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所得控除とは?主な所得控除15種類や控除の仕組み、計算方法を解説

わたしたちが得る「所得」からは、所得控除としていくらかのお金を差し引くことができます。所得税などの税金は、差し引いたあとのお金にかかりますので、所得控除をうまく活用すれば節税効果が期待できる可能性もあるでしょう。

ここでは所得控除の目的やメリット、主な所得控除15種類をご紹介します。

所得控除とは?控除を設ける目的

所得控除とは、その年に得た「所得」から差し引けるお金のことを指します。

具体的には、年間の総収入から経費等を差し引いたあとの「所得」に対し、所得控除が適用されます。

年間の総収入-経費-所得控除=課税所得(合計所得額)

さらに、所得控除で差し引いたあとの金額が「課税所得」となり、決められた税率をかけて税金が計算される仕組みです。

所得控除には以下のような目的があります。

  • 最低生活費を保障するため
  • 所得を得るためにつかった「経費」を差し引くため
  • “税負担”を公平にするため

たとえば同じ年収400万円の家庭でも、独身世帯と子どもがいる世帯では支出額も異なるでしょう。

また、独身世帯であっても、自営業をしていて所得の多くを経費として使っていたり、医療費が多くかかっていたりする場合もあります。

このように、さまざまな事情があるにもかかわらず、“同じ年収帯の人”というくくりだけで同じ税額を課してしまうと、“税負担の不公平”が生まれます。
それを解消すべく設けられているのが、所得控除なのです。

所得控除を受けるメリット

所得控除を受けるメリットは以下の2つです。

課税額所得が減るので、節税につながる

所得控除を受けると、なにもしない場合に比べて節税効果が得られます。
所得税や住民税は「課税所得」に応じて算定されます。特に所得税は、累進課税(るいしんかぜい)といって、課税所得額が多くなるほど税率も上がります。

【所得税率の速算表(1,000円未満切り捨て)】

課税される所得金額税率課税後の控除額
1,000円 から 194万9,000円まで5%0円
195万円 から 329万9,000円まで10%9万7,500円
330万円 から 694万9,000円まで20%42万7,500円
695万円 から 899万9,000円まで23%63万6,000円
900万円 から 1799万9,000円まで33%153万6,000円
1800万円 から 3999万9,000円まで40%279万6,000円
4000万円 以上45%479万6,000円

引用元:No.2260 所得税の税率|国税庁

仮にもともとの課税所得が3,300,000円/所得税率20%だった場合、所得控除で20,000円控除を受けるだけでも、税率が10%へダウンします。

実際の所得税は3,280,000円×0.10-97,500=230,500円となり、330万円のときの所得税(232,500円)よりも2,000円税額が安くなります。

同じ税率でも、課税所得額が低くなればなるほど納付税額も低くてすみます。
所得控除によって、実質的な経済的負担を減らせるようになるのです。

払いすぎた税金は年末調整・確定申告後に還付されることもある

所得控除によって「払いすぎた税金がある」と見なされれば、年末調整や確定申告のあとに差額分が還付されるケースがあります。

ただし、計算の結果「納税額に不足がある」と判断された場合、追加で税金を納めなくてはならないケースもあるため注意しましょう。

基本的な所得控除15種類とは?

現在日本では、基本的な所得控除として15種類の控除があります。

中には適用条件をすべて(またはいずれか)満たさないと受けられない所得控除もあるので、あらかじめ中身を知っておくとよいでしょう。

1.基礎控除

基礎控除は、合計所得金額(すべての収入を合算し、経費などを差し引いたあとの所得)が2,500万円までの人に適用される所得控除です。

基礎控除は合計所得金額が2,500万円以下の人に対し適用されます。最高控除額は48万円(~2,400万円)で、その後は所得が50万円上がるごとに32万円、16万円と控除額が下がります。
合計所得が2,500万円を超えると、基礎控除は受けられません。

納税者本人の合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円
2,500万円超0円

引用元:No.1199 基礎控除|国税庁

家族構成や現在の状況により受けられる所得控除

以下は、家族構成や現在の状況などによって受けられる所得控除です。

2.扶養控除

その年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族がいる場合、扶養控除が受けられます。
控除額は扶養家族の年齢により異なります。

区分年齢などの条件控除額
一般の控除対象扶養親族16歳以上の扶養家族38万円
特定扶養親族19~23歳未満の扶養家族63万円
老人扶養親族(別居している場合)70歳以上で別居している扶養家族48万円
老人扶養親族(同居している場合)70歳以上で同居している扶養家族58万円

参考リンク:No.1180 扶養控除|国税庁

扶養控除を受けるには生計を一にしていること、扶養家族の合計所得が48万円以下(給与所得の場合は103万円以下)であることなどの条件があります。

3.配偶者控除

配偶者控除は、所得税法上の「配偶者」がいて、かつ納税者の所得額が1,000万円以下の場合に適用されます。
控除額は納税者の年収帯、配偶者の年齢(70歳未満と70歳以上か)により以下のように変化します。

控除を受ける納税者本人の合計所得金額控除額
一般の控除対象配偶者老人控除対象配偶者(※)
900万円以下38万円48万円
900万円超950万円以下26万円32万円
950万円超1,000万円以下13万円16万円

引用元:No.1191 配偶者控除|国税庁

適用には、婚姻届けを提出した「民法上の配偶者」がいること、生計を一にしていること、配偶者の年間合計所得額が48万円以下(給与所得なら103万円以下)であることなどが条件となります。

4.配偶者特別控除

配偶者がいる人で、かつ配偶者の合計所得額が48万円(給与103万円)を超えている場合は配偶者特別控除が受けられる場合があります。

配偶者の合計所得金額
(経費や各種控除を適用したあとの所得)
控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下900万円~
950万円以下
950万円~
1,000万円以下
48万円~95万円以下38万円26万円13万円
95万円~100万円以下36万円24万円12万円
100万円~105万円以下31万円21万円11万円
105万円~110万円以下26万円18万円9万円
110万円~115万円以下21万円14万円7万円
115万円~120万円以下16万円11万円6万円
120万円~125万円以下11万円8万円4万円
125万円~130万円以下6万円4万円2万円
130万円~133万円以下3万円2万円1万円

引用元:No.1195 配偶者特別控除|国税庁

こちらも配偶者控除と同じく、納税者本人の合計所得が1,000万円以下であること、生計を一にしていることなどが条件です。

5.勤労学生控除

納税者が勤労学生(給与所得など、働いて所得を得ている学生)の場合、勤労学生控除として27万円の所得控除が受けられます。

勤労所得控除を受けるには、以下の3条件すべてを満たさなくてはなりません。

①給与所得など、勤労による合計所得金額が75万円以下(給与収入なら130万円以下)
② ①以外の所得(株の配当収入など)が10万円以下である
③特定の学校の学生、及び生徒であること
(学校教育法規定の小~大学生、高専生、専門学校生、職業訓練校生など)

参考:No.1175 勤労学生控除|国税庁

6.ひとり親控除

ひとり親控除は、12月31日時点で未婚、かつ扶養している子どもがいる母親・父親に適用される所得控除です。
適用されると35万円の控除が受けられます。

次にご紹介する「寡婦控除」と似ていますが、婚姻歴がない未婚の母・父であっても、条件に適合すれば控除が受けられる点が大きな違いです。

【適用条件】

  • 婚姻関係にある人や内縁関係にある人がおらず、未婚であること
  • 生計を一にしている子がいること
  • 子の総所得が48万円以下、同一生計配偶者・扶養親族になっていない
  • 納税者の合計所得が500万円以下である

参考リンク:No.1171 ひとり親控除|国税庁

7.寡婦控除

寡婦控除は、「子どもがおらず夫と死別した女性」「夫と離婚して親などを扶養している女性」が対象になります。以下の条件のいずれかに当てはまれば、27万円の所得控除を受けられます。

【適用条件】

  • 夫と死別したあと、または夫の生死が不明な人で、合計所得が500万円以下の人

参考リンク:No.1170 寡婦控除|国税庁

8.障害者控除

本人や家族に障害者がいる場合、27~75万円の所得控除が受けられます。

【適用条件】

  • 本人、または生計を一にする配偶者、扶養親族(16歳未満の子どもを含む)が障害者である

【控除額】

区分控除額
障害者27万円×人数分
特別障害者40万円×人数分
同居特別障害者(※)75万円×人数分

※重度知的障害者や精神障害者福祉手帳1級、身体障碍者手帳1級または2級を持つ人と常に同居している場合。

参考リンク:No.1160 障害者控除|国税庁

加入している人が受けられる所得控除

以下は加入者(保険料を支払っている人)のみが受けられる所得控除です。

会社員など雇用されている人は年末調整で、それ以外の場合は確定申告で申告をします。

9.社会保険料控除

社会保険に加入している人は、社会保険料の全額が所得控除として差し引かれます。

【控除対象になる社会保険料の一例】

  • 健康保険料
  • 国民年金料、厚生年金保険料
  • 後期高齢者医療制度の保険料
  • 介護保険料
  • 雇用保険料
  • 国民年金基金の掛金 など

10.地震保険料控除

地震保険料を支払った人は、地震保険料控除が受けられます。

支払い額が50,000円以下の場合は全額が、50,000円以上の場合は額にかかわらず50,000円が控除されます。

11.生命保険料控除

生命保険料を支払っている人は、生命保険料控除が受けられます。
生命保険料控除では、平成24年1月1日以降に締結した「新契約」と、それ以前に締結した「旧契約」で控除額が異なります。

【新契約】
・新生命保険……最高4万円
・介護医療保険……最高4万円
・新個人年金保険……最高4万円
――――――――――――――――
/計 最高12万円まで控除

【旧契約】
・旧生命保険……最高5万円
・旧個人年金保険……最高5万円
――――――――――――――――
/計 最高10万円まで控除

新契約・旧契約ともに、支払った保険料の総額によって控除額が変化します。

参考リンク:No.1140 生命保険料控除|国税庁

12.小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等に加入している人は、支払い金額の全額が所得控除の対象となります。

  • 小規模企業共済
  • 企業型確定拠出年金(企業型DC)
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)
  • 心身障害者扶養共済 など

参考リンク:No.1135 小規模企業共済等掛金控除|国税庁

対象は「納税者本人が加入している共済・確定拠出年金」です。
家族が加入している小規模企業共済やiDeCoなどの掛金は対象外となりますので気をつけましょう。

その他、寄付や医療費の支出、災害などに遭った人が受けられる所得控除

寄付をした人、医療費を支払った人、災害や盗難などに遭った人は、確定申告することで控除が受けられます。

13.寄附金控除

国や自治体、団体などに寄付をした人は、「寄附金控除」が受けられます。

【計算式】
「その年の寄付金の合計」「その年の総所得金額等の40%」のうち、低い方-2,000円=寄付金控除額

なお、人気の「ふるさと納税」も寄附金控除の対象となります。

会社員の場合は「ワンストップ特例制度」を使えば、確定申告なしで寄附金控除が受けられます。
ただし、6つ以上の自治体にふるさと納税した場合や、フリーランス、個人事業主は「ワンストップ特例制度」が使えません。この場合は確定申告が必要です。

参考リンク:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁

ふるさと納税の所得控除額は「(ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率」で求められます。

参考リンク:総務省|ふるさと納税ポータルサイト|ふるさと納税のしくみ|税金の控除について

14.医療費控除

本人、または生計を一にする家族に対し支払った医療費が一定額を超えると、「医療費控除」が受けられます。

【計算式】
支払った医療費-保険金などの補てん額-10万円(※)=医療費控除額

※総所得が200万円未満の場合は、「総所得×5%の金額」を差し引きます。

なお、医療費控除のほかには「セルフメディケーション税制(医療費の特例)」というものもあります。

こちらはドラッグストアなどで購入した薬や健康診査、予防接種の費用などが対象です。
これらの合計額が12,000円を超える部分の金額に対し、88,000円を限度として控除が受けられます。

医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか1つしか受けられませんので、注意しましょう。

参考リンク:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

15.雑損控除

雑損控除は、災害や盗難などに遭って資産に損害を受けたときに受けられる控除です。

納税者、または納税者と生計を一にする配偶者・親族(総所得48万円以下)の資産で、かつ生活に必要な資産が損害を受けた場合に適用されます。

以下の2つのうち、多い方の金額が雑損控除額になります。

①(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-総所得金額等×10%
②(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

参考リンク:No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁

所得控除をうまく活用して節税しよう

本記事では、15種類の所得控除について解説しました。

所得控除にはこのほかにも、給与をもらっている人のみが受けられる「給与所得控除」、青色申告者のみが受けられる「青色申告特別控除」、年金を受け取っている人の「公的年金控除」などがあります。

  • 給与所得控除
  • 青色申告特別控除
  • 公的年金控除

給与所得控除では、給与収入額に応じて55~195万円の所得控除が受けられます。
また青色申告特別控除では、65万円または55万円、簡易的な帳簿による青色申告では10万円の控除が受けられる仕組みです。

給与所得者はもちろん、フリーランスや個人事業主として働く場合は、それぞれの所得控除をうまく活用して節税に努めるとよいでしょう。

この記事の執筆者

ゼニス編集部

月額990円~利用できる格安バーチャルオフィス「レゾナンス」です。2016年にスタートし、現在は「港区浜松町本店」「青山店」「銀座店」「日本橋店」「渋谷店」「恵比寿店」「新宿店」「横浜店」「R-INNOVATION銀座店」がございます。

バーチャルオフィスの活用方法や起業についてなど、お役立ち情報をコラムにまと めています。

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