現在は、携帯電話やスマートフォンのメールやチャット機能などを使った会話があたりまえになっている世の中となっていますが、その先駆けとも言える「ポケベル」について、現代の若者世代はどれだけご存知でしょうか。
ポケベル世代にとってのポケベルは、若い頃の思い出とともに懐かしい思い出のアイテムという存在であるため、ポケベルについての話題は、時として思いのほか盛り上がります。
また、ポケベルは機能の進化によって使い方の変化にも特徴があるので、ポケベルの話題を通じて、年齢の推測も可能な点が面白いところです。
そこで今回の記事では、ポケベルについての基礎知識として、流行の歴史や使われ方、さらにポケベル暗号の一例についても、ご紹介していきたいと思います。
若者世代がポケベルについて知っておくことで、年齢差がある上司との円滑なコミュニケーションの一助となるかもしれませんので、ぜひチェックしてみて下さい。
ポケベルとは?
「ポケベル」とは、「ポケットベル」の略で、PHSや携帯電話、スマートフォンが普及する以前に普及していた通信機器です。
携帯電話などがない当時は、外出中の相手に連絡をとる手段がありませんでしたが、ポケベルが登場したことによって、外出中の相手へ手軽に連絡を取ることができるようになっていきました。
ポケベルには、個別の電話番号が振り分けられており、ポケベルの電話番号へ電話をかけで数字によるメッセージを送信することができました。
ポケベルは携帯電話のように通話ができるわけではないため、メッセージの受診のみです。そのため、外出中にメッセージを受けたら、必要に応じて公衆電話や固定電話から電話をかける必要がありました。
それでも当時にしてみれば、ポケットに入り気軽に持ち歩けるサイズの端末で、出先でメッセージのやり取りができることが画期的だったため、ビジネスシーンや女子高生などの間で瞬く間にヒットし、広く普及していきました。
ポケベルの数字のみのメッセージは、のちに2タッチ方式による文字表記も可能となるほか、呼び出し音の代わりとなるバイブレーション機能や、目覚まし代わりのアラーム機能などの機能も充実していきました。
ポケベルの歴史、流行った時代は?
ポケベルは、一般的には1980年代後半から1990年代にかけて普及しましたが、歴史はそれよりも古く、実は1958年にアメリカでサービスが開始されたのが起源となっています。
日本においては、その10年後の1968年に、現在のNTTにあたる日本電信電話公社によって、ポケベルのサービスが開始され、当時の端末はレンタルのものが利用されていました。
1990年代になって、端末を個人の所有物として購入するようになり、1993年の「ポケベルが鳴らなくて」というドラマや歌がヒットするのと同時にポケベルも注目を集め、1996年には加入者が1千万人をも超えました。
しかしその後のPHSや携帯電話の登場とともに、ポケベルの利用者は減少していき、令和元年にはサービス終了となりました。
ポケベルの使われ方
ビジネスシーン
日本でポケベルのサービスが始まった当時は、官公庁や医療関係者などへの緊急連絡の手段として使われていました。
その後、一般企業においても、外回りをしている営業マンに会社が連絡するための手段として利用するようになり、徐々に普及していきます。
当初は電話の着信ベルだけが端末に送られていましたが、10桁程の数字データを端末に送信できる機能が追加されるようになり、外出中の営業マンはポケベルが鳴ると、公衆電話へと走り、表示された電話番号連絡をするという方法をとっていました。
これにより、営業マンあてに会社へかかってきた取引先や顧客からの電話への対応の迅速化が進み、ビジネスシーンにおいてポケベルは無くてはならない存在へと定着していきました。
プライベート
テレビドラマや歌のヒットによってポケベルの存在が広く知れ渡るようになり、ポケベルの利便性は女子高生のなかでも注目を集めていきます。
1990年頃から端末の購入も可能となり、若い世代を中心にプライベートでのポケベル利用者が増えていきました。
数字しか伝えることができない頃は、「ポケベル暗号」と呼ばれる「数字での語呂合わせ」を使った方法によってメッセージを送り、後に文字の送信ができるようになったことで、ショートメールの会話に近いやり取りを成立させるようになっていきました。
ポケベルが流行る前は、中高生にとって友達との連絡手段は自宅の電話や公衆電話だけでした。また、デートや友達との待ち合わせなどにおいても、出先での連絡手段がありませんでしたが、ポケベルの普及によって気軽なメッセージのやり取りが実現していったのです。
ポケベル世代とは?
ポケベルの流行した期間が限定的であったことから、ポケベルの話題は相手の年齢を推測しやすいと言われています。
もし、ポケベルを使っていたのが中高生の頃であれば、30代であることが推測されます。また、ビジネスの場で活用していたのであれば40代、そして会社から支給を受けて持たされていたのであれば50代だと推測されます。
ポケベルの料金
当時のポケベルの毎月の基本料金は、2~3千円程度でした。ポケベルは受信専用であることから、特別なサービスを利用しなければ利用料金がそれ以上に増えることはありませんでした。
いっぽうで、公衆電話からポケベルへのメッセージ送信時の料金は、1分10円でした。
ポケベルの周波
ポケベルの周波数は「250MHz」でした。周波数は数値が高いほど障害物に弱くなる特徴があります。
ポケベルの後に登場したPHSの周波数が「1900MHz」であることから、ポケベルの周波数は安定していたといえます。
そのため、自治体が住民へ避難情報を伝えるなどの防災目的としても、ポケベル電波は活躍しています。
ポケベル暗号とは?
ポケベルの普及しはじめの頃は、数字だけしか送ることができませんでした。
そのため、「ポケベル暗号」と呼ばれる数字を使った語呂合わせによるメッセージが誕生しました。
ポケベル暗号は、ポケベル文化の顔とも言える懐かしさを秘めていますので、一例をご紹介します。
ポケベル暗号の一例
入力数字 | メッセージ |
---|---|
0840 | おはよう |
0833 | おやすみ |
4649 | よろしく |
889 | はやく |
0906 | おくれる |
0106 | 待っている |
4510 | しごと |
8110 | バイト |
11052167 | どこにいるの? |
49106 | 至急TEL |
724106 | 何している? |
1056194 | 今から行くよ |
114106 | あいしてる |
8181 | バイバイ |
ポケベルで日本語入力
数字のみの表示だったポケベルも、その後日本語での文字表記に対応しました。
それでも、現在の携帯電話やスマートフォンなどのような文字入力ではなく、「ポケベル打ち」と呼ばれる、2タッチ入力という方法での入力です。
たとえば、「あ」を表示したい場合は、「1」+「1」と1を2回入力します。
「い」を表示したい場合は、「1 2」、「う」は「1 3」、「え」は「1 4」「お」は「1 5」
「か」は「2 1」、「き」は「2 2」・・・「さ」は「3 1」、「し」は「3 2」という具合です。
1つの文字を表示するのに2つの数字を入力するので、面倒に感じるかもしれませんが、あいうえおの五十音順に従っているため、ローマ字入力などと比較しても覚えやすいでしょう。
この特殊なポケベル内は、現在でもスマートフォンのアプリのゲームで体験できるものもあるようなので、試してみてもよいかもしれません。
世代を超えた話題の切り口としても、役立つかもしれません。