企業が存続し、成長し続けるために必要だとされる「経営戦略」。
企業が進むべき方向性を定め、方針や意思決定を示すものとして、多くの企業において重要視されています。
経営戦略がしっかりと定まらない状態で経営を進めていると、意思決定が必要な場面で優先順位が曖昧になうことにも繋がります。
そのため、経営戦略は、企業規模の大小に関わらず、経営を進める中で必ず必要になるものだと考えられています。
そこで今回は、企業における「経営戦略」について、その必要性や種類、プロセスなどを詳しく紹介していきたいと思います。
経営戦略とは?
経営戦略とは、企業が目指す方向性や目標を設定し、長期的な視点で企業の取り組みについて策定することです。
社会情勢の変化や自社サービスに対する需要などの外部環境の変化に合わせ、自社に必要とされる新事業を考案したり、社内の内部状況の改善の必要性を発見したりするなど、企業の存続と成長のために必要とされる行動計画や資源配分を行います。
経営戦略を立てる際には、まずは自社の強みや弱みについて確認し、競合他社の状況や市場ニーズなどを調査することが必要です。
経営戦略と経営計画との違い
経営戦略と経営計画はよく似た言葉ですが、意味合いは異なります。
どちらも企業の経営に重要だとされているため、その違いについてしっかりと把握しておきましょう。
経営戦略が、経営資源の運用方法における企業全体の方針や計画であるのに対して、経営計画とは、企業が定めた「経営理念」や「経営戦略」に沿って、具体的に計画を立てることを意味します。
設定した経営戦略をベースに具体的な経営計画を立てることで、経営者の経営戦略の意向や構想を社内で共有することができるようになります。
経営計画は、5~10年の長期経営計画、3~5年の中期経営計画、1年の短期経営計画に分類されて、それぞれにおける具体的な計画や数値目標を設定します。
経営理念と経営戦略は、どちらも今後の経営方針を決める大事な要素ですが、経営戦略が中・長期的な企業の方向性を定めるのに対し、経営計画は、経営戦略で定めた方向性を達成するため、経営戦略よりも短期間の実行計画や目標を設定するのが一般的です。
経営戦略の必要性
近年の、目まぐるしく変化している社会環境において、長期的な戦略をたてても意味がないのでは? と感じる方もいるかもしれません。
しかし、そのような環境変化のなかで企業が生き残っていくためには、変化が起きてからそれに合わせて方向性を企てていては、競合他社に対して優位性を維持することができません。
環境変化が激しい時代だからこそ、将来の変化に対して見通しをたて、それに適応できる経営戦略を策定することが重要なのです。
今後の社会情勢の大きな変化として、日本の人口減少やデジタル化、AI化、グローバル化などが挙げられます。
人口減少に伴い、日本全体の消費が落ち込み、経済規模の縮小が予測されています。また同時に企業にとって重要な経営資源と言える人材の確保も難しくなるでしょう。
また、近年のスマートフォンなどのモバイル端末の普及や新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、急速なスピードでデジタル化やAI化も進んでいます。
これらの経営環境の変化に合わせて、限られた資産を有効活用して企業を長く存続させていくためには、既に策定した経営戦略のスピーディーな軌道修正も含め、企業の強みを活かした経営戦略に取り組む必要があるのです。
経営戦略を行う視点
1.独自性を高める
経済規模が縮小するなかで企業を存続させるためには、競合他社との差別化を図る必要があります。
自社ならではの製品やサービスに力を入れ、他社には見られない独自性を高められることを視点入れて、経営戦略を行うようにします。
もともと備えている自社の強みや資源を活かすことで、競合他社との優位性を明確にすることができるでしょう。
市場のニーズを分析し、顧客に求められる品質やデザイン、価格帯などを把握したうえで、自社商品やサービスの独自性を高め、市場で高いシェアを獲得できるよう経営戦略を行うことが大切です。
2.リスク分散を行う
社会情勢が変化するなかで、予想もしなかった変化が起きた際でも企業が存続できるよう、リスク分散を行うようにしましょう。
既存の事業と異なる分野への進出も含め、事業の多角化を行うことでリスクの分散を図ることができます。また、新たな事業へ目を向けることで、収入源を拡大することもできるでしょう。
3. グローバル化を意識する
経営戦略を考えるなかで、日本国内だけでなくグローバル化を視野に入れることが大切です。海外市場でのニーズや成長性などを把握して、事業の拡大や縮小、新規事業への参入について画策しましょう。
経営戦略の種類
経営戦略は、大きくわけて3つの種類に分類することができます。
1.長期的な企業戦略
企業全体の長期的な目標設定を行うための経営戦略です。
市場ニーズや競合他社との違いなどの分析を行い、既存事業の見直しや撤退、追加投資などを含めて企業全体として効率的な経営を行えるように模索します。
2.事業単位の事業戦略
事業単位の商品の製造や販売、サービスの企画などの方向性を決定します。
各事業単位において、どのように市場シェアを拡大していくか、サービスの向上やターゲットとなる顧客の拡大や絞り込みなどについて、目標となる成果を実現するための戦略を画策します。
3.部署ごとの機能戦略
事業戦略を進めていくために、部署ごとに果たすべき役割を確認し、達成すべき目標を定義します。
自部門に期待される業務を全うするために、新たに必要となる業務は何か、またどのように業務を進めていけばよいかなどについて計画を立て、人員配置など実行レベルで計画を行います。
経営戦略のプロセス
1.経営理念を具体化する
経営戦略の最初のプロセスは、「経営理念」を具体化するところから始めます。
「経営理念」とは、企業の使命や存在意義を表したもので、ステークホルダーを含め広く社会に公開している会社の最も軸となる指針です。
経営理念を大きく覆すことはステークホルダーや従業員だけでなく、社会に対する信用を損ねることにもなりかねないため、経営戦略を行う時は、経営理念や経営ビジョンに則って行うことが必要となります。
2.外部環境の分析を行う
次に重要となるのが、社会情勢の変化にともなう外部環境についての分析です。
競合他社を含めた自社をとりまく環境は、自社でコントールできない要素です。
これらの分析をしっかりと行うことで、経営戦略の大きな成功に結び付けることができます。
自社商品・サービスに関する大きなトレンドの変化だけでなく、社会全体のニーズの変化や生活様式の変化にも注目して、外部環境の分析を行いましょう。
3.内部環境の分析を行う
内部環境とは、自社でコントールが可能となる経営資源を指します。経営資源や自社の強みや弱みを多角的に分析することで、自社に適した新たな事業を見つけたり、リスクを冷静に判断したりすることに繋がります。
4.経営戦略の選定
外部環境や内部環境の分析から、経営戦略として挙げられる方向性を見出します。
いくつか候補を出し、それぞれについての予想される成果やリスク、必要とされる資源や実現性について、しっかりと検討したうえで絞り込みましょう。
5.経営戦略の目標設定
経営戦略の方向性が決まったら、求められる結果や実現させる時期などについて指標を決定します。
経営戦略に対して、どの程度実行できているかを随時チェックできるように目標設定を行いましょう。