などが検索結果に表示されるケースです。
また、自分のWebサイト以外にも事業者情報が掲載されれば、複数のWebサービスに住所情報が広がる可能性があります。
将来的に自宅住所の掲載をやめても、すでに外部サイトなどへ情報が広がっている場合には、すべてをすぐに削除できるとは限りません。
そのため、自宅住所をインターネットへ掲載するかどうかは、最初に公開するときに慎重に判断することが重要です。
事業が成長すると自宅住所では不便になる場合もある
開業当初は一人で事業を行っていても、事業が成長すると必要な環境が変わることがあります。
たとえば、
- 取引先との対面商談が増える
- 郵便物が増える
- 商品や資料の保管場所が必要になる
- 従業員や外部スタッフが増える
- 法人成りを検討する
- 自宅と仕事を明確に分けたくなる
といった変化です。
その段階で事業用住所を変更することもできますが、Webサイトや取引先などへすでに自宅住所を広く案内していると、切り替えに手間がかかる場合があります。
これから事業を長く続ける予定であれば、現在だけでなく将来の事業規模も少し考えて住所を決めておくとよいでしょう。
自宅住所を使うこと自体が悪いわけではない
もちろん、個人事業主が自宅住所を利用すること自体に問題があるわけではありません。
自宅住所を利用すれば、新たなオフィス費用をかけずに事業を始めやすく、住所管理もシンプルです。
重要なのは、
- 自宅住所を公開しても問題ないか
- 来客が発生しても対応できるか
- 事業用郵便物を管理できるか
- 賃貸借契約などに問題がないか
- 将来的に住所を変更する可能性があるか
を考えたうえで選択することです。
自宅住所を事業に使うメリットとデメリットを比較し、公開したくない事情がある場合には、自宅以外に事業用住所を用意する方法も含めて検討するとよいでしょう。
ネットショップ・通販で自宅開業するときの住所

6. 個人事業主が自宅でネットショップを始める場合、住所公開は必要ですか?
個人事業主が自宅でネットショップを運営することはできます。
ただし、インターネット上で商品やサービスを販売する「通信販売」に該当する場合は、特定商取引法に基づき、販売業者の氏名や住所、電話番号など一定の情報を表示する必要があります。
そのため、自宅を事業拠点としてネットショップを運営する場合、自宅住所をそのまま販売業者の住所として表示することになる可能性があります。
一方、一定の条件を満たす場合には一部の表示事項を省略できる仕組みもあるため、「ネットショップを始めたら必ず自宅住所を常時公開しなければならない」と一律に考える必要はありません。
ネットショップでは「特定商取引法に基づく表記」を確認する
ネットショップを利用していると、「特定商取引法に基づく表記」というページを見かけることがあります。
通信販売では、消費者が誰と取引しているのか確認できるよう、販売業者について一定の情報を表示することが求められています。
個人事業主の場合も対象となり得ます。
表示事項には、たとえば次のような情報があります。
- 販売価格
- 送料など商品代金以外に必要となる費用
- 支払方法・支払時期
- 商品の引渡時期
- 返品・契約解除に関する事項
- 販売業者の氏名または名称
- 住所
- 電話番号
具体的に何を表示する必要があるかは販売方法などによって異なるため、ネットショップを開設するときは消費者庁の最新情報を確認しましょう。
一定の条件を満たせば住所などの表示を省略できる場合がある
特定商取引法では、一定の事項について、消費者から請求があった場合に遅滞なく提供できるよう必要な措置を講じ、その旨を広告に表示している場合には、表示を省略できることがあります。
そのため、自宅住所をインターネット上へ常時掲載したくない個人事業主でも、販売方法や表示方法によって対応できる可能性があります。
ただし、
というものではありません。
省略するための条件を満たしている必要があるため、自分のネットショップがどのような対応を取れるのか確認しましょう。
利用するECサービスにも独自のルールがある
ネットショップを開設する場合、ECモールやネットショップ作成サービスを利用する方も多いでしょう。
その場合は法律上のルールだけでなく、利用するサービス側の規約や登録条件も確認する必要があります。
たとえば、
- 登録時に必要な住所
- 購入者へ表示される住所
- 本人確認に利用する住所
- 返品先として利用する住所
- バーチャルオフィスなどを登録できるか
といった条件は、利用するサービスによって異なる場合があります。
「他のネットショップで使えている住所だから、自分が利用するサービスでも使える」とは限りません。
返品先や問い合わせ先についても考えておく
ネットショップでは、商品を発送するだけでなく、購入後の対応も発生します。
たとえば、
- 商品の返品
- 交換
- 不良品への対応
- 購入者からの問い合わせ
- 郵送による書類のやり取り
などです。
自宅住所を販売者情報として利用している場合、購入者から商品が直接返送される可能性もあります。
反対に、事業用住所を別に用意する場合でも、その住所で返品商品や宅配便まで受け取れるとは限りません。
特にバーチャルオフィスでは、郵便物は受け取れても、大型荷物や代引き、冷蔵・冷凍品など一部の荷物を受け取れない場合があります。
ネットショップで利用する住所を決めるときは、「表示できるか」だけでなく「実際の物流に対応できるか」まで考えることが重要です。
自宅住所をネット上に公開したくない場合は選択肢を比較する
ネットショップは自宅で運営しやすい事業ですが、自宅住所の公開が気になる方もいるでしょう。
その場合には、
- 特定商取引法上の表示を省略できる条件を確認する
- 利用するECサービスの住所非公開機能などを確認する
- 事業用の住所を別に用意する
- バーチャルオフィスを利用する
といった方法を検討できます。
ただし、どの方法を選んでも、法律上必要な情報を虚偽の住所に置き換えてよいわけではありません。
また、バーチャルオフィスを利用する場合も、ネットショップでの住所利用が契約上認められているか、利用するECサービスの条件を満たしているかを確認する必要があります。
ネットショップでは住所の「公開」と「利用」を分けて考える
ネットショップを始める際は、
- 事業者情報として登録する住所
- 購入者へ公開される住所
- 郵便物を受け取る住所
- 商品を発送する場所
- 返品を受け付ける場所
が必ずしも同じ役割とは限りません。
特に自宅住所を公開したくない場合は、それぞれを整理すると必要な対策が見えてきます。
「ネットショップを自宅で運営する=必ず自宅住所を常時公開する」と単純に考えるのではなく、特定商取引法と利用するECサービス双方のルールを確認したうえで住所の使い方を決めましょう。
自宅開業で増える郵便物・荷物への対応
7. 自宅で開業すると仕事の郵便物や荷物はどうなりますか?
個人事業主が自宅住所を事業用として利用すると、取引先や金融機関、行政機関などからの事業用郵便物も自宅へ届くようになります。
開業直後はそれほど多くなくても、取引先や利用サービスが増えるにつれて、仕事関係の郵便物が増えることもあります。
自宅で開業する場合は、住所をどこに掲載するかだけでなく、届いた郵便物や荷物をどのように受け取り、管理するかまで考えておくことが大切です。
仕事関係のさまざまな郵便物が届く可能性がある
事業を始めると、個人宛ての郵便物とは別に、屋号や事業者宛ての郵便物を受け取る機会が出てきます。
たとえば、
- 取引先からの契約書や書類
- 金融機関からの郵便物
- 税務署など行政機関からの書類
- 利用しているサービスからの案内
- 請求書や領収書
- 営業案内やダイレクトメール
- 商品やサンプル
などです。
どのような郵便物が届くかは事業内容によって異なります。
重要な書類が含まれることもあるため、プライベートの郵便物に紛れて確認が遅れないようにしましょう。
屋号宛ての郵便物を受け取る場合は注意する
個人事業主は、事業上の名称として屋号を使用することがあります。
Webサイトや請求書などで屋号を使用していると、取引先から、
「○○ショップ ○○様」
など、屋号を含めた宛名で郵便物が送られてくることもあります。
自宅で受け取る場合は、郵便物が正しく届くよう、差出人に宛名の書き方を案内しておくと安心です。
また、集合住宅では部屋番号の記載漏れなどによって配達に支障が出る可能性もあるため、郵送先を伝える際は必要な住所情報を正確に伝えましょう。
仕事とプライベートの郵便物が混ざりやすい
自宅住所を事業にも使用すると、同じ郵便受けに仕事とプライベート双方の郵便物が届きます。
特に家族と同居している場合は、
- 自分の私物
- 家族宛ての郵便物
- 事業用の郵便物
- 営業DM
などが一緒になる可能性があります。
重要な契約書や行政機関からの書類などを見落とさないよう、届いた郵便物を確認するルールを決めておくとよいでしょう。
郵便物だけでなく宅配便が増えることもある
事業内容によっては、郵便物より宅配便の受取が多くなることもあります。
たとえばネットショップを運営している場合には、
- 商品
- 梱包資材
- 返品商品
- サンプル
- 仕入れ商品
などが自宅へ届くことがあります。
荷物が増えると、受取のために在宅する必要が生じたり、自宅内に保管スペースが必要になったりすることもあります。
特に大量の商品を扱う事業では、住所だけでなく物流や保管場所まで含めて、自宅での運営が適しているか検討しましょう。
取引先が書類や荷物を直接持ってくる可能性もある
取引先に自宅住所を事業所として案内している場合、郵送ではなく直接書類などを届けに来る可能性もあります。
また、Webサイトに住所を掲載していれば、取引先以外の営業担当者などが訪問することも考えられます。
本人としては「郵便物を受け取るための住所」と考えていても、相手には会社や事務所の所在地として認識されることがあります。
自宅への来客を避けたい場合は、住所をどこまで公開するのかについても検討しておきましょう。
事業用郵便物だけ別の住所で受け取る方法もある
自宅で仕事を続けながら、事業用の郵便物だけ別の住所で受け取る方法もあります。
たとえば、郵便物の受取に対応したバーチャルオフィスを利用すれば、契約した事業用住所宛ての郵便物を受け取り、自宅などへ転送してもらえる場合があります。
サービスによっては、
- 郵便物の到着通知
- 郵便物の転送
- 店舗での受取
- 郵便物の写真通知
などに対応していることもあります。
自宅の郵便物と事業用郵便物を分けたい個人事業主にとっては、住所だけでなく郵便物管理の方法としても選択肢になります。
ただし、すべての郵便物や荷物を受け取れるとは限りません。
本人限定受取郵便や現金書留、代引き、大型荷物など、受取対象外となるものはサービスによって異なります。
郵便物の「受取可否」と「転送頻度」を確認する
事業用住所を別に用意する場合は、単に「郵便物を受け取れるか」だけでなく、その後どのように自分の手元へ届くのかも重要です。
確認したいポイントは、
- どの種類の郵便物を受け取れるか
- 宅配便にも対応しているか
- 到着時に通知されるか
- どのくらいの頻度で転送されるか
- 急ぎの郵便物を受け取る方法があるか
- 転送費用がどのくらいかかるか
- 店舗で直接受け取れるか
などです。
特に請求書や契約書、行政機関からの書類などを受け取る機会が多い場合は、転送頻度が自分の事業に合っているか確認しておきましょう。
自宅で開業する場合は、「住所を使えるか」だけでなく「そこへ届く事業用郵便物をどう管理するか」まで考えることで、開業後の手間を減らしやすくなります。
8. 自宅で開業すると取引先や顧客が訪問してくることはありますか?
個人事業主が自宅住所をWebサイトや名刺、契約書などに掲載している場合、取引先や顧客がその住所を「事業を行っている場所」と認識する可能性があります。
そのため、頻度は事業内容によって異なりますが、取引先や顧客、営業担当者などが自宅を訪問する可能性はあります。
特に自宅への来客を想定していない場合は、住所を公開する範囲や、来訪時の対応方法をあらかじめ考えておくことが大切です。
住所を掲載すると「訪問できる場所」と思われることがある
自宅住所を事業用として利用すると、さまざまな場所で住所を伝えることがあります。
たとえば、
- Webサイト
- 名刺
- 契約書
- 見積書・請求書
- ネットショップ
- 求人情報
- 各種事業者情報
などです。
住所を見た相手が、それを単なる連絡先ではなく「事務所の所在地」と考えることもあります。
「近くまで来たので挨拶したい」「書類を直接届けたい」といった理由で、事前連絡なしに訪問される可能性も考えておきましょう。
取引先以外の人が訪問する可能性もある
自宅住所を事業用として公開した場合、訪問する可能性があるのは取引先や顧客だけではありません。
たとえば、
- 法人・個人事業主向けサービスの営業担当者
- 配送業者
- 求職者
- 業務委託先
- 商品やサービスに関する問い合わせをしたい人
などが訪れる可能性もあります。
Webサイトなどインターネット上で住所を公開している場合は、すでに取引関係がある人だけに住所を知らせている状態とは異なります。
誰でも確認できる場所に住所を掲載するのであれば、想定外の訪問が発生する可能性も考えておく必要があります。
家族と暮らしている場合は特に注意する
自宅で家族と暮らしている場合は、自宅住所を事業用として公開する影響が自分だけにとどまりません。
自分が外出しているときに、
- 取引先が訪問する
- 営業担当者が訪問する
- 事業用の荷物が届く
- 家族が仕事関係の来客に対応する
といったことも考えられます。
仕事と家庭を明確に分けたい場合には、自宅を対外的な事業所として公開することが適しているか検討しておきましょう。
来客がある場合は賃貸借契約や管理規約にも注意する
賃貸マンションやアパートで事業を行っている場合は、来客によって別の問題が生じることもあります。
自宅で一人でパソコン作業をしているだけの場合と、顧客や取引先が頻繁に出入りする場合では、物件の利用状況が大きく異なります。
特に、
- 頻繁に顧客が訪問する
- 共用部分を来客が利用する
- 待合スペースが必要になる
- 商品の受け渡しを行う
- 営業時間を設定して顧客を受け入れる
といった場合は、居住用物件の利用条件に抵触しないか確認が必要です。
自宅への来客を予定している場合は、賃貸借契約や管理規約なども確認しましょう。
来訪を受け付けない場合は事前に案内しておく
自宅住所を事業に利用していても、顧客や取引先との打ち合わせをオンラインや別の場所で行うことはできます。
自宅への訪問を避けたい場合は、
- 打ち合わせはオンラインで行う
- 対面での打ち合わせは貸会議室などを利用する
- 来訪は事前予約制にする
- Webサイトに来訪についての案内を掲載する
などの方法があります。
Webサイトに住所を掲載する必要がある場合でも、「ご来訪の際は事前にお問い合わせください」などと案内しておけば、突然訪問される可能性を減らしやすくなります。
事業用住所と打ち合わせ場所を分ける方法もある
個人事業主だからといって、住所、作業場所、打ち合わせ場所をすべて自宅にまとめる必要はありません。
たとえば、
- 普段の仕事 → 自宅
- 事業用住所 → バーチャルオフィス
- 取引先との商談 → 貸会議室・コワーキングスペース
- オンライン会議 → 自宅
といった使い分けもできます。
会議室を備えたバーチャルオフィスであれば、事業用住所と対面での打ち合わせ場所を同じ施設にまとめられる場合もあります。
自宅へ取引先を招きたくない方は、契約前に会議室の有無や利用条件まで確認しておくとよいでしょう。
来客が多い事業なら自宅開業そのものを検討する
一方、毎日のように顧客が訪れる事業では、自宅を拠点にすること自体が適していない場合があります。
たとえば、
- 店頭で商品を販売する
- 顧客へ対面サービスを提供する
- 不特定多数の来客がある
- 商品の受け渡しを頻繁に行う
- 従業員やスタッフが出入りする
といった事業です。
このような場合は、自宅住所を公開するかどうかだけではなく、店舗や事務所など実際に顧客を受け入れられる場所が必要かを検討しましょう。
自宅開業では「自宅で仕事ができるか」だけでなく、「その住所を見た人が実際に訪問しても問題ないか」まで考えておくことが重要です。
9. 個人事業主が引っ越した場合、事業の住所変更は何が必要ですか?
個人事業主が引っ越した場合は、自宅の住所変更だけでなく、事業で利用している住所についても確認が必要です。
自宅住所を納税地や事業用住所として利用している場合、引っ越しによって税務上の住所やWebサイト、取引先への登録情報などを変更する必要が生じることがあります。
ただし、必要な手続きはすべての個人事業主で同じではありません。
自宅住所を「どこで・何のために使っているか」を洗い出して、必要なものから変更していくことが大切です。
まず税務上の住所変更が必要か確認する
自宅を納税地としている個人事業主が引っ越した場合は、所得税などの税務上の取り扱いを確認しましょう。
現在は、所得税・消費税について住所等の異動があった場合、確定申告書などに新しい住所を記載することで変更後の納税地を知らせる取り扱いがあります。
一方、住所地から事業所等へ納税地を変更する場合などには、別途届出が必要になるケースがあります。
以前の手続き方法をそのまま参考にするのではなく、引っ越し時点で国税庁が案内している最新の手続きを確認しましょう。
開業届をもう一度提出するとは限らない
「引っ越したら開業届を最初から出し直すの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
個人事業主が住所を変更したからといって、新たに事業を始めたことになるわけではありません。
そのため、単純な引っ越しを理由に、新規開業時とまったく同じ手続きを最初から行うとは限りません。
重要なのは、
- 納税地が変わったのか
- 事業所が変わったのか
- 事業内容にも変更があるのか
など、何が変わったのかを整理することです。
取引先や契約サービスの住所も変更する
税務上の手続きだけでなく、民間サービスや取引先へ登録している住所も確認しましょう。
たとえば、
- 取引先
- 金融機関
- クレジットカード
- 決済サービス
- 会計サービス
- EC・ネットショップサービス
- 通信サービス
- 保険
- 業界団体や各種会員サービス
などです。
登録している住所を変更しないままにすると、重要な郵便物が旧住所へ送られてしまう可能性があります。
特に金融機関や決済サービスなどでは、登録情報と本人確認情報との整合性が必要になることもあるため、各サービスの案内に従って変更しましょう。
Webサイトやネットショップの住所も忘れずに変更する
自宅住所をWebサイトなどで公開している場合は、掲載情報も更新する必要があります。
確認したいのは、
- Webサイトの事業者情報
- お問い合わせページ
- 特定商取引法に基づく表記
- プライバシーポリシーなどに記載した連絡先
- ネットショップ
- SNSのプロフィール
- 求人情報
- 外部の事業者情報ページ
などです。
自社サイトだけ変更して、ネットショップや外部サービスには以前の住所が残っているということもあります。
インターネット上で住所を広く公開している場合は、どこに掲載したかを整理しておくと変更時に確認しやすくなります。
名刺・請求書などの事業用書類も確認する
紙やPDFで使用している書類にも旧住所が残っていないか確認しましょう。
たとえば、
- 名刺
- 見積書
- 請求書
- 領収書
- 契約書のひな形
- パンフレット
- 会社・事業案内
- メール署名
などです。
特に請求書などのテンプレートは、一度作成するとそのまま使い続けてしまいがちです。
引っ越し後に旧住所の書類を取引先へ送ってしまわないよう、一通り確認しておきましょう。
郵便物が旧住所へ届かないようにする
事業用の郵便物を自宅で受け取っていた場合は、郵便物についても対策が必要です。
取引先などへ新住所を案内するとともに、必要に応じて郵便物の転送手続きも検討しましょう。
ただし、すべての郵便物や配送物が同じように転送されるとは限りません。
金融機関や各種サービスから送られる重要書類には、転送不要などの扱いが設定されることもあります。
住所変更そのものを後回しにせず、各サービスへ新しい住所を登録することが基本です。
許認可を受けている場合は個別の変更手続きも確認する
許認可や届出が必要な事業を行っている場合は、引っ越しによって別途手続きが必要になることがあります。
制度によっては、
- 営業所の所在地
- 事務所の所在地
- 設備
- 使用権限
- 管轄する行政機関
などが関係します。
新しい自宅へ引っ越したからといって、その住所をそのまま許認可上の事業所として利用できるとは限りません。
該当する事業を行っている場合は、所管する行政機関などへ必要な手続きを確認しましょう。
引っ越しが多いなら事業用住所を固定する方法もある
自宅住所を事業のさまざまな場面で利用していると、引っ越すたびに多くの変更作業が発生します。
特に、
- 転勤や住み替えの可能性がある
- 賃貸住宅に住んでいる
- Webサイトや名刺へ住所を掲載している
- 多くの取引先へ住所を知らせている
- 仕事と生活の住所を分けたい
という方は、自宅とは別に事業用住所を用意する方法もあります。
たとえばバーチャルオフィスの住所を継続して事業用に利用できれば、自宅を引っ越しても、対外的に使用する事業用住所を変更せずに済む場合があります。
もちろん、税務上の納税地や本人確認のための住所など、自宅の変更に伴って別途更新が必要な情報までなくなるわけではありません。
それでも、Webサイトや名刺、取引先への案内などに使用する住所を自宅と分けておけば、引っ越し時の変更箇所を減らせる可能性があります。
個人事業主が引っ越したときは「税務署に何を出すか」だけでなく、事業で自宅住所を利用している場所を一つずつ確認することが重要です。
自宅住所を使いたくない個人事業主の選択肢
10. 自宅住所を使いたくない個人事業主にはどんな選択肢がありますか?
個人事業主として自宅で仕事をしていても、自宅住所をそのまま事業用住所として利用したくない場合があります。
特に、
- 自宅住所をWebサイトで公開したくない
- 取引先に生活拠点を知られたくない
- 仕事とプライベートの郵便物を分けたい
- 自宅への突然の来客を避けたい
- 賃貸住宅の契約上、事業用住所として使いにくい
- 引っ越すたびに事業用住所を変更したくない
といった方は、自宅とは別に事業用住所を用意する方法を検討できます。
代表的な選択肢として、賃貸オフィス、レンタルオフィス・シェアオフィス、バーチャルオフィスなどがあります。
それぞれ費用や利用できる設備、住所の利用範囲が異なるため、「住所だけ必要なのか」「実際に仕事をする場所も必要なのか」を基準に考えると選びやすくなります。
賃貸オフィスを借りる
仕事専用の場所が必要な場合は、事務所として利用できる物件を借りる方法があります。
専用のオフィスを確保できるため、
- 毎日そこで仕事をする
- 従業員が勤務する
- 取引先との打ち合わせを行う
- 商品や資料を保管する
- 事業用の郵便物や荷物を受け取る
といった使い方がしやすくなります。
一方で、家賃だけでなく敷金・保証金、光熱費、通信費、設備費などが必要になる場合があります。
開業したばかりで事業規模が小さい場合には、固定費が大きな負担になる可能性もあります。
「住所だけ欲しい」という方には、必要以上のコストになることもあるでしょう。
レンタルオフィスを利用する
レンタルオフィスは、あらかじめ用意された個室などを利用できるサービスです。
一般的な賃貸オフィスと比べ、机や椅子、インターネット環境などが用意されている施設もあり、比較的スムーズに仕事を始められる場合があります。
サービスによっては、
- 事業用住所の利用
- 郵便物の受取
- 個室
- 会議室
- 受付
- Wi-Fiなどの設備
を利用できます。
自宅以外に日常的な作業スペースも必要な方に向いている選択肢です。
ただし、利用料金や住所利用の条件、個室の利用時間などは施設によって異なります。
シェアオフィスやコワーキングスペースを利用する
専用の個室までは必要ないものの、自宅以外で仕事をする場所が欲しい場合は、シェアオフィスやコワーキングスペースも選択肢になります。
複数の利用者が共用するワークスペースを利用する形式が一般的で、
- 自宅では集中しにくい
- 外出先でも仕事をしたい
- 打ち合わせスペースが欲しい
- 他の利用者との交流も重視したい
といった方にも利用されています。
ただし、すべてのコワーキングスペースで事業用住所を利用できるわけではありません。
住所利用や郵便物受取がオプションになっている場合もあるため、「仕事をする場所」と「事業用住所」の両方が必要ならサービス内容を確認しましょう。
バーチャルオフィスを利用する
実際の作業は自宅で行い、専用のオフィススペースは必要ないという方には、バーチャルオフィスも選択肢になります。
バーチャルオフィスは、実際の執務スペースを常時借りるのではなく、事業用の住所や郵便物受取などのサービスを利用する仕組みです。
サービスによっては、
- 事業用住所の利用
- 郵便物の受取・転送
- 郵便物の到着通知
- 電話転送
- 電話秘書代行
- 会議室
- コワーキングスペース
などを利用できます。
そのため、
仕事をする場所は自宅のままでいいけれど、対外的に使用する事業用住所だけ分けたいという個人事業主には利用しやすい方法です。
バーチャルオフィスなら何にでも住所を使えるわけではない
バーチャルオフィスを利用するときに注意したいのが、住所の利用範囲です。
事業用住所として契約していても、
- 税務上の手続き
- 金融機関
- ネットショップ
- 特定商取引法に基づく表示
- 各種Webサービス
- 許認可
- Googleビジネスプロフィール
などで、その住所を利用できるかどうかはそれぞれ異なります。
特に許認可では、独立した事務所や一定の設備などが必要になる場合があり、住所だけを利用するバーチャルオフィスでは要件を満たせないことがあります。
また、Googleビジネスプロフィールにも所在地について独自の要件があります。
「バーチャルオフィスを契約すれば、自宅住所を使う場面がすべてなくなる」と考えないことが重要です。
郵便物の受取方法も比較する
個人事業主が事業用住所を選ぶときは、住所そのものだけでなく、そこへ届いた郵便物をどう受け取るのかも確認しましょう。
特にバーチャルオフィスでは、
- 郵便物の転送頻度
- 転送にかかる料金
- 到着時の通知方法
- 店舗で直接受け取れるか
- 宅配便に対応しているか
- 受け取れない郵便物は何か
などがサービスによって異なります。
仕事関係の重要書類が多い方なら、月額料金だけで選ぶのではなく、郵便物が実際に自分の手元へ届くまでの流れを確認しておくことが大切です。
自分に必要な「場所」と「住所」を整理して選ぶ
どのサービスが適しているかは、個人事業主の働き方によって変わります。
たとえば、
- 専用の仕事場が毎日必要 → 賃貸オフィス・レンタルオフィス
- 共用の作業場所が欲しい → シェアオフィス・コワーキングスペース
- 普段は自宅で仕事をして住所だけ分けたい → バーチャルオフィス
- 顧客が日常的に訪問する → 店舗・事務所など実際に来客対応できる場所
といった考え方ができます。
料金だけを比較するのではなく、
- 普段どこで仕事をするのか
- 自宅住所をどこまで公開したくないのか
- 郵便物をどこで受け取るのか
- 取引先との対面打ち合わせがあるか
- 許認可が必要な事業か
- 将来的に従業員を雇う予定があるか
まで考えて選びましょう。
個人事業主は、必ず自宅住所を事業用住所として使い続けなければならないわけではありません。
自宅で仕事をするメリットを活かしながら、必要に応じて事業用住所や郵便物の受取先、打ち合わせ場所を分けることで、自分の働き方に合った事業環境を整えることができます。
まとめ

個人事業主は、必ずしも専用のオフィスや店舗を用意しなくても、自宅を拠点として開業できます。
Webデザイナーやプログラマー、ライター、コンサルタントなど、自宅で仕事を完結しやすい事業であれば、オフィスの家賃などの固定費を抑えながら事業を始められることは大きなメリットです。
一方で、「自宅で仕事ができること」と「自宅住所を事業用として利用・公開できること」は別に考える必要があります。
特に賃貸マンションやアパートの場合は、賃貸借契約や管理規約によって事務所利用などが制限されている場合があります。
自宅で開業する場合は、次のようなポイントを確認しておきましょう。
- 賃貸借契約や管理規約で事業利用が認められているか
- 税務上の納税地をどこにするか
- Webサイトや名刺に住所を掲載する必要があるか
- ネットショップを運営する場合の表示ルール
- 自宅住所をインターネット上へ公開して問題ないか
- 仕事関係の郵便物や荷物をどのように受け取るか
- 取引先や顧客が訪問する可能性があるか
- 許認可上、専用の事務所などが必要ではないか
- 引っ越した場合にどの住所変更が必要になるか
また、自宅で仕事をするからといって、事業で利用するすべての住所を自宅にまとめなければならないわけではありません。
自宅住所を公開したくない場合や、仕事とプライベートの郵便物を分けたい場合には、レンタルオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペース、バーチャルオフィスなどを利用する方法もあります。
特に、普段の仕事は自宅で行い、専用の執務スペースを必要としない個人事業主であれば、事業用住所や郵便物の受取サービスを利用できるバーチャルオフィスも選択肢の一つです。
ただし、税務上の手続き、許認可、金融機関、ネットショップ、Googleビジネスプロフィールなどでは、それぞれ住所に関する条件が異なります。
「自宅住所を使いたくないから別の住所を用意する」だけではなく、その住所を何に利用したいのかまで整理して選ぶことが重要です。
開業時は現在の働き方だけでなく、将来的な引っ越しや事業の拡大なども考えながら、自分に合った仕事場所と事業用住所を選びましょう。
参考