近年増えているのが、シニア世代の起業。シニア起業が増えている背景には、「やりがい」「収入」などさまざまな理由があります。
本記事では、注目の「シニア起業」について解説。シニア起業のメリットやデメリット、おすすめの業種や注意点などを合わせてご紹介します。
シニア起業が増えている?シニア世代の起業理由
シニア世代とは一般的に「65歳以降の世代」を指します。65歳は公的年金の受給開始年齢であり、老人福祉保健法でも「シニア」と定義されている年齢でもあります。
そのシニアの起業割合が、年々増加傾向にあるのをご存じでしょうか。
平成31年3月に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行ったアンケート調査によると、起業10年以内の起業家のうち、60歳以上のシニアの割合は14.3%にのぼります。
参考:平成30年度 中小企業・小規模事業者における経営者の参入に関する調査に係る委託事業 調査報告書
また中小企業庁が発行した「2017年版 中小企業白書」では、2012年の起業家全体のうち男性の35.0%、女性の20.3%が「60歳以上のシニア層」だったというデータもあります。
参考:中小企業庁|2017年版 中小企業白書 第2-1-3図「男女別に見た、起業家の年齢別構成の推移」
中小企業白書によれば1992年のシニア起業家は、男性で19.3%、女性で7.2%だったことから、20年間で大幅に増加したといってよいでしょう。
このように、シニア起業が増えている理由とは何なのでしょうか?
シニア起業が増加する理由とは?
「freee株式会社」は2019年8月30日~9月2日の期間に、「起業に関するアンケート調査」を実施しました。
同アンケートによると、起業理由について「自由に仕事がしたかった」と答えたシニア世代(ここでは50歳以上)の割合は43.7%にものぼります。
さらに、「収入を増やしたかった(28.7%)」「退職後年金以外の収入も得たいから(23.7%)」と、金銭的な理由を挙げるシニア世代も多く見られました。
またシニア世代特有の回答として「定年後に社会とのつながりが欲しいから(16.7%)」という理由を選ぶ方もいます。
「起業」は定年後のシニアの働き方にマッチしやすい
定年退職後のシニアは、これまで毎日実感していた「社会とのつながり」を感じにくくなる傾向にあります。
シニア起業をして仕事をすることで、社会とのつながりを実感しながらやりがいをもって働けるでしょう。
会社勤めに比べて自由に働けるため、体調面で不安がある方も自分のペースで働ける点もシニアにとっては魅力です。
自由な働き方でお金が得られれば、セカンドライフの充実にもつながります。
- 自由な働き方ができる
- 年金以外の収入が手に入る
- 社会とのつながりを実感でき、やりがいや自己肯定感につながる
- やりがい+年金以外の収入により「セカンドライフの充実」が実現できる
シニア起業のメリットとデメリット
シニア起業の増加理由について知ったところで、シニア起業のメリットとデメリットについてみていきましょう。
シニア起業のメリット
- 豊富な経験・知識を持った状態でスタートできる
- 自由な働き方ができる
- 定年がなく年齢に関係なく働ける
- やりがいを感じられる
- 収入を得ることで心のゆとりができる
- シニア起業向けの助成・支援制度がある
シニア起業のメリットは、「過去の経験や知識を活かして起業できる」という点。長年のキャリアで培った知見や経験を活かすことで、若年層ではできない安定感のあるビジネスが展開できるケースも多いのです。
また企業勤めに比べると自分のペースで働きやすい点も魅力です。年齢を重ねると体調面での不安が生じやすくなるため、自由な働き方が実現できるのは大きなメリットだといえます。定年がない分、働こうと思えば生涯現役で働けるのも起業ならではの利点でしょう。
自分の得意なこと、経験したことを活かして社会貢献ができると、大きなやりがいを感じられます。やりがいを持てると生活に張り合いが出て、充実した毎日が送れるようになるでしょう。
年金以外の収入が得られれば、心のゆとりにもつながります。近年ではシニア起業を支援する助成金や融資支援制度なども増加しているため、上手く活用してみましょう。
【参考リンク】
創業助成金(東京都中小企業振興公社)|融資・助成制度
新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)|日本政策金融公庫
シニア起業のデメリット
- 健康面、体力面できつく感じることも
- プライドが邪魔になる場合がある
- 柔軟な考え、対応ができない場合がある
- 大きな負債を負った場合やり直しが難しい
シニア起業では「経験・知識」が大きな強みとなる一方で、過去の実績・経験やプライドに縛られてしまうケースも多いものです。過去の成功体験にとらわれすぎると、柔軟な発想・対応ができず、起業で結果を残せない場合もあるでしょう。
また、年齢的な問題として「失敗したときのリカバリーがきかない」というデメリットもあります。
仮に大きな額の負債を負った場合、返済できないか、返済できたとしても老後資金がなくなってしまった……なんてことも起こり得るのです。
こうしたリスクを回避するには「初期投資を抑えて小さく事業を始めること」が重要です。
シニア起業の成功例とは?
シニア起業をする際は、過去の成功例から学ぶことが成功の近道です。まずは成功例を3つご紹介します。
1.ライフネット生命
ライフネット生命保険は、割安な保険料やネットで契約を申し込める生命保険で人気の生命保険サービス会社です。
ライフネット生命保険を立ち上げた現会長の出口治明氏は、もともと「日本生命保険」に努めていた経歴があります。58歳で同社を退職したあと、KDDIなど6社から計80億円もの出資を受け、「ライフネット生命保険」を設立。
国内・海外の生命保険会社を親会社とせず、独立系生命保険会社として名を馳せるようになりました。
参考:ライフネット生命保険|お手頃な生命保険・医療保険はネットで!
2.ペットシッターサービス「愛犬のお散歩屋さん」
株式会社JTLが提供する「愛犬のお散歩屋さん」は、犬の散歩からしつけ、癖の矯正などを手掛けるペットシッターサービス。
創業者の古田弘二さんは、化粧品会社で長年勤めあげたあと早期退職。その後愛犬・クッキーとの散歩中に他の犬の散歩を頼まれたことをきっかけに「愛犬のお散歩屋さん」を立ち上げます。
その後FC(フランチャイズ)契約を軸に次々と加盟店を増やし、現在では全国に約70店を展開。事業を通じて、ペット愛好家たちのサポートを行っています。
3.外国人観光客向けのバイクツーリングサービス「FUN RIDE JAPAN」
「FUN RIDE JAPAN」は。元CAの松林由紀子さんが立ち上げた会社です。こちらは松林さんが培った英会話、接遇スキルを活かした起業で、日本に訪れる外国人観光客へ「バイクのツーリングサービス」を提供しています。
同社ではバイクのツーリングに特化したユニークな内容はもちろん、宿泊手続きやガイド、アテンドなどのサポートを徹底。
ニッチな需要を狙ったことで、起業成功を収めました。
シニア起業の“成功の秘訣”をまとめると?
過去の成功事例を見てみると、成功するシニア起業家には以下のような共通点があります。
- 前職の経験、知識をフル活用して起業している
- 「ありそうでなかった」ニーズを狙っている
- 人脈を活かしてうまくビジネスをスタートさせている
- 十分な起業資金を調達してから起業している
- 同業他社との差別化を意識している
シニアの経験×困りごと解決ができるビジネスは強い
成功の秘訣のうち、特に重要なのが「経験を活かして起業している」「人の困りごとを解決するビジネスを生み出している」という点です。
世の中では、ニーズがあるところにビジネスが生まれるものです。それは10代の起業であっても、シニアの起業であっても変わりません。ただ、若年層の起業では経験不足による失敗が多く見られます。
一方シニアの場合は「長年の経験・ノウハウ」という武器を持っています。せっかく長い月日を費やして培ってきた“武器”を、起業に活かさない手はありません。
人脈や十分な起業資金で環境を整えることが大事
またシニア起業では、会社員時代の人脈が助けになってくれることもあります。それは業務提携であったり、資金提供であったりとさまざまな形で現れるでしょう。
またシニアの中には、経済的に余裕があり、十分な起業資金を準備できるケースが多いのも強みだといえます。
ノウハウの蓄積や人脈、起業資金。
これらはシニア世代ならではの「強み」です。これから起業するなら、こうした強みを活かせるビジネスを考えてみてはいかがでしょうか。
シニア起業の注意点は?
過去の経験を活かしやすいシニア起業ですが、起業にはリスクもあります。
シニア起業を考える際は、以下の注意点も頭に入れておきましょう。
- 金銭目的の起業をしない
- 過去の経験・プライドに執着するのはNG
- 未経験の業種へのチャレンジ
- 経営者という意識を持つ
- ムダな初期投資をしない
起業して成果が表れるまでには時間がかかる場合も多いです。そのため、「稼ぎたい」という目的で起業すると、うまくいかなかったときにモチベーションが保てなくなり、廃業することになります。
また、過去の経験や業績などにこだわるのもNGです。起業時には過去のプライドを捨て、「1からのスタート」という気持ちを持ちましょう。その際には、自分が「経営者になる」という自覚を持つことも重要です。
そのほかの注意点としては「初期投資をしすぎないこと」も挙げられます。気合を入れて最初に多くの投資をしても、事業が成功するとは限りません。
シニア起業では初期投資もビジネスも「小さく始めること」を意識しましょう。失敗したときのリスクを最小限に抑えるのが、シニア起業の賢い方法ですよ。