「起業して成功したい」「これから手掛ける事業で売上を伸ばしたい」など、ビジネスにはさまざまな目標があります。その内容は個々で異なりますが、目標を達成するには「何をすればいいか」が明確になっていないとモチベーションが続きません。
プロセスを明確化し、モチベーションを維持するためには「マンダラート」を試してみるとよいでしょう。ここでは最近話題になっている「マンダラート」の効果やメリット、作成方法をご紹介します。
マンダラートとは?どのような効果がある?
マンダラートとは、アイデアを発想するためのフレームワークのひとつ。
9マス×9、合計81マスに目標やアイデアを書きこむことで、新たな発想を生み出したり、思考を整理したりすることができます。
日本の株式会社ヒロ・アートディレクションズの代表、1987年に今泉浩晃氏が発案した“思考のデザイン手法”であり、ビジネスから個人まで幅広く利用され続けているフレームワークです。
そもそも曼荼羅とは?
そもそも曼荼羅とは、密教(大日如来を本尊に据えた仏教の一派)が修行で悟りを開くために生み出された絵といわれています。
曼荼羅にはさまざまな種類がありますが、そのうちの「金剛界曼荼羅」は、全体を9つに区切り「原因やプロセスを正しい知恵でみきわめ、分別していく」という分別の世界を表現しています。
画像引用元:曼荼羅について – ようこそ、こんごういんへ! 真言宗豊山派 金剛院 公式サイト
マンダラートはこの金剛界曼荼羅からヒントを得て生み出されました。
そして現在、有名なメジャーリーガーのプロ野球選手、大谷翔平さんがマンダラートを用いて「プロ野球選手になる」という目標を達成したことで改めてその有用性、効果が評価されています。
マンダラートのメリットは?
マンダラートを使うメリットは次の5つです。
- 思考、情報を整理できる
- 作成過程で新たなアイデアが生まれやすい
- 目標達成までの課題と対策が見つけやすくなる
- プロセスの可視化により目標達成まで挫折しにくい
- 抜け・漏れを防げる
思考、情報を整理できる
目標を達成したくても、何からすればいいのか、どこから手をつければいいのか分からない……というケースは少なくありません。
そのような場合も、マンダラートを使えば散らかりがちな思考、複雑な情報が整理しやすくなります。整理して書き出すことで「目標達成に必要なこと」が明確になり、なすべきタスクや対策などの行動に移しやすくなるでしょう。
作成過程で新たなアイデアが生まれやすい
マンダラートは新たなアイデア出しにも効果的です。
1つの物事についてあらゆる角度から発想、連想をして81マスを埋める必要があり、埋めていく過程でこれまでに思いつかなかったアイデアや方法を思いつくことも珍しくありません。
図表でアイデア出しをしていく「マインドマップ」のようなフレームワークと組み合わせれば、斬新な発想が生まれる可能性も高いでしょう。
目標達成までの課題と対策が見つけやすくなる
マンダラートを作成すると、作成過程で目標達成までに乗り越えるべき課題や問題点などを発見しやすくなります。
たとえば「起業して成功したい」という目標がある場合、起業するためには「何の事業を行うか」「資金調達」「オフィスの場所探し」などさまざまな課題が見つかるはずです。
課題が明確になれば、それを乗り越えるための対策を考えやすくなります。漠然とした対策ではなく、具体的な対策を考えることで、リスクを抑えながら目標達成へと歩を進められるでしょう。
プロセスの可視化により目標達成まで挫折しにくい
マンダラートで目標達成までのプロセスを可視化すると、挫折しにくくなる利点もあります。
学生時代に「勉強しなければいけないけれどゲームや漫画に逃げてしまう」という経験をしたことがある方も多いのではないかと思います。その一方で「宿題のプリント1枚を終わらせる」というふうに、やるべきことが具体化されていると取り掛かりやすく、早く達成できます。
目標達成までのプロセスが不明瞭だと、何から手をつけていいかわからず、楽なほうに逃げてしまいがちです。そのようなときにマンダラートでプロセスを細分化すると、小さなタスクに分けられるのでスモールステップで達成しやすくなります。これにより達成感も得られ、自己肯定感アップにもつながるのでいいことづくめです。
抜け・漏れを防げる
マンダラートで目標達成への道のりを可視化すると、抜けや漏れを防ぎやすくなります。
人間が何かを行う以上、何重ものチェックをしていても必要な要素が抜けてしまうケースは珍しくありません。
しかし一旦マンダラートでプロセスや対策などを可視化しておけば、細かな見落としにも気付きやすくなります。
そもそも81マスを埋めるということは、目標のために必要なプロセス、要素を細分化する作業でもあります。よって作成途中で「あれも必要、これも必要」というふうに、自然と抜け漏れに気が付きやすくなるのです。
大きな目標を達成したいときや、大規模プロジェクトをスタートする時などにマンダラートはかなり効果的といえるでしょう。
マンダラートのやり方は?
ここからは、マンダラートの作成方法をご紹介します。
マンダラートは全部で4つのステップにより作成を進めていきます。
②「目標」の周りに8つのキーワード、コンセプト(連想する要素)を書く
③「②のキーワード8つ」を新たなマンダラート8つに派生させ、それぞれ深掘りする
④似ているキーワードをグルーピングし、優先順位をつける
ここでは、ステップ①~③の作成までと、④のグルーピングに分けて順番に解説していきます。
ステップ①~③:マンダラートの作成
マンダラートは「目標」「目標達成のための8要素」「8要素の深掘り」というふうに全81項目を埋めていきます。
作成する際は紙に書くか、マンダラートを考案した今泉氏が運営する株式会社ヒロ・アートディレクションズが提供している「MandalArt」を使う、Excelで作成するなどの方法があります。ご自身がやりやすい方法を選びましょう。
①9マスを作成し、真ん中に「目標」を書く
ステップのはじめとして、まず9マスの枠線を引き、真ん中に最終目標(メインテーマ)を書きます。
この9マスの周りを9マス×8個で囲み、合計81マスになるようにします。
②「目標」の周りに8つのキーワード、コンセプト(連想する要素)を書く
真ん中の「目標」の周りの8マスに、目標達成のために連想されるキーワード、コンセプトなどを記入します。
この8マスはすべて埋めてください。思いつかない場合は無理にでも絞り出しましょう。
「キーワードを絞り出す」という過程で意外性のあるアイデアが生まれることもあります。
③「②のキーワード8つ」を新たなマンダラート8つに派生させ、それぞれ深掘りする
②で連想したキーワード8つを周りのマスの中心にそれぞれ書き加えます。
さらに、キーワードを深掘り(連想)して出てきたスモールキーワード(具体的施策など)をそれぞれの周りに書いていきましょう。
上記の図「子育て世帯への支援」について深掘りした場合、「離乳食の開発」「子供が食べやすい食器の開発」「大人も子供も食べられるレシピの考案」などさまざまなことが思いつくはずです。
正解も不正解もないので、そのキーワードに関わることであればなんでも記入していきましょう。
この作業を8キーワード分繰り返したら、マンダラートは完成です。ただし、完成させることがゴールではないのでここで満足してはいけません。さらに次でご紹介する「グルーピング」を行いましょう。
ステップ④:類似キーワードのグルーピング
完成したマンダラートは、グルーピングをすることで優先順位が付けやすくなります。点在する「類似キーワード」を探して印をつけることで、重要度・優先度合いが分かりやすくなり、どの施策から手を付けるべきかが明確になるのです。
このとき重複が多いキーワードほど、重要度が高いと判断できます。
重要度の高い施策から取り組むことで、より効率的に目標達成へと近づけるようになるでしょう。
マンダラート作成時のポイント&注意点
マンダラートを作成する際には注意点があります。
- マス目はすべて埋めること
- 達成期限を設ける
- 内容は具体的に
マンダラートはマス目に空欄が多いほど効果が薄くなってしまいます。最初の8マスはもちろんですが、派生の8マス×8区分においてもかならず埋めてみてください。どうしても思いつかないときは他のキーワードの深掘りマスを先に埋めると、アイデアを思いつくことがあります。
また、目標に対し達成期限を設けることも重要です。真ん中の最終目標、周囲の8つのプロセスの達成期限をそれぞれ設けておけば、「惰性でだらだら取り組んで達成できなかった」ということもありません。
決定した期限は必ず守るようにしましょう。
なお、マンダラートの内容が漠然としすぎていると、結果的に行動に移せないまま終わってしまうケースが多いです。よってマンダラートに書きこむ内容は、具体的かつ達成状況を確認・評価しやすいものが好ましいです。
「見込み〇件獲得」など、数字を含めた内容で定量化するとより達成しやすくなります。
時間はかかるものの、コストをかけず作成できるマンダラートは思考整理やプロセスの明確化にぴったりのフレームワークです。
ビジネスはもちろんプライベートでも、達成したい目標がある方はマンダラートを使ってプロセスを具体化してみてはいかがでしょうか?