個人事業主や法人として起業する際には、事業所の住所を管轄する税務署へ手続きを行わなくてはなりません。また、毎年同じ時期に行われる確定申告についても、確定申告書類を管轄の税務署へ提出する必要があります。
そもそもこの「納税地」はどのように決まるものなのでしょうか?
ここでは、納税地とはどのようなものなのか、何を基準に決められるのかを解説。また個人事業・法人が引っ越しなどで納税地を変更する場合の手続きについてもご紹介します。
納税地とはなに?
納税地とは納税、および確定申告をおこなう場所、地域を意味します。
個人、および個人事業主や法人が毎年提出する「確定申告書」は、納税地を管轄している「税務署」へと提出する決まりになっています。
納税地にできる場所にはさまざまなところがある
納税地として認められる場所は以下のとおりです。
- 住民票に記載されている住所地(自宅)
- 死亡した人の住民登録済み住所(準確定申告をする場合)
- 海外在住だが、日本で生活のできる住居を持っている場合(居所)
- 個人事業主や法人の「本店」や「主たる事務所」の住所地(本店所在地)
個人の場合は原則として「本人の住民票に記載されている住所」が納税地となります。
ただし、亡くなられた方の準確定申告をする場合は、亡くなった方が最後に住民登録されていた住所が納税地です。また、海外に住んでいて日本に滞在するときの住居も持っている場合は、その「居所」が納税地として認められます。
個人事業や法人の場合は、本店やメインの事務所を納税地として登録することも可能です。
納税地を調べるにはどうすればいい?
初めて確定申告をする場合など、「納税地がよくわからない……」という場合は、国税局のホームページから検索ができます。
参考リンク:国税局・税務署を調べる|国税庁
こちらのページでは郵便番号や住所から、管轄の税務署を検索可能です。
また地図や地域別の一覧表からも国税局・税務署の場所を検索できますので、ぜひ活用してみて下さい。
国税局の「国税局・税務署を調べる」ページは、個人事業主になるときの「開業届」へ税務署名を記入する際や、法人登記の手続きの際にも役立ちます。
個人事業主の納税地とは? 開業時の注意点もチェック
個人事業主となるには、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。
その際には「経費を計上する住所」として納税地を記入しなくてはなりません。レンタルオフィスやバーチャルオフィスを借りた場合は、オフィス住所を「納税地」として指定することも可能です。
ただし気をつけたいのが、バーチャルオフィスを納税地に指定した場合です。
バーチャルオフィスの住所「のみ」を書いて自宅住所を書かなかった場合、自宅の家賃や光熱費、通信費などを経費として計上しても認められなくなるおそれがあります。
引用元:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
こうした事態を避けるには、「自宅住所」と「バーチャルオフィスの住所」の両方を記入するとよいでしょう。
自宅を納税地として利用する場合は、自宅住所を「納税地」に、バーチャルオフィスの住所を「上記以外の住所地・事業所等」へ記入します。バーチャルオフィスの住所を納税地にしたい場合は、その逆です。
開業届は、原則として事業をスタートしてから1ヶ月以内に提出する必要があります。納税地をどこにするのかを決めたら、管轄の税務署へ早めに提出しましょう。
「納税地の特例」とは?
納税地の特例とは、国内に住所がある人が「居所(住所とは別で住んでいる場所)」、「事業所」を納税地に指定できる制度です。
通常は住民登録のある家の住所が納税地になりますが、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」という書類を提出すれば、居所や事業所の住所を納税地として利用できるようになります。
たとえば「自宅で個人事業主として開業したあと、事業所を設立したので納税地として利用したい」という場合にこの手続きが必要になります(後ほどの項にて解説しています)。
所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書は、変更前の納税地を管轄する税務署へ提出しましょう。
参考リンク:[手続名]所得税・消費税の納税地の変更に関する届出手続|国税庁
法人設立時の納税地とは? どこが納税地になる?
法人登記によって会社を設立する場合は、税務署へ提出する「法人設立届出書」内の「その法人の本店または主たる事務所の所在地」へ記入した住所が納税地です。
そのため、賃貸オフィスやレンタルオフィスを借りた場合、およびバーチャルオフィスを借りた場合は、オフィスの住所を本店所在地(納税地)として登録できます。
そもそも本店所在地は法人登録に必要な「定款」で認証を受ける必要があり、定款作成の時点で「どこを本店所在地(納税地)にするか」を決めておく必要があります。
「本店所在地」と「納税地」がイコールの場合は、本店所在地を管轄する税務署で確定申告や税の手続きを行うことになります。
ただし、納税地を自宅にしたい場合は「納税地」欄に自宅住所を記入してもかまいません。納税地を自宅に指定した場合は、確定申告等の手続きも「自宅住所を管轄する税務署」となります。
住所、本店の引っ越しをしたときの納税地とは? 必要な手続きを紹介
納税地となっている「自宅」や「本店」を引っ越しした場合は、「引っ越し先の自宅や本店のある住所」が納税地となります。
年度の途中に引越しをした場合は、引っ越し後の住所を管轄する税務署が確定申告先となる点に注意しましょう。
また個人事業の場合、事務所を納税地としていて、納税地になっていない「自宅のみ」を引っ越しする場合は、手続きが不要とされています。
とはいえ、個人事業主や法人は変更手続きが必要になるケースも多いです。以下を参考に、必要な手続きを速やかに行いましょう。
個人事業主が納税地を変更するときの手続きとは?
個人事業主が納税地を変更する場合は、引っ越し先の管轄税務署へ「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を提出します。また、従業員を雇っている場合は別の届出書提出も必要になります。
【個人事業主が納税地を変更する場合の提出書類】
- 「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」の提出
- 「個人事業の開廃業等届出書」の提出(事務所・店舗を移転する場合)
- 「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出(事業所で従業員を雇っている場合)
参考リンク:個人事業者の納税地等に異動があった場合の届出関係|国税庁
※振替納税を利用している場合は、引っ越し先の税務署へ「口座振替依頼書」の提出が必要です。
もしくは、旧住所を管轄する税務署へ「転居後も継続し、振替納税を行う」という内容を記載した「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を提出します。
【各届出書の提出先】
移転前の住所を管轄する税務署
【個人事業主が納税地の変更以外に必要な手続きとは】
個人事業主でも労働保険、社会保険に加入している場合は、以下の手続きが必要です。
- 都道府県税事務所へ「事業開始(廃止)等申告書」の提出
- 年金事務所へ労働保険、健康保険、厚生年金の届出を提出
納税地の変更手続きだけではなく、必要な手続きを事前にチェックしておき、忘れずに届出を提出しましょう。
法人が納税地を変更する場合の手続きとは?
法人が納税地としていた「本店所在地」を引っ越しする場合は、法務局での「本店移転登記」の手続きが必要です。その後、以下の書類を提出します。
- 異動事項に関する届出
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
【法人が納税地変更以外に必要な手続きとは】
ちなみに、税務署以外にもさまざまな機関への住所変更届けが必要です。
- 都道府県税事務所へ(都道府県税の変更手続き)
- 市区町村(市区町村税の変更手続き)
- 年金事務所(健康保険と厚生年金の変更手続き)
- 労働基準監督署(労働保険の変更手続き)
- ハローワーク(雇用保険の変更手続き)
- 郵便局(郵便物転送サービスの手続きなど)
- 銀行への変更手続き
- 取引先、顧客への移転通知
【各届出書の提出先】
移転前の住所を管轄する税務署
納税地とは何かを正しく把握し、申告間違いがないようにしよう!
これから起業する際は、申告先となる納税地、および管轄税務署を把握しておくことが大切です。開業・会社設立予定の住所がどの税務署の管轄なのか、あらかじめチェックしておきましょう。
またバーチャルオフィスを利用して開業・法人設立をする場合は、「納税地を自宅にするか、バーチャルオフィスにするか」を決めておく必要があります。
特に個人事業主は、開業届でバーチャルオフィスを納税地にする場合も「自宅住所」の明記を忘れないようにしましょう。
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