法人として登記をする場合、同時に印鑑登録をするケースがほとんどです。その際にはどのような手順で印鑑登録を進めればよいのでしょうか?
ここでは法人の印鑑登録について、個人の印鑑登録との違いや印鑑登録の手順を解説。さらに、印鑑カードの交付手順や、印鑑証明書の発行についてもご紹介します。
これから法人印鑑を作る方や、法人登記をされる方はぜひ参考にしていただき、手続きをスムーズに進めましょう。
法人の印鑑登録とは?
印鑑登録は、特定の印鑑を公的機関へ登録する制度です。
登録時には印鑑を押したときの「印影」を届け出るとともに、データとして記録してもらいます。これにより、その印鑑は「実印」として法的な効力を持つ印鑑となるのです。
なお法人の印鑑登録では、登録した印鑑を「代表者印」「会社実印」とも呼びます。
法人の印鑑(会社実印)は個人の印鑑と違う
印鑑登録には個人向けのものと法人向けのものがあります。個人の場合は、苗字または下の名前で作成した丸印を登録される方がほとんどです。
個人の印鑑登録では、印影が8mm以上、25mm未満の正方形に収まる大きさの印鑑が実印として登録可能です。
一方、法人の印鑑登録では10mm以上、30mm以下である必要があります。
一般的にはその中間となる「18mm」で作成することが多いので、覚えておくとよいでしょう。
法人の会社実印には、二重の円で構成されている「丸印」が使われます。
外周には会社名を、真ん中の円には「代表取締役印」という文字を彫るのが一般的です。
ちなみに、ゴム印やインク式スタンプ印(シャチハタなど)は経年劣化で印面の変化が生じやすいため、法人の印鑑登録には使えません。
印鑑登録には木や水牛、ステンレスなどの素材へ彫って作成した印鑑を使用しなくてはならないので、注意しましょう。
法人印鑑の種類についてはこちらの記事もご覧ください。
法人の印鑑登録は「法務局」で手続きする
個人の印鑑登録は、居住地の市区町村役場で登録手続きをします。
一方、法人の場合は法務局での手続きが必要です。
法人を設立する場合、法人登記と印鑑登録の手続きをまとめてすませるケースが多いかと思います。
登記予定の住所を管轄する法務局については、法務局公式サイトから検索できますので、確認しておきましょう。
参考リンク:管轄のご案内:法務局
法人の印鑑登録で必要なものは?
法人の印鑑登録をする際には、以下の3つが必要です。
- 会社実印
- 代表者の実印(個人の印鑑登録に使ったもの)
- 代表者本人の印鑑証明書(発行から3カ月以内)
法人の印鑑登録をする際には、申請者本人の印鑑証明書が必要です。
法人印鑑登録に行く前に、ご自身の実印の印鑑登録をすませておけば、その後の会社設立手続きがスムーズになります。
個人の印鑑登録は市区町村役場で行う必要があるので、忘れずに準備しておきましょう。
- 個人用の実印
- 印鑑登録の申請書(自治体または自治体のサイトで入手可能)
- 本人確認書類
- 登録手数料(200~500円/印鑑登録カードの発行に必要)
なお、登記にあたって初めて自分のはんこの印鑑登録をする場合は、ついでに「印鑑証明書」も発行してもらいましょう。印鑑証明書の発行には数百円の手数料がかかります。
代理人が提出する場合
代理人が提出する際に必要になるものは、本人提出の場合と同じです。
ただし代理人が印鑑届出書を提出する場合は、同届出書内の「委任状」を作成しておく必要があります。
委任状は代表者本人が記入しなくてはならないため、代理人に頼む場合は要注意です。
法人の印鑑届出書の書き方は?印鑑登録の手順を紹介
法人の印鑑登録をするには「印鑑(改印)届出書」という書類を提出します。
印鑑届出書は法務省の窓口でもらうか、公式サイトからダウンロードして準備しましょう。
参考リンク:法務省|印鑑(改印)届出書様式
法務省の公式サイトでは、印鑑届出書の書き方例が掲載されていますので、参考にしながら記入していきましょう。
引用元:法務省|印鑑(改印)届書 記載例
代表者本人が提出する場合
- 上部枠外の「申請先の法務局名」「申請(提出)年月日」を記入
- 左上の枠内に届け出をする「会社実印」を押す
- 右上枠内の項目に必要事項を記入
- 商号・名称
- 本店・主たる事務所の住所
- 印鑑提出者(資格・氏名・生年月日)
- 会社法人等番号(わかる場合に記入)
- 左部「印鑑カードは引き継がない」にチェック
- 届出人が本人の場合は「印鑑提出者本人」にチェック
- 印鑑提出者(代表者)の住所、氏名を記入
- 印鑑提出者(代表者)の実印を右枠内に押す
- 代表者の印鑑証明書+印鑑届出書を合わせて提出
※登記の際に使った“個人の印鑑証明書”をそのまま印鑑登録で使いたい場合は、「市区町村長作成の印鑑証明書は、登記申請書に添付のものを援用する。(注4)」へチェックを入れましょう。
代理人が提出する場合
法人の代表者ではなく、代理人が提出する場合は、届出人(注3)の「□代理人」へチェックを入れましょう。
またその下の欄には代理人の住所氏名を記入します。
代理人が申請する場合は、右側枠内への押印は必要ありません。
さらに、代理人が提出する場合は「委任状」欄へ記入が必要です。
引用元:法務省|印鑑(改印)届出書様式
①窓口に来た代理人の住所、氏名
②□印鑑(改印)の届出へチェック
③申請年月日
④代表者の住所、氏名
⑤代表者の実印(印鑑登録したもの)
以上を漏れなく記入、押印しましょう。
その場で印鑑カードを受け取る場合は、後述する「印鑑カード交付申請書」の委任状欄にも記入が必要です。
あらかじめ2つの用紙をもらうかダウンロードしておき、まとめて記入しておくとスムーズです。
法人の印鑑登録をしたら「印鑑カード」を受け取ろう
法人の印鑑登録が済んだあとは「印鑑カード」も交付してもらいましょう。
印鑑カードはのちに法人の印鑑証明書を取得する際に必要になるものです。印鑑登録時にまとめて交付を申請しておくと、後から手続きをする手間が省けます。
印鑑カード交付申請書の書き方
印鑑カードの申請用紙(印鑑カード交付申請書)は法務局でもらうか、公式サイトからダウンロードができます。
参考リンク:法務省|印鑑カード交付申請書 申請書様式
記入時には印鑑登録をしたときの会社実印を押印します。
かすれるなどして印影が不鮮明になると受理されない場合があるので、くっきり写るように押しましょう。
代理人が受け取る場合は、申請人の「□代理人」へチェックを入れ、代理人の住所・氏名、電話番号を記入します。
さらに、中段の「委任状」内にも必要事項を記入しましょう。要領は印鑑届出書と同じです。こちらも印鑑届出書と同様に、代表者本人が記入してください。
- 代理人の住所、氏名
- 記入年月日
- 代表者の住所
- 代表者氏名
- 代表者個人の実印(印鑑登録したはんこ)
鑑カードの申請・受け取り方法
印鑑カードの申し込み、および受け取りには「窓口への直接提出」「郵送」の2つの方法が選べます。
窓口で申し込み・取得する場合
法務局の窓口で申し込みをする場合は、記入した印鑑カード交付申請書を持参し提出すればOKです。
内容に問題がなければ、10分程度で発行、受け取りができます。
郵送で申し込み・取得する場合
郵送で印鑑カードの発行申し込みをする場合は、法務局宛に以下をまとめて送付します。
- 記入、押印ずみの印鑑カード交付申請書
- 返信用封筒(返信先を記入、送料分の切手を貼ったもの))
こちらは普通郵便で返送してもらう場合に必要なものですが、宅急便など追跡・記録の残る方法で送ってもらいたい場合は「着払い伝票を貼った封筒」でもかまいません。その場合も、返送先の住所を記入しておきましょう。
ちなみに、印鑑カードの郵送受け取りは「代表者の自宅」または「本店所在地(主たる事務所)」でしかできません。そのほかの場所へ送ってもらおうと思っても断られてしまうので、注意しましょう。
法人の印鑑証明書を取得したいときは?
法人の印鑑登録を済ませたあとは、印鑑証明書を発行できるようになります。
印鑑証明書の発行には、1通につき450円の手数料がかかります。
印鑑証明書を発行するには以下の4つの手段がありますので、都合の良い方法を選びましょう。
①法務局窓口で請求 | 法務局の窓口で直接請求する方法。 法人設立直後に窓口で印鑑登録をした場合は、ついでに5~6枚ほどまとめて発行しておくと便利です。 |
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②証明書発行請求機で発行 | 法務局に証明書発行請求機が設置されている場合は、窓口に並ばずに印鑑証明書が発行できます。 |
③郵送請求 | 郵送で交付申請を行う方法。 以下を法務局へ送付すると、後日印鑑証明書が返送されてきます。 ・印鑑証明書交付申請書(必要事項を記入) |
④オンライン申請 | 「登記・供託オンライン申請システム」からオンラインで申請する方法。 先に法務局で「法人の電子証明書」を取得するための手続きが必要になります。 なお、オンライン申請をした場合、印鑑証明書の手数料が少し安くなります。(郵送交付は1通410円/窓口受け取りは1通390円) |
①~③については「印鑑カード」の提示、および送付(郵送の場合)が必要ですので、忘れないようにしましょう。
法人の印鑑登録は登記とセットで済ませておくのがおすすめ
印鑑登録は法務局で手続きをする必要があります。そのため、法務局へ法人登記をしに行く場合は、まとめて印鑑登録の手続きも済ませておくと手間が省けます。
法人設立時はやるべきことが多いため、少しでも手間やタイムロスを減らせる工夫を心掛けましょう。