“事務所の共有”を意味するシェアオフィスは、最近になって幅広く認知されるようになったサービスです。フリーランスやベンチャー企業の中には、シェアオフィスを拠点にお仕事をされている方も増加しています。
しかしこれからビジネスを始めたいとお考えの方の中には「使い勝手がよくわからず、利用申し込みを躊躇している……」「実際のところ、ビジネスで使えるの?」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、シェアオフィスにまつわる疑問を徹底解説!シェアオフィスを利用するメリットや他のオフィスとの違い、選び方のポイントや申し込み手順などをご説明します。
シェアオフィスの申し込みで迷っている方や、オフィス内の設備・サービスが気になっている方はぜひご参考にしてみてくださいね。
シェアオフィスとは
シェアオフィスとは、他の事業者とオフィスを共有して利用するサービスです。多様多種の事業者が集まって利用するため、単独でスペースを使える「貸しオフィス」とは大幅に形態が異なります。
日本国内でシェアオフィスが始まったのは1980年代ですが、この頃は「弁護士」や「税理士」といった士業の方が多く利用するサービスでした。
しかし最近になって「シェア」という言葉が大々的に認知されてからは、シェアオフィスのニーズが広がり、あらゆる業種の人が交流の場としても活用しています。
テレワークの普及によってプライベートとビジネスを分けたい人や、起業に伴う初期費用やランニングコストの削減を考える人からも好評です。
シェアオフィスと似ている4つのオフィスとの違いは?
昨今ではシェアオフィスとよく似ているサービスが多く提供されており、どれを利用すべきか迷っている方も多いのではないでしょうか?
ここではシェアオフィスと似ているサービスとの違いを解説します。
①レンタルオフィスとの違いは?
レンタルオフィスとは、デスクや椅子、棚などのオフィス家具や、インターネット環境などが整備されたレンタル型のオフィスを指します。
端的に言えば「個室スペースとオフィス環境を借りられるオフィス」で、シェアオフィスとの違いは必ず占有スペースが利用できる点です。
シェアオフィスにはオープンスペース型のオフィスが多く、個室スペースを借りるにはブース利用ができるオフィス等を選ぶ必要があります。一方レンタルオフィスでは、作業や応接などに利用できる鍵付きの個室事務所が借りられることから、プライバシーを守りやすいのが大きな特徴です。
許認可の要件によってシェアオフィスのような開放型オフィスでは起業できない業種の方(一部の士業など)でも、個室スペースが確保できるレンタルオフィスなら起業が実現できます。
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②コワーキングスペースとの違いは?
コワーキング(=協働)スペースとは、1つのオフィス空間を複数の人・企業でシェアするスタイルのオフィスです。シェアオフィスと同様にフリーアドレス制のオープンスペースが利用でき、自由に席を選べます。
シェアオフィスと多くの点で共通しており、ほぼ同一なものとして扱われる場合が多いですが、コワーキングスペースでは“人とのつながり・交流”を軸に運営されているケースが多く見られます。
例えばコワーキングスペースでは、利用者同士が参加するワークショップや交流会などが盛んに開催されています。一方シェアオフィスは、あくまでも「シェア型のオフィスを提供するサービス」であり、交流会等に主軸を置いているところは多くありません。
③サテライトオフィスとの違いは?
サテライトオフィスとは、企業の本店・本拠地とは別の場所に設置するオフィスを指します。
サテライトオフィスの定義は“オフィスサービスの種類”ではなく、あくまでも別拠点の呼び名である点に留意が必要です。
サテライトの「衛星」という意味のとおり、地方で社員がリモートワークに利用するためなど“別の活動拠点”としての目的・機能を持っています。支店や支社のような組織機能はなく、あくまでも活動拠点として設置されることが多いです。
なお、サテライトオフィスの設置時にシェアオフィスを利用する企業も多く見られます。特に全国展開の企業では、各地方のシェアオフィスを契約しサテライトオフィスとして活用するケースがあります。
④バーチャルオフィスとの違いは?
バーチャルオフィスとは、オフィスの住所や電話番号などを借りられるサービスです。バーチャルオフィスには法人登記ができるところも多く、会社住所としての利用もできます。
シェアオフィスと大きく異なる点としては「物理スペースが借りられないこと」が挙げられます。作業用のスペースは自宅など別の場所に確保する必要がありますが、スペースの賃料・光熱費・人件費等のコストが料金に上乗せされない分、安価で利用できます。
また、バーチャルオフィスではシェアオフィスと同様に会議室や電話転送、秘書代行サービスが利用できるところが多く見られます。
一方、自宅を仕事場として利用できない場合は作業スペースを確保しなくてはなりません。
この場合はシェアオフィス等のオフィススペースを利用する方がスムーズでしょう。
シェアオフィスのメリットと利用する人の特徴
ここからは、シェアオフィスのメリットと利用する人の特徴について順番に見ていきましょう。
シェアオフィスのメリット
シェアオフィスを利用すると、以下の5つのメリットが得られます。
- オフィス開設時の初期費用が抑えられる
- オフィス維持に発生する賃料の節約ができる
- ランニングコストが大幅に削減できる
- アクセスの良い立地にオフィスが持てる
- 多種多様な事業者との交流を持てる
なかでも注目したいのは、イニシャルコストやランニングコストの削減です。
シェアオフィスは複数の人とスペースを共有するため利用料金が安く 、事業に必要なコストが抑えられます。
貸し事務所を選択した際のコストと比較しても、賃料の節約が可能となるでしょう。
シェアオフィス利用者の特徴
シェアオフィスを利用する人には、次のような特徴があります。
- テレワークの人
- 新規事業をスタートさせる起業家
- 個人事業主(フリーランス)の人
- 副業を始める人
許認可にも活用できるシェアオフィスが多いため、新規事業をスタートさせる起業家に最適です。
また、雇用関係を持たないフリーランスの人や、自宅以外でテレワークをしたい人に向いています。
シェアオフィス利用上の注意点
コストを抑えて作業スペースを確保できるシェアオフィスですが、利用時には注意点もあります。特に以下については、あらかじめリスクや対策を把握した上で利用を検討することが大切です。
- セキュリティが甘く、情報漏洩の危険性がある
- 法人登記の場合は住所記載に配慮が必要
- 雑音で集中できない
- 満席になる可能性がある
ビジネスにおける利益や信用を守るためにも、シェアオフィスのご利用を検討されている方は、以下の4点を把握しておきましょう。
セキュリティが甘く、情報漏洩の危険性がある
シェアオフィスはオープンスペースを利用するオフィスのため、セキュリティ面での配慮が必要です。
レンタルオフィスのような鍵付きの個室スペースなら個人情報などの機密データの漏洩が起こりにくいですが、シェアオフィスは多くの人が同じ空間に出入りする都合上、PC画面の盗み見や機密情報入りのデータの盗難、紛失などのリスクがあります。
とりわけドロップイン(一時利用)ができるシェアオフィスでは、見知らぬ人が出入りするため情報漏洩リスクが高いといえるでしょう。
シェアオフィスを利用する際は扱う情報のレベルを規定して機密情報を持ち込まないとともに、パソコンを置いたまま離席しない、PC画面が見えないよう工夫をするなどの対策を講じましょう。
法人登記の場合は住所記載に配慮が必要
シェアオフィスは運営元の都合などで同じビル内でフロアを移動する場合があります。そのためシェアオフィスを利用する場合は、法人登記の住所記載を「番地まで」に留めるのがおすすめです。
法人登記では本店所在地(会社の住所)を登録する必要があります。この時シェアオフィスのビル名・フロア名まで登記すると、シェアオフィスがフロアを移転する時に変更登記が必要になってしまい、費用も手間もかかってしまうのです。
法人登記ではビル名やフロア数を省略することができますので、本店所在地として登録する場合は「ビルの番地」までを記載すると良いでしょう。
雑音で集中できない
シェアオフィスでは自分以外のワーカーも作業をしており、飲食や同僚との会話、会議などを行う方もいます。そのため人によっては、雑音が気になって作業に支障が出る可能性があります。
雑音の対策としては、会話禁止エリアと飲食エリア、ミーティングエリアなどのエリア分けがされているシェアオフィスを選ぶ方法があります。このようなシェアオフィスなら集中が途切れにくく、効率的に作業を進められるでしょう。
満席になる可能性がある
シェアオフィスの規模によっては、満席になってしまい利用できないケースがあります。特に小規模なシェアオフィスやドロップインありのシェアオフィスでは、満席になって作業スペースが確保できないケースが多いため注意しましょう。
確実に席を確保したい場合は、専用スペースが利用できるシェアオフィスを契約するのがおすすめです。また契約前には見学・内覧をして、混雑具合を確かめておくと安心です。
シェアオフィスを選ぶ4つのポイント
ここからは、シェアオフィスを選ぶ際の4つポイントを解説します。
料金
シェアオフィス選びでまず確認したいのが料金です。
シェアオフィスでは月額制(定額制)が多いですが、中にはドロップイン(一時利用、従量課金制)で短時間から利用できるところもあります。
「日常のオフィスとして週4〜5日使いたい」という場合は月額制のオフィスを、「月に数回だけ使いたい」という場合はドロップイン利用ができるオフィスを選ぶと無駄がありません。
またシェアオフィスで提供されている「専用ロッカー」「荷物・郵便物受け取り」「FAX」などの利用にはオプション料金がかかります。
施設利用料に加え、希望するサービスを利用した場合にはトータルコストがどれくらいかかるのかを計算した上で検討しましょう。
立地
シェアオフィスを選ぶ際には立地も重要です。
最寄り駅から近くアクセスしやすい、周辺に銀行やコンビニなどの施設が豊富にあるなど、立地条件の良いシェアオフィスなら使い勝手が良く、快適に利用できます。また自身が利用するときだけでなく、クライアントを招いて会議をしたり、客先へ訪問したりといったときにも便利に利用できます。
また、立地そのもののイメージや知名度も重要な要素の一つです。
誰もが知っている都市部のシェアオフィスなら、会社や事業に対するイメージアップにつながります。取引や採用活動などに良い影響が現れるケースも多いため、シェアオフィス探しの段階から考慮されることをおすすめします。
設備やサービス
シェアオフィス探しの際には、以下のようなオフィス内の設備・サービスについてもチェックしておきましょう。
- 利用できる時間と曜日(土日祝でも利用できるか)
- 会議室やWeb会議ブースの有無
- 複合機の有無
- 専用ポストや専用ロッカーの有無
- 受付での応対サービスの有無
- 全国展開の有無
例えばサービス業など土日祝も業務を提供する事業を営む場合、土日祝の利用が可能なシェアオフィスを選ぶことでスムーズに業務が遂行できます。平日だけしか利用できないシェアオフィスを選んでしまうと、メインのシェアオフィスとは別の土日祝用オフィスを確保しなくてはならず、コストも余計にかかってしまうでしょう。
そのほか、全国展開を検討している場合は全国に拠点があるシェアオフィスを選ぶことで、割引価格で利用できるケースがあります。
このように、業種やビジネスの形態、将来のビジョンに応じた設備・サービスのあるシェアオフィスを選んでみてください。
セキュリティ対策
シェアオフィスを選ぶ際には、施設でどのようなセキュリティ対策を行なっているのかもチェックしておきましょう。
インターネット(Wi-Fi含む)のセキュリティが堅牢であれば、ネットワーク経由で不正ログインされるリスクを減らせます。また入退室にカードキーや専用アプリが必要なオフィスなら、不審者の出入りを防ぐことができ、情報漏洩リスクを減らせるでしょう。
近年では文書の印刷時にパスワードを設定できるオフィスや、PC画面の覗き見がしにくいデスクレイアウトになっているシェアオフィスも増えています。個室ブースの有無なども含め、上記のセキュリティ対策を行なっているシェアオフィスを選ばれると良いでしょう。
シェアオフィスの利用手順
シェアオフィスを利用したい場合には、次の4つの手順で申し込みます。
② 利用の申し込みをする
③ 審査を受ける
④ 契約する
まずは、WEBや電話にて内覧の手続きをしてください。実際に足を運び、どのような人が利用しているのかを確認しましょう。
気に入ったシェアオフィスがみつかったら、利用の申し込みをしてください。必要な手続きを済ませた後は、書類や面談による審査が始まります。
無事に利用審査が通ったら、入会金や事務手数料を支払い手続きは完了です。
契約後はシェアオフィスが利用できるようになります。
シェアオフィスの設備とサービス
新規で事業をスタートさせたい人や個人事業主から人気の高いシェアオフィスでは、以下の設備とサービスが利用できます。
専用やフリーアドレスのオフィススペース
レンタルオフィスやコワーキングスペースと呼ばれるシェアオフィスでは、専用もしくはフリーアドレスのオフィススペースを確保できます。
料金はどのような形態を選ぶかで異なります。
専用ブースを好む場合には、オフィス所在地の坪単価によって利用料や共益費が変わってくるでしょう。
また、シェアオフィスは単独で利用することもできますし、数人で利用することも可能です。
人数が増えれば増えるほど、1人あたりの利用料は安くなる傾向があります。
備品の提供とレンタル
シェアオフィスには、Wi-Fiやプリンターといった機能が備わっています。
さらに他にも次のような備品の提供、もしくはレンタルを行っているケースが多いです。
- 作業に必要な文具
- タブレット端末(iPad等)
- 3Dプリンター
利用したいときにのみ活用できるため、有料の場合であっても大きなコストにはなりません。
気軽にレンタルできる点は、非常に便利です。
会議室やセミナールーム
シェアオフィスによっても異なりますが、ほとんどは会議室やセミナールームを完備しています。外で探さずともクライアント先との打ち合わせにも対応できるスペースが確保でき、大変便利です。
さらに会議室に限らず、セミナールームや動画スタジオを設けていることもあります。
各シェアオフィスによって利用料は変わってきますが、なかには無料のケースも。
頻繁に利用する可能性が高い人は、費用をあらかじめ確認しておくのが良いですね。
住所の貸し出しや郵便の受け取り
シェアオフィスの多くは、住所の貸し出しを行っています。
理由としては、新規事業をスタートさせる際の許認可に活用する人も多いからです。
しかしながら、法人登記に利用する際の住所レンタルに関しては別途有料になるケースがあるため注意が必要です。また、ホームページや名刺に住所を記載するのをNGとするシェアオフィスもあります。
必要なサービスをしっかりと利用できるのか不安な方は、事前にリサーチをしておくと安心です。
なお、住所利用をお考えの人はネガティブなイメージがない住所かを確認しておきましょう。過去に犯罪に使われていたようなケースでは、あらゆる場面で住所利用がマイナスイメージへとつながる可能性があります。
電話の転送(秘書代行サービスも)
シェアオフィスによっては、電話の転送や秘書代行サービスを行っていることがあります。
このようなサービスを上手に活用すれば、人件費をはじめとするコストの削減が可能です。
なお、電話転送や秘書代行サービスの利用にはオプション費用が発生する場合も多いです。利用を検討される方は、どの程度コストがかかるのかをリサーチしておきましょう。
作業スペースが不要な人はバーチャルオフィスも検討しよう
シェアオフィスは多様多種な事業者とオフィスを共有して利用します。
申し込みを行う際には、設備やサービスはもちろん、入会金・事務手数料を含めたコストをしっかりと確認しましょう。
また、業務の大半をご自宅で行える方や、住所利用や電話転送のサービスを目的にシェアオフィスをご検討中の方は、経費を削減できる「バーチャルオフィス」も検討してみてください。
シェアオフィスよりも格安で利用できるため、ランニングコストを抑えられます。
関連リンク:バーチャルオフィスについて
まとめ
本記事ではシェアオフィスについて、概要やメリット、他のオフィスサービスとの違い、選び方などを解説してきました。
シェアオフィスはレンタルオフィスや賃貸オフィスよりも安価でオフィススペースが借りられるサービスです。一部の業種を除いて開業にも利用でき、法人登記ができるシェアオフィスも増えていますので、ぜひ活用してみましょう。
また、スポット利用できるシェアオフィスなら、外出時の作業や打ち合わせにも活躍してくれます。「拠点は自宅だけれど、外で使えるビジネススペースが欲しい」という方は、シェアオフィスを活用されてみてはいかがでしょうか。本記事が皆様のご参考になれば幸いです。