「いつか起業したい」と思っていても、自身の「年齢」が気になって思いとどまるケースは珍しくありません。
実際のところ、起業に年齢は関係あるのでしょうか?また、起業者の平均年齢や、起業にベストな年齢について知りたい方も多いでしょう。
そこで今回は起業と年齢の関係や、起業家の年齢ボリュームゾーン、起業する年齢ごとのメリット・デメリットをご紹介します。起業に際し失敗のリスクを避けたい方、「今から夢が実現できるのか……?」と不安な方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
起業にベストな年齢は?
起業には会社員のような「定年退職」がありません。つまり、年齢は全く関係ないといえます。
また、起業に対するスタンスやビジネスの内容、業種によってもベストな年齢は変わります。
建設業や卸売業、小売業などのように、業種によっては50~60代に起業したほうが上手くいくケースもあるからです。
また10代の未成年が起業する場合は、各種手続きにおいて親の許可、同意が必要になるなどの制約も生じます。
こうした法的な決まりを除けば、ベストな年齢は一概に決められず、自分自身で決めるものだといえるでしょう。
むしろ「何歳であっても、アイデアや行動次第で起業できる」と捉えれば、起業に対するハードルも低くなります。
起業家の年齢ボリュームゾーンは「30~40代」、平均年齢43.7歳
2022年、日本政策金融公庫が発表した「2021年度新規開業実態調査」によると、起業家の年齢分布は以下のようになっています。
起業家の年齢(年代) | 割合(%) |
---|---|
29歳以下 | 5.4% |
30歳代 | 31.3% |
40歳代 | 36.9% |
50歳代 | 19.4% |
60歳以上 | 7.0% |
表からもわかるように、30~40代が6割以上を占めており、起業年齢の平均は43.7歳です。
また、50歳代の起業割合も19.4%となっており、「ある程度の社会人経験やスキルを積んでから起業したい」という考えの表れでもあると推測できます。
起業年代別(10・20・30・40代以降)のメリット、注意点とは?
先述のとおり、起業には年齢制限がありません。また年代によって異なる強み・注意点があります。
それぞれの年齢で考えられるメリット、注意点を見ていきましょう。
10代で起業するメリット・注意点
近年では10代で起業する方も増えています。10代で起業するメリットは、以下のとおりです。
- 柔軟かつ自由な発想でビジネスを始められる
- 学生向けの起業支援が豊富(ビジネスコンテストや自治体のサポート事業など)
- 資本家からの注目を受けやすく、出資チャンスが多い
社会に染まっていない10代は、既存の枠にとらわれない自由な発想ができる点がメリットです。
こうした10代ならではのアイデアに期待し、民間団体や自治体、公益財団法人などでは資金援助、キャリアプランの助言などさまざまな支援を行っています。
また10代での起業は世間的にも大きな注目を集められるため、資本家などからの支援を受けやすい面もあります。
一方、注意点としては以下の3つが挙げられるでしょう。
- 知識、社会経験が未熟ゆえ失敗を招きやすい
- 銀行口座開設やオフィスの賃貸契約などに保護者(または代理人)の同意書が必要
- 学業との両立が難しい
社会人としての経験がない年齢での起業は、知識や経験不足から失敗に終わりやすい傾向があります。また起業に必要な手続き・契約・登記などには、保護者や代理人の同意書が必要になるため、成年後の企業に比べるとハードルは高めです。
ビジネスに費やす時間と学業との両立が難しい場合も多いため、スケジュール管理、タスク管理のスキルも必要になるでしょう。
20代で起業するメリット・注意点
大学生や社会人としてデビューした20代に起業をする場合、以下のようなメリットがあります。
- 大学生の場合は起業準備に時間を割きやすい
- 万が一失敗したとしても、若いため軌道修正が可能
- 気力、体力が十分にある
学部・学科にもよりますが、大学生になると時間の余裕が出てくることが多いです。そのため、大学生のうちに起業する場合、準備に時間を割きやすいメリットがあります。
また、起業後に万が一失敗したとしても、年齢が若いため正社員などの別の働き方に再トライしやすいでしょう。
気力・体力ともに十分にある年齢ですので、立ち仕事や体を使うビジネスで起業するのにも向いています。
その一方で、注意点もあります。
- 10代起業に比べると注目されにくいため、出資のハードルは高め
- 意識して人脈作りや集客手段の確立をしない限り、ビジネスが軌道に乗りにくい
- 収入も低く、自己資金を貯めることが難しい
20代は年齢も若く、10代と同じく「柔軟な発想ができる」という利点があります。しかしながら、10代での起業に比べるとメディアや世間の注目が集めにくいのがネックです。ビジネスを軌道に乗せるには、自らが意識して人脈づくりを行い、集客を徹底する必要があります。
また20代の場合、働いて自己資金を貯めようとしても、キャリアが浅いゆえ賃金が低めな傾向に。そのため自己資金を貯めるのに時間がかかるデメリットもあるのです。
30代で起業するメリット・注意点
社会人経験を積み、30代で起業するメリットは次のとおりです。
- 社会経験やスキル、人脈、業界知識を活用し起業できる
- 気力体力が豊富で、スピード感を持って行える
- 会社員として働いていた場合、自己資金を溜めやすい
会社勤務などを通じて社会経験やスキル、業界知識を身につけ、人脈も豊かになる30代。起業する場合も、気力や体力が十分にある年齢のため、スピード感を持って行動しやすいでしょう。
また、20代の頃に比べれば給与額も上がっており、自己資金を溜めやすいのも30代起業のメリットです。
- 家族がいる場合は話し合い、了承を得なければならない
- 結婚、出産、マイホーム購入といったライフイベントを考慮した経営計画が必要
- 住宅ローンやカーローン、クレジットカード作成は起業後しばらく難しい場合も
一般的に30代は、結婚や出産、マイホームの購入といったライフイベントが増える時期です。
この時期に起業をする場合、家族に了承を得ないとトラブルの元になります。
また、住宅ローンやカーローンなどを申し込む予定の方は要注意です。個人事業主となった場合、社会的信用度は正社員に比べ低くなります。また審査の要件(開業後1~4年経過している、など)に適合しなければ、審査に落ちてしまう可能性が高いでしょう。大きな買い物は、会社員として働いている間に済ませておきましょう。
40代で起業するメリット・注意点
会社では「管理職」を担うことも多い40代。40代で起業した場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
- 社会経験、スキルをフル活用して起業リスクを軽減できる
- 十分な自己資金を準備したうえで起業でき、融資などでも有利になりやすい
40代ともなるとこれまで蓄積してきた社会経験、スキル、知識は相当なものになります。また十分な人脈も形成されており、ビジネスを営むうえで有利にはたらくでしょう。
また、若いうちから自己資金を貯めていたのであれば、十分な資金を持った状態で起業が可能になります。自己資金が十分にあると金融機関からの信用性も高まるため、融資の審査にも通りやすくなるのです。
- 起業に失敗した場合のリスクは高い
- 健康面の問題なども生じやすく、気力、体力の減退が始まる
40代は年齢的にも再就職先を探すのが難しく、転職活動が難航したり、前職よりも低い待遇で妥協せざるを得なかったりする可能性があります。
また、40代以降になると、年齢的にも健康面での問題が生じやすくなります。体力の衰えにより疲れを感じやすくなり、それがメンタル面にも影響すれば、ビジネスの意欲が減退する原因になるでしょう。
このような事態を避けるには、ワークライフバランスを考慮した働き方を構築する必要があります。
50代以降で起業するメリット・注意点
50代や60代など、シニアと呼ばれる年齢になってから起業するメリットは次のとおりです。
- 定年がなく、その気になればずっと働ける
- その気になれば会社の退職金を開業、会社設立の自己資金にもできる
- シニア起業家向けの支援制度が利用できる
起業には定年がなく、その気になればいつまでも働けるメリットがあります。働くことで人生にやりがいを持てれば、より充実した生活を送ることができるでしょう。
またシニアの場合退職金を使って起業ができるため、失敗のリスクを軽減できるメリットもあります。
そのほか近年では、自治体や政府で高年齢層向けの補助金、起業セミナーなどのサポートも行われています。こうした制度を利用すれば、より起業がしやすくなるでしょう。
- 健康上の不安が伴う
- 失敗したときの転職が難しい
50代以降の起業において注意したいのが、健康面での問題です。年を重ねるにつれて体調不良や病気が起こりやすくなるため、よりワークライフバランスを重視した事業計画を意識する必要があります。
また、起業後に失敗した場合、再就職も困難なケースが多く見られます。リスクの少ない事業で起業をするなど、負担の少ない起業計画を心掛けると良いでしょう。
起業にベストな年齢は人それぞれ!知識を付けて独立開業しよう
起業に適した年齢はビジネスの目的、業務内容などによっても変わります。
また、年齢だけを武器に企業をしても、準備が整っていなかったり、事業計画が不十分だったりすれば失敗に終わる可能性は高いでしょう。
つまり起業をするには、正しい知識を身につけ、事前準備を十二分に行うことが大切。そのうえで、自分が「起業したい」と思ったタイミングが最良なのではないでしょうか。
起業を漠然と考えている方は、ライフプランと合わせて将来の展望を考えてみるのも良いかもしれません。