新たに起業する場合、設備投資や運転資金など、さまざまなお金が必要になります。これらすべてを自己資金で準備するのは容易ではないため、多くの方は「創業融資」を活用して資金調達をしています。
ここでは、創業融資についてくわしく解説。特に利用者の多い「新創業融資」の要件や内容、メリット・デメリットについてご紹介します。審査で特にチェックされるポイントについてもお伝えするので、ぜひご覧ください。
創業融資とは金融機関から「起業資金」を借り入ること
創業融資とは、金融機関から創業(起業)に必要な資金を借り入れることを指します。
- 日本政策金融公庫の融資
- 自治体の制度融資
- 民間の金融機関からの融資(プロパー融資)
- ノンバンク系事業者からの融資
- 親族等からの借金
創業時の融資で特に利用率が高いのが「日本政策金融公庫の融資制度」「自治体の制度融資」です。
そして、日本政策金融公庫の代表的な融資制度が「新創業融資」です。
日本政策金融公庫の新創業融資とは
日本政策金融公庫の新創業融資とは、創業のための事業資金を貸し付ける融資制度です。
対象となる用件は「対象者」「自己資金」の2要素があり、それぞれを満たさないと申し込みができません。
新創業融資の要件
【対象者の要件】
- 新たに事業を始める方
- 事業開始後、2期目の税務申告を終えていない方
【自己資金の要件】
創業資金の総額の1/10以上の自己資金を準備できる
※今の企業で6年以上勤続している場合や、同じ業種で合算して6年以上勤続している場合など、特定の条件を満たしている人は自己資金の要件が免除されます。
新創業融資の限度額、金利
新創業融資を利用する場合、創業資金として3,000万円まで(運転資金は1,500万円まで)、無担保・無保証人で借り入れた場合でも基準利率2.33~3.00%と低い金利が適用されます。
新創業融資の利用には他の融資制度の申し込みが必要
新創業融資は単独で利用するものではなく、次のいずれかの融資制度を申し込んだのち、オプションとして新創業融資を申し込むことができます。
新規開業資金
新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方が受けられる融資
女性、若者/シニア起業家支援資金
新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、女性または35歳未満か55歳以上の方が受けられる融資
新事業活動促進資金
「経営革新計画」の承認を受けた方、「農商工等連携事業計画」の認定を受けた方などが対象で、第二創業を目指す際に受けられる融資
参考リンク:新創業融資制度|日本政策金融公庫
なお、新創業融資制度で借入した資金の返済期間は、メインで申し込んだ融資制度によって異なります。
創業融資で資金調達をするメリット・デメリット
創業融資を利用して資金調達をすると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは創業融資、特に「新創業融資」を利用するメリット・デメリットをご紹介します。
創業融資で資金調達をするメリット
たとえば「新創業融資」を使う場合、以下のようなメリットがあります。
- ビジネスの実績がなくてもお金を借りやすい
- 無担保&無保証人が原則
- 低金利で資金を借りられる
- 融資実行までが早い
ビジネスの実績がなくてもお金を借りやすい
通常、事業のために融資を受けようとすると「会社の規模(資本金額)」や「実績」が審査されます。
しかし起業したての会社、事業主は、そのような実績もなく、通常であれば審査には通りません。
一方、創業融資であればビジネスの実績がなくとも借入ができます。そもそも創業融資は起業家や中小企業を支援するための融資制度であり、審査基準はあくまでも「創業計画の実現性や成長性」だからです。
実現性、説得力のある創業計画を作成し、しっかりと説明ができれば、借入ができる可能性も高くなるでしょう。
無担保&無保証人が原則
一般的な融資では、借入条件として「担保」や「保証人」を決めなければならないケースが多いでしょう。
一方、新創業融資などの創業融資は、原則として無担保・無保証人で利用できます。
担保も保証人も不要であれば、創業のハードルはかなり下がるといってよいでしょう。
低金利で資金を借りられる
金融機関で融資を受ける場合、金利は年2~14%が相場です。またノンバンク系(消費者金融など)のビジネスローンになると、年18%もの高金利に設定されているケースもあります。
一方、創業融資の金利は年2~3%です。
金利が低ければ月々の返済額にもゆとりが生まれ、返済計画も立てやすくなるでしょう。
融資実行までが早い
地方自治体の制度融資は、2~3ヶ月と融資開始までの期間が長めです。
一方、日本政策金融公庫の「新創業融資」の融資開始は3週間~1ヶ月程度と、かなり短期間で借入手続きが完了します。
欲しいタイミングで資金を調達できるのは大きなメリットといえるでしょう。
創業融資で資金調達をするデメリット
創業融資で資金調達をするデメリットは以下のとおりです。
- 融資限度額は3,000万円まで(新創業融資の場合)
- 返済が必要
それぞれ見ていきましょう。
融資限度額は3,000万円まで(新創業融資の場合)
「新創業融資」は、融資限度額が最高3,000万円、運転資金の場合は1,500万円までとなっています。
小規模~中規模のビジネスであればこの額でも問題ないかもしれませんが、大規模事業の立ち上げをしたい場合は資金が不足するおそれがあるでしょう。
より多くの創業資金を調達したい場合は、自治体や国の補助金・助成金を利用したり、クラウドファンディングで出資を募ったりといった方法もあります。
創業融資で足りない場合は、これらも検討してみましょう。
返済が必要
株式発行やベンチャーキャピタル、エンジェル投資家からの「出資」で資金調達をする場合、返済は必要ありません。一方、資金調達として融資を利用する場合は返済が必要です。
借入額によっては返済がきつく、経営を圧迫するおそれもあります。無計画に借りるのではなく、返済計画をしっかりと立てたうえで創業融資の利用を検討しましょう。
日本政策金融公庫で利用できる新創業融資とは?創業融資の審査申し込みで知っておきたいポイント
「新創業融資」や自治体の創業融資制度を利用する場合、以下の2点を押さえておきましょう。
- 融資額の1/10以上の自己資金があるか
- 事業計画が実現できるものなのか
融資額の1/10以上の自己資金があるか
日本政策金融公庫の「新事業融資」を利用する場合、融資希望額の1/10以上の自己資金を用意しなくてはなりません。もちろん、多ければ多いほど審査には通りやすくなります。
ただし、自己資金と言っても、出所がはっきりしていないお金は「自己資金」として認められません。
人から借りたお金やたんす貯金などは自己資金とみなされない、ということです。
自分で働いて貯めたお金など、出所が明確なお金を自己資金として申告しましょう。
事業計画が実現できるものなのか
新創業融資をはじめとする創業融資の審査では、創業計画書に書かれている内容が特に重視されます。
チェックポイントとしては、事業に実現性や現実味があるか、また成長が期待できる事業内容であるか、といったものが挙げられるでしょう。
また、審査では内容の矛盾や分かりやすさ、差別化の有無なども見られます。
- 事業の実現性があるか
- 将来の成長が見込めるか
- 内容に矛盾しているところはないか
- 他社と差別化ができている内容か
- リスクに対する対策がなされているか
- 専門外の人間でも事業について理解しやすいか
創業融資を申し込む際は、上記のポイントを押さえて創業計画書を作成しましょう。そうすることで、説得力があり分かりやすい創業計画書が完成します。
また、審査に通るか不安な場合は、税理士や創業支援サポート機関などにチェックしてもらうのもおすすめです。
創業融資でスムーズな起業を目指そう!
創業融資は起業して会社を設立したり、お店を開いたりする際に役立つ融資です。
申し込む機会は「起業時」のみとなりますが、審査に通る確率を上げるためには自己資金の準備、創業計画書の作成、必要書類の準備など、さまざまなポイントを確実にクリアしていくことが大切です。
また、創業融資を受ける際には面談も必要です。
面談の際には事業内容についてくわしく聞かれることになりますので、創業計画書を作成する段階で事業の内容、計画についてしっかりと整理しておきましょう。そのうえで、誰にでもわかりやすく説明できるよう、考えや展望をまとめておく必要があります。
創業融資が受けられれば、起業で使える資金が増え、スムーズな滑り出しが可能となります。
また創業融資は金利が低めに設定されており、民間の融資よりも返済負担が少ないのも魅力です。
「起業時に足りない部分を資金調達したい」という場合は、日本政策金融公庫や国、自治体等の創業融資を検討してみてはいかがでしょうか。