近年ではネットショップ開設サービスの充実などもあり、個人でネットショップを立ち上げるケースが増えています。そんな中、ショップ開設の壁になりやすいのが「自宅住所の公開」です。
ネットショップを開設するには特定商取引法で決められた項目をサイト上に掲載する必要があります。しかしご自宅でネットショップを開く場合、必然的にプライベートの住所や電話番号といった個人情報を不特定多数が目にする場所へ掲載しなければならず、抵抗感を抱く方が多いのも事実です。
そんなときに便利なサービスが「バーチャルオフィス」。バーチャルオフィスを利用することで、プライバシーを守りながら安全にネットショップ運営ができるようになります。
本記事ではネットショップ運営に便利なバーチャルオフィスについての基礎知識や、ネットショップに深いかかわりのある「特定商取引法」のルール、バーチャルオフィスの選び方を解説します。
「これから個人でネットショップを開設したいけれど、自宅住所は公開したくない……」とお考えの方は、ぜひ本記事をご参考にしてみてください。
バーチャルオフィスとは?
バーチャルオフィスとは、ビジネスで使える住所や、オフィス機能の一部をレンタルできるサービスです。
バーチャルオフィスでは郵便物の受け取り・転送サービスや転送電話の利用、電話代行などのサービスが利用できるほか、開業届や法人登記の住所としても使えます。
一般的な賃貸オフィスを利用する場合、敷金・礼金や数か月分の家賃が初期費用として必要になりますが、バーチャルオフィスの場合は敷金・礼金も不要ですし、月数千円程度で借りられます。
個人でネットショップを開設する場合など、コストを抑えて自宅起業したい方には特におすすめのサービスといってよいでしょう。
バーチャルオフィスとレンタルオフィスの違い
バーチャルオフィスと混同されやすいものに「レンタルオフィス」があります。
バーチャルオフィスは住所や電話番号といった“一部のオフィス機能”をレンタルするサービスです。
一方、レンタルオフィスはオフィスのフロア内の一角(または1フロア)にある“物理的なオフィス空間”を借りるサービスである点が大きな違いです。
レンタルオフィスは空間のほかに机や棚などの什器などもセットで利用できるため、初期コストをかけずオフィス環境を整えられること、実務作業ができるスペースが借りられることが強みです。
ただし、レンタル費用はバーチャルオフィスに比べると高めです。
ご自宅で業務関連の作業や在庫管理が可能な場合は、バーチャルオフィスのほうがコストを抑えられます。
バーチャルオフィスの市場規模
バーチャルオフィスの市場規模は2022年に472億米ドルともいわれており、2029年までに1,376億4,000万米ドルにも到達するとの予測もあります。
とりわけ日本を含むアジア太平洋地域においては、世界のバーチャルオフィス市場で最高のシェアを占めるとも予想されており、今後ますます規模が拡大する可能性が高いでしょう。
(参考:Virtual Office Market: Size, Dynamics, Regional Insights and Market Segment Analysis)
このような予測が立てられた理由には、バーチャルオフィスが通常のオフィスに比べかなり安価なこと、そしてコロナ禍以降のリモートワークの浸透があると考えられます。日本においては個人でネットショップを開設する方が増加したことも背景のひとつといえるでしょう。
また所定のオフィスを持たず経費削減できる点や、リモートワークを望む従業員の割合が増加している点などから、バーチャルオフィスを利用してオフィスをスリム化し、利益アップや生産性の向上を望む企業が増加傾向にあります。
ネットショップ開業でのバーチャルオフィス利用のメリット
自宅でネットショップを開業するにはプライベートの住所・電話番号を公開することになります。バーチャルオフィスを利用するとプライバシーを守りながら安全にネットショップ運営ができるほか、さまざまなメリットが得られます。
本項ではネットショップ開業時にバーチャルオフィスを利用するメリット3つをご紹介します。
ネットショップで自宅住所・電話番号を公開せずに済む
バーチャルオフィスを利用する最大のメリットは、ネットショップに自宅の住所・電話番号を公開せずに済むことです。
ネットショップでは特定商取引法に基づく表記として、代表者名、住所、電話番号を記載する義務が生じます。しかしご自宅でネットショップを開設したい場合、個人情報を一般公開することになってしまうため、「いたずらやストーカーなど、悪用されたらどうしよう」と心配になりますよね。
またいたずら目的ではなくとも、お客様が住所に直接訪ねてきたり、飛び込み営業が訪ねてきたりする可能性もあります。
バーチャルオフィスの住所・電話番号を利用すれば、自身のプライベートな情報をネット上へ公開せずに済みます。さらに、ネットショップによっては商品の発送元(出荷元)住所、返品先住所としてもバーチャルオフィスの住所を利用できるため、プライバシーを守りながら安全に運営が行えます。
ショップのイメージアップにつながる
バーチャルオフィスの多くは都心の一等地の住所を提供しています。バーチャルオフィスを利用してネットショップを開設すると「一等地にあるショップ」という印象を与えられるため、ショップに対する信頼性の向上、イメージアップにもつながります。
ネットショップは売り手の顔が見えない分、お客様は公開されている情報で「信用できるかどうか」を判断します。よって「有名」「一流」というイメージの強い住所を利用することで、信頼度を高められるのです。
コストを抑えて自分のお店が持てる
ネットショップで利益を伸ばすためには、売り上げを伸ばすだけでなく「経費を抑えること」が重要です。とりわけ固定費である「事務所や店舗の賃貸料」については、バーチャルオフィスを利用することで大幅に削減が可能です。
たとえば梱包や発送などの作業、および在庫商品の管理はご自宅で行い、連絡先としての住所・電話番号はバーチャルオフィスを使用すれば、倉庫のレンタル大や事業所の設置費用を抑えられます。
事業が軌道に乗り規模の拡大を検討するようになるまでは、バーチャルオフィスを利用して賢く節約し、利益率を上げる方法がおすすめです。
ネットショップに掲載する特定商取引法とはどういったものなの?
特定商取引法は、正式名称を「特定商取引に関する法律」といいます。ネットショップを立ち上げるときには、この法律に基づいて事業者の情報を必ず表示しなければならないということが、法律で義務付けられているのです。
通信販売はときにトラブルが起きることもあるため、販売者と消費者とのトラブルを避けるために特定商取引法があります。法律というと難しいことのように感じる方もいると思いますが、やるべきことは意外とシンプルです。
法律に従ってネットショップの情報をきちんと表記すれば、無用なトラブルを避けて安心してネットショップを運営できますよ。
特定商取引法に基づく表記に記載する必須項目について
特定商取引法に基づく表記には、以下の項目の記載が必要です。
- 事業者名
- 所在地
- 連絡先
- 商品の販売価格
- 送料などの商品以外の付帯費用
- 代金の支払い時期
- 代金の支払方法
- 商品等の引渡し時期
- 返品の可否と条件
ネットショップ内に「特定商取引法に基づく表記」という専用ページを作り、これらの情報を記載していきます。
事業者名の欄には、ネットショップを個人で運営している場合には氏名を、法人ならば事業者の名称と代表者の氏名を表示しなくてはなりません。
所在地については現在使用している住所を、連絡先の欄には電話番号とメールアドレス、問い合わせへの対応が可能な時間帯を記載します。
商品価格については「商品紹介ページをご参照ください」としても問題ありません。
支払いは前払いか後払いか、クレジットカードが使えるかといった点についても、消費者が理解しやすいように書いていけばOKです。
代金や送料に関する情報は曖昧にするとトラブルが起きることもあるので、明確に表示しましょう。
特定商取引法について詳しく知りたい方は、こちらのコラムもご参考にしてみてください。
ネットショップは住所を非公開にできない
ネットショップサービスを利用した場合、住所を非公開にはできません。
その理由について下記にまとめました。
- 特定商取引法で定められている
- 匿名も私書箱も利用できない
それぞれ解説していきます。
特定商取引法で定められている
近年、個人でも気軽にネットショップを開くことができる、「ネットショップ作成サービス」が増加しています。
- メルカリShops(メルカリショップス)
- BASE(ベイス)
- Makeshop
- Shopify(ショッピファイ)
- カラーミーショップ…など
これらネットショップサービスはそれぞれ特徴の違うサービスを展開しており、自分の売りたい商品のカテゴリや操作性、手数料などで決めていく形になります。
さて、こういったネットショップサービスの多くを利用するには、「特定商取引法」に同意しなければなりません。
特定商取引法とは利用者保護の観点から定められているネットショップにおける法律のひとつで、「店舗名・店舗住所・店舗責任者」などの開示が必須とされています。
つまりこの法律に同意できなければネットショップは開けず、虚偽の申請にてショップをオープンさせた場合、行政処分などの対象になる可能性があるのです。
匿名も私書箱も利用できない
ネットショップの開示について同意はするが、できるだけ匿名か私書箱で許してほしい。
そういった方もいるでしょう。
しかし、特定商取引法ではこれらの申請も受け付けてはおらず、そのネットショップの所在地、そして責任者の氏名を正しく申請しなければなりません。
法人の場合は企業名で問題ありませんが、個人事業主の場合は屋号またはネット上などで通っているペンネームなどは利用できません。
あくまで、本人の本名で申請しなければならないのです。
個人の住所を公開する必要がない私書箱といった方法も特定商取引法では認められておらず、結果自宅を申請・開示しなければなりません。
“小さなネットショップだし、少しぐらいごまかしてもどうにかなるか”は、通用しないことを覚えておきましょう。
ネットショップを始めるための手順をご紹介!
ネットショップを始めるには、以下の手順で準備を進めていきます。
- 事業計画や仕入れ方法を決める
- 各種届け出、販売許可を取得する(必要な場合)
- 出店方法を決める
- 決済方法、配送方法を決める
- ネットショップの設計と開設
- 開業届の提出
初めに行わなければならないのが「何を、誰に、どうやって売るのか」という事業計画を立てること。
ターゲットや主軸となる販売商品、お店のコンセプトなどを決めたら、どうやって仕入れるのかを決定しましょう。
また、特定の商品を販売する場合は、法律で決められた届け出・販売許可が必要になります。
例えば自作化粧品なら「化粧品製造販売業許可」「化粧品製造業許可」を取得する必要があります。そのほか中古品、食品、輸入商品、酒類などの販売についても、所定の届け出や許可が必須です。
出店方法については「BASE」など無料で開設できるネットショップを利用するほか、大手ECモールへ出店する、独自のサイトを立ち上げるといった3つの方法があります。
もっともハードルが低いのは無料で開設できるネットショップサービスを利用する方法です。
出店方法を決定したあとは決済や配送の方法、ネットショップの設計を行い、晴れて開設となります。ショップページはお客様が利用しやすく、かつショップのコンセプトに合ったデザイン、ページ構成にすることが重要です。個人事業主として開業したい場合は、税務署へ開業届を提出します。
ネットショップを開くためのバーチャルオフィスの選び方
ネットショップを開くためにバーチャルオフィスを選ぶ際は、以下のポイントをチェックしましょう。
内容 | チェックすべきポイント |
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基本料金 |
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初期費用 |
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最低契約期間 |
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サービス内容・オプション |
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オフィスの住所、建物 |
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法人登記の可否 |
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基本料金や初期費用、最低契約期間、サービス内容や法人登記の可否についてはバーチャルオフィスの公式サイトで確認できます。不明点があれば直接問い合わせてみるとよいでしょう。
また、オフィスの住所については非公開としているところもありますが、住所を公開している場合はGoogle検索で建物の外観、立地などをチェックすることができます。犯罪に利用された経歴なども調べられますので、契約を申し込む前に一度検索してみることをおすすめします。
バーチャルオフィス関連でよくある質問
ネットショップ開設にあたってバーチャルオフィスを検討する際には、さまざまな疑問が生じることでしょう。ここでは、バーチャルオフィス関連で頻出する質問とその回答をまとめました。バーチャルオフィス選びのご参考にしてみてください。
バーチャルオフィスはどこを選んでもいいですか?
基本的にはどこのバーチャルオフィスでも問題ありませんが、一般的には都心部の一等地住所を選ばれるケースがほとんどです。
一等地の住所は対外的なイメージもよく、ネットショップの印象アップにつながるためビジネスでも有利に働く可能性が高くなります。
ただし、一等地住所であっても過去に犯罪に利用された経歴のある住所は避けるようにしましょう。
よさそうだなと思ったバーチャルオフィスがあった場合は、過去に犯罪に利用された経歴がないかを調べ、安全性を確かめてから申し込まれることをおすすめします。
バーチャルオフィスのデメリットはなんですか?
バーチャルオフィスでは同じ住所で多数の事業者が登録を行っているため、他の利用者と住所が重複してしまうデメリットがあります。
また郵便物の転送サービスが利用できるバーチャルオフィスはとても便利ですが、手元に届くまでにタイムラグが発生します。住所のみを借りるサービスのため、仕事用の作業スペースは他で確保しなくてはならない点にも注意が必要です。
ちなみに「バーチャルオフィスだと銀行の法人口座は開設しにくい」という噂がありますが、実際にはバーチャルオフィスでも法人口座を開設することは可能です。
バーチャルオフィスに税金はかかりますか?
バーチャルオフィスを利用する場合、事業所の認定はあくまでも自宅住所に適用されます。
バーチャルオフィスではあくまでも住所を借りているだけであり、実際にネットショップ事業を行っている事務所(人的設備や物的設備のある場所)は自宅であると判断されるためです。
よって税務上は事業拠点である自宅が事業所となり、納税地も自宅のある市区町村となります。
郵便物の転送サービスもあると便利
バーチャルオフィスの中には、バーチャルオフィスの住所宛てに届いた郵便物を受け取り、指定した住所(自宅など)へ転送してくれるサービスを行っているところも多く見られます。
ネットショップを開く際には、登録・作成手続きや決済代行会社との契約など、書面でのやりとりが必要になる機会が思いのほか多いものです。さらにお客様からの返品など、業務上オフラインで郵便物のやりとりをするケースも少なくありません。
郵便物転送サービスを利用していれば、受け取った郵便物を週1回、月1回といったペースで指定住所まで転送してもらえます。
急ぎの郵便物がある場合は店舗へ直接取りにいったり、郵便物の「即日発送オプション」等を利用したりすることでタイムラグなく郵便物を受け取ることもできます。
いずれも自宅住所を晒すことなく郵便物のやり取りができるため、大変便利です。
まとめ
本記事ではネットショップを開業する際におすすめのバーチャルオフィスについて解説しました。
バーチャルオフィスは住所のみを借りられるサービスであり、利用することでネットショップ開設時にプライベートの住所、電話番号の公開を防ぐことができます。ほかのオフィス形態にくらべ安価で借りられる点も魅力で、個人でネットショップを運営しようとお考えの方にはうってつけのサービスといえるでしょう。
これからネットショップを開設したい! とお考えの方は、ぜひバーチャルオフィスの利用を検討されてみてはいかがでしょうか。
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返品時の受け取りにもご対応できますので、「安くてネットショップに使える住所がほしい」という方はぜひご利用ください。