会社の設立登記では「資本金の払込証明書」が必要になります。払込証明書はいわば「資本金を銀行に払い込ました」という証明であり、定款認証の後にはかならず作成しなければなりません。
ここでは、資本金の払い込み方法や注意点、入金を証明する「払込証明書」の作成方法を解説します。
資本金の払い込みには「発起人の個人口座」を使う
資本金の払い込みには、発起人の個人口座を利用します。この時点では会社名義の銀行口座(法人口座)が作れないため、個人の口座を使うのです。
資本金の払い込みに必要な銀行講座は、以下のようなところがおすすめです。
- 個人事業で使っていた事業用口座とは別の銀行口座がよい
- 普段あまり使っていない口座、または新しく作成した口座
- 通帳を発行してもらえる口座(のちにコピーが必要になるため)
手順としては、以下のステップで払い込みを行えばOKです。
- 資本金払い込み用の個人口座を用意
- 資本金を振り込み、記帳する
- 通帳の表紙と表紙裏、入金の証明がわかるページを原寸大でコピーする
- 払込証明書を作成する
払込証明書の作成方法については、後ほど図解付きで解説しますので参考にしてみてください。
資本金払い込み時の注意点
資本金の払い込みをする際は、いくつか注意点があります。
以下の4点をあらかじめ把握しておきましょう。
- 資本金の振り込み日は「定款認証日」以降に
- 入金の合計額と資本金額は一致させる
- 発起人が複数の場合は、入金者の氏名、出資額が印字される「振込」で入金する
発起人が1名の場合は預け入れでも振込でもかまいませんが、発起人が複数の場合は預け入れにしてしまうと誰が入金したのかがわからなくなってしまいます。そのため、発起人が複数名入る場合は、入金者の氏名が印字される「振込」で入金をしましょう。
なお、発起人が2名以上いる場合は、いずれか1名の個人口座に資本金を払い込めばOKです。
また申告する資本金額より多く入金した場合は、余剰分が「資本準備金」として扱われます。
払い込みが終わったら通帳に記帳をしておきましょう。
払込証明書の作り方は?
資本金の払い込みが無事に終わったら、法務局に提出する「払込証明書」を作成します。
払込証明書は4つの書類をまとめて綴じます。
①払込証明書(Wordなどで上記を参考に作成)
②通帳の表紙の原寸コピー
③表紙裏(支店名、口座番号が記載されているページ)の原寸コピー
④入金が記帳されているページの原寸コピー(入金額にマーカーで印をつけ、分かりやすくする)
①の払込証明書は、定款に記載した資本金額(および株数)を明記し、右下に捨印を押して作成します。
また払込証明書の日付は「発起人全員が資本金を入金が完了した日以降の日付」です。
①~④を揃えたら、ホッチキスで2ヵ所を留めて左綴じにしましょう。
なお、払込証明書は差し替えや捏造などを防ぐために、各ページの中央・境目部分に「割印(契印)」を押しましょう。
「募集設立」の場合は別の証明書が必要になる?
株式会社の設立方法には「発起設立」と「募集設立」の2種類があります。
発起設立とは、発起人が設立時に発行した株式を全て引き受けるスタイルです。
個人または家族、知人などの身近な人物のみで資本金を出し、設立する方式がこれにあたります。
いっぽう「募集設立」とは、発起人が設立時に発行する株式を一部だけ引き受けつつ、残りの負担分を公募、私募などの方法で「募集」し、発起人以外の人に引き受けてもらうスタイルです。
発起設立の場合は「払込証明書」で設立登記ができますが、募集設立の場合は「払込金額保管証明書」という書類を銀行に依頼し、交付してもらう必要があるのです。
募集設立では、「払い込みの取り扱い」を委託してもらうことになります。
その申し込みには以下の3点の書類を提出する必要があるので、あらかじめ準備しておきましょう。
- 認証済みの定款の写し
- 代表者の印鑑証明書
- 創立総会議事録の写し
「創立総会議事録」とは、株式会社を設立する際に開催する株主総会(創立総会)の議事録を指します。
いわば「会社設立にあたって共益権が正しく行使されているか」「発起人側の決定に対し、株主が同意をしているか」をチェックするための書類です。
まとめ
資本金の払い込みや払込証明書の作成は、それほど複雑ではありません。
ただし、払い込み方法を間違えたり、必要書類が不足していたりすると設立登記ができない場合もあるため、あらかじめ手順や必要なものをしっかりと把握しておきましょう。