会社の経営や資金口、人材確保などで忙しい経営者は、「時間を大事にしたいから」一人で行動することも多いでしょう。その一方で、孤独感を抱えて苦しんでいる経営者も少なくありません。
孤独がやがて深刻な悩みとなれば、精神的に追い詰められ、経営にも影響が及ぶ可能性があります。
今回は、経営者が孤独を感じやすい5つの理由、5つの解消法をご紹介します。悩みと向き合い成長すれば、経営にも良い変化が表れるはず。孤独に悩んでいる経営者は、ぜひご参考にご覧ください。
経営者は孤独?孤独を感じやすい理由5つ
経営者が孤独を感じやすい理由とは何なのでしょうか? そこには、次の5つの理由が考えられます。
- 最終決定が自己責任である重圧
- 友達付き合いの変化
- 従業員とは立場が違うため孤独を感じる
- 本音で相談できる相手がいない
- 周りとの価値観の違い
最終決定が自己責任である重圧
経営者は経営に関わるすべての意思決定を行う存在です。また意思決定に対し、最終的な責任を負うのもまた経営者です。意思決定の結果、経営が悪化したり、従業員が問題を起こしたりしてしまっても、その責任は経営者がすべて負います。
このように大小さまざまな意思決定、および責任を背負う経営者は、重大なプレッシャーを抱える場合が少なくありません。従業員を抱えていれば、本人及び家族の将来についても責任を負うことになるでしょう。
しかし、こうした悩みを従業員に打ち明けるのはなかなか難しいこと。結果的に悩みやプレッシャーを理解してもらえず、孤独感にさいなまれてしまうのです。
友達付き合いの変化
経営者になると、周囲の人間関係が変化することがあります。特に多いのが「サラリーマンの友達とスケジュールや話題が合わなくなり、疎遠になってしまった」というケースです。
会社員と経営者では、ビジネスに対する意識や目線が異なります。共通の趣味を持つ相手であれば通じる話題も多いですし、関係も途切れにくいでしょう。しかしまったく違う業界の、違う立場の人同士となれば、話題が合わなくなってしまうこともあるのです。
仕事観の違いから何となくお互いに没交渉になり、そのまま交友関係が途絶えてしまえば、悩みを共有してもらえる相手がいなくなってしまいます。結果、孤独を感じやすくなるのです。
従業員とは立場が違うため孤独を感じる
友人関係の変化でもお伝えしましたが、立場の違う人間同士では話が合わず、相談しても解決しないといったケースがあります。特に、経営者と従業員とでは、視座の違いによる噛み合わなさが顕著です。
経営者は常に経営のことを考え、会社や従業員への「責任」を背負っています。一方従業員は、自身の生活を考えながら働いているケースがほとんど。会社の経営について真剣に考えるというよりは、自分目線で仕事に向き合う人が大半なのです。
それぞれの立場による“考え方、見えている景色の違い”があると、悩みの共有が難しくなります。話を聞いてもらえたとしても、真の理解やアドバイスは期待できない可能性が高いのです。
「腹を割って話したけれど、分かってもらえない」と感じれば、余計に孤独感をつのらせることになるでしょう。
本音で相談できる相手がいない
「事業展開や設備投資などについては相談できる相手がいるが、個人的な悩みは相談すべきではない」と考える経営者は少なくありません。腹を割って本気で相談したり、弱音を吐いたりできる相手がいないのです。
かといって、同じ立場の「経営者」へ相談できるかというと、そうでもありません。
利害関係を考えると競合の知り合い経営者には相談できなかったり、プライドが邪魔をして本音を打ち明けられなかったり……というケースも多いからです。
自身のプライドや腹の探り合いなどが複雑に絡んでいて、相談ができないとなれば、孤独はより深いものとなっていきます。
周りとの価値観の違い
経営者仲間などの“本音で話し合える相手”がいたとしても、周りの人間との価値観が大きくズレていると孤独を感じることがあります。
それはさながら、体育会系のクラスにひとりだけ理系の人間が混じるようなもの。周りの価値観との相違が自身の孤独をより強く自覚させ、結果的に孤立の道を選んでしまうのです。
経営者が孤独になるリスクとは?
「経営者は孤独なぐらいがちょうどいい」と前向きにとらえる方は多いですが、リスクであることには変わりありません。
「孤独」にはさまざまな弊害があり、心身や経営へ深刻な影響を及ぼすことがあるからです。
メンタルヘルスへの影響、体調不良
孤独によってもたらされるもっとも深刻な影響が、メンタルヘルスの悪化です。
少しの孤独感であれば、解消も簡単であり、メンタルへの影響も一時的なものにとどまります。
しかし、深い孤独感を抱いたまま長期間過ごすと、不安感や自己否定、自己肯定感の低下などの影響があらわれます。メンタルにとって大きな負荷がかかることで、うつ病や適応障害などの精神疾患へと発展してしまうことがあるのです。
また、孤独によるストレスや精神的負担を抱えると、体調にも影響が出ることがあります。
体が重くだるい、熱っぽい、お腹や頭が痛い……といった体調不良はもちろん、病気などで体を壊してしまう原因にもなりかねません。そうなれば経営どころではなくなってしまうでしょう。
判断を鈍らせ、柔軟な思考ができなくなる
経営には素早い判断、柔軟な思考などが求められます。しかし孤独感でメンタルが不調になると、記憶力や判断力がダウンします。
組織のトップが適切な経営判断ができなくなってしまった場合、経営にも悪影響を与えることになるでしょう。
ワンマン経営になりがち
強い孤独感を抱いている人は、人間不信に陥ることがあります。
そうなると部下や外部の経営者に「相談」することを避けるようになり、結果としてワンマン経営になってしまうのです。
運動不足やお酒、たばこなどに走って身を滅ぼすことも
経営者の中には、孤独を紛らわそうとしてお酒やたばこ、暴飲暴食に走る方も少なくありません。
また気分が落ち込み、体を動かすのがおっくうになることで運動不足になられる方もいます。健康管理がおろそかになれば、メンタルのみならず体もボロボロになってしまうでしょう。
経営者の孤独を解消する5つの方法
ここまでは、経営者が孤独を感じる理由やリスクをお伝えしてきました。しかし、孤独が良くないと知っていても、「解消法」を知らなければ対処はできません。何も対策しないままでは、現状を好転させることは難しいでしょう。
経営者として孤独を感じた場合は、以下の5つの対策を試してみましょう。
- 趣味に没頭し、ストレス解消する
- マインドセットを身につける
- メンターを見つける
- 時間の管理を徹底し、ワークライフバランスを改善する
- 経営者が集まるコミュニティへ参加する
趣味に没頭し、ストレス解消する
心から楽しめる趣味は、経営者の孤独感を解消してくれます。事実、経営者の中には、会社経営と同じぐらいの熱量で趣味を楽しんでいらっしゃる方も少なくありません。
趣味の内容は、旅行や音楽、映画鑑賞など、何でもかまいません。ご自身が没頭して楽しめる趣味を見つけてみましょう。
また、ジョギングやスポーツなどの体を動かす趣味なら、健康維持にもつながって一石二鳥です。
マインドセットを身につける
孤独感を抱いている経営者は、“孤独を味方にするマインドセット”を身につけることも大切です。
そもそも孤独には、悪いことばかりではありません。一人の時間を持つことは、集中して思考を深く巡らせるために必要だからです。
まずは、「孤独は辛いもの」という考えを捨ててみましょう。むしろ「孤独=時間を好きなように、有効に使える」と考えれば、自身の振り返りをしたり、ビジネスの今後の展開について考えたりといった“思考整理”ができるようになります。
常に整理された考えを持つことにより、経営者の重要な仕事である“意思決定”“経営判断”がスムーズになるはずです。そうなれば、ビジネスの成功を叶えられる可能性も高いでしょう。
メンターを見つける
孤独に悩んでいる経営者は、第三者の立場で物事を一緒に考えてくれる「メンター」を見つけてみるのもおすすめです。第三者とは、“異業種の経営者”や“経営者専門のコーチング、コンサルティング”などが当てはまります。
このような人たちは、経営の辛さ、大変さ、面白さなどを共有できるため、相談もしやすいでしょう。また利害関係のない相手であれば、込み入った話をしたとしても経営、競合などの影響を気にしなくて済みます。
辛くなったときのために、心ゆくまで話を聞いてくれるメンターを確保しておきましょう。
時間の管理を徹底し、ワークライフバランスを改善する
経営者は気を抜くと“セルフブラック”状態になりがちです。
特にモチベーションの高い人ほど仕事を詰め込みすぎて、プライベートの時間が全く取れない……といったことにもなりかねません。そうなれば、社会的なコミュニティにも所属しづらくなり、孤立してしまう可能性が高いでしょう。
そこでおすすめなのが、タイムスケジュール管理を徹底し、少しでも自分の楽しめる時間を持つこと。
ワークライフバランスが改善し、仕事以外に楽しめる時間がつくれれば、社会的なつながりを持ちやすくなります。その結果、孤独が解消される可能性も高いでしょう。
経営者が集まるコミュニティへ参加する
人との関わりを持ちたいという方は、経営者同士のコミュニティに所属するのもおすすめです。
- 商工会議所などで開催されるセミナーに参加する
- 経営者向けのオンラインサロンやコミュニティへ参加する
- 知人に経営者を紹介してもらう
- SNSで経営者仲間を探す
同じ仲間と悩みや喜びを共有できれば、人とのつながりがあるという安心感により、孤独感も解消されます。
また形成した人脈から、事業のヒントを得たり、新たなビジネスのきっかけが生まれたりするメリットもあるでしょう。
身近な範囲に相談できる相手がいない場合は、こうしたコミュニティを活用してみましょう。
経営者は孤独を受け入れることも大切
経営者は孤独を受け入れることも大切です。ただし孤独感が強まりすぎると、メンタルヘルスや体調に不調をきたすこともあるため、解消しながらうまく付き合っていくことも大事でしょう。
経営者の職業病ともいえる「孤独」。孤独をコントロールし、解消しながら高みを目指しましょう。