事業を始めたばかりの個人事業主、フリーランス等には、確定申告で「白色申告」を選ぶ方も多いです。ここでは白色申告のメリット・デメリットや向いている人について、青色申告と比較しながらご紹介します。
白色申告の記帳方法や、確定申告の流れについても解説しているので、ぜひご覧ください。
白色申告とは?青色申告と比較した場合のメリット・デメリット
白色申告とは確定申告の方法のひとつです。
個人事業主やフリーランスなどの給与以外で収入を得ている人は、毎年「確定申告」を行う必要があります。
確定申告には「白色申告」「青色申告」の2種類があり、後者の「青色申告」は開業の手続き、および青色申告の利用申請を行わないとできないものとなっています。
それに対し白色申告は、利用のための申告も不要です。
青色申告を選ばなかった場合は、すべて「白色申告」で確定申告をすることになります。
白色申告のメリット
白色申告で確定申告をするメリットは、次のとおりです。
事前申請なしで確定申告ができる
青色申告の利用には「開業届」「青色申告承認申請書」の提出が必要です。
いっぽう、白色申告の利用には申請が要らず、そのまま確定申告すればよいだけです。
帳簿付けがかんたんで、事務作業の手間が少ない
白色申告の帳簿はあくまでも「お金の流れが分かればよい」というものです。
出費も売り上げも、金額が少なければ1日分をまとめて記帳してよいとされており、記帳に慣れていない方でもかんたんに帳簿付けができます。事務作業の手間が少ないのは大きなメリットといえるでしょう。
廃業する場合も申請がいらない
青色申告の場合、事業をやめる(廃業)場合は廃業の届け出が必要です。
一方白色申告は、そもそも開業届を出していないので、事業をやめる場合の申請も必要ありません。
「1年間副業をしてみたけれど、合わないからやめる」といった場合も、スムーズに撤退できます。
白色申告のデメリット
白色申告のデメリットは、主にお金に関することです。
青色申告にある控除制度が使えない
白色申告を利用する場合、青色申告にある「特別控除(10万円または最大65万円)」「青色事業専従者給与」などの控除制度を利用できません。
赤字の繰越ができない
青色申告ではその年の赤字を最大3年間繰り越せる制度があります。一方、白色申告では赤字の繰越ができません。
経費になる支出の範囲が狭い
青色申告では、自宅で仕事をする場合、事業への使用割合に応じて家賃・光熱費を経費にできる仕組みがあります(家事按分)。
白色申告でも家賃・光熱費を経費計上することはできるのですが、その条件は青色申告に比べてかなり厳しいものとなっています。
たとえば白色申告で家賃を経費計上したい場合、業務に利用している床面積の割合が50%を超えていないと経費にすることはできません。
白色申告はどんな人に向いている?
白色申告は記帳がかんたん、かつ手軽に利用できるのが魅力ですが、どのような人に向いているのでしょうか。
【白色申告に向いている人】
- 事業を始めたばかりで、まだ事業収入が少ない人
- 会計の知識がなく、経理事務作業が苦手な人
- 経費がそこまでかからない事業を営んでいる人
白色申告は青色申告に比べ、特別控除などの恩恵がありません。しかしながら、事業を始めたばかりで収入が少なかったり、そもそも副業で月数千~1万円程度の稼ぎがあればよかったりする人であれば、白色申告で十分と言えます。
また白色申告は帳簿付けがかんたんなので、会計の知識がなく、複式帳簿などの複雑な記帳処理が苦手……という人にも向いています。
そのほかには、経費があまりかからない事業を営んでいる人も白色申告で十分事足りるケースが多いです。
白色申告は経費として認められる支出の範囲が狭いのですが(特に家賃などのインフラ関連)、そもそも経費がほとんどかからない事業であれば、経費の判定を気にしなくても問題ありません。
青色申告が向いている人は?
先ほどご紹介した3つの特徴(事業収入が少ない、会計知識がない、経費がそこまでかからない)に当てはまる人は、白色申告でも大丈夫です。
ただし、「もっと稼ぎたい」「配偶者や親族を従業員として雇いたい」「赤字が多いので次の年に繰り越せたら……」と感じるようになったら、青色申告を検討してみましょう。
青色申告にすれば、以下のようなメリットが得られます。
- 最大65万円の特別控除+基礎控除48万円=113万円までが控除される
- 家族や親族への給与を「青色事業専従者給与」として全額控除できる(※)
- 純損失の繰越し・繰戻し(赤字を繰り越すこと)ができる
- 家賃や光熱費などの“経費計上できる条件”が緩和される
※白色申告でも「事業専従者給与」として家族や親族へ払った給与を経費にできますが、一定額までしか控除できません。
また開業届を出すことで「個人事業主」となり、事業用の銀行口座が作れたり、ビジネス向けの融資を受けられたりするメリットもあります。青色申告なら取得価額が30万円未満の減価償却資産(PCや機械類、工具など)についても、その年に一括で経費として計上できる制度があります(少額減価償却資産の特例)。
まとめると、
- 事業である程度の収入がある
- 家族や親族を従業員として雇用して給与を払っている
- 赤字が多い
- 自宅として借りている賃貸マンションで仕事をしていて、家賃や光熱費を経費にしたい
- 事業用口座や事業用カードを作りたい
- ビジネス向けの融資を受けたい
- 30万円未満の減価償却資産(固定資産)を買う予定がある
このような場合は、青色申告が適しているといえます。
なお、青色申告の利用には税務署への事前申請が必要で、かつ記帳方法も複雑です。
メリットとデメリットを比べたうえで、白色申告にするか青色申告にするかを選ぶとよいでしょう。
白色申告の記帳方法は?
白色申告では、日々の取引(お金の出入りや支払先、報酬の支払元など)を記帳しなくてはなりません。
この記帳というのは「発生年月日」「摘要」「勘定科目と金額」を記録していくだけのシンプルな方法でかまいません。お金の出入りが大まかに把握できればよいでしょう。
記帳例
【白色申告の記帳例】
年月日 | 摘要 | 勘定科目 | 金額 |
2022.XX.XX | 原稿料 | 売上 | 25,000 |
2022.XX.XX | 参考資料購入費(3冊分) | 新聞図書費 | 4,000 |
例でいうと、一段目は「売上」について記帳しています。収入の概要や勘定科目(費用のカテゴリのこと)、金額を記入していればOKです。売上以外の収入については「雑収入」として記帳します。
【収入・売上の区分】
- 売上……事業で得た報酬など
- 雑収入……報酬以外に事業で得た収入(備品や資材の売却で利益を得た場合など)
例の二段目では「必要経費」について記帳しています。こちらも一段目と同じ要領で記帳していけばOKです。同じ日の同じ勘定科目の出費なら、まとめて記帳してしまってかまいません。
何かを購入・利用した場合は「経費」ですが、商品や材料の仕入れを行った場合は「仕入」で記帳をします。
【支出の区分】
- 経費……事業のために生じた出費
- 仕入……商品や原材料の仕入をした際の出費
なお、必要経費の購入時・利用時や、仕入れでもらった「領収書」「レシート」等の書類は、必ず保管しておきましょう。
白色申告の帳簿付けで意識したいポイント
白色申告の記帳(帳簿付け)はごくシンプルなので、記帳・入力作業もすぐに終わります。
だからといって記帳をサボってしまうと、確定申告前にあわてて1年分を入力する……といったことにもなりかねません。こうなるといくら記帳がかんたんといっても、かなりの手間がかかってしまいます。
白色申告といえど記帳は定期的に行いましょう。1日ごとや、1週間ごと、1ヶ月ごと……というふうに、記帳のサイクルを決めておけば、忘れずにすみます。
またこまめに記帳することで、記帳忘れや金額間違いなどのミスも防ぐことができます。
白色申告の確定申告はどのように進める?
白色申告をする際の大まかな流れをご説明します。
①1月1日~12月31日までの日々のお金の出入りを記帳し、領収書等の帳簿・書類を保管しておく
②決算作業、確定申告書類の作成
③翌年の2月15日~3月15日(原則、例外もあり)の間に確定申告をする
④所得税、住民税の税額が決定、それぞれ納付通知が届く(または払いすぎていた源泉徴収税が還付される)
⑤通知に沿って税金を納付
経費の支払いを証明する「領収書等の書類」については提出しなくてもよいですが、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保管しておかなくてはなりません。
無くさないようにきちんと保管しておきましょう。
決算作業とは
決算とは、年度末に棚卸表を作成したり、減価償却費を計算したりする作業です。
棚卸表は棚卸商品がある場合のみ作成します。
また減価償却費とは、10万円以上の固定資産(設備や機械、工具、車両など)の価格を耐用年数で分割し、経費として計上できるものです。
たとえば耐用年数5年、購入価額20万円の機械を購入した場合、20万円÷5=1年あたり4万円ずつ、5年間にわたって経費とすることができます。(※定額法での計算)
白色申告に必要な書類
白色申告では、確定申告期間内に以下の書類を提出します。
- 確定申告書B
- 収支内訳書
- その他添付書類(生命保険料控除証明書、医療費控除の明細書など)
確定申告書を作成する場合は、国税庁の公式サイト「確定申告書等作成コーナー」を利用するか、一般の会計・帳簿ソフトを利用するとラクです。
会計・帳簿ソフトには、白色申告であれば無料で利用でき、確定申告に必要な書類(確定申告書、収支内訳書など)の作成ができるものもあります。(やよいの白色申告オンライン など)
質問に沿って入力していくだけなので、確定申告の手間を減らしたい人は活用してみてください。
参考リンク
白色申告でも記帳は忘れずに
記帳がかんたんで手軽に利用できる白色申告は、かけだしの事業者や会計の知識がない人でもトライしやすい申告方法です。
申告時には1年間の収支を報告しなくてはならないため、定期的に記帳し、抜けや漏れがないように気を付けましょう。