企業が人を雇用する形態のひとつである「契約社員」。契約社員は正社員や派遣社員と比べるとさまざまな違いがあるほか、契約社員ならではのメリット・デメリットもあります。
ここでは契約社員の特徴や正社員・派遣社員との違いを紹介。さらに、『契約社員として働く人』『契約社員を雇用する企業』それぞれのメリット・デメリットを解説します。
契約社員の特徴とは?
契約社員は、文字通り「契約期間に定めのある社員」のことです。
労働者は雇用主との間に「有期雇用契約(契約期間が決まっている雇用契約のこと)」を結び、契約書で決められた内容の仕事を担います。
雇用期間
契約社員の雇用期間は、契約書により定められています。
また、1回の契約期間は3年間が上限です。
3年を超えて働く場合は、改めて労働契約を更新する必要があります。
雇用主や勤務条件
契約社員は、勤め先の企業に直接雇用されます。
賃金に関しては時給制、月給制などがあり、企業によっても変わります。正社員に比べると賃金は低く設定されているケースが多いようです。
それ以外の勤務条件(勤務時間や日時など)は、正社員とほぼ変わらないケースもあれば、週4日など決まった日時・曜日のみの契約となっている場合もあります。
原則として異動・転勤の可能性はなく(企業にもよります)、正社員のような昇進(管理職ポストへの就任など)はないケースが多いです。
給与、賞与
正社員と同じ内容の業務をしている契約社員は、正社員と同程度の基本給がもらえることが多いです。ただし、実際の支給額は手当の有無や月給制・時給制のどちらなのか……といった細かな待遇によっても変わります。
賞与については契約社員にも支給されるケースが増えていますが、正社員と同じ額が支給される企業もあれば、正社員より賞与額を少なく設定している企業もあるのが実情です。
また、契約社員にはそもそも賞与そのものが支給されない場合もあります。
正社員と契約社員の違い
正社員とは、企業において常時雇用されている従業員を指します。いわゆる「正規雇用」の労働者です。
正社員は契約社員と異なり「無期雇用」ですので、○年経ったから契約を更新する、といったやりとりはありません。
また、契約社員と正社員には以下のような共通点、異なる点があります。
- 勤務先の企業で直接雇用される
- 勤務日時は原則として変わらない
- 休日や休暇がある
- 社会保険へ加入できる
- 解雇時には事前予告がある
- 正社員は無期雇用、契約社員は有期雇用(1回の契約につき最長3年)
- 企業によっては正社員のみ転勤ありの場合も
- 月給制、年俸制のいずれかを適用している場合がほとんど(※1)
- 賞与ありの企業では賞与が支給される(※2)
- 高い確率で昇進や昇給がある
- 企業によっては諸手当が充実している(※2)
- 退職金制度がある(※2)
※1……企業によっては契約社員でも月給制、年俸制を採用している場合があります
※2……企業によっては契約社員にも同じ待遇をしている場合があります
なお、2021年以降はすべての企業に対し「同一賃金同一労働」の考え方や施策が推奨されています。
これにより、契約社員などの非正規雇用と正社員の不合理な待遇差が禁止されています。
現時点で契約社員と正社員の間で“格差”がある企業は、待遇の見直し等で賃金格差を埋める必要があることを知っておきましょう。
契約社員と派遣社員の共通点、違い
ここまでお読みになった方の中には「契約社員は派遣社員と似ている」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
実際のところ、契約社員と派遣社員にはいくつかの共通点があります。
- 有期雇用で契約期間が決まっている
- 非正規雇用労働者である
- 契約満了で勤務が終了する仕組みはどちらも同じ
契約社員も派遣社員も、契約期間が決まっている非正規労働者(正社員ではない労働者)なのは同じ。
また契約満了で勤務(雇用や派遣)が終了するのも同じです。
ただ、契約社員と派遣社員には、以下のようにさまざまな違いがあります。
- 契約社員は直接雇用、派遣社員は間接雇用となる
- 派遣は同じ派遣先、部署での最長派遣期間が3年まで(契約社員は契約更新をすれば同じ勤務先で3年以上働ける)
- 派遣社員は時給制が多く、契約社員は月給制が多い
- 仕事内容や責任範囲は契約社員のほうが重め
- 同じ仕事でも派遣社員のほうが、給与が高くなる場合もある
最も大きな違いは、雇用先です。契約社員は勤務先が直接雇用先になりますが、派遣社員は一旦派遣会社に雇用されたのち、派遣先企業へ「派遣」されて働きます。
よって、派遣先と派遣スタッフの間に雇用関係はありません。
そのほか、派遣社員は同じ職場で働ける期間の制約があること、責任範囲がより狭いなどの違いもあります。
契約社員として働く側・雇用する側のメリット・デメリット
契約社員という雇用形態には、従業員側と企業側それぞれでメリット・デメリットがあります。
契約社員として働く(雇用する)メリット
契約社員として働いたり、契約社員を雇用したりするメリットは以下のとおりです。
- 雇用期間が決まっていて、合わなければ次の仕事に移れる
- パートやアルバイトに比べて給与が高い
- 契約社員としての通算雇用期間が5年を超えると無期雇用社員になれる
【雇用する側のメリット】
- 人件費を抑えられる
- 地域限定社員、職種限定社員を募集しやすい
- 「繁忙期だけ」などの人員調整がしやすい
契約社員はあらかじめ契約期間が決まっており、パートやアルバイトに比べると給与額も高めである場合が多いです。よって、「決まった期間だけ効率よく働きたい」という人には、都合のいい働き方となります。
昇進も基本的にはないので、正社員よりも責任の軽い仕事を任されることが多く、精神的なプレッシャーも少ない状態で働けるでしょう。
また、契約社員としての通算雇用期間が5年を超えると「無期雇用」として、雇用期間を無期限に転換できるのも特徴です。
無期雇用の雇用形態は会社によって異なるものの(正社員ではない場合もある)、正社員として雇用されるようになればより安定した生活が送りやすくなります。
そして企業側のメリットとしては、人件費を抑えたり、特定の地域や職種に特化した人材を獲得しやすかったりといったメリットがあります。正社員に比べ人件費が少なく済むため、会社にとっては経費削減につながるでしょう。地域限定や職種限定の契約社員は、その地域や特定の業務のみに就きたい労働者側にもメリットがあります。
契約社員として雇用すれば期間限定で雇用ができるため、繁忙期のみ増員したい……といった人員調整もしやすくなります。
契約社員として働く(雇用する)デメリット
契約社員にはデメリットもあります。働く側、雇う側のデメリットをそれぞれ見てみましょう。
- 契約期間に定めがあり、契約が更新されない場合もある
- 正社員との格差を感じる場合がある(賞与や手当、退職金など)
- 昇進や昇給がほぼなく、正社員に比べると収入は安定しにくい
【雇用する側のデメリット】
- 高いスキル、経験を持つ即戦力人材は確保しにくい
- 責任のある仕事は任せにくく、正社員の負担増につながる場合がある
- 契約延長を希望しても、社員側が満了(契約終了)を希望すると別の人材を雇い直さなくてはならない
まず、働く側の契約社員のデメリットをひと言でいうと「雇用や収入が安定しないこと」につきます。
たとえば月給制の契約社員の場合、時給制のパートやアルバイトに比べると収入は安定しているように見えます。
しかし、実際には雇用期間に定めのある「有期雇用」であること、契約更新したくてもできない場合があること(企業から断られるなど)などから、雇用が安定しているとはいえません。仮に、契約更新するはずが契約期間の終了とともに企業から「契約の満了」を言い渡されたとすれば、それ以降の収入は途絶えてしまうでしょう。
また、近年は「同一労働同一賃金」が適用されつつありますが、企業によってはいまだ正社員と契約社員の雇用条件格差が残っているところも多いです。正社員と同じくらいの時間働いても、もらえる給与額に大きな差が付く……というケースも珍しくありません。
ちなみに、企業側としても人材確保の不安定さ、正社員の負担増などのデメリットが考えられます。また優秀な契約社員がいた場合でも、社員側が契約更新に同意しなければ、イチからの人材探しが必要になってしまうでしょう。
契約社員を雇う企業が知っておきたい“2つの制度”について
最後に、企業が契約社員を雇用するうえで知っておきたい2つの制度をご紹介します。
5年の無期転換ルール
契約社員には「無期転換ルール」という制度があります。
これは、同じ職場で通算した契約期間が5年を超えた契約社員に適用されるルールです。条件を満たした契約社員は、雇用主(企業)へ「無期転換申込」ができる権利が得られます。
契約社員から無期転換の申請があった場合、企業は契約社員を「無期雇用社員」として転換雇用しなければなりません。
なお、無期雇用転換後の雇用形態は、企業によってまちまちなのが実情です。正社員転換する企業もあれば、「無期契約社員」として雇用期間の定めがない契約社員に切り替わるだけ、という場合もあります。
企業で契約社員を雇用する場合は、あらかじめ無期転換後の雇用について決めておく必要があります。また、無期転換を行わない場合は、契約更新上限を5年までに設定し、契約書に明記しておくなどの対応が必要です。
同一労働同一賃金
「同一労働同一賃金」とは“同じ仕事内容のスタッフに対し、正社員と非正規雇用者で賃金などの非合理な待遇差を作らない”という考え方です。
2020年以降は大企業を皮切りに、中小企業でも同一労働同一賃金が適用されています。よって雇用側となる企業は、正社員か契約社員かといった雇用形態だけを見て、不当な理由での待遇差を作ってはならないのです。
(ただし合理的な理由がある場合は、2者間に待遇差が生じても問題ないとされています。)
契約社員を雇用する場合は、これらの制度について理解したうえで採用活動を進めていきましょう。