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スタグフレーションとは?発生原因や影響、企業・個人ができる対策を紹介!

コロナ禍やロシア・ウクライナの紛争などを経て、日本では物価の上昇が加速しています。それなのに賃金は横ばい状態であり、消費者は苦しい生活を強いられているのが現状です。
このような状態を経済用語では「スタグフレーション」と呼びます。

スタグフレーションは消費者の買い控えが起こりやすく、企業にとっても“大きな試練”となる状況です。ここではスタグフレーションの原因、影響といった基礎知識のほか、企業・個人が行うべきスタグフレーション対策についても解説します。

スタグフレーションは「景気停滞」「物価の上昇」が同時に起こる現象

経済用語である「スタグフレーション」とは、経済活動(景気)は停滞しているのに、物価は上昇を続けている状態を指します。

デフレーションとインフレーション

一般的には、景気が悪くなると物は売れなくなるのが普通です。この場合物価はどんどん下がっていき「デフレーション」という状態になります。

一方、景気が拡大するころには需要が増え、物価が上昇していきます。これを「インフレーション」といいますが、インフレーションが起こると通常は企業の業績もアップし、賃金も上昇し経済は活性化していきます。

スタグレーションは消費者の生活を圧迫する状態

このように、景気と物価は絶妙なバランスをとっており、インフレーションとデフレーションを繰り返しながら発展していくのが一般的です。

しかしながら、社会情勢などの理由により、景気停滞時でも物価が上がってしまうケースがあります。
この状態は消費者にとって“入ってくるお金は増えないのに支出だけが増える”という状態のため、家計を大きく圧迫します。
これがいわゆる「スタグフレーション」です。

スタグフレーションはなぜ起こる?

スタグフレーションの原因には「何らかの理由で起こる供給不足」が挙げられます。
この“何らかの理由”の代表例が、政治混乱や戦争、紛争です。

たとえば1970年代には、第4次中東戦争が勃発した影響から「オイルショック」と呼ばれるスタグフレーションが発生しました。
これは、石油産出国の戦争により石油価格が高騰し、輸送費の上昇、プラスチック製品等の生活必需品の供給不足が原因で物価が上昇したケースです。

また、近年では新型コロナウイルス感染症のパンデミックもスタグフレーションの一因となりました。急速な感染拡大によって工場などの操業、経済活動がストップ。人手不足によって製品の製造が滞ってしまいました。

そしてコロナ禍が終わらぬうちに、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が勃発します。
両国は原油、天然ガスのほか、小麦やトウモロコシなどの穀物、レアメタルといった重要資源の産出国でもありました。

世界的シェアを誇っていた重要資源の輸出がストップすれば、工業、食品製造業、畜産業など幅広い業種に影響が及びます。資源価格は高騰しますし、必然的に物価が上がらざるを得なくなるのです。

このように、感染症や戦争、紛争といった外部要因によって生活必需品からインフラ関連までさまざまな物価が上がるものの、景気停滞中の日本では賃金は横ばいのままです。

まさにスタグフレーションが発生している状況であり、消費者の生活は苦しいままとなっています。

スタグフレーションが起きるとどんな影響がある?

スタグフレーションについて解説してきましたが、実際にスタグフレーションが起こるとどのような影響があるのでしょうか。現在起きているスタグフレーションの影響は、以下のとおりです。

【スタグフレーションの影響】

  • 株式価格の変動を引き起こす
  • 賃金が上がらないのに物価(生活コスト)が上がるため“買い控え”が起きる
  • 企業の業績が悪化しやすくなり、賃金アップも困難に
  • 企業によっては賞与カットなど苦肉の策を講じる場合も
  • 生活困窮者救済のため社会福祉に使うお金(国庫からの支出)が増える
  • 税収が減り、増税などの政策が実施されやすくなる

スタグフレーションはひとことで言うと「悪循環」に陥っている状態です。

そもそも景気を回復させるには賃上げをするのが効果的なのですが、スタグフレーションによる買い控えが発生すると、企業の利益も減ってしまいます。

資産が豊富な大企業であれば、内部留保からある程度切り崩して賃上げをすることも不可能ではないでしょう。しかし、日本に多く存在する中小企業においては、そのような施策を取れる資金的余裕がないのが実情です。

それどころか、賞与の減額や各種手当の廃止など、利益が減っただけ支出を相殺する施策を講じなければならない場合が多いでしょう。

また国全体で見ると、生活に困った消費者が増えた場合、福祉や社会保障費の支出が増えます。
支出が増えるにもかかわらずスタグフレーションによって税収は減ってしまうので、政府は増税などによってマイナス分の補てん、および社会福祉の財源確保をしようとします。

こうした状態では景気回復のための金融政策を実行するのも難しいため、負のスパイラルに陥ってしまうのです。

企業がすべきスタグフレーションへの対策

スタグフレーションは買い控えによって経済活動の停滞を引き起こします。また企業にとっては、原価などの高騰によって業績が横ばい(または悪化)するリスクも大きいでしょう。

企業が行うべきスタグフレーションへの対策としては、以下が考えられます。

  • 商品やサービスの“付加価値”アップ、およびブランディングの徹底
  • 消費者ニーズを満たせる商品、サービスの開発
  • ターゲットとなる市場を拡大する
  • 販売チャネルの拡大
  • 経営分析による資金繰りの改善

それぞれ解説します。

商品やサービスの“付加価値”アップ、およびブランディングの徹底

景気が低迷してくると企業はコストダウンなどで支出を減らし、利益を確保しようとします。しかし、もっとも恐れるべきは「消費者の買い控え」です。

コストを減らすことはもちろん重要ですが、「この会社のこの商品・サービスがいい」と思ってもらえるような付加価値を設けない限り、利益は減少の一途をたどるでしょう。

また、商品・サービスの付加価値を高めるのはもちろん、ブランディングも重要です。

現代の消費者は商品・サービスのストーリー性やコンセプトを重視する傾向が強いといわれています。
また、企業そのものへの好感度も商品やサービスの売れ行きに大きく関与しています。

付加価値、ブランディングを徹底することで、スタグフレーションのさなかでも安定した売り上げを確保できるでしょう。

消費者ニーズを満たせる商品、サービスの開発

消費者のニーズは絶えず変化しています。特にここ数年はSNSの普及によって短いスパンでニーズが変化しています。

よって、商品開発の際には、常に変化するニーズに対応し続けることも重要です。

消費者のニーズをくみ取るには、アンケートや聞き取り、SNS調査などのリサーチが必要です。消費者の“生の声”を集めることで、効果的にニーズを満たせる商品・サービスづくりに活かせます。

ターゲットとなる市場を拡大する

スタグフレーションで生き残るには、ターゲットとなる市場の拡大も必要です。

商品やサービスを特定の層にのみリーチしている場合、その層からの需要が減ってしまうと利益が大きく減ってしまいます。特にスタグフレーションが起こっている状況では、買い控えが起こりやすいため、幅広い層へのアプローチが必要になる場合も多いでしょう。

現在の市場はキープしつつ、新たに将来性のある市場へ参入するなど、対策を講じてみましょう。

販売チャネルの拡大

販売チャネルが多い企業は、景気停滞時にも安定した売上を確保しやすい傾向にあります。

たとえば、実店舗のみで販売していた商品をECサイト等で通販すると、実店舗に足を運べない人や遠方の消費者にもアプローチできるようになります。また食品やサービスなど、業態的に実店舗でしか販売ができない商品については、SNSでのプロモーションが有効です。

販売チャネルの分散化にはリスクを軽減する効果もあるので、積極的に検討してみましょう。

経営分析による資金繰りの改善

スタグフレーションにおいては、経営について冷静に分析し、対策を練ることも重要です。

キャッシュフローなどの財務諸表を分析し、固定費や原価、売価、販売数量などの見直しを行いましょう。とりわけスタグフレーションの時期には、原価や固定費が高騰しやすいため、両方が上がった場合のシミュレーションをしておくとより安心です。

さらには、資金繰りについても定期的に確認、見直しを行い、無理のない経営が続けられるかもチェックが必要です。

個人がすべきスタグフレーションへの対策

スタグフレーションは個人としての生活にも大きな影響を及ぼします。賃金が上がらない中で物価だけが上昇していく状況において、どんな対策を行うべきなのでしょうか。

資産の分散化

物価が上昇するスタグフレーションにおいては「現金ではない資産」を持つことが大切です。
現金ではない資産には、金やプラチナ、不動産などが挙げられます。

資産が現金のみの場合、物価上昇に伴いお金の価値が下がってしまいます。

しかし現物資産は物価の影響を受けにくく、インフレ・デフレ共に価格変動が少ないのが特徴です。金の場合は不景気になるほど価格が上がりやすく、不動産は賃貸に出して家賃収入を得られます。

資産分散によるリスク軽減だけでなく、投資効果も期待できるでしょう。

外貨資産を持つ

個人のスタグフレーション対策としては、外貨資産に換えてしまうのも一つの方法です。日本円を外貨に換えるには投資商品を購入するか、外貨預金、外貨建ての貯蓄保険やFXなどを利用する方法があります。

円安・ドル高の状態が続く状況においては、日本円の価値が下がります。このとき、資産の一部を米ドルなどの外貨資産に換えていれば、日本円の価値が下がってもドルの価値が上がります。
資産全体で見れば、同じ通貨で資産を持つより、複数通貨で持っているほうが資産価値の低下リスクを抑えられるのです。

ただし、外貨ばかりに資産を集中してしまうのも考え物です。
世界情勢やその国の金融施策などによって大きな値動きが起こるケースもあるため、国内・国外の資産や金融商品をバランスよくキープしておくとよいでしょう。

この記事の執筆者

ゼニス編集部

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