経営や起業に関心がある方なら、一度は「フランチャイズ経営」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
フランチャイズ経営は、ロイヤリティを支払って既存の店舗名や商品、サービスなどの「利用・販売権」を得る経営方式です。近年では、「ゼロスタートよりも気軽に起業できそう」という理由でフランチャイズ経営を選ぶ人も増えています。
そこで今回は、フランチャイズ経営の概要やメリット・デメリットを紹介。フランチャイズ経営に向いている人や、開業時のポイント&注意点についても解説します。
そもそもフランチャイズとは?
フランチャイズとは、企業にロイヤリティを支払って「加盟店」となり、店舗を運営していく経営方式です。
ロイヤリティとは「加盟金」のこと、ロイヤリティを支払ったオーナーは、企業の商標・商品・サービスの「使用権」「販売権」を使って商売ができます。
「ブランドイメージと商品を借りて代わりに販売する」と考えるとわかりやすいでしょう。
フランチャイズでは、加盟店を募集する企業の本部を「フランチャイザー」、ロイヤリティを払った加盟店側を「フランチャイジー」と呼びます。
- フランチャイザー……フライチャイズで商標利用権や販売権を提供するチェーンの本部
- フランチャイジー……店舗運営をする側、つまりフランチャイズ加盟店
フランチャイザーは商標使用権・商品販売権に加えて、店舗運営のノウハウ提供、運営サポート、商品開発や広告宣伝などを行ってくれます。
2021年度におけるフランチャイズチェーンの市場規模は約25.8億円(※)というデータもあり、有名店の多くがフランチャイズ経営による運営です。店舗運営の方式としてはかなりポピュラーだといえるでしょう。
※出典:フランチャイズチェーン統計調査|一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会
フランチャイズと直営の違い
- フランチャイズはロイヤリティを払って商標や商品・サービスを使った事業ができる
- 直営店は本部の自社運営でレギュラーチェーンと呼ばれている
- 直営店で研修をしてフランチャイズ開業をするなど、フランチャイズの基準にもなる運営形態
フランチャイズのメリット・デメリットは?
フランチャイズでの店舗運営にはメリットも多いですが、デメリットもあります。
また、フランチャイズ経営には向き不向きもあるので、合わせて知っておきましょう。
フランチャイズ経営のメリット
フランチャイズ経営のメリットは以下のとおり。
- 初めから知名度の高いブランド力を借りて商売ができる
- 経営ノウハウのレクチャーなど、本部からサポートが得られる
- 独自商品の開発等は本部がすべて行ってくれるため、店舗運営に集中できる
- 起業資金が少なく済む
フランチャイズの大きなメリットに、初めからブランド力を活かした経営ができる点が挙げられます。
イチから起業する場合、宣伝をしながらお店や商品の認知度を上げつつ、店舗運営、人材管理、商品開発等を並行しなくてはなりません。特に「お店や商品の認知度アップ」については、かなり苦戦するケースも多いでしょう。
一方フランチャイズでは、最初から知名度の高い「店名」「商品」「サービス」を使ってオープンすることができます。イチから起業する場合に比べ、有利であることは言うまでもありません。
また企業が設けた「本部」があり、開店から経営、運営管理までサポートしてくれるのもありがたいメリットです。商品開発等は本社で行われるため、オーナーは店舗運営に注力することができます。
起業資金もイチからお店を開く場合に比べると低額で済む場合が多く、比較的気軽に開業できるのも魅力です。
フランチャイズ経営のデメリット
フランチャイズ経営にはデメリットもあります。
- 経営の自由度は低い
- ロイヤリティ(加盟金)を支払う必要がある
- 土地や店舗の家賃等はオーナーが支払う
フランチャイズは本部の経営方針に従う必要があるため、オーナーが勝手な経営をすることはできません。イチから起業する場合に比べると、当然自由度は低くなるでしょう。
また、フランチャイズ経営をするにはロイヤリティ(加盟金)を支払う必要があります。ロイヤリティには定額制、歩合制などの支払い方法がありますが、売上金額に関係なく毎月支払いが必要となります。
さらに、フランチャイズ経営はあくまでも「商標(店舗名など)」「商品・サービス」の利用権を借りられる経営方法です。よって店舗の土地代、家賃などについてはオーナーが負担する必要があります。
フランチャイズ経営に向いている人
フランチャイズ経営に向いているのは、次のような人です。
- なるべく少ない資金でお店を開業したい人
- チェーン店のブランド力を利用したい人
- 人脈や機材調達等のツテはないが、開業したい人
- 店舗開業のサポートやバックアップを受けたい人
- 店舗運営のノウハウを学びながら開業したい人
反対に「資金に余裕があり、人脈や機材調達のツテもある」「他店舗で知名度を獲得していて新規店舗をオープンする」「起業ノウハウを熟知している」「自由な経営をしたい」といった方には、フランチャイズは不向きです。
フランチャイズにはどんな業種がある?
フランチャイズといえばコンビニエンスストアや飲食業のイメージが強い方も多いでしょう。
事実、コンビニや飲食店などにはフランチャイズ経営のお店が多数見られます。
また、それ以外にも塾やエステサロン、介護サービスに至るまで、さまざまな業種でフランチャイズ方式が採用されています。
【フランチャイズ経営の例】
- コンビニエンスストア
- 飲食業
- テイクアウト専門販売店(弁当、総菜、スイーツなど)
- 学習塾、スクール
- 修理業
- クリーニング店
- ハウスクリーニング
- 理髪店、美容院
- エステサロン
- 買い取り販売業
- 介護サービス など
なお、未経験の業種であっても、オーナーにさえなれば開業できるのもフランチャイズならではです。
「○○の業界で起業したいけれど、ぶっつけで起業するより一度ノウハウを学びたい。しかしコネもない」
という場合は、フランチャイズオーナーとなって経験を積み、同業種で独立する……といったこともできます。
フランチャイズで開業する際のポイントは?
フランチャイズで起業を検討している方は、次のポイント・注意点を知っておきましょう。
- 基本はフランチャイザー(本部)の経営理念や方針に従う
- 創意工夫を忘れずに
- 先輩オーナーに話を聞いてから判断を
- フランチャイズ説明会前に質問したいことをまとめておく
- 売上が低迷してもロイヤリティの支払い義務は発生する点に注意
基本はフランチャイザー(本部)の経営理念や方針に従う
フランチャイズはロイヤリティと引き換えに企業の商標・商品・サービス等を利用できる起業方法です。よって、フランチャイザー(本部)の経営理念、および経営方針に従って店舗運営をすることが原則必要となります。
つまり、マニュアルを大きく逸脱した経営(企業の独自商品を陳列せず、イメージを損なうような商品ばかりを提供するなど)をしてしまうのはNGです。フランチャイザーのイメージダウンにつながるような経営は避けましょう。
創意工夫を忘れずに
フランチャイズ経営ではフランチャイザーの経営方針、提供するマニュアルに従うのが原則とご説明しましたが、「従業員への対応」「顧客対応」などについては創意工夫が求められるケースも多々あります。
ブランドイメージを損なわない範囲で、かつ売上アップにつながるような工夫があれば積極的にトライしてみましょう。
先輩オーナーに話を聞いてから判断を
フランチャイズ経営を始めるなら、できるだけ多くの“先輩オーナー”に実情を聞いてみてください。
フランチャイザーは「フランチャイズ説明会」を開催し、必要事項などを説明してくれますが、実際に経営していると「説明と実情のギャップ」が生じるケースも少なくありません。
良い点はもちろん、実際にフライチャイズ経営をしてみて困ったこと、準備しておかねばならないことといった“注意点”をしっかりと情報収集しておきましょう。そのうえでフライチャイズに申し込むか判断すれば、失敗も防げます。
フランチャイズ説明会前に質問したいことをまとめておく
フランチャイズでは「0円で開業できる」「1,000万円の資金が必要」というふうに、開業の条件が企業によってまちまちです。またロイヤリティの支払い方式(定額制、歩合制など)やオーナーの負担範囲、サポート範囲も企業によってかなり差があります。
こうした細かな条件を確認するのにうってつけなのが「フランチャイズ説明会」です。各フランチャイズ本部では、随時「無料説明会」を開催しています。
フランチャイズ説明会は直接疑問・質問ができる貴重な機会でもあるため、事前に質問したいことをメモしておくとよいでしょう。聞き漏らしがないよう、気になること、不安なことはリスト化しておくとスムーズです。
また毎年3月ごろになると、「フランチャイズ・ショー」という大規模フライチャイズ展示商談イベントが開催されるのが恒例です。
できるだけ多くのフライチャイズ説明会へ足を運んでみるとともに、各フランチャイザーの印象や情報を比較してみると、自分に合った企業を見つけられます。
売上が低迷してもロイヤリティの支払い義務は発生する点に注意
フランチャイズのデメリットともいえますが、売上が伸び悩んでいてもロイヤリティの支払い義務は定期的に発生します。
特に支払方法が定額制の場合「今月は経営が苦しいから」といっても毎月固定の額が徴収されるので注意が必要です。
1からのスタートが怖い人はフランチャイズで起業するのも手
フランチャイズはブランドの知名度を借りてお店を開ける起業手法です。ロイヤリティや各種費用を支払う義務が生じますが、その代わりに「はじめからネームバリューのある商標・商品・サービスで勝負できる」というのは大きな強みでしょう。
また、独自性を出すのは難しい反面、本部からの店舗運営・経営ノウハウを教えてもらえるなどのサポートも充実しています。起業コストについても、イチからお店を出す場合に比べると少なく済むケースが多いです。
「イチからスタートするのは不安だけれど、起業してみたい」という方は、フランチャイズ経営も検討してみてはいかがでしょうか。