会社員として働くうえでのお楽しみといえば「ボーナス(賞与)」が挙げられるのではないでしょうか?ボーナスは毎年夏・冬に支給されるケースが一般的ですが、企業によっては年3~4回に分けて支給している場合もあり、トータルの支給額は企業によって大きく変わります。
そこで今回は、ボーナスの平均額を企業規模・業界別にご紹介。さらに、ボーナスから控除される(差し引かれる)お金の計算方法、企業側がボーナス額を決める際のポイントについても解説します。
2023年、ボーナスの平均額は大企業なら約95万円
2023年、経済団体連合会(以下、経団連)が発表した「2023年夏季賞与・一時金大手企業業種別妥結状況(加重平均)」によると、大企業(※)におけるボーナスの平均額は90万3,397円とされています。
※……21業種大手241社のうち、集計可能な161社
画像引用元:2023年夏季賞与・一時金大手企業業種別妥結状況(加重平均)
全業種の総平均額は3年ぶりに90万円台となり、昨年の夏季と比較した増減率はプラス0.47%でした。
また業種別に見てみると、食品、機械金属、自動車、造船、建設業は軒並み100万円を超えています。
食品やゴム、機械金属、自動車、造船、商業、鉄道などの業種では前年比で10%プラスであったことも判明しました。
中小企業のボーナス平均額は?
中小企業のボーナスについては、事業所ごとに事情が大きく異なります。
厚生労働省が企業規模を問わず行った調査データによると、2022年(令和4年)のボーナス平均額は夏季が38万9,331円、冬季(年末)が39万2,975円でした。この中には事業所規模500人以上の大企業から5人の小規模企業まで含まれています。
一方、中小企業にフォーカスするとどうなるでしょうか。
中小企業の定義は業種によっても異なり、小売業なら従業員数が50人以下、サービス業・卸売業なら100人以下、製造業その他であれば300人以下が中小企業と定義されています。
100人以上の企業は「100~499人」という区分で集計されているため省きますが、100人以下の中小企業における平均ボーナス額を見てみると、夏冬それぞれ以下の平均額が支給されていました。
【企業規模でみる2022年度のボーナス平均額】
従業員数 | 夏季ボーナス平均 | 冬季ボーナス平均 |
---|---|---|
5~29人 | 264,470円 | 274,651円 |
30~99人 | 336,960円 | 354,645円 |
データ引用元:
厚生労働省 毎月勤労統計調査|≪特別集計≫令和4年夏季賞与(一人平均)
厚生労働省 毎月勤労統計調査|≪特別集計≫令和4年年末賞与(一人平均)
これらボーナスの平均額は“役職などを考慮しない”金額ではあることに留意が必要なものの、厚生労働省のデータを見る限り、ボーナスの総平均額については中小企業を含め、年々増加傾向にあるといえます。
ボーナスは業種によっても大きく変わる
ボーナスの総平均的には年々プラスに転じている傾向があるものの、実際の支給額は業種によって大きな開きがあることがわかっています。
たとえば「厚生労働省 毎月勤労統計調査|≪特別集計≫令和4年夏季賞与(一人平均)」を参考にすると、電気・ガス業のボーナス支給平均額は77万3,339円と、全業種のなかでもトップの平均額となっています。
さらに情報通信業や金融業や保険業、学術研究等などの業種においても高いボーナス支給額を誇ります。
反対に、「飲食サービス業」や「生活関連サービス等」「その他のサービス業」などについては、ボーナス平均額が低くなっています。これはアルバイトやパートなど非正規雇用の従業員が多い事業であり、統計データにボーナスの支給がない非正規雇用従業員が含まれていることが理由です。
- 電気、ガス業
- 情報通信業
- 金融業、保険業
- 学術研究等
【ボーナスが低い傾向にある業種】
- 飲食サービス業
- 生活関連サービス等
- その他のサービス業
平均額だけを見ると、業界によっては10倍以上の差が生じています。
ボーナスの平均額は勤続年数(年代)によっても変わる
また年代によっても支給額の差は大きくなります。
新卒入社した場合、25歳ごろからボーナス支給額は一気に上昇し、その後は年齢を重ねるごとに緩やかな右肩上がりで上昇。管理職などの役職付きになる50~54歳ごろでピークを迎え、定年を迎え再就職する60~64歳になると雇用形態の変化などによって6割程度まで下がる場合がほとんどです。
ミドル層になり役職付きとなることでボーナスの額が大きく上昇するケースも多く見られます。
ただしこれはあくまでも年功序列の雇用制度が適用されている場合であり、最近多いジョブ型雇用(職務に応じて賃金が変化する雇用スタイル)の場合は一概に適用されるとは限りません。
極端な話、優れたスキルを持った若手人材でも、ジョブ型雇用で採用されて初年度のボーナスが100万円越え、というケースもあり得るということです。
ボーナスからはどんなお金が引かれる?
ボーナスは全額をそのままもらえるわけではなく、給与と同じように社会保険料・所得税が控除されます。
【ボーナスから差し引かれるお金】
- 健康保険料
- 介護保険料(※)
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 所得税
※40歳以上、またはボーナス支払い月に40歳に到達する人から徴収される
それぞれを引かれた場合の手取り額は約8割とされていますが、ボーナスの額面が100万円超だった場合は所得税の控除額が大きくなり、手取りは7割程度になります。
それぞれの負担率は以下のとおりです。
健康保険料、介護保険料
控除される健康保険料は以下の計算で算出できます。
参考:令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
2で割るのは事業者と折半するためです。
健康保険料率は都道府県、加入中の保険組合によっても異なります。
東京都の場合は39歳までが10%、40歳以上が11.82%となります。40歳以上の健康保険料には介護保険料も含まれています。
仮に35歳で50万円のボーナスをもらった場合、50万円×10%÷2=2万5,000円が控除されます。
厚生年金保険料
厚生年金保険料については、「ボーナス(賞与)額×18.3%÷2」で計算します。
参考:令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
仮にボーナスが50万円だった場合、50万円×18.3%÷2=4万5,750円が控除される計算です。
雇用保険料
雇用保険料率は事業内容によっても異なりますが、一般事業では0.6%が従業員負担となります。
よって50万円の場合は50万円×0.6%=3,000円が控除されます。
所得税
所得税については「ボーナス-社会保険料×源泉所得税率」で算出できます。
源泉所得税率はボーナスを受け取る前の月の給与、扶養親族によって決定されます。
参考:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和5年分)
仮に前月の給与が33万円、扶養親族が2人の場合、源泉所得税率は6.126%となります。
よって先の例(50万円のボーナスがもらえる場合)では、所得税は(50万円-25,000円-45,750円-3,000円)×6.126%=26,112円。
総支給額は400,138円となり、50万円に対して約8割となります。
企業がボーナス支給額を決める場合の注意点
ここまでは従業員側の視点でご紹介してきましたが、本項では「企業側の視点」でボーナスについて考えてみましょう。
ボーナスの支給は義務ではありませんが、「自社で頑張ってくれている従業員に対してはボーナスを支給したい」と考える経営者がほとんどかと思います。ボーナスを支給することで従業員のモチベーションが高まりますし、会社へのエンゲージメント向上にも効果的だからです。
ボーナス額を決める際には、「半期の売上高に愛する経常利益率(%)」に対し、どれくらいの平均支給月数にするかをあらかじめ決めておくケースが多く見られます。
また従業員に対する個別賞与額については、基準額×平均支給月数×評価係数で計算する場合が多いです。
評価係数とは人事評価の結果に基づく指標のことで、人事評価が平均的な人には「1」、優秀な人には「1.2」とするなどして上乗せできる形にする方法です。
その他には「評価ポイント」として役職、資格やスキルなどを等級化し、貢献度の高い人にボーナスを上乗せする方法もあります。
なお、ボーナスの額を算定する際には、従業員に対し納得のいく算定理由を説明することと、運用しやすい制度設計にすることを徹底しましょう。
ボーナスの平均額は職種・年齢・役職の有無で大きく変化する
本記事では、ボーナスの平均額についてお伝えしてきました。ボーナスの平均額は業種や職種、年齢、役職の有無によって大きく変わります。また勤め先の企業規模が大きくなるほどボーナスも高くなる傾向が強いでしょう。
従業員にとってボーナスは、働くことの大きなモチベーションとなるものです。
自社でボーナスを支給する場合は、自社の業績を考慮しつつ、同業・同規模の企業などを参考にしながら決定しましょう。また定期的に従業員と面談を行い、ボーナスの算定に対する意見や不満などをヒアリングしながら改善を目指すことも大切です。