請求書などの消費税の計算において発生する1円未満の「端数」の処理の仕方については、どのように処理すべきか意外と知られておらず、よく理解しないまま切捨て処理を行っている企業も少なくないといいます。
そこでこの記事では、請求書の場合の消費税の計算方法や、消費税申告時の場合の消費税の計算方法について、詳しくご紹介したいと思います。
2023年10月より始まる「インボイス制度」によって生じる計算方法の変更点にも触れますので、参考にしてみて下さい。
消費税の基本
消費税の基本について解説します。
消費税とは
消費税とは、商品の売買やサービスへの対価において生じる「消費」全般に対して課せられる税金です。
消費税は、商品を購入したりサービスの提供を受けたりする消費者が負担し、消費者から受け取った消費税を販売者(サービス提供者)が納付します。
なお、消費税はすべての消費にかかるわけではなく、「非課税」となるものもあります。
<非課税となる取引>
1) 土地の譲渡および貸付け | 土地には、借地権などの土地の上に存する権利を含みます。 ただし、1か月未満の土地の貸付けおよび駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は、非課税取引には当たりません。 |
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2) 有価証券等の譲渡 | 国債や株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などの譲渡 ただし、株式・出資・預託の形態によるゴルフ会員権などの譲渡は非課税取引には当たりません。 |
3) 支払手段(注)の譲渡 | 銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、約束手形などの譲渡 ただし、これらを収集品として譲渡する場合は非課税取引には当たりません。 (注) 支払手段に類するものとして、資金決済に関する法律第2条第5項に規定する暗号資産(令和2年4月までは「仮想通貨」という名称が用いられていました。)の譲渡も非課税となります。 |
4) 預貯金の利子および保険料を対価とする役務の提供等 | 預貯金や貸付金の利子、信用保証料、合同運用信託や公社債投資信託の信託報酬、保険料、保険料に類する共済掛金など |
5) 日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡および地方公共団体などが行う証紙の譲渡 | |
6) 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡 7) 国等が行う一定の事務に係る役務の提供 | 国、地方公共団体、公共法人、公益法人等が法令に基づいて行う一定の事務に係る役務の提供で、法令に基づいて徴収される手数料 なお、この一定の事務とは、例えば、登記、登録、特許、免許、許可、検査、検定、試験、証明、公文書の交付などです。 |
8) 外国為替業務に係る役務の提供 | |
9) 社会保険医療の給付等 | 健康保険法、国民健康保険法などによる医療、労災保険、自賠責保険の対象となる医療など ただし、美容整形や差額ベッドの料金および市販されている医薬品を購入した場合は非課税取引に当たりません。 |
10) 介護保険サービスの提供等 | 介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービス、施設サービスなど ただし、サービス利用者の選択による特別な居室の提供や送迎などの対価は非課税取引には当たりません。 |
11) 社会福祉事業等によるサービスの提供等 | 社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業、更生保護事業法に規定する更生保護事業などの社会福祉事業等によるサービスの提供など |
12) 助産 | 医師、助産師などによる助産に関するサービスの提供等 |
13) 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供 | |
14) 一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け等 | 義肢、視覚障害者安全つえ、義眼、点字器、人工喉頭、車椅子、身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造または機能を有する自動車などの身体障害者用物品の譲渡、貸付け、製作の請負およびこれら身体障害者用物品の修理のうち一定のもの |
15) 学校教育 | 学校教育法に規定する学校、専修学校、修業年限が1年以上などの一定の要件を満たす各種学校等の授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、在学証明手数料など |
16) 教科用図書の譲渡 | |
17) 住宅の貸付け | 契約において人の居住の用に供することが明らかにされているもの(契約において貸付けの用途が明らかにされていない場合にその貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかなものを含みます。)に限られます。 ただし、1か月未満の貸付けなどは非課税取引には当たりません。 |
引用)国税庁 (No.6201 非課税となる取引)
課税業者と免税業者とは?
消費税を納税する義務がある事業者のことを「課税事業者」と呼び、納税する義務のない事業者のことを「免税業者」と呼びます。
課税事業者は、課税期間中の課税取引の売上が1,000万円を超える事業者が該当し、売上が1,000万円以内の事業者を免税事業者となります。
課税期間中とは、個人事業主の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度を指します。
なお、免税業者が消費者から受け取った消費税は、国へ納付義務がないため免税事業者の利益となります。
消費税の標準税率と軽減税率
消費税の税率は、「標準税率(10%)」と「軽減税率(8%)」との2種類があります。
軽減税率となるものは、以下の通りです。
- 酒類、外食、ケータリングを除く食品や食材
- 週2回以上発行される定期購読契約の新聞
- おもちゃ付きのお菓子など、食品と食品以外の資産があらかじめ一体となっているもので、価格表示が一体となっているもの
上記の以外の取引は、すべて標準税率(10%)が適用されます。
消費税の「内税」と「外税」の計算方法について
小売店での商品価格や飲食店でのメニュー表示価格など、不特定の人に向けた価格表示において、消費税を含めた総額の提示(内税での表示)が義務づけられています。
内税の消費税額=税込価格÷(1+消費税率)×消費税率
一方で、契約書や見積書を発行する場合や、個別で直接消費者へ口頭で価格を伝える場合は、商品価格に消費税をかけて提示(外税での表示)でも問題ないとされています。
外税の場合は、本体価格と消費税額とを分けて表示します。
外税の消費税額=税抜価格×消費税率
消費税の端数処理に決まりはある?
商品価格やサービス対価を決める際、税抜価格に10%または8%の消費税率を掛けて「消費税相当額」を算出し、それを加算して税込価格を設定している事業者が多いかと思います。
消費税相当額を算出した際には、1円未満の端数が生じる場合がありますが、この端数処理の方法については、企業ごとの判断に委ねられており、法律での明確な規定はありません。
事業者間の取引においても、同様に消費税の計算における端数処理の方法については、企業ごとに異なり、切り捨て処理、切り上げ処理、四捨五入処理などさまざまです。
そのため、取引先と端数処理の計算方法が異なることで、計算が合わないというトラブルが起こる可能性もあり、事業者間での請求書発行においては、前もってどのような扱いにするのかを取り決めておく必要があります。
インボイス制度導入後の消費税の端数処理のポイント
2023年10月からのインボイス制度(適格請求書等保存方式)導入後は、売上時や仕入時のインボイスの端数処理について、注意が必要となる点についても押さえておきましょう。
現行では、消費税の端数処理は商品やサービスごとに行うことが認められていますが、インボイス制度では1つの適格請求書につき税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります。
1つの適格請求書のなかに消費税率10%と8%が混在している場合は、一度それぞれの税率において端数処理を行ったあと、合算した金額を記載します。
請求書1枚のなかでの端数処理は、税率ごとに1回ずつしか認められない点に注意しましょう。