人材育成や人事評価、納品物の作成過程などで行われる「フィードバック」は、ビジネスの目標達成において欠かせないものです。
ここではフィードバックの意味や重要性、主な種類・手法について解説。フィードバックの効果を高めるポイントについてもご紹介します。
「部下の成長が伸び悩み、育成に悩んでいる」「チーム同士のモチベーションやスキルアップをしたい」という方はぜひ参考にしてみて下さい。
フィードバックとは?
フィードバックは、主に人材育成や人事評価において用いられる方法です。
具体的には「問題の解決や成長を促すことを目的に、対象者の行動、パフォーマンスについて評価し、本人に伝えること」を意味します。
従来はIT・工学分野で用いられていた言葉ですが、近年ではビジネス(特に人材育成・評価)でも広く使われています。
フィードバックの重要性・メリットは?
フィードバックは「目標達成」のために必須です。目標達成に至るまでのプロセスでは、期待していた結果を大きく超える大成功を収めることもあれば、反対に問題のある行動を取ってしまうこともあります。
大成功は目標達成の近道にもなりえますが、問題のある行動を続けてしまうと目標の達成は遠のいてしまうでしょう。そこで役立つのがフィードバックです。
対象者(部下など)が何らかの行動をとったあと適宜フィードバックを行えば、陥りやすいミス、効率的ではない行動などを把握しやすくなります。そしてその評価をもとに改善策を出し、軌道修正を行うことで、目標達成へまっすぐ進むことができるのです。
もちろん、フィードバックの対象はネガティブ面だけではありません。
対象者の良い行動をほめることで、モチベーションアップや自己肯定感の向上といった効果も得られます。
より良い行動を指導することで対象者のスキルアップ、お互いの信頼感を深めるきっかけにもなるため、ビジネスにおいてはかなり重要な手法といってよいでしょう。
フィードバックの種類・手法は?
フィードバックの種類や手法にはさまざまなものがあります。
フィードバックには2つの種類がある
- ポジティブフィードバック
- ネガティブフィードバック
それぞれくわしく見ていきましょう。
ポジティブフィードバック
対象者の言動に対し、前向きな表現でフィードバックをすることを「ポジティブフィードバック」といいます。
ポジティブフィードバックの目的は対象者の成長を促し、自己肯定感を高めることです。
否定的表現ではなく意欲・自発性を高める表現でフィードバックを行います。「今回作成してくれた資料は要点を押さえて見やすいレイアウトでとてもよかった」というふうに、“よかった点を褒めて伸ばす”と捉えると分かりやすいでしょう。
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックは、よくない点、好ましくない点を指摘し、軌道修正を行うフィードバックです。
「会議での発言において内容は良いが伝え方が分かりにくいので、要点をわかりやすく伝える方法を改めて一緒に考えてみよう」というのがネガティブフィードバックにあたります。
ネガティブフィードバックを行うことで対象者自身が「何が問題だったのか」「どう改善すべきか」を考えられることがメリットですが、ネガティブフィードバックに偏ってしまうとモチベーションの低下を招く恐れがあります。
よって、フィードバックの割合としてはポジティブな内容を基本としつつ、適宜ネガティブフィードバック+改善案、行動案の提示を行う形が望ましいでしょう。
フィードバックの3つの手法
フィードバックには主に3つの手法が用いられます。
- サンドイッチ型
- SBI型
- ペンドルトンルール
それぞれの特徴をご紹介します。
サンドイッチ型
サンドイッチ型は、先ほどご説明したポジティブ・ネガティブ両方のフィードバックを交互に行う方法です。シンプルでどのようなシーンでも使いやすい手法となっています。
①ポジティブフィードバック:
「先日のプレゼンは内容が魅力的でとても素晴らしかったよ」
②ネガティブフィードバック:
「ただ、プレゼン資料の作成や準備で○社の対応が遅れたのは良くなかった。優先順位の付け方に悩んだら気軽に相談してね」
③ポジティブフィードバック:
「とはいえプレゼン自体はすごく良かったので、今後もAさんに任せたいと思っている。来週の△社との商談でプレゼンをお願いしたい」
ポイントは、ポジティブフィードバックを最後にもってくることです。
多くの人は自分に対する否定的な評価を受け入れにくい傾向にあります。しかし、相手を褒めたり認めたりする前向きな内容で締めくくれば、否定的な内容(改善の要求)を受け入れやすくなるのです。
SBI型
SBI型(Situation Behavior Impact型)とは、「状況」「行動」「影響」の順にフィードバックを行う手法です。国際的非営利教育機関のThe Center for Creative Leadership(CCL)が開発したフィードバックの型で、「フィードバック対象となった状況でどのような行動を行った結果、どんな影響があったか」を対象者に伝えます。
「昨日の店頭接客について」
↓
②行動(Behavior)
「お客様のニーズを引き出しつつ、うまく利益率の高い商品を提案していました」
↓
③影響(Impact)
「私はあなたのおかげでお客様からの信頼を獲得でき、自社商品の販売・売上アップが達成できたと思っています。販売チームの士気も上がっておりうれしく思います。これからも引き続きよろしくお願いします」
上記はポジティブフィードバックの例ですが、SBI方式のフィードバックはネガティブフィードバックでも使えます。状況や行動をもとにどんな影響があったのかフィードバックを行うことで、対象者は「この状況で自分はどのように行動すべきか?」を考えられるように成長していきます。
ペンドルトンルール
ペンドルトンルールは、心理学者・ペンドルトン氏が考案したフィードバック手法です。
特徴は対象者とフィードバックを行う人が交互に「良かった点」「改善点」「行動計画」「おさらい」を対話すること。一方的なフィードバックではないため、対象者の主体性を大きく引き出すことができます。
対話形式でそれぞれが良かった点、改善点、行動計画について考えるため時間はかかりますが、「自分で改善策と行動を考えられるようになる」という大きな利点があることから、中長期的な人材育成には欠かせない方法です。
効果的なフィードバックの実践ポイントは?
フィードバックは主に上司から部下に対して行われますが、ときには同僚同士や部下から上司に対し行われるケースもあります。いずれにせよ、フィードバックの効果を高めるには以下のポイントを押さえておきましょう。
- 「具体的な行動」について指摘する
- 行動の直後にフィードバックを行う
- 行動の評価理由を明確に説明する
- 評価と行動へのアドバイスをセットで行う
「具体的な行動」について指摘する
フィードバックは具体的な行動に対して指摘を行うことが最重要です。
「何に対し指摘されているのか」が分からないと、フィードバックを受ける側はどう改善・行動すればいいかが分からなくなってしまいます。「昨日の会議での発言」「先ほどのA社との打ち合わせ」など、具体的な行動を提示したうえで指摘を行いましょう。
行動の直後にフィードバックを行う
フィードバックは対象となる行動の直後に行うことがベストです。
時間が経つと「あの時何をやっていたっけ」と感じやすく、フィードバックの効果が薄れてしまいます。
『鉄は熱いうちに打て』という言葉があるように、対象者が起こした行動にはなるべく早くフィードバックを返しましょう。
行動の評価理由を明確に説明する
ポジティブフィードバック・ネガティブフィードバックに関わらず、行動について評価・指摘をする際は、その理由を明確に説明します。
理不尽なフィードバックは自信を失ってしまったり、反発心からアドバイスを素直に受け入れられなくなったりしてしまいます。
対象者が評価の理由に納得感を持てるようになれば、改善策の提案も素直に受け入れられますし、次の行動にもつながりやすくなるでしょう。
評価と行動へのアドバイスをセットで行う
フィードバックをする際は、評価と行動へのアドバイスをセットで行います。
評価だけだと「良かった」「悪かった」という指導者の感想・感情しか頭に残りませんが、「良かったから次も同じ方法で」「好ましくない行動だったので次はていねいに」というふうに、行動の改善案もセットで提案することで具体的な行動に移しやすくなります。
効果的なフィードバックを心がけよう
フィードバックは一方的に評価をすることがゴールではなく、対象者本人の気付きやモチベーションを引き出し、自発的に改善行動を促すことが重要です。
そのためには、具体的な行動に対し指摘・評価をすること、また本人に考えさせることが重要なポイントとなります。
フィードバックで対象者の強みを生かし、ウィークポイントは軌道修正しつつ目的・目標達成を目指しましょう。