企業活動を継続するうえでは、「資金調達をして投資し、企業の価値を高めること」がとても重要。こうした活動は「コーポレートファイナンス」と呼ばれています。
ここでは、企業価値を高める「コーポレートファイナンス」について解説。企業価値を決めるための3つの指標や、コーポレートファイナンスで用いられる資金調達方法についてもご紹介します。
コーポレートファイナンスとは
コーポレートファイナンスは、端的に言うと「企業の価値を高めるための財務活動」を指します。
“企業価値を高める”というのを目的として、
- どのような資金調達をするか
- どうやって資金を投資するか
- 投資で得た資金はどのように還元するか
といったことを検討しつつ実行します。
またコーポレートファイナンスが順調ならば、キャッシュフロー(使えるお金)も安定、改善します。
将来的にフリーキャッシュフロー(自由に使えるお金)が増加すれば、企業・組織の強化、事業展開などでさらなる成長が期待できるでしょう。
なお、コーポレートファイナンスは「企業の財務活動」以外にもさまざまな意味が含まれており、文脈によっても捉え方が変わります。
- 企業の財務、金融戦略
- 資金調達の方法
- 投資判断の手段、方法
本記事では、冒頭でご紹介した「企業の価値を高めるための財務活動」という意味で開設します。
コーポレートファイナンスとプロジェクトファイナンスはどう違う?
コーポレートファイナンスに似た言葉に「プロジェクトファイナンス」という言葉があります。
この2つは「財務活動の目的」がそれぞれ異なります。
- コーポレートファイナンス
- プロジェクトファイナンス
企業全体に対する「資金調達」などの財務活動
資金調達の評価対象も「企業の価値、信用性」となる
1つのプロジェクトを対象にした「資金調達」などの財務活動
資金調達の評価対象も「プロジェクトの価値、信用性」となる
コーポレートファイナンスは「企業全体」が対象となりますが、プロジェクトファイナンスは「プロジェクト単位」が対象です。
また出資、融資などの資金調達をする際には「対象の価値」が評価対象となりますが、こちらも「企業」「プロジェクト」というふうに、それぞれ評価対象が異なります。
コーポレートファイナンスで企業価値を求める方法は?
コーポレートファイナンスは「企業価値を高めるための金融戦略」ですが、そもそも「企業価値」とは何なのでしょうか?
また、企業価値を明確にするには、どのように計算すればよいのでしょう。
企業価値とは?
企業価値とは、「企業そのものの経済的価値」のこと。
「企業がこの先にわたって生み出す“自由に使える資金(フリーキャッシュフロー)”がいくらになるのか」をあらわしたものです。「企業の値段」と言い換えてもいいでしょう。
フリーキャッシュフローは、企業の純資産(負債ではない資産)ですので、多くなるほど経営も安定します。
また安定した経営が続けられれば、企業価値も高まり、出資を募る際にも有利になります。
投資家は「企業価値」を投資の判断基準としているからです。
コーポレートファイナンスで“企業価値を高めるための戦略”を行うことで、自由に使える純資産が増え、経営が安定します。結果としてさらに出資などの資金調達がしやすくなり、さらに企業価値を高められるようになるでしょう。
企業価値を求めるために使う「指標」とは
企業価値は、以下の3つの指標を使って求めます。
- NPV(正味現在価値)
- IRR(内部収益率)
- DCF法(割引キャッシュフロー)
それぞれくわしく見ていきましょう。
NPV(正味現在価値)
NPV(Net Present Value/賞味現在価値)は「投資すると、どれくらいの利益が得られるか」をあらわす指標です。
一般的には「投資の判断」をする際の指標として用いられます。
そもそもProject Value(PV)とは、将来獲得できるお金の現在価値という意味です。
「現在」とついているとおり、PVを計算する場合は、将来お金の価値が変動する可能性を考慮しつつ、現在の価値換算で計算します。
将来に受け取れるお金÷{(1+利率または割引率)^n年後}=PV(将来獲得するお金の現在価値)
※「^」はべき乗、つまり同じ数字をかける計算を指します。
仮にこれから行う事業が年利4%、2年後に1,000万円を受け取れる場合、計算式は以下のようになります。
1,000万円÷(1+0.04)^2= 924万5,562円
つまり、2年後に1,000万円が得られる事業の「今の価値」=PVが924万5,562円なのです。
PV(現在価値)と比べて投資額が少なければ、利益が得られる=投資価値のある事業、と考えられます。
そしてNPVは、算出したPV(現在価値)-投資コストで計算可能です。
IRR(内部収益率)
IRR(Internal Rate of Return/内部収益率)とは、投資する対象の「収益率」で、NPVが0になる割引率を指します。
投資家はIRRに「ハードルレート(投資判断をするときの最低限必要とされる利回り)」を定めており、ハードルレートがIRRより大きくなったとき、投資を行います。
先ほど「PVの計算式」として紹介した数式内に「割引率」という要素がありましたが、これがIRRです。
IRRは高ければ高いほど「投資価値のあるプロジェクト」として評価されます。
DCF法(割引キャッシュフロー)
DCF法(Discounted Cash Flow)は、割引キャッシュフローのことです。
会社が将来生み出す「フリーキャッシュフロー」から一定の割引率をかけ、企業価値を算出します。
将来のフリーキャッシュフローの総額-WACC(% / 加重平均資本コスト)=理論上の企業の現在価値
ちなみに「NPV(正味現在価値)」もDCF法のひとつです。
コーポレートファイナンスにおける資金調達方法とは?
コーポレートファイナンスにおける「資金調達方法」にはさまざまなものがあります。
以下の7つの方法で調達した資金を投資に回し、資産をさらに増やせれば、企業価値を高められるでしょう。
資産の売却
不動産や有価証券、営業車など、利用機会の少ない資産を売却して資金を調達する方法です。
調達した資金を投資に回すことで、リターンが得られる可能性があります。
株式の発行
株式会社の場合、株式を発行し、出資を受ける資金調達法があります。
株式の発行による資金調達では返済義務がなく、資金を有効活用しやすいメリットがあります。
ただし、株式の保有割合に応じて配当を支払う必要がある点には注意しましょう。
ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
資金調達には「ベンチャーキャピタル(VC)」から出資を受ける方法もあります。
ベンチャーキャピタルとは、投資家を集め、成長性が見込める企業に対し出資を行う団体のことです。
株式の発行と同じく「出資」のため、返済義務はありません。
ただし、株式の譲渡が必要なこと、それによる“経営への干渉”が生じることが注意点として挙げられます。
また出資を受けるには所定の審査に通る必要があるのも知っておくべきでしょう。
エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家とは「起業したての会社を応援する目的で投資を行っている個人投資家」を指します。
あくまでも個人が投資をするという形式のため、出資額はそこまで多くありません。しかし「ベンチャーキャピタル」のような審査がなく、マッチングさえ成立すれば知名度の少ない企業でも出資が受けられる可能性があります。
こちらも出資してもらった資金の返済義務はありませんが、配当や株式のリターンを提供する必要があります。
助成金、補助金の活用
起業したてのタイミングでは、国や地方公共団体などの「助成金」「補助金」で資金調達を行う場合も多いです。
日本では創業時に申請できる助成金・補助金が多数あり、事業をスタートする際の大きな支えとして活用できます。融資ではないため、返済もいりません。
ただし、助成金や補助金の利用には審査が必要であり、必ずもらえるわけではありません。
また助成金や補助金では“用途”が限られているケースも多いため、何に使えるのかを把握したうえで申請しましょう。
社債の発行
「社債」とは、会社が投資家に借りる“借金”のようなもの。
投資家からお金を借りて、事業資金などに充てる資金調達方法です。
社債はあくまでもお金を借りるものであり、所定の期間を経た後に利子+元本を返済(償還)する必要があります。
社債には大~中型の社債のほか、49人以下の投資家へ発行する「少人数私募債」というものがあります。
少人数私募債は会社関連の人限定で発行する社債で、手続きがかんたん、無担保での発行が可能です。
発行金額が1億円未満の場合や中小企業の場合は、少人数私募債がもっとも利用しやすい社債といえるでしょう。
融資を受ける
コーポレートファイナンスの資金調達方法として「金融機関からの融資」を選ぶ企業は多いです。
融資には審査があり、企業の信用力が高いほどお金を借りやすくなります。
一度に多額の資金調達をしやすいことから、事業への設備投資などに融資を活用する企業も多く見られます。
ただし、お金を借りるため返済義務があることと、元本に対し利息がかかるため、借りたときよりも多い金額を返済しなくてはならない点には注意が必要です。
まとめ
コーポレートファイナンスにより企業価値を高め続けられれば、企業活動を継続・展開しやすくなります。
そのためには「現在の企業価値を知ること」「企業価値を高めるためのプロジェクトへ投資していくこと」が重要です。
「自社を黒字経営で価値が高く、将来性のある企業にしたい」と考えている方は、コーポレートファイナンスについて学び、うまく利用していきましょう。