はじめて起業する場合、「具体的な手順がわからない」という方が大半です。本記事では、起業に必要な手順を「個人事業主の場合」「法人の場合」に分けてそれぞれ解説します。また、起業後オフィスを構える場合のおおまかな手順についてもお伝えします。
起業する手順は?2種類のステップを解説
起業するには、個人事業主として開業する、または法人を設立して会社を興す方法があります。それぞれの起業手順をチェックしてみましょう。
【A】個人事業主として起業する場合の手順
個人事業主として起業をする場合は、以下の手順で手続きをします。
- 開業届を記入する(青色申告をする場合は青色申告承認申請書も)
- 税務署へ開業届を提出(青色申告承認申請書がある場合はまとめて)
- 必要書類があれば合わせて提出する
- 開業完了、個人事業主としてスタート
個人事業主が開業届以外に必要な書類
3の「必要書類」とは「青色事業専従者給与に関する届出・変更申出書」「源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書」「給与支払事務所等の開設届出書」などを指します。
それぞれ以下のケースで提出が必要になりますので、該当する場合は抜け・漏れがないようにしましょう。
- 青色事業専従者給与に関する届出・変更申出書
- 源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
配偶者や親族を従業員にして給与を支払う場合、その給与を「経費」として計上する際に必要。
毎月10日までに納めるべき源泉徴収税を「半年ごとの納付」に変更したい場合に必要。
従業員10人未満であることが条件。
はじめて従業員(青色事業専従者を含む)を雇用し、給与を支払う場合に提出が必要。
また、個人事業主になった場合は国民健康保険、国民年金への加入も忘れないようにしましょう。
【B】法人を設立して起業する場合の手順(株式会社)
もうひとつの起業方法が「法人登記をして会社を設立する」という方法です。
ここでは、一般的な会社形態である「株式会社」設立の手順をご紹介します。
- 会社の基本情報の決定
- 資本金の準備
- 定款の作成、認証手続き
- 定款の認証手続き
- 資本金を払い込む
- 法務局へ必要書類を提出、登記申請をする
- 登記申請後~事業開始前にやっておくべき起業の手続き
1.会社の基本情報の決定
会社の基本情報は、のちに作成する「定款」に記載する重要なものです。
- 商号……会社の名前
- 本社所在地……会社の住所
- 事業目的……これから手掛ける事業の内容
- 資本金……会社の資金
- 発起人……会社設立の手続きをする人
なお、法人登記には会社の印鑑が必要になります。会社印、法人実印と呼ばれるものです。
申し込みから手元に届くまで1~2週間ほどかかる場合があるので、会社名が決まり次第注文しておくとスムーズです。
2.資本金の準備
資本金とは、会社の運転資金です。法律上は資本金1円から株式会社が設立できますが、資本金が多ければ多いほど「財務余力がある」として信用性が高まります。資本金額は、初期投資費用+3~6ヶ月の操業ができる金額が理想です。
ただし資本金が1,000万円以上になると、設立した年から消費税が発生しますので注意が必要です。
3.定款の作成
定款とは「会社の規則」を書いた書類のこと。定款には1.で作成した「基本事項」を必ず記載する必要があります。記載しない場合、定款として認められず、効力も発揮しませんので注意しましょう。
なお、定款の記載事項には「相対的記載事項」「任意的記載事項」というものもあります。
相対的記載事項は「記載が必須ではないが、書かないと効力が認められない事項」です。もうひとつの任意的記載事項は「記載が任意である事項」で、定款でも、ほかの文書での明示でもよいという事柄を書きます。
株式会社が資金調達などの目的で「株券」を発行する場合、相対的記載事項に「株式発行」について明記する必要がありますので覚えておきましょう。
- 絶対的記載事項:基本事項(商号、本店所在地、事業目的、資本金、発起人の氏名・住所)
- 相対的記載事項:株券発行、取締役会の設置についてなどの事項
- 任意的記載事項:株主総会の開催、役員報酬、配当金などの事項
定款は紙で作成するか、データ(PDFなど)で作成する方法があります。
後者は「電子定款」と呼ばれていて、認証を受けるときの収入印紙代40,000円が不要になったり、オンラインでの認証が受けられたりするメリットも。
作成には専用ソフト・ツールが必要になりますが、すこしでも起業費用を抑えたい方は検討してみてください。
また定款の書き方や手順、フォーマットについては日本公証人連合会のサイトで公開されています。
会社の規模、形態に応じたさまざまな例が公開されているので、参考にしてみましょう。
参考:定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc) | 日本公証人連合会
4.定款の認証手続き
定款を作成したあとは、公証役場で「認証」を受けます。
- 定款:3部
- 発起人全員の印鑑証明書(3ヶ月以内発行):各1通
- 発起人全員分の実印
- 定款の認証手数料:50,000円
- 謄本代:平均2,000円(1ページ250円)
- 収入印紙代:40,000円(※電子定款は不要)
- 代理人申請の場合は「委任状」
※電子定款の場合は事前にオンライン認証を受ける必要があります。またUSBメモリやCD-Rなどの記録媒体など、必要なものや手順が異なるため、認証予定の公証役場へ事前に確認しておきましょう。
下記では一例として、東京・中央区銀座の公証役場の公式ページをご紹介します。
5.資本金を払い込む
定款認証が終わったら、銀行口座へ資本金を払い込みます。
資本金を払い込んだあとは通帳の表紙、表紙を開いた1P目、払い込みがわかる通帳ページをコピーします。
6.法務局へ必要書類を提出、登記申請をする
資本金の払い込みを終えたら、法務局で登記申請をしましょう。
- 登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙(A4用紙へ貼付)
- 定款
- 発起人の決定書
- 取締役、代表取締役の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- (6)の資本金払い込みが確認できるコピー
- 印鑑届出書
- 登記すべき事項を記載した「書面」または「保存したCD-R」
- 法人印、個人印(持参すると便利)
以上を提出し、問題なければ10日前後で登記完了です。
7.登記申請後~事業開始前にやっておくべき起業の手続き
登記申請が終わったあとも、様々な手続きが必要になります。
- 登記事項証明書の取得:3部申請/1通600円
- 印鑑カードの取得
※郵送、オンラインでの交付申請も可能。
参考:登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと
- 法人税の手続き(税務署)
- 法人住民税、法人事業税の届出(各都道府県税務署、市町村役場)
- 健康保険、厚生年金の加入手続き(年金事務所)
- 法人銀行口座の開設
- 労働法に関する届出(労働基準監督署)
- 雇用保険に関する届出(ハローワーク)
ひとつひとつ抜け・漏れが無いように進めていき、スムーズな事業スタートを目指しましょう。
起業後に必要なオフィス・備品を揃える手順は?
法人として会社を設立する場合、オフィスを借りて会社を経営したい……という方も多いでしょう。オフィスを構える場合は、どのような準備が必要になるのでしょうか。
起業後に賃貸オフィスを借りる場合の準備、および手順を見ていきましょう
- オフィスの契約
- ネット回線、固定電話回線の契約
- オフィス家具の購入またはリース
- OA機器やパソコンの導入
- 筆記具などの事務用品購入
- 名刺の発注
- 会社ホームページの作成
- SNSアカウントの作成、発信 など
優先度が高いのは「オフィスの契約」やネット回線、固定電話などの契約です。また賃貸オフィスの場合は机、椅子やキャビネットなどのオフィス家具なども用意しなくてはなりません。業務に必須となるパソコンや複合コピー機などのOA機器も、まとめて手配しておきましょう。
こまごまとした事務用品の手配や名刺の発注は、手続きの合間に済ませておくと効率が良いです。
また、起業後に会社の認知度を高めるためには「ホームページ」を作成することをおすすめします。ホームページ作成サービスを利用すれば、Web制作の知識がなくとも自社のホームページが持てますので、活用してみてください。それと同時に、宣伝用のSNSアカウントも開設しておきましょう。
スムーズな滑り出しのためにも、起業手順を把握しておこう!
本記事では起業の手順や、起業後のオフィスの準備についてご紹介しました。
起業には個人事業から会社の設立まで、さまざまな方法があります。事業規模が大きいのであれば「会社」として設立をする方法がおすすめですが、1人で小さくビジネスを始めたい場合は「個人事業」でも事足ります。
大切なのは、事業規模や目的、今後のビジネスの目標に合った起業形態を選ぶことです。
また、個人事業や少人数での会社設立の場合は、「バーチャルオフィス」を活用して起業する手段もあります。
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