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「掛売」と「売掛」の違いは?使い方とメリット・デメリットを解説

企業間での取引で使われる「売掛」と「掛売」。非常によく似た言葉で、「商品やサービスを提供した際に、代金の支払いをその場で行わずに後日行うこと」をどちらも意味しています。
しかし、「売掛」と「掛売」のビジネスにおける使い方については、多少異なる部分があります。この違いについてしっかりと理解しておくことは、企業との取引を行うなかで混乱を回避するためにも、必要なことだといえます。

そこで今回は、ビジネス用語である「売掛」と「掛売」について、使い方やニュアンスの違いを解説し、あわせてメリットとデメリットについてもご紹介していきたいと思います。

「掛売」と「売掛」は同じ意味?

「売掛」も「掛売」も、両方とも後払いを意味しており、飲食店などで個人間の約束で後払いを行うことを「ツケ払い」と言うのに対して、企業間での取引において書面に基づいて取り決める支払い方法について指します。

「掛売」と「売掛」とが同じ意味であるならば、2つも言葉が必要ないのでは?と思われるかもしれません。
しかし、両者の言葉の意味は同じであっても、ビジネスでは異なるニュアンスで捉えられており、使う場面も異なっています。

「掛売」と「売掛」の違いとは?

「掛売」という言葉が、企業間取引の商習慣を指す傾向が強いのに対し、「売掛」は、代金を回収していない状態を指す場合に使われることが多く、会計上の「売掛金」という項目として使われるのが一般的です。

ざっくりと言えば、「後で支払います」という取り決めを「掛売」と呼んでいるのに対して、「売掛」はまだ支払われていない状態を指しているという違いがあります。

「掛売」の使い方

「掛売」は、おもに「商品やサービスの代金を後で払う」という企業間の取り決めを指す言葉として使用され、商品やサービスの代金の後払い仕組みそのものについて指します。
仕事の取引先宛てに、毎月送付する請求書支払も「掛売」のひとつです。
現代の日本の商取引においては、現金による取引は少なく、全体の9割もの企業で掛売りにあたる「請求書払い」を導入しており、掛売が常識となっています。
その他、クレジットカード決済も請求書に基づいて後日支払いが行われる掛売の一種となっています。

注意すべき点としては、「掛売」という言葉は、商品やサービスを売る側(提供する側)から見た時の表現だということです。買う側(提供を受ける側)からは、「掛け買い」または「掛取引」という言葉で表現するので、区別するようにしましょう。

「掛売」の言葉を使う場面の例としては、「掛売をする相手企業の見極めは慎重に行うべきだ」とか、「取引基本契約の掛売に関する条項について確認してください」などという具合に使用します。

「売掛」の使い方

「売掛」は、おもに代金を回収していない状態を指し、未改修の代金を「売掛金」という言葉で表します。
会計における分類項目の総称としての意味を持ち、簿記や会計の「勘定科目」の名称として使用されています。
また、決算書では契約上の支払期日が到来していない未回収の代金を「売掛金」の科目に計上し、「これから取引先より受け取る金額」という意味を表します。

掛売の取引において、手形が発生したものについては「受取手形での取引」にあたり、手形が発生しないものについては「売掛金での取引」となります。

「売掛」の言葉を使う場面の例としては、「売掛金の回収については、営業担当が責任を持って行ってください」とか、「売掛金の回収が不可能とならないよう、取引境の経営状況を把握する必要がある」などという具合に使用します。

掛売のメリット

業務の効率化につながる

1ヵ月の間に複数の取引が発生する場合、取引のたびに請求書などの書類を発行するのは、業務上とても手間がかかります。
しかし掛売では、あらかじめ企業間で取り決めをした月末などの日程に合わせて、1月分の取引に関する請求をまとめて行うことができます。

そのため、商品やサービスを売る側(提供する側)の請求業務が効率化されるだけでなく、商品やサービスを買う側(提供を受ける側)についても、振り込みなどの支払い業務の効率化につながります。

買い手に資金がないタイミングでも取引が可能となる

掛売での取引なら、たとえ手元に資金がない状態のタイミングでも、商品やサービスの提供を受けることができます。

ビジネスでは複数企業との取引を平行して行い、資金が手元に入るタイミングが取引相手によって異なります。たとえば、商品を販売した代金が手元に入る前に、翌月分の商品を作るための原料を仕入れるための取引も必要となるでしょう。

取引相手が増える

日本では古くは江戸時代から掛売による取引が一般的に行われており、掛売を前提として経営を行っている企業も少なくありません。
そのため、掛売での取引対応を導入することで、取引相手となる対象企業が増えるといったメリットもあります。

逆に、掛売を導入しないと取引相手の対象にもされないという状況も見られ、特に取引相手が大きな企業になるほど、請求業務に融通が効かないことが多くなっています。
掛売での取引を取り入れることで、そういった問題へもスムーズに対応が可能となります。

掛売のデメリット

メリットが多く、企業間の取引であたりまえのように行われている掛売ですが、売る側にとってデメリットが大きいのも忘れてはなりません。

売掛金の未回収が発生するリスクがある

商品を売り渡したりサービスを提供したりした、その後日になってから代金を回収するシステムである「掛売」は、取引を行う時点での支払いの保証がありません。
取引先が後日必ず支払ってくれるであろう、という信用関係で成り立っているため、場合によっては期日通りの支払いがされない場合や、最悪の場合は未回収という可能性もあります。

実際に、それまでの経営が順調だった企業においても、取引額が大きい掛売が未回収となったために、企業のキャッシュフローが乱れてしまい、倒産に至ってしまう事例も少なくありません。

取引相手の与信管理が必要となる

掛売のデメリットとなる、売掛金の未回収のリスクを防ぐために、掛売での取引を行う相手企業の信用を計る与信管理が必要となり、その分の業務が増えるというデメリットがあります。

与信管理では、賃借対照表や決算書などをもとに審査を進めますが、与信基準の設定や顧客の分析そして、売掛金の未回収を防ぐためのラインとなる「与信枠」について営業部門と情報共有を行います。

また、企業の財政状況の変動に合わせて定期的な見直しも必要となります。

与信管理は、自社を守るために適切にそして慎重に行う必要があり、基準設定も難しいものです。

「掛売」と「売掛」について、意味や使い方の違い、そしてメリット・デメリットについて紹介いたしました。
「掛売」と「売掛」はおおまかな意味は同じであっても、ビジネスの場では使い方が異なるため、取引先相手に間違った使い方をして、恥ずかしい思いをしないようにしたいものです。

また、ふだん何気なく取引をしている相手企業が、突然の経営状況悪化に陥ることも、決して珍しくない時代です。
用語の使い方の知識とあわせて、掛売についてのメリットとデメリットに関しても、企業の一員としてしっかりと理解しておくようにしましょう。

この記事の執筆者

ゼニス編集部

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