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源泉税とは?知っておきたい源泉徴収を要する報酬

給与から天引きされるというイメージが強い「源泉税」。実際には、給与以外においても源泉徴収を行わなければならないものも存在し、源泉徴収をしないことでペナルティが発生してしまうケースもあるので、注意が必要です。

そこで今回は、源泉税とはどのようなものなのか、源泉税の対象と課されるペナルティについて解説いたします。

源泉税(源泉所得税)とは?

源泉税とは源泉所得税の略称で、「源泉徴収制度」によって徴収される所得税を意味しています。
「源泉」とは、税金の源である給与や報酬を表しており、そこから所得税を徴収することから、「源泉徴収」という言葉で呼ばれています。

本来は、給与や報酬を手に入れた人(=従業員)が国に所得税を払うのですが、事業主が従業員に代わり事前に給与から天引きすることで、国に税金を納めます。つまり、源泉所得税で納めている税金は、従業員が国に納めている所得税ということです。

従業員の給与から天引きするのは、所得税のほかにも、住民税、社会保険料、雇用保険料などもありますが、このなかでも所得税について「源泉税」と呼んでいます。

源泉徴収制度が行われるようになった背景

従業員の給与を計算する人なら、源泉税について理解しておくことは大切です。

世界恐慌以降、日本における税収の3~4割を占めるようになった所得税は、納税の負担が増えた影響から滞納する人も増加した時期がありました。源泉徴収制度は、その対策として滞納の防止や納税手続きの簡易化を掲げて、1940年の税制改正(昭和15年改正)に導入されたものです。

所得税は国にとっても大きな財源となるものなので、源泉徴収制度によって税収の安定を図りたい考えがあります。つまり、源泉徴収制度は、国の財源の安定性を高めるための制度だと言えるでしょう。

源泉徴収義務者とは?

源泉徴収制度において、従業員の所得や報酬などから天引きを行う人のことを「源泉徴収義務者」と呼びます。
源泉徴収義務者は、従業員へ支払う給与や報酬などから徴収税額を算出して、源泉税を給与や報酬から天引きし、それを従業員に代わって税務当局に納付します。

天引きした源泉税は、給与などを従業員に支払った月の翌月10日までに納付しなければならないと定められています。
例外として、従業員が9名以下の事業主の場合は、税務署への申請によって、毎月の納付を年2回の納付へと変更すること可能だとしています。

給与のほかに源泉徴収が必要となる所得は?

源泉徴収は、もともと従業員に支払う給与所得からの天引きが中心でしたが、その後、給与以外の支払いについても対象が拡大したため、給与以外にも源泉徴収の対象となる報酬がいくつかあります。

源泉徴収が必要な報酬・料金等

  1. 原稿料や講演料など
  2. ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

  3. 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
  4. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  5. プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
  6. 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  7. ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
  8. プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  9. 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

参考)国税庁 (No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは)

所得税を源泉徴収するのは、従業員への給与や賞与の支払いのほか、弁護士や公認会計士、司法書士などの特定の士業への支払いや、ライターやアーティスト、プロスポーツ選手、ホステスなどへの支払いについても対象となっています。

ただし、上記においても支払先が法人である場合は対象とならず、源泉徴収制度の対象にあたる源泉所得者は、基本的に「個人のみ」となっています。
(例外として法人馬主へ支払われる競馬の賞金については、源泉徴収の対象となります。)

企業の社長への給与については、「役員報酬」という勘定科目を使いますが、これは所得の区分が給与所得になるため、従業員と同様で源泉徴収の対象となります。
いっぽうで、個人事業主が自身へ支払う給与は「給与所得」には該当せず、「事業主貸」という勘定科目を使って処理するため、「事業所得」に含み事業所得として計算され、源泉徴収の対象にはあたりません。

源泉税の計算方法

源泉税の計算方法や税率についても確認しておきましょう。

給与所得に関しては、源泉税の額は国税庁がルールを定めており、給与水準や扶養家族の人数をもとに決められた税額の一覧表(『源泉徴収税額表』)に記されています。
源泉徴収税額表は、毎年内容に変更が加わり、国税庁のホームページで公開されている最新の源泉徴収税額表を確認しながら徴収税額を算出します。

雇用関係にない取引相手に支払う報酬の場合(原稿料や講演料、出演料、士業への報酬など)は、支払い金額によって税率が異なります。

  • 100万円を超えない部分について…支払金額に10.21%をかけた金額
  • 100万円を超える部分について…支払金額に20.42%をかけて102,100円を加えた金額

となっています。

源泉税の金額を計算する際は、原則として報酬として支払うすべての金額が対象となり、消費税も含まれます。

また、配当金を株主に支払う際にも源泉徴収が行われ、税率は以下の通りとなっています。

  • 上場株式の税率・・・15.315%
  • 非上場株式および大口株主(発行済株式の総数などの3%以上に相当する数又は金額の株式などを有する個人)の税率・・・20.42%

源泉徴収をしなかった場合の措置

源泉税の対象になる支払を行う源泉徴収義務者は、源泉徴収の義務があり、必ず源泉徴収を行わなければなりません。税務調査時において、源泉徴収対象のものについて給与や報酬などの支払を行っているにも関わらず、源泉徴収がされていなかった場合は、ペナルティが課されます。

ペナルティは、源泉徴収税額を正確に計算した上で「翌10日を納税期日」とし、延滞税や不納付加算税の計算を行います。源泉徴収を忘れていたことに気が付き、遅れて納付を行った場合においても、不納付加算税や延滞税の対象となります。
しかし、税務調査から指摘を受けることで発覚した場合よりは低くなるので、忘れたことに気づいたら、早めに手続きを行うようにしましょう。

<不納付加算税>

自分で源泉徴収をし忘れたことに気が付き納付し場合納税額×5%が加算税
税務調査により指摘を受けて発覚した場合納税額×10%が加算税

(ただし、加算税の計算結果が5,000円未満である場合は、免除されます。)

<延滞税>
延滞税は、定められた納期日から2ヵ月経過してしまうと税率が高くなります。

2ヵ月まで法定税率(原則7.3%)か特例基準割合(短期貸出金利+1%)の低い方
2ヵ月以降14.3%か上記特例基準割合+7.3%の低い方

(ただし、延滞税の計算結果が1,000円未満である場合は、免除されます。)

源泉税は、給与などを支払う者が、給与天引きによって従業員などに代わって国へ納める所得税で、給与などを支払う者が源泉徴収義務者となり納税が義務つけられています。

給与以外にも源泉徴収の対象があるので、納付漏れによるペナルティが課されないよう、注意するようにしましょう。

この記事の執筆者

ゼニス編集部

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