創業間もないころや事業の拡大を狙うときに必要になるのが「資金」です。さまざまな資金調達方法があるなか、比較的借りやすいと言われているのが「ビジネスローン」です。
ここでは、ビジネスローンのメリットやデメリット、審査申し込みのポイント、注意点を解説します。
ビジネスローンは“事業資金を調達するため”のローン
銀行や消費者金融が提供しているローンのうち、事業資金専用のローンを「ビジネスローン」といいます。
ビジネスローンを申し込むには、「個人事業主」または「法人」であることが条件です。
事業を行っていない会社員などがビジネスローンに申し込むことはできません。
- 銀行
- 信販
- クレジットカード会社
- 消費者金融業者
なお、ビジネスローンは事業に関する用途であれば何にでも利用できます。
- 事業の新規立ち上げ資金として
- 設備投資資金として
- 運転資金として
- 取引先への支払いに
- 新規事業開拓のための宣伝費等
利用は事業関連のみに限られるものの、実際には用途の幅が広く、活用することでスムーズに事業を開始、展開、拡大できるでしょう。
ビジネスローンのメリット・デメリットは?銀行融資と比較
ビジネスローンにはメリットがある一方で、デメリットもあります。両方を理解したうえで利用を検討するとよいでしょう。
ビジネスローンのメリット
ビジネスローンのメリットをまとめて見てみましょう。
個人でも総量規制以上(年収の3分の1以上)の資金調達ができる
個人の借入には「総量規制」という規制が設けられています。これは、年収の3分の1以上のお金を借りられないというルールです。
しかしビジネスローンなら、審査に通りさえすれば、個人事業主であっても年収の3分の1を超える借入ができます。まとまったお金を借りられれば、設備投資や運転資金に活用しやすいでしょう。
融資に比べスピーディに借り入れができる
借入まで1~3ヶ月かかる銀行融資に比べると、1~2週間というスピードで資金を借りられるのもビジネスローンのメリットです。
無担保、無保証人で申し込みができたり、来店不要で利用できたりするものも多い
ローン事業者によっては無担保、無保証人で借りられるビジネスローンや、ネット・電話・FAXなど来店不要で借りられるビジネスローンもあるなど、使い勝手の良さが目立ちます。
ビジネスローンのデメリット
ビジネスローンにはデメリットもあります。
融資に比べて金利が高い
ビジネスローンは銀行融資に比べて金利が高いデメリットがあります。
銀行融資における上限金利の相場は2%です。一方、ビジネスローンは15~18%が上限金利であるため、銀行融資に比べると高金利です。
金利が高ければ、当然ながら実際の返済負担も大きくなります。
利用限度額は銀行などの融資よりも少額になる
また、ビジネスローンは銀行などの融資に比べ、利用限度額が低い点にも注意しましょう。
たとえば「日本政策金融公庫」の新創業融資では、融資上限額が3,000万円となっています。
一方、ビジネスローンの場合は300~500万円が相場です。また、上限ギリギリまで借りられるとも限りません。
審査次第では希望額の満額借りられない場合もあります。
今後の融資審査に影響する可能性もある
その他の注意点としては、ビジネスローンの借入履歴が、将来の融資審査に影響するという点も挙げられるでしょう。かんたんに言うと「借金歴があるので資金繰りが安定していない可能性がある」と判断される、ということです。
もちろん、しっかりとした事業計画を作成し、返済計画を提示するなどの対策を講じれば不利になることはそうそうありません。しかし、ビジネスローンの利用歴は決算書にも記載されるため、ビジネスローンばかりに頼りすぎるのは控えた方がよいでしょう。
ビジネスローンを利用する際のポイントは?
ビジネスローンを利用する際には、以下の4点を押さえておきましょう。
- 提出書類に抜けや漏れ、間違いがないようにする
- 事業の実績、業歴は2年以上がひとつの基準
- 利用目的と事業計画、資金計画の根拠を伝える
- 連帯保証人の“金融事故の有無”を確認する
提出書類に抜けや漏れ、間違いがないようにする
ビジネスローン審査の申し込み時には、提出書類に抜けや漏れ、間違いがないかを必ずチェックしましょう。
【個人事業主の場合】
- 本人確認書類
- 2期分の確定申告書(※)
- 事業計画書
【法人の場合】
- 代表者の本人確認書類
- 2期分の決算書(※)
- 事業計画書
※ローン事業者によっては必ずしも2期分ではない場合もあります。また、提出済みであることがわかる「税務署印」や「受付印」が押されているものを準備します。
書類に不備があった場合、審査に通らないので要注意です。
なお、審査通過後には正式にビジネスローンの契約をしますが、その際には「履歴事項全部証明書(登記簿謄本)」や「印鑑証明書(代表者または法人印鑑)」などが必要になります。
こちらもローン事業者の指定通りの書類を揃え、抜け漏れなく提出しましょう。
事業の実績、業歴は2年以上がひとつの基準
ビジネスローンの審査申し込みでは「2年以上の事業実績がある」という規定が設けられているケースが多いです。このような規定のあるローン事業者では、2期分の決算書(または確定申告書)の提出を求められます。
一方、融資の利用条件として「2年以上」と書いていない場合は、1年やそれ未満の業績でも申し込めます。
ただし開業・起業1年未満の審査は、基準が厳しくなりやすいことを知っておきましょう。
利用目的と事業計画、資金計画の根拠を伝える
ビジネスローンは事業に関する用途であればどのような目的でも借りられます。
ただし、実際の借入審査では「計画性があるか、ないか」という要素が重要視されます。
ビジネスローンの審査では、借入金の利用目的や事業計画、資金計画について明確に伝えることが重要です。
- 何の目的でビジネスローンを借りたいのか(運転資金、設備投資、事業展開のための開発費など)
- 借入後の事業計画について(どのように売上が立ってどれくらいの利益が見込めるか)
- 資金計画はどのようになっているか(投資した結果、資金がどのようなサイクルで回収できるか)
毎月のキャッシュフローを想定したうえで返済できる見込みがあることが伝われば、審査にも通りやすくなります。
連帯保証人の“金融事故の有無”を確認する
個人事業主向けのビジネスローンでは、連帯保証人不要で借入ができるケースも増えてきています。
一方、法人向けのビジネスローンについては、代表者が連帯保証人となる制度があります(代表者保証)。
この代表者保証は、会社が倒産しても代表者がビジネスローンの返済義務を負うというものです。
また、第三者を連帯保証人として縦、評価を上げて借入額を増やすというケースもあります。
このように、連帯保証人をつけてビジネスローンを借りる場合は、連帯保証人の信用情報が重要なポイントとなります。
連帯保証人(代表者や第三者など)が過去に金融事故(延滞や債務整理など)を起こしていると、審査に通るのが難しくなってしまうのです。
連帯保証人を立てる場合は、必ず審査申し込みの前に「信用情報に問題がないか」を確認しておきましょう。
こんな人はビジネスローンに落ちやすくなるので注意!
最後に、ビジネスローンに落ちやすい人・会社の特徴についてお伝えします。
ビジネスローンは銀行融資に比べ審査に通りやすいと言われていますが、「借り入れ」であることには変わりません。そのため、ローン事業者の求める基準を満たしていなければ審査落ちになる可能性もあるのです。
以下の5点のいずれか、またはすべてに当てはまる事業主・会社は、ビジネスローン審査に落ちる可能性が高いと考え、対策を打ちましょう。
金融事故などで過去の信用情報にキズがついている
過去に借りたお金を長期間延滞したり、債務整理をしたりした人は、ビジネスローンの審査に通る可能性が極めて高くなります。
金融事故を起こしてから期間があいている場合は審査をしてもらえる場合もありますが、その期間はローン事業者によって異なります。心配な場合は一度確認してみましょう。
申し込み書類に不備がある
当然のことながら、必要書類や申込書類に不備があると、審査が受けられません。
申し込み時点で断られることにもなりますので注意しましょう。
借入額が必要以上に多すぎる
売上規模に対して借入額が多すぎる場合、ビジネスローンの審査に通らないケースがあります。
ビジネスローンの審査は、売上規模や業種に対し必要とされる“一般的な運転資金”を基準にして行われます。
そこから大きく離れた借入額を借りようとすると断られてしまうのです。
運転資金の場合は、2~3ヶ月分程度の必要経費が借入の目安になるでしょう。
また設備投資資金なら、設備の「必要性」「売上へどの程度貢献するものか」「回収の見込みやサイクル」などを明確に説明できるよう整理しておくことも重要です。
事業計画があやふやで信用性に欠ける
事業計画に明確性がなかったり、信用性に欠けたりする場合、審査に通らないことがあります。
ローン事業者として一番困るのは「貸したお金(ビジネスローン)の踏み倒し」です。
そのため、お金を貸す相手が「売上を伸ばし利益を得る策があるか」をチェックするのは当然のことだといえます。
事業計画書には利益を得るためのプランを具体的に記載し、口頭でも説明できるようにしましょう。
申し込み先が適切ではない
ひとくちにビジネスローンといっても、その審査の厳しさや金利はさまざまです。
たとえば、銀行系ビジネスローンは金利が低い分、審査が厳しいことで有名です。
特に規模の大きいメガバンクや都市銀行などは、審査が厳しい傾向にあります。
また、まったく取引履歴のない銀行に比べ、過去に取引をしたことのある地銀や信金などのほうが審査に通りやすいというケースもあります。これは、取引をしていて事業内容、お金の出入り状況などが伝わりやすいからです。
金利だけで選ぶのではなく、自分が審査に通りそうなローン事業者を選びましょう。