「会社の設立」は起業手段のひとつですが、皆さんは会社の仕組みについてご存じでしょうか?
会社の仕組みは会社(法人)の形態や規模によってもさまざまな違いがあります。本記事では、会社の仕組みを解説します。起業前に知識として知っておき、設立後の組織編制へと活かしましょう。
会社の仕組みとは?組織図や運営について解説
会社は「経営者」と「各部門」で構成される形が一般的です。また、会社形態の中でもっともポピュラーな「株式会社」の場合は、経営者とは別に「株主総会」に属する立場の人たちが存在しています。
経営者のもとで働く各部門(従業員)は、それぞれ部門ごとに異なる仕事を担っています。基本的には各担当業務を分担することで、会社をうまく運営する仕組みを作っているのです。
ただし数人~十数人など規模が小さい会社の場合は、経営陣と従業員とで各部門の業務を兼任することもあります。
会社(営利法人)の種類
「会社」とは商品やサービスの供給により、企業としての利益を追求する「営利法人」です。
営利法人には以下の4種類があります。
- 株式会社
- 合同会社
- 合名会社
- 合資会社
営利法人が獲得した利益は、株式会社であれば株主へ、合同会社等であれば出資した社員へと分配します。
営利(利益の分配)を追求しない法人は「非営利法人」といい、NPO法人や社団法人、財団法人などが非営利法人に当てはまります。
会社形態別に見る「会社の仕組み」
会社の定義=「営利目的の法人」ということが分かったところで、それぞれの会社形態における詳しい会社の仕組みを見てみましょう。
株式会社ならではの仕組みは?
株式会社は法人格の中でもっとも設立数が多いため、一般的には「会社=株式会社」というイメージが強いでしょう。株式会社の仕組みを語るうえで外せないのが「株主」の存在です。
株主は出資する代わりにさまざまな権利を得る
既出の図解でも表したとおり、株式会社では「株式」を発行し、購入してもらって会社の運営資金を得ます。
株式を購入した出資者は「株主」となり、株の保有割合に応じて会社の所有権を得られます。出資した代わりに会社の経営者(役員)を選んだり、経営方針へ口出ししたりといった“権利”を得られるのです。
また、会社が業績を上げて利益を得た場合は、株の保有割合に応じて利益配分を得ることも可能です。
株主と経営者は別の存在である
株主は株主総会で経営者(代表取締役、取締役などの役員)を選出します。このとき選出された人物が、直接的な“経営判断”を行います。いっぽう株主は、直接経営に関わることはありません。
つまり株式会社では「出資をして会社を所有している人」、経営者は「経営をする人」と、それぞれが違う役割の人が存在し、運営する仕組みなのです。これを「所有と経営の分離」といいます。
ただし、起業したての小さな会社の場合は、経営者が発行株式の大部分~全てを所有している、なんてケースも珍しくありません。所有と経営の分離は、大企業になるほど顕著になります。
また、株式会社の経営者には原則2年(株式譲渡制限がある会社は10年)の役員任期があります。任期を満了する際にはふたたび株主総会で役員を選出しなければなりません。
その他、株式会社ならではの特徴
- 登記をする際に「定款の認証」を受ける必要あり
- 登記費用は約20~25万円
- 出資者1名以上で設立できる
- 「官報」へ決算公告を掲載する義務がある
- 会社としての信用度が高い
- 負債発生時や倒産があった場合、出資者は「出資した範囲だけ」責任を負う(有限責任)
合同会社の仕組みは?
合同会社は「持分会社」と呼ばれる会社形態のひとつ。持分会社には合同会社のほか、のちにご紹介する「合名会社」「合資会社」を合わせた計3種類があります。
合同会社は株式会社と同じく、法人格を与えられた会社形態です。もともとアメリカで誕生した会社形態ですが、日本でも2006年の会社法改正時に、新たな会社形態として選べるようになりました。
出資者=経営者であるのが株式会社との大きな違い
合同会社は「所有と経営の一致」といって、出資をした社員がそのまま経営権を持てることが大きな特徴です。
株式会社の場合は必ずしも出資者(株主)と経営者がイコールではありません。しかし合同会社では、出資額に限らず、出資をした社員全てが「経営者」としての権限を持っています。経営に関し意思決定をする場合は、出資した社員全員の同意を得る必要があります。
合同会社には「代表社員」「業務執行社員」がいる
合同会社では、社員代表として代表権を行使できる「代表社員」を置きます。これは株式会社でいうところの「代表取締役」です。
株式会社 | 合同会社 |
---|---|
代表取締役(代表者として意思決定をする人) | 代表社員 |
取締役(経営をする人) | 業務執行社員 |
株主(出資する人) | 社員 |
さらに合同会社では「業務執行社員」を決めることもできます。業務執行社員は「出資者として経営サイドに籍を置いた社員」のことで、代表社員のような「代表権」は持ち合わせていません。経営には携わるものの、最終的な意思決定は代表社員にゆだねられる……という具合です。
なお合同会社における「社員」は、出資をした者のことを指します。
混同されやすいですが、株式会社の「株主」と同じような存在と考えるとわかりやすいかもしれません。
出資はしないで業務だけを行う人は「従業員」というふうに区別して呼ばれます。
その他、合同会社ならではの特徴
- 出資者1名以上で設立可
- 決算公告義務はない
- 役員任期はない
- 定款の認証が要らない
- 登記費用が約6万円~
- 利益配分は定款で自由に決められる
- 株式を発行できない
- 負債発生時や倒産があった場合、出資者は「出資した範囲だけ」責任を負う(有限責任)
合名会社・合資会社の仕組みは?
合名会社は社員全員が「無限責任」を負う会社形態です。一方、合資会社は「無限責任社員」「有限責任社員」の両方が在籍する会社形態となります。
「無限責任」とは、会社の負債・倒産に対し、出資をした社員が無制限に責任を負うというもの。仮に億単位の負債を抱えても、出資者が私財などを投じて返済を行わねばならないというリスクがあります。
合名会社、合資会社は資本金なしで起業ができます。
合名会社は無限責任社員が1名いれば設立でき、合資会社は無限責任社員、有限責任社員の最低2名から企業が可能です。それぞれ登記にかかる費用も6万円~と、手軽に会社が設立できるメリットがあります。
また合同会社と同じく、出資した「社員」全員が経営の意志決定をできるのも利点かもしれません。
ただし、先に述べた通り「無限責任」を負う社員が必要となるため、リスクが高い会社形態とも捉えられます。
会社の仕組みが合わない場合は「1人起業」もあり?
「複数人で形成する会社の仕組みが合わない」と感じたとき、1人で起業するのはアリなのでしょうか?
そもそも、1人で法人を設立することはできるのでしょうか。
ひとり起業ができるのは株式会社・合同会社・合名会社の3種類
法律上、自分1人で会社設立をすることは可能です。その場合株式会社、合同会社、合名会社のいずれかを選択することになります。(合資会社は出資者が2名以上いないと設立できません)
株式会社の場合は、取締役会を設置せず、自身が取締役兼発起人になることで設立が可能です。
1人起業のメリット・デメリット
1人起業をした場合のメリット・デメリットを比較してみましょう。
- すべての意思決定を自分のみで行えて、他の役員、社員とのトラブルが生じない
- 個人事業主に比べると社会的信用を得やすくなる
- 自分の役員報酬以外の人件費が発生しない
- 個人事業主に比べ税の優遇措置がある(法人税率、青色申告の場合の「欠損金の繰越控除」など)
- 自分が貰う役員報酬を毎月定額にすれば「経費」として計上できる(定額同額給与)
- 社内に相談相手がいないため、すべての意志決定・責任を一人で背負う必要がある
- 経理や会計など通常であれば部門で分担する仕事も全て1人で行わなければならない
- 法定福利以外の福利厚生で生じる「福利厚生費」が認められにくい
- ひとりでも社会保険(健保、厚生年金など)に加入しなくてはならない
- 合名会社で無限責任社員として起業し、倒産した場合、全ての負債を自分が背負うリスクあり
1人でも会社という形態をとることで、税制面での優遇があったり、社会的信用が増したりする点はメリットだといえるでしょう。
しかし記事の冒頭でもご説明したとおり、会社とは本来さまざまな仕組みによって運営されるものです。事業の規模が大きくなってきた場合、1人では対応しきれない場面も出てくるでしょう。そんなとき会社の仕組みを構築していけば、経営者は経営のみに集中しやすくなります。
また会社の今後に左右する事業戦略を考えるにあたって、1人よりも数人、数十人で協議し、決定することで後悔の少ない選択を取れるケースも多々あります。
会社の仕組みは会社形態によっても変わる!自分に合った会社を作ろう
会社の仕組みは会社の形態によって変わります。特に合同会社などの「持分会社」には、1人~数人の少人数で経営を続けているところも少なくありません。何がベストな選択なのかは、会社の事業内容や規模、今後の展望によっても変わります
スムーズな経営のためには、まず基本的な会社の仕組みを知っておく必要があります。そのうえで会社を1人で興すのか、それとも別の協力者と設立するのか……といった「自分なりの会社の形」を決めてみましょう。