会社の立ち上げは1人でも可能ですが、既存企業には2名や3名、それ以上の創業メンバーで会社を設立しているところもあります。そもそも、会社の立ち上げメンバーは何名がベストなのでしょうか?
ここでは、会社の立ち上げメンバーについて解説します。人数ごとのメリット・デメリットや、メンバーの探し方をご紹介しますので、起業を検討中の方は参考にしてみて下さい。
株式会社・合同会社・合名会社は1人からでも立ち上げ可能
会社を立ち上げる際には、会社の種類に応じて「最低限必要な発起人の人数」が決まっています。
【会社設立に最低限必要な人数】
株式会社 | 1名(有限責任社員) |
---|---|
合同会社 | 1名(有限責任社員) |
合名会社 | 1名(無限責任社員) |
合資会社 | 2名(有限責任社員、無限責任社員がそれぞれ1名ずつ) |
会社形態のうち、1名でも立ち上げが可能なのが「株式会社」「合同会社」「合名会社」です。
1名で会社を立ち上げる場合、発起人=出資者となり、会社形態に応じた「責任」を負います。
ここでいう責任とは、「会社が負債を抱えたときや倒産したときに、どこまでの金額を負担して弁済をするか」という意味です。
株式会社と合同会社は、出資した金額の範囲でのみ責任を負う「有限責任社員」が1人いれば設立できます。
いっぽう合名会社は、「無限責任社員」が1名いれば立ち上げができます。
無限責任社員は、会社が負債を弁済できないとき、出資額にかかわらずその負債を弁済しなくてはなりません。よって、会社が多額の負債を抱えた場合、それがそのまま個人のマイナス資産になるリスクがあるといえるでしょう。
なお、合資会社を立ち上げる場合は、有限責任社員と無限責任社員の各1名ずつ(計2名)が必要です。
会社の立ち上げ人数に“絶対の正解”はない
会社は1人からでも立ち上げができるとご説明しました。しかし実際のところ、何名で会社を立ち上げるのがベストなのでしょうか?
結論から言うと、会社の立ち上げメンバーの人数に“絶対の正解”はありません。
1人でも事業を成功させることはできますし、立ち上げに多くの人材が関わったからといって必ず大成功を収めるとは限らないのです。
- 会社の規模
- 事業の規模や展望
- 自分だけで意思決定したいか、人と相談しながら経営したいか
起業をする際は、このような観点から立ち上げに関わる人数を決めるべきでしょう。
1人で会社を立ち上げるメリット・デメリットは?
近年は1人で法人を立ち上げる方も多く見られますが、自分だけで会社を設立するとどのようなメリットがあるのでしょうか。1人で創業する場合のメリット・デメリットの両方を見てみましょう。
1人で会社を立ち上げるメリット
1人が発起人となって会社を立ち上げるメリットは、以下のとおりです。
- 持ち株100%なら、自分ひとりの意思決定で経営ができる
- 創業メンバーとの意見の対立がない
- 人件費などのコストが抑えられる
1人で会社を立ち上げるメリットは、経営の裁量がほぼ独占できることです。
特に、自身が持ち株100%の出資者=経営者となった場合は、自分だけで経営に関する意思決定ができます。
他者の干渉を受けることなく、スピーディな経営が実現できるのもメリットといえるでしょう。
人件費、社会保険料などの負担も最小限で済みます。
1人で会社を立ち上げるデメリット
1人で会社を立ち上げるデメリットは、以下のとおりです。
- ワンマン経営になりがち
- 不測の事態に事業の継続がしにくい
経営の決定権がすべて自分にある状態は、いわゆる「ワンマン経営」になりがちです。
意思決定が正しいものであれば問題ありませんが、その方向性が間違っていた場合、なかなか修正できない可能性があるでしょう。
さらに、1人での立ち上げには、事故や病気などの“不測の事態”が生じたときに事業の継続が難しいというデメリットもあります。
2~3人で会社を立ち上げるメリット・デメリットは?
「1人で会社を立ち上げるのは不安」などの理由から、2~3人で会社を立ち上げるケースも多く見られます。
それぞれのメリット・デメリットを見てみましょう。
2人で会社を立ち上げるメリット
2人で会社を立ち上げるメリットは、以下のとおりです。
- 意見を出し合いながら経営の意志決定ができる
- 1人で会社を立ち上げるより、新たなアイデアが生まれやすい
- 役割分担をしつつ効率的に事業を運営できる
1人で会社を立ち上げる場合、意思決定のほとんど(または全て)は自分のみで行います。
一方2人で立ち上げる場合、意見を出し合い、比較検討しながら意思決定が行えます。
1人で思いつかなかったアイデアが生まれ、会社にとってより良い選択ができるケースも多いのです。
また2人で会社を立ち上げた場合、お互いがそれぞれ役割分担やサポートをしながら会社を経営できます。結果として効率的に事業を行えるようになり、スムーズなビジネスが実現できる可能性もあるでしょう。
2人で会社を立ち上げるデメリット
2人で会社を立ち上げるデメリットは、以下の3つです。
- 意見の対立が生じる可能性がある
- 仲介する人物がおらず、対立が長期化する可能性がある
- もう1人が辞任した場合、残った1人に経営負担がのしかかる
2人で会社を立ち上げる場合、意見の対立が生じる可能性があることは知っておかねばなりません。
また経営者が2人だと、意見の対立が生じても仲介する人物がおらず、対立が長期化するケースも多いです。
対立による関係悪化などで1人が辞任した場合、残った1人に経営の責任・負担が集中する点もデメリットといえるでしょう。
3人で会社を立ち上げるメリット
3人で会社を立ち上げる場合、2人で立ち上げるケースに比べてさまざまなメリットが得られます。
- 2人で立ち上げるより新たな意見が出やすい
- 仲介役がいることで、意見の対立があった場合でも早期解決がしやすい
- 多様な経験、スキル、ノウハウが集まりやすい
「三人寄れば文殊の知恵」という言葉があるように、3人での会社立ち上げは「新たな意見が出やすい」というのが大きなメリットです。2人が出した意見をヒントに、さらに発展したアイデアが生まれることも多いでしょう。
また2人が対立したとしても、残り1人が仲介、または中立的な立場をとることで、問題が早期解決するケースも多いです。2人のときに比べてさまざまな経験・スキル・ノウハウを持ち寄って起業しやすいのも、3人で創業するメリットでしょう。
3人で会社を立ち上げるデメリット
3人で会社を立ち上げる場合、デメリットについても知っておきましょう。
- 意思決定のスピードは2名以下に比べ遅くなる
- 不公平感が生まれることもある
- 役割分担がうまくいかない場合もある
意思決定のスピードは、人数が増えるほど遅くなります。
また3人で会社を立ち上げる場合、2人で立ち上げるときに比べてパワーバランスの調整や役割分担が難しくなります。これにより不公平感が生じ、トラブルに発展するケースも多いでしょう。
4人以上で会社を立ち上げるメリット・デメリットは?
家族経営の起業やサークル、団体などが主導となって会社を立ち上げる場合、創業メンバーが4人以上になるケースもあります。この場合、どのようなメリット・デメリットが生じるのでしょうか。
4人以上で会社を立ち上げるメリット
4人以上で会社を立ち上げるメリットは以下のとおりです。
- 人数が多くなれば不足した経験、スキルを補いやすくなる
- 役割分担がしやすいため、企業や事業規模の拡大もしやすくなる
- 1人あたりの出資負担が減る
会社の立ち上げ人数が増えると、幅広い人材が集まりやすくなります。同業種の経験者はもちろん、まったくの異業種を経験した人材が集まった場合、革新的なイノベーションが実現する可能性もあります。
また人数が多いぶん役割分担をして経営ができるため、事業の展開・拡大もしやすいでしょう。
1人あたりの出資負担が減るのも、大人数で会社を立ち上げるメリットです。
4人以上で会社を立ち上げるデメリット
4人以上で会社を立ち上げると、人数が多いゆえのデメリットもあります。
- 意見の対立が生じたとき、派閥争いになることがある
- 株式の持ち株比率を決める際にトラブルになる場合がある
- 創業メンバーの不満や力関係の調整が難しい
同じ志をもって創業しても、事業を行ううちに意見が対立することがあります。もちろんそれは珍しいことではないのですが、人数が多いがゆえに“派閥”ができてしまうことも。事態が悪化すれば、組織が分裂、空中分解する可能性もあるでしょう。
また、創業メンバーが多くなると、株式の持ち株比率を決める際にトラブルが起こるケースもあります。パワーバランスの調整、役職や立場の采配が難しくなるデメリットもあるでしょう。
会社の立ち上げメンバーを探す方法
会社の立ち上げメンバーを探す方法としては、以下のような手段があります。
- 知り合いや元同僚などに話を持ち掛ける
- 取引先から引き抜く
- ベンチャーキャピタルからの引き合わせ
- SNSなどで発信し、賛同者を集める
- 創業メンバーのマッチングサイトを使う
このうち、実際の起業例でもっとも多いのが「知り合いや元同僚に声をかける」という手法です。もともと起業に興味のある人や志を持った人を集めて会社を立ち上げることで、スムーズに創業しやすい利点があります。
また最近では、創業メンバーを探すためのマッチングサイトを活用し、立ち上げに必要な人材を確保する方も増えています。
ただし、会社の立ち上げ自体は1人でも可能であり、無理にメンバーを集める必要はありません。
メリットよりもデメリットの方が大きいなら、1人で起業し、後からメンバーを集める選択肢もあります。
自分の会社にとってベストな方法を検討してみましょう。