臨時収入を得た場合、思わぬ収入を得た喜びを味わうと同時に、臨時収入について確定申告が必要かどうか判断に迷うことがあります。
自分が得た臨時収入が、どんな分類に該当するのかによって、確定申告が必要か不要かどうか変わってきますので、しっかりと確認して把握しておきたいものです。
そこで今回は、臨時収入について、一時所得と雑所得との違いを含めてご紹介していきたいと思います。
臨時収入とは?
「臨時収入」とは、給料などのように定期的に得る収入や継続性のある売上などの「固定収入」に当てはまらない、一過性の収入のことを指します。
臨時収入についてのはっきりとした定義はありませんが、臨時収入は「一時所得」に該当し、一般的に次の3つの要件を満たす所得だとされています。
- 営利を目的としないもの
- 継続性のないもの
- 対価性がないもの
営利を目的として得た収入は、「事業所得」などに該当します。
継続的に発生する収入は一時所得に該当しません。
資産の譲渡による収入や、労務による収入など、対価性のあるものは一時所得に該当しません。
一時所得とは?
一時所得とは、営利を目的とせず、継続性や対価性のない一時的な所得を指し、大まかに言うと、たまたま発生した臨時収入が一時所得に該当すると考えてよいでしょう。
一時所得については、次のように定義されています。
- 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
- 競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます。)
- 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
- 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます。)
- 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
- 資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの
懸賞やクイズ、福引などで当選した時に得た賞金は一時所得に該当します。
競馬の馬券やボートレースの舟券の払戻金も該当しますが、宝くじやサッカーくじの払戻金については、所得税法以外の法律で所得税を課さないこととされており、購入者本人が当選金を受け取る場合については、確定申告の必要はありません。
生命保険の一時金とは、満期を迎えた生命保険契約によって、満期保険金を一時金として受け取った場合で、保険料の支払者が受け取る人場合に限られます。
また、借りていた家について立ち退きの請求を受けた時に得た立退料についても、一時所得に該当します。
一時所得は確定申告が必要?一時所得の計算方法
一時所得を得た際、年間50万円を超える一時所得については、確定申告が必要となります。
一時所得の金額は、次のように算式します。
総収入金額 – 収入を得るために支出した金額(注) – 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額
(注) その収入を生じた行為をするため、または、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限ります。
参照)国税庁(No.1490 一時所得)
一時所得は、所得金額の計算にて「特別控除額」として50万円の控除を受けられるため、一時所得の年間合計額が50万円を超えない場合については、確定申告をする必要はありません。
たとえば、40万円の一時所得と20万円の一時所得を同一年に得た場合は年間で合計60万円の一時所得となるので、確定申告が必要となります。
なお、生命保険契約の給付金や損害保険契約の保険金のうち一定のものや、相続税や贈与税の対象となるものなど、一時所得には所得税が非課税となるものもあります。
一時所得にならない臨時収入は?
所得のうち、給与所得や事業所得、譲渡所得、不動産所得などのほか、退職所得、配当所得や利子所得、山林所得については、一時所得ではありませんが、臨時収入であっても一時所得とならないものもあります。
たとえば、古着や不要となった家財などを売却して得た収入は、一時的な収入だと言えますが、譲渡所得に該当し所得税は非課税となります。(ただし、1点が30万円以上となる貴金属や美術品については、事業所得として課税されます。)
老後に受け取れる国民年金の給付金など、公的年金の収入は雑所得にあたります。また、事業として行っているほどではない、副業収入的なものも雑所得とされます。
仮想通過など暗号資産について生じた利益についても、事業所得に該当するものを除いて雑所得にあたり、一時所得には該当しません。
その他、店舗や通信販売当で商品の購入などで付与されたポイントについても、課税対象にはなりません。
雑所得とは?
臨時収入は、通常一時所得に分類されますが、営利目的で得た臨時収入など、条件によっては雑所得になるケースもあります。
雑所得とは、所得税法で定められた所得のなかの、いずれにも該当しない所得のことで、以下のように定められています。
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
具体的には、雑所得には以下のようなものがあります。
- 国民年金や厚生年金などの公的年金
- 貯蓄口座の利益や定期積金の給付補てん金
- 先物取引やFX取引、仮想通貨取引による利益
- 勤務した会社から受け取る退職年金
- 本業ではなく副業として得た所得(原稿料や講演料など)
- ネットオークション、フリマアプリで得た所得
- 民泊やカーシェアなどシェアリングエコノミーで得た所得
(※退職時に一括で支払われる退職金は退職所得に該当)
本業ではなく副業として依頼を受けて執筆した原稿料や、講演会などの講師を受けて得た講演料については、雑所得となります。
いっぽうで、会社員が副業として休日にアルバイトを行うことで得た収入は、たとえ副業であっても、雑所得ではなく給与所得に該当します。
また、本業とは別で副業として行っているもののうちで、事業として成立するほど手広く行っている場合においては、その副業で得た所得を「雑所得」でなく「事業所得」として認められるケースもあります。
雑所得は確定申告が必要?雑所得の計算方法
会社員で給与所得を得ているなら、勤務先の会社において年末調整を行うため、通常は確定申告を行う必要はありません。しかし、年間20万円を超える雑所得を得た年については、確定申告を行う必要が生じるので注意しましょう。
雑所得の金額は、給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額を計算します。
なお、一定の先物取引による所得については申告分離課税が適用されます。
公的年金等や原稿料・講演料などについては、原則、支払の際に源泉徴収が行われます。
定期積金の給付補てん金、抵当証券の利息など、いわゆる金融類似商品の収益については、その支払の際に一律20.315パーセント(所得税および復興特別所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率で源泉徴収が行われます。これらの所得については、源泉分離課税が適用されますので、確定申告を行うことはできません。
雑所得を計算する際、収入が必ずしも全て所得にならないことに注意しましょう。
例えば、フリマアプリの売上金の場合は、仕入れ金額などの経費を売上金額から差し引いた額が所得となります。
臨時収入に関して、一時所得や雑所得などを含めてご紹介いたしました。
臨時収入と一言で言っても、所得税に関する分類では少し複雑に感じるかもしれません。
ご自分が得た臨時収入は、何に該当するのかを見極めることで、確定申告の要不要を判断するようにしましょう。