日本では、誰もが必要な時に医療サービスを利用できるよう、国民皆保険制度を採用しており、日本に住むすべての人が健康保険の被保険者(またはその被扶養者)になっています。
健康保険には種類があり、どのような仕事に就業しているかによって、加入先が異なるなかで、おもに中小企業が対象となる「協会けんぽ」は、健康保険のなかでも多くの会社員が加入しています。
そこで今回は、協会けんぽへの加入条件をはじめ、協会けんぽとはどのようなものなのかについて、詳しくご紹介したいと思います。
協会けんぽ(全国健康保険協会)とは?
協会けんぽとは「全国健康保険協会」の略称で、健康保険法を根拠法令として平成20年(2008年)年に設立されました。加入対象となるのは中小企業の従業員で、保険者としては日本最大規模となっています。
もともと、国の事業として社会保険庁の所管によって業務が行われていましたが、社会保険庁の解体によって、現在は全国健康保険協会が事業を運営しています。
被保険者が良質な医療を受けることができ、健康の保持増進を図ることを目的として、保険運営の企画、保険給付 (被保険者証の交付、保険給付、任意継続被保険者業務等)、保健事業などを、各都道府県におかれている協会支部で行っています。
協会けんぽとは、中小企業の従業員とその家族(扶養者)を対象とする健康保険です。加入者は、中小企業の従業員となり、給付を受けるのは中小企業の従業員とその家族が被扶養者として保険給付を受けます。
適用事業所に使用されている人なら、国籍や性別、年齢、収入の金額などの制限なく
被保険者となれます。
会社員は通常、協会けんぽに加入することになりますが、下記の「適用除外」に該当する場合については、この限りではありません。
- 勤め先に健康保険組合がある場合
- 国民健康保険組合の事業所に使用される人
- 健康保険の保険者、共済組合の承認を受けて国民健康保険へ加入した人
- 後期高齢者医療の被保険者等
- 船員保険の被保険者
- 所在地が一定しない事業所に使用される人
参照)全国健康保険協会
健康保険(健保)と国民健康保険(国保)の違い
日本に住むすべての人が被保険者(またはその被扶養者)となっている健康保険(公的医療保険)の種類は、「健康保険(健保)」と「国民健康保険(国保)」の2つに大別されています。
勤務先や働き方により健康保険か国民健康保険のどちらへ加入するかが決まります。
健康保険への加入対象
以下のような事業所で働いている場合、事業主や本人の意思に関わらず健康保険へ加入することになります。
- 株式会社、医療法人、公益法人、社会福祉法人などの法人事業所
- 常時従業員が5名以上いる個人事業所
- 従業員の半数以上同意のうえで、厚生労働大臣による認可を得た事業所
(ただし、理美容院やエステサロン等のサービス業は含みません)
国民健康保険への加入対象
国民健康保険は、個人事業主などを対象にした健康保険で、市町村や都道府県によって保険事業が運営されています。
上記、健康保険の加入条件を満たさない場合は、国保に加入することになります。
小規模の事業所やクリニックで働いている方のほか、未就業者もこちらに入ります。
なお、健康保険には扶養認定がありますが、国民健康保険にはありません。国民健康保険には扶養という概念がなく、国民健康保険から保険給付を受ける対象なら、たとえ子どもであってもすべての人が国民健康保険の被保険者となります。
そのため、扶養家族が多い世帯の場合は、健康保険に比べて国民健康保険は保険料の負担が大きくなる傾向があります。
加入している保険事業の確認方法
自分が加入している健康保険の種類について確認したい場合は、健康保険証を見れば判明します。
健康保険証に「国民健康保険被保険者証」と記載があれば、国民健康保険に加入していることがわかります。都道府県名や市町村名も記載されているので、どこの自治体が保険者(交付者)となっているかについてもわかるでしょう。
また、健康保険証に「全国健康保険協会」と記載があれば、協会けんぽに加入していることがわかります。「○○支部」と記載されているので、保険者の支部名についてもわかるでしょう。
協会けんぽにおける被扶養者の範囲
健康保険では、被保険者本人のほか、その被扶養者について、病気や怪我、死亡、出産した場合に保険給付が行われます。この被扶養者に該当する範囲については、以下の通りです。
- 被保険者の直系尊属(父母、祖父母など)、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、および兄弟姉妹のうち、主として被保険者に生計を維持されている人
- 被保険者と同一の世帯(同居している状態)で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
- 被保険者の三親等以内の親族
- 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
- ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。
※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。
被扶養者として認定されるには、「主として被保険者に生計を維持されていること」が必要です。
被扶養者に認定されるための収入基準は、被保険者と同一世帯かそうでないかによって異なります。
協会けんぽの被扶養者認定基準(収入の基準) | |
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認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合 | 認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合 ※上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。 |
認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合 | 認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。 |
参照)全国健康保険協会
協会けんぽ加入の手続き
協会けんぽへ加入する際は、事業主が事業所の所在地の地域を管轄する年金事務所にて、手続きを行います。従業員が個別で加入手続きを行うわけではありません。
法定業種を営む個人事業主においては、その事業所で常時はたらく従業員が5人以上となった日から5日以内を目安に、手続きを済ませるようにしましょう。手続き方法としては、年金事務所の窓口へ直接所定の書類を提出する方法のほか、郵送や電子申請でも行うことができます。
所定の書類には、従業員のマイナンバーの記載のほか、従業員に被扶養者がいる場合は、追加で書類が必要となるので、事前に必要となるものを確認しておくとよいでしょう。
協会けんぽの保険料率は?
協会けんぽの保険料は、事業者が従業員の給与から毎月保険料を天引きして納めます。
協会けんぽの保険料率は、どの都道府県においても10%前後となっています。
保険料の負担は、事業主と従業員とで50%ずつ折半をするので、天引きする保険料は実際の保険料の半分の金額となります。
まとめ
加入条件をはじめとし、協会けんぽについてご紹介いたしました。
協会けんぽは、各都道府県におかれている協会支部で運営を行っています。そのため、保険事業の内容については地域ごとに特色があり、組合健保のようにスポーツ施設の優待利用ができる地域もあります。
ご自身の加入する健康保険について今一度認識し、ご家族の被扶養認定など確認されてみてもよいかもしれません。