個人・法人を問わず、生活や事業を行う際には「金融資産」が必須となります。特に個人においては、ライフステージの変化や老後などに備えて金融資産を蓄えていくことが、安定のカギとなるでしょう。また法人にとっては事業を行う資金でもあるため、金融資産なくしてビジネスは成り立ちません。
ここでは「金融資産」の種類や定義、世帯別の平均保有額をご紹介。実物資産との違いや資産形成のポイントなど、気になる“お金のギモン”を解説していきます。
金融資産の主な種類について
金融資産とは、「現金」または「有価証券」「生命保険」「小切手」など、紙やデータとして保有して現金化できる資産のことを指します。
現金、預貯金
外貨預金(米ドルやユーロなど)
株式
投資信託
債券(国債・社債・私募債等)
貯蓄型の生命保険
商品券・小切手
それぞれ解説していきます。
現金、預貯金
金融資産と聞くと、お財布の中の現金や銀行等の金融機関に預けた預貯金をイメージする方も多いでしょう。
預貯金は「すぐに引き出して使える」という流動性がメリットであり、日本人が保有している金融資産の半分以上は現金・預貯金であるというデータ(※)もあります。
※参考:内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局|資産所得倍増に関する基礎資料集 令和4年10月
この理由としては、預貯金には「元本保証」があることが挙げられるでしょう。元本保証は「預金保険制度」で決められているもので、金融機関が破綻しても、1名につき元本1,000万円まで+破綻日までに付与された利息が保証される、という制度です。
その一方で、現金や預貯金は「インフレ」に対するリスクが高いのがネックです。インフレになれば現金や預貯金の価値は相対的に下がってしまい、モノを買ったりする際に多くのお金が必要になります。
そのため近年では、「インフレリスクに備えてお金を別の資産へ換えて持っておきたい」と考える方も増えつつあります。
外貨預金(米ドルやユーロなど)
外貨預金とは、日本円などの通貨を「米ドル」「ユーロ」などの外貨に換えて貯金しておくことを指します。
外貨預金は金利が高いことでも知られており、さらに外貨へ交換したあとに円安が進めば、差益によって資産を増やすこともできます。ただし、円と外貨を両替する際には為替手数料を取られるため注意が必要です。
株式
企業が資金調達のために発行する有価証券を「株式」といいます。
東証一部など上場している企業の株は「公開株」と呼ばれ、だれでも購入可能です。株式をお金で購入した人は「株主」となり、保有割合に応じてその企業の経営に干渉できる権利が与えられます。
株式の中には保有していると配当金を受け取れるものもあります。また、株式を買ったときよりも株価が上がっていた場合、株を売却することで差益(キャピタルゲイン)を得ることも可能です。
ただし株式は企業の業績や社会情勢などに株価が左右されやすく、金融資産の中でも安定性が低めな傾向にあります。
投資信託
投資信託は、かんたんに言うと「株式や債券の詰め合わせセット」です。投資・運用のプロが投資家から資金を集め、国内外の株式・債券などへまとめて投資を行うため、投資初心者でも安定した運用ができます。
「現金以外の金融資産も検討したい」という場合には特におすすめといえるでしょう。
債券(国債・社債・私募債等)
国や企業が資金を借り入れたいとき発行する「債券」は、有価証券の一種。債券を購入すると、発行体(国や企業)は購入者に対し「利子」を支払います。
また満期になれば、債券の額面金額を「償還」するきまりとなっています。
購入者は利子+償還金を受け取れるのがうまみですが、償還日までに発行体が経営破綻してしまった場合は「デフォルト(債務不履行)」となり、償還ができないケースがある点に注意が必要です。
とはいえ、債券の「格付け」をチェックして安全性の高い債券を購入すればリスクはかなり低くなります。格付けにはD~AAAまでの9ランクがありますが、BBB以上の債権であれば投資適格級と判断できます。
安全性の高いものだけを購入すれば、比較的安定性がある金融資産として保有できるでしょう。
貯蓄型の生命保険
「貯蓄型の生命保険」とは、積立式で掛け金を運用していくもので、終身保険・個人年金保険・学資保険などが該当します。これらは保険を解約するなどして現金化することができるほか、万が一のときに保険金(死亡時や障害など)が受け取れるため、金融資産として活用されている方も多いです。
商品券・小切手
ギフト券等の商品券や小切手についても、額面金額を金融資産としてカウントします。
気になる「金融資産の平均保有額」は?
日本国内における金融資産の平均保有額は、世帯の人数・年齢によって異なります。
【世帯人数別】
1世帯あたりの平均保有額 | 中央値 | |
---|---|---|
二人以上世帯 | 1,563万円 | 450万円 |
単身世帯 | 1,062万円 | 100万円 |
データ引用元:金融中央広報委員会「令和3年 家計の金融行動に関する世論調査」
【世帯主の年齢別・二人以上世帯】
1世帯あたりの平均保有額 | 中央値 | |
---|---|---|
20歳代 | 212万円 | 63万円 |
30歳代 | 752万円 | 238万円 |
40歳代 | 916万円 | 300万円 |
50歳代 | 1,386万円 | 400万円 |
60歳代 | 2,427万円 | 810万円 |
70歳代 | 2,209万円 | 1,000万円 |
データ引用元:金融中央広報委員会「令和3年 家計の金融行動に関する世論調査」
【世帯主の年齢別・単身世帯】
1世帯あたりの平均保有額 | 中央値 | |
---|---|---|
20歳代 | 179万円 | 20万円 |
30歳代 | 606万円 | 56万円 |
40歳代 | 818万円 | 92万円 |
50歳代 | 1,067万円 | 130万円 |
60歳代 | 1,860万円 | 460万円 |
70歳代 | 1,786万円 | 800万円 |
データ引用元:金融中央広報委員会「令和3年 家計の金融行動に関する世論調査」
総じて二人以上世帯のほうが平均保有額も中央値も高くなりますが、年齢別でみると世帯人数にかかわらず、60歳代がもっとも多く金融資産を保有していることがわかります。
ただし、平均保有額と中央値は大きくかけ離れており、実際には“老後資金の目安”と言われている2,000万円の半分以下の金融資産しか持っていない世帯が多いようです。
とはいえ、40~50代になってから慌てて資産形成をしようと思っても、上手くいくケースはおそらく少ないでしょう。定年後も安心して老後を送るためには、20代のうちからコツコツと資産形成をしていくことが重要です。
金融資産と実物資産の違いは?
実物資産は、文字通り「形のある資産」を指します。ただし、金銭的な価値がないものは「実物資産」と呼びません。
不動産(土地、建物等)
貴金属(純金、プラチナ、ダイヤモンド等の宝石など)
絵画や骨とう品
ウイスキーやワインなど
金融資産は社会情勢やインフレ、企業の業績、株式相場などによって値動きが大きく、極端にいうと「無価値になる場合がある」という性質を持っています。
一方不動産や貴金属などの実物資産は、その価値が社会情勢やインフレといった外部に影響されにくい性質があります。世界情勢が悪化しても価格は暴落しにくく、安定した価値を見出せるのが実物資産のよいところです。
その一方で、流動性の低さがデメリットになる場合もあります。買い手がいない限りは現金化できないですし、そもそも実物資産(特に不動産)を手に入れるためには数千万~数億円の多額資金がないと難しい場合が多いです。
【金融資産と実物資産の違い】
値動き等のリスク | 景気との連動性 | 収益性 | インフレ耐性 | |
---|---|---|---|---|
金融資産 | 資産の種類による | 資産の種類による | 資産の種類による | 弱い~中程度 |
実物資産 | 低い~中程度 | 低い~中程度 | 低い~中程度 | 高い |
金融資産を含む投資を行う際には「資産三分法」を守るべし
「資産三分法」とは、金融資産を含む複数の資産を偏りなく保有しつつ、リスクを分散させる方法です。
具体的には以下の3つを分散させて保有します。
- 現金(金融資産)
- 株式(金融資産)
- 不動産(実物資産)
この3つはそれぞれが異なるリスク・景気との連動性・収益性を持っていて、分散保有することで「どれかの価値が下がっても別のどれかの価値が上がる」という結果になり、大きな損失を避けることができるのです。
【資産三分法におけるそれぞれの資産の特徴】
値動き等のリスク | 景気との連動性 | 収益性 | インフレ耐性 | |
---|---|---|---|---|
現金 | 低い | ほぼない | 低い | 弱い |
株式 | 高い | 高い | 高い | 中程度 |
不動産 | 中程度 | 中程度 | 中程度 | 高い |
資産運用でリスクを減らすには、こうした「分散投資」が重要になります。ただし、投資先をむやみに増やしてしまうとポートフォリオ(金融商品の一覧や組み合わせ)を管理するのが大変になってしまうので、初めのうちは個人で管理しやすいように現金・株式・不動産の3つで分散しよう、というわけです。
なお、資産三分法においては、「保有している現金資産を3分割する」のがオーソドックスな方法です。ただし、「近いうちに子供の大学進学があるので現金を多めに持っておきたい」など、個々の事情や好みに応じて投資配分をアレンジしてもかまいません。
配分や投資先についてもし分からないことがある場合は、投資の専門家等に相談することをおすすめします。
金融資産と実物資産をバランスよく保有することが大事
本記事では、金融資産の種類や平均保有額、実物資産との違いについてお伝えしました。
金融資産を含む資産運用では、「金融資産」「実物資産」をバランスよく保有しておく方法がもっともリスクを減らせる、と言われています。偏りなく資産として持っておくことで、景気悪化、インフレといった社会情勢においてマイナスが出ても、どこかでプラス(またはイーブン)にもっていけるというのがその考え方です。
日本でも株式や投資信託などによる資産形成が少しずつ浸透していますが、いまだに“現金派”“貯金派”という方も多いものです。手元資金を別の資産にすることはやや抵抗があるかもしれませんが、今後資産を増やしたい方は、現金資産だけでなく、ご紹介した「資産三分法」も参考にしながら資産形成を考えてみてはいかがでしょうか。