バーチャルオフィス(住所貸し)

バーチャルオフィスで雇用保険に加入するにはどうすればいい?

バーチャルオフィスは会社の住所や電話番号を借りられるサービスですが、「雇用保険に加入できるのか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、会社住所がバーチャルオフィスであっても雇用保険に加入することはできるのでしょうか?

今回は雇用保険の概要や加入条件、種類を解説するとともに、バーチャルオフィスで雇用保険に加入する際の方法、ポイントをご紹介します。

雇用保険とは?バーチャルオフィスを利用していても加入できる?

そもそも「雇用保険」とは「失業や休業など、何らかの理由で働けなくなった人の生活保障、再就職を支援する公的保険制度」のことです。

法人や個人事業主は、従業員を1人でも雇うと雇用保険適用事業所となります。また、従業員が雇用保険の加入条件を満たした場合は必ず加入させなければいけません。言い換えれば、バーチャルオフィスを利用して事業をおこなっている法人、個人事業主でも、条件を満たせば加入義務が生じる、ということです。

ただし加入手続きには、所定の手続きを踏む必要があります。まずは加入条件や必要な物、手順をしっかりと把握したうえで手続きを進めましょう。

雇用保険の加入条件とは?

書類

雇用保険は事業所に勤務している従業員が正規雇用(正社員)の場合、必ず加入する必要があります。
また、パートやアルバイト、派遣社員の場合は「週20時間以上、年31日以上」雇用する見込みがあることが加入条件です。
雇用している従業員が加入条件に当てはまる場合は、事業主側での加入手続きが必要ということを心得ておきましょう。

ちなみに、季節に左右されるような仕事に就いている人(季節労働者)や、日雇い労働者の場合は通常と異なる条件で加入ができるように定められています。
季節労働者は1年内の雇用契約期間が4ヵ月以上、所定労働時間が1週間に30時間以上だと「短期雇用特例被保険者」として雇用保険に加入可能です。

日雇い労働者(1日の単発~30日の雇用契約を結んだ人)は、雇用保険適用事業所に雇用されたときに「日雇労働被保険者」として加入することができます。
ただし、所定の条件を満たしたうえでハローワークに申請をすれば、正社員と同じ「一般被保険者」として雇用保険へ加入することも可能です。

そもそも雇用保険とは?どのような種類がある?

笑顔の男性
雇用保険には次のようにさまざまな種類の給付があります。それぞれの内容と給付条件を確認しておきましょう。

求職者給付

基本手当(失業保険)

基本手当は雇用保険の中でも代表的な給付で、失業手当とも呼ばれているものです。
仕事を辞めたあとに次の仕事が決定するまでの間、経済面での不安を減らしサポートをすることを目的としています。

雇用保険の被保険者期間が、離職前からさかのぼって2年の間に合計12ヵ月以上(1ヵ月あたりに賃金支払いの基礎日が11日以上)あれば、受給資格を得られます。
ただし会社都合の解雇や倒産によって離職した「特定受給資格者」や、傷病や育児、結婚に伴う引っ越し等の“正当な理由”で会社を辞めた「特定理由離職者」の場合は、離職前1年間で6ヵ月以上あれば受給可能です。

基本手当の給付がおこなわれる期間は3ヵ月~1年ですが、給付日数は被保険者だった期間や退職理由、年齢によって異なります。例えば「特定受給資格者」は、給付期間が長くなる場合が多いです。
1日あたりの基本手当の支給額は離職前の賃金日額や年齢から算定されます。

また離職理由に関わらず、最初の失業認定日から7日間は「待期期間」として給付や求職活動、アルバイトなどはおこなえません。自己都合退職の場合はそこからさらに90日間の給付制限期間があり、その期間中は基本手当の受給ができない点に注意が必要です。

基本手当の給付は就職が決定しだい終了しますが、その代わりに「再就職手当」をもらうことができます。

傷病手当

傷病手当はハローワークで求職手続きをしたのち、ケガや病気などの理由で働けなくなったときに支給されるお金です。15日~30日未満の働けない期間が生じる場合、働けないとみなされて基本手当(失業手当)が受給できなくなるため、傷病手当が支給されます。
30日以上働けない見込みがある場合は、傷病手当か基本手当の受給期間を延長するか選ぶことができます。

よく健康保険組合の「傷病手当金」と混同されがちですが、健保の傷病手当金が在職中に支給されるものに対し、雇用保険の傷病手当は離職後に支給されるものという違いがあります。

就職促進給付

再就職手当

基本手当受給中に、受給日数が「3分の1以上」残った状態で次の就職先が決まると、再就職手当が支給されます。ただし、受給には「1年以上確実に勤務する」「再就職先に離職前の職場とのコネクションがない」「求職申込時に内定が決まっていた職場ではない」などの細かい条件があります。

就業促進定着手当

就業促進定着手当は、再就職で雇用された仕事を続けられるよう支援するための手当です。
再就職手当を受給した人が離職前より低い賃金で雇用されており、かつ6ヵ月以上勤務が継続していると、就業促進定着手当が受け取れます。

広域求職活動費

ハローワークが紹介した仕事で、往復200km以上かかる遠方の企業への見学・面接に赴くとき、交通費と宿泊費が支給されます。

教育訓練給付

資格取得やスキルアップのための教育を受ける際、条件をクリアすると「講座受講費」の一部に対し給付を受けることができます。これが教育訓練給付です。
失業・休職中の人だけではなく、現在仕事に就いている人も給付を受けられるのが特徴です。

教育訓練給付には「一般教育訓練給付金」と「専門教育訓練給付金」の2種類があり、どちらも厚生労働大臣が定めた講座を受講するなどの条件があります。

雇用継続給付

雇用継続給付は、育児や介護などで休業する人、高齢者への就業促進・働く意欲を維持するために設けられた給付です。

育児休業給付

1歳未満の子どもの世話などで育児休暇を取得した際に、育児休業給付金が支給されます(パパママ育休プラス制度を利用した場合は1歳2ヵ月までが対象)。
また、保育所への入所ができなかった場合や、離婚して育休を延長せざるを得ない場合、2歳の誕生日の前日まで延長されます。

高年齢雇用継続給付

高齢者の就業促進、就業意欲の支援をおこなう給付で、60~65歳未満で継続就労している人が受け取ることができます。
また、雇用保険の被保険者期間が5年以上あり、失業給付や再雇用手当受給経験がある人は受給修了から5年が経過していることなどが条件です。

バーチャルオフィスで雇用保険に加入する方法

バーチャルオフィスの受付女性
バーチャルオフィスは登記や連絡等のために住所をレンタルしたり、電話代行や郵便物等の預かりが利用できたりするサービスです。
一見すると雇用保険等の社会保険への加入ができないと思われがちですが、実際にはバーチャルオフィスであっても、条件を満たした場合は雇用保険へ加入する必要があります。

雇用保険に加入し、「雇用保険適用事業所」として認められるには具体的にどのような手続きをおこなえばよいのでしょうか。順に確認していきましょう。

1.雇用保険加入には、まず労基署に届け出をする

雇用保険に加入するには、まず労働基準監督署へ「労働保険関係成立届」を提出し、受理される必要があります。
この労働保険関係成立届の“控え”や各種届出書などを、ハローワークで提出しなければいけないからです。

労働保険関係成立届は窓口へ持参するか、郵送、電子申請などで手続きができます。事業主ではなく社会保険労務士(社労士)による代行提出も可能です。

さらに労働保険の「概算保険料申告書」を提出するとともに、その年度の労働保険料を計算して納付しましょう。
概算保険料申告書に関しては、労働保険関係が成立した日の翌日~50日以内に提出する必要があります。

2.ハローワークに必要な書類等を提出する

労働保険関係成立届を労基署に提出したら、雇用保険適用事業者になるための手続きをおこないます。
次の書類をハローワークに提出します。

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 従業員(被保険者)が持っている「雇用保険被保険者証」、もしくは履歴書の写し
  • 労働保険関係成立届の控え
  • 法人登記謄本(原本)もしくは登記事項証明書

雇用保険被保険者資格取得届を提出する際には「労働者名簿」や「賃金台帳」「出勤簿」といった書類を添付する必要があります。ただし社労士や労働保険事務組合などを通じて提出する場合は添付しなくてもよいとされています。
また、同資格取得届については被保険者1人につき1枚が必要です。今後従業員(被保険者)が増えるようであれば、少し多めに持ち帰っておくとスムーズです。

事業主が初めて雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出する場合、所定の添付書類が必要になる場合も。事前にハローワークへ確認しておき、漏れや抜けが無いように揃えておくと安心です。

3.従業員が増えた場合の手続きは?

新たな従業員を雇用した場合は、雇用の翌日より10日以内に、管轄のハローワークにて手続きをおこなう必要があります。
手続きに必要な書類は次の3つです。各書類の必要項目を埋めたうえでハローワークに提出しましょう。

  • 保険関係成立届
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

書類の記入方法が分からない場合は、ハローワークに問い合わせれば教えてもらえます。
手続きが終わったら、「雇用保険適用事業所設置届」の事業主控えと「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)」を必ず保管しておきましょう。

バーチャルオフィスで雇用保険に加入する際のポイント


雇用保険加入時には、「帳簿や資金台帳などを会社所在地で保管すること」が義務付けられています。

バーチャルオフィスの場合“住所・電話番号を借りているだけ”ということもあり、物理的なスペースがないことも多いでしょう。かといって自宅で書類を保管するのは難しいといえます。書類を紛失する危険や、雇用保険への加入が認められない場合もあるからです。

そのような場合は、「プライベートロッカー」等のキャビネットサービスを利用することをおすすめします。

バーチャルオフィスには、帳簿等の書類を保管できるサービスをオプションで利用できるところも。こうしたサービスを利用し、登記住所と書類の保管場所を同じ住所にしておくと、ハローワーク等の行政機関へ説明しやすくなります。
ロッカー内のセキュリティが不安な場合は、金庫に入れておくなどの対策をしておくとより安心です。

雇用保険に加入する場合は「書類保管サービス」の利用を

清潔感のある男性
バーチャルオフィスであっても雇用保険への加入条件は変わらず、条件を満たす場合は加入が義務付けられています。バーチャルオフィスを利用して事業をおこなう際は、当該書類の保管についてバーチャルオフィスの提供会社に相談し、保管できる場所・サービスが利用できるかどうか確認しておきましょう。

また、雇用保険の加入申請をする際は、担当者の方にバーチャルオフィスを利用している旨を必ず伝え、書類の保管場所などを理解してもらうことも大切です。

もし1人で手続きを進めるのが難しいと感じた場合は、社会保険労務士に依頼し、手続きを代行してもらうのもよい方法です。手続きをどう進めればよいか悩んだ場合も、専門的なアドバイスでサポートしてくれますよ。

この記事の執筆者

ゼニス編集部

月額990円~利用できる格安バーチャルオフィス「レゾナンス」です。2016年にスタートし、現在は「港区浜松町本店」「青山店」「銀座店」「日本橋店」「渋谷店」「恵比寿店」「新宿店」「横浜店」「R-INNOVATION銀座店」がございます。

バーチャルオフィスの活用方法や起業についてなど、お役立ち情報をコラムにまと めています。

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