株主総会や取引先との打ち合わせなどでは、「組織図」をよく目にします。そもそも組織図とは何のために作成するもので、作成するとどんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは組織図の種類や作成メリット、具体的な作り方をご紹介します。業務効率のよい組織づくりをしたい方は、ぜひ参考にお読みください。
組織図とは?作成する意味や主要3種類を解説!
組織図は、企業や部署、チームなどの「組織の内部構造」を図で表したものです。組織図を見れば、部署・部門それぞれの相互関係や、「どこがどこに対して直接指示を出すのか」といった指揮命令系統が直感的にわかるようになっています。
また組織図には部署・部門名のみが書いてある概要的なものもあれば、顔写真・氏名などの個人情報が記載されているものもあります。
後者の組織図は、おもに企業内で作成・運用されるもので、従業員に「自分や上司・同僚・部下はどのような役割を持ち、指示体系はどうなっているのか」を把握してもらうことを目的に作成されます。
そんな組織図には、主に3つの形式があります。
②フラット型
③マトリックス型
どの組織図が最適なのかは、組織の体制や規模によって変わります。それぞれの特徴を実際の組織図サンプルでチェックしてみましょう。
①ピラミッド型
ピラミッド型(階層型)組織図は、下層に向かって組織(部門など)やグループを増やしていく形式の組織図です。頂点には会社や取締役会、企業の代表者を置き、そこから部門・部署などの組織単位で細分化していく“縦割り”の組織図です。
ピラミッド型組織図は指揮命令系統が一目瞭然となるのが利点であり、どの部門がどの部署・チームを統括しているのかを把握しやすい特徴があります。
ただし、ピラミッド型組織図に沿って組織編成を見直す場合、階層が多いほど「現場の意見がトップに至るまでに時間を要する」「迅速な情報伝達が難しくなる」などのデメリットがあることを知っておきましょう。
②フラット型
フラット型組織図は、ごく浅い階層のみで作成する組織図です。指示体系や責任の所在を示すというよりは「グループ会社の構成を整理する」「従業員それぞれに裁量がある小規模組織」を表す場合に向いています。
フラットな組織は1つの組織・個人あたりの責任範囲が大きくなる一方で、意思決定や情報伝達がスピーディーになりやすいメリットもあります。
③マトリックス型
マトリックス型組織図は、部門やエリア、職能など2つ以上の要素で構成されている組織図です。
企業においては「同じ部門の従業員でも事業チームごとに担当を分ける」という采配をするケースがあります。
この場合「部門」「事業チーム」という複数の要素が絡んでいるため、縦軸・横軸で構成するマトリックス型組織図をチョイスするのがベストとなります。サンプルの組織図でいえば、山田さんは「管理部門かつA事業部」に所属していることが直感的に理解できるでしょう。
なお、組織図をもとにマトリックス型の組織を形成する場合、指揮系統が複雑になりやすい点に注意しましょう。
組織図を作成するメリットとは?
組織図は必ず作成しなくてはならない、というものではありませんが、作成することで多様なメリットが得られます。
- 指揮命令系統がはっきりするため、トラブル時の混乱を防げる
- 権限の偏りを防止・改善できる
- 従業員同士の相互理解や情報共有の活性化につながる
- ステークホルダーへ会社健全性のアピールができる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
指揮命令系統がはっきりするため、トラブル時の混乱を防げる
組織図を作成すると、指揮命令系統が明確になります。
誰が見ても理解しやすい「図」になることで責任者がわかりやすくなるからです。
仮にプロジェクト遂行中にトラブルが生じたとしても、組織図があれば指示を仰ぎやすくなり、混乱を最小限に抑えられます。
権限の偏りを防止・改善できる
現行の組織にて組織図を作成すると、権限の偏りが明確化されることがあります。権限が組織内の一部に集中していることが把握できれば、権限を分散したり、組織編成そのものを見直したりといった対策も可能です。
結果としてそれぞれの部門・部署・チーム等の負担の均等化や業務効率化にもつながるでしょう。
従業員同士の相互理解や情報共有の活性化につながる
組織図によって各部門・部署・チーム等のつながりや相関性が把握できると、従業員にとってもよい効果が得られます。「○○さんはA事業と法務に携わっている」「部門はAのプロジェクトとBのプロジェクトを統括している」というふうに、各部門・部署や個人それぞれの役割を俯瞰的に理解しておけば、コミュニケーションにも役立つでしょう。
また、コミュニケーションが取りやすくなれば、自然と情報共有もスムーズになります。問題が起こったときの早期発見・解決にもつなげやすくなるため、組織全体の生産性アップにも効果が期待できるでしょう。
ステークホルダーへ会社健全性のアピールができる
株主や投資家など、外部へ向けた組織図を作成・提示すると、会社の健全性を強くアピールできます。
「組織として統率を取って経営に取り組んでいる」というイメージを強く印象付けられるからです。
健全な企業というイメージを持ってもらえれば、当然株式の購入などの増資にも良い影響があらわれやすくなります。
組織図の作り方をステップ・ツールごとに紹介!
ここからは、組織図の作り方をステップごとにご紹介していきます。
一般的な組織図の作成フローは次のとおりです。
- 組織図の目的と対象を決める
- 組織図作成に必要な情報を集める
- ツールと組織図タイプの決定
- 管理体制を“仕組み化”し、適宜更新する
1.組織図の目的と対象を決める
組織図を作成する第一歩は、「目的と対象」を決めることです。
組織図は管理職を含む従業員向け(内部)に作成するのか、株主など外部の人間向けに作成するのかによって記載すべき項目が大きく変わります。
また、「情報の対象範囲」によっても記載事項は変化します。
たとえば自社の組織編成を深く掘り下げて紹介したい場合、「自社の部門・部署」や個人の配属などが記載されていれば必要十分となります。一方、グループ会社との関係性を明示したい組織図では、自社の部門や個人の情報などは“不要な情報”といえます。
「誰に、何を伝えたいのか」を明確にしたうえで、組織図の作成に取り掛かりましょう。
◆情報の対象範囲はどこまでなのか?
・自社だけorグループ会社を含める
・部門・部署単位で作るor従業員1名ずつの情報を記載する
・従業員を掲載する場合は、どの範囲の個人情報まで記載するのか
(氏名/顔写真/役職名/勤続年数/性別 etc)
2.組織図作成に必要な情報を集める
組織図の目的と対象範囲が決まったら、作成に必要な情報を集めていきます。
特に、組織図内で写真や連絡先などの「個人情報」を記載したい場合は、各掲載人物に対し個人情報の提供を依頼します。
このとき注意したいのが、外部顧問など「組織外の人物」に関する個人情報です。
勝手に掲載した場合トラブルに発展することもあるため、あらかじめ個人情報の提供を依頼し、その掲載範囲・使用目的などについて同意を得てから掲載するようにしましょう。
3.ツールと組織図タイプの決定
組織図の作成ツールにはさまざまなものがあります。とりわけポピュラーなのは以下の3つの方法です。
- 「Googleスプレッドシート」のグラフ機能を使う
- Microsoft「Word」「Excel」「PowerPoint」などの『SmartArt』機能を使う
- 人材管理システムの「組織図作成機能」を使う
「Googleスプレッドシート」のグラフ機能を使う
ひとつめは、Googleスプレッドシートの「グラフ機能」で組織図を作成する方法です。
GoogleスプレッドシートはGoogleアカウントさえあれば無料で利用できます。
以下の手順で簡単に組織図が出力できるので、「試しに作ってみたい」という方はぜひ試してみて下さい。
①セルに人事データ(組織図にしたい情報)を入力し、作成した表を範囲選択する
②「挿入」→「グラフ機能」の『組織図』を選択
③組織図の種類、色、文字サイズを微調整し、完成
ちなみに、C列に「ツールチップ(コメント)」を記入しておけば、組織図の各項目にコメントを表示させることも可能です。
Microsoft「Word」「Excel」「PowerPoint」などの『SmartArt』機能を使う
Microsoft社の「Word」「Excel」「PowerPoint」には『SmartArt』という機能があり、手軽に組織図を作成可能です。
①「挿入」タブから「SmartArtグラフィックスの挿入」を選ぶ
上部タブから「挿入」→「SmartArtグラフィックスの挿入」を選択します。
②「階層構造」→図表パターンを選ぶ
グラフの中から「階層構造」→「組織図」を選びます。タテ・ヨコなど数種類のデザインがあるので、しっくりくるものを選びましょう。
③ボックス内に部門・部署・氏名などのラベルを入力する
ボックス内に記載する内容を入力していきます。ボックスは適宜増やすこともできます。
④「SmartArtのスタイル」から色、文字サイズなどを調整して完成
上部メニューから色や文字サイズ、枠のデザインを選びます。組織図そのもののレイアウトも後から変更できます。
人材管理システムの「組織図作成機能」を使う
企業内で人材管理システムを使用している場合は、組織図を作成する機能が付帯しているケースがあります。
人材管理システムでは、登録されている情報(部門・部署・個人の情報)を利用し、組織図を自動出力できる場合が多いです。また作成した組織図をもとに人材管理を行うことで、業務効率化が叶います。
4.管理体制を“仕組み化”し、適宜更新する
組織図を作成したあとは、管理体制を整えます。組織図の保管・維持や更新といった管理は、更新フローを作成して「仕組み化」しておきましょう。組織体制が刷新されたときに即反映できれば、古い組織図が残存することによる認識のズレなどを防ぐことができます。
目的に応じた範囲・内容の組織図を作成してみよう!
組織の構造や関連性、指示系統がひと目でわかる組織図は、業務やプロジェクトをスムーズに進めるために欠かせないものです。また外部に対しては、「監査体制や指示管理体制が明確化されていて、健全な経営が行われている」という大きなアピールになります。
組織としてビジネスを行う場合は、ご紹介した方法をご参考にしていただき、ぜひ最適な組織図を作成してみて下さい。