ビジネスではよく「フレームワーク」を用いて思考や施策の決定を行います。そもそもフレームワークとはどのようなものなのでしょうか?
ここでは、フレームワークの意味や種類、活用の手順やポイントを解説します。自社の課題を把握し、改善・解決・目標達成を目指したい方は、ぜひチェックしてみて下さい。
フレームワークとは何か?意味や定義について
フレームワークとは、ビジネスにおける目標を達成したり、経営戦略の立案、課題を解決したりするために用いる「考え方の枠組み」を指します。
フレームワークには様々な種類があり、それぞれ決まった“型”があります。目的に応じたフレームワークを選び、型に応じて内容を当てはめていくことで、目標達成や経営戦略、課題解決に必要な「答え」「解決策」が見つかりやすくなるのです。
よってビジネスにおいては事業分析やマーケティング分析、コンサルティングなどでよく用いられています。
ちなみに、IT業界でいうフレームワークは「アプリケーションの開発の土台となる機能を持ったソフトウェア」という意味です。ビジネスでのフレームワークはあくまでも「思考のためのツール・作業」であり、ITとは意味が異なることを知っておきましょう。
フレームワークを用いるメリット
フレームワークを用いるメリットは次の4つです。
- 課題を正確に把握しやすくなる
- 「何をすればいいか」が明確化される
- 戦略の効率的な立案、修正に役立つ
- チーム内の認識を共通化できる
ビジネスにおける課題は、さまざまなところに潜んでいます。また課題が顕在化していないと「どこに課題があるのかがそもそもわからず、手の打ちようがない……」という状態に陥ることも珍しくありません。
フレームワークを用いて課題を明確化すると、何を改善すべきかが正確にわかるようになります。さらに、複数フレームワークを併用したり、自社の現状や顧客などに対し分析を行ったりすることで、具体的な対策を打てるようになるのです。
これは経営戦略を考える場合も同じで、戦略の立案や修正などにフレームワークを役立てることができます。
また、フレームワークで課題や現状、改善策を可視化することで、組織内で同じ認識を共有しやすくなることも大きなメリットといえます。課題に対する認識がバラバラだと、たとえ何らかの施策を打ったとしてもチーム内で必要性が認識されていなかったり、個々の方向性にバラつきが生じたりするケースが多いものです。
フレームワークによって共通認識が持てれば、課題への対応や施策におけるズレがなくなります。これにより経営・営業・マーケティングなどの戦略に統一感が生まれ、より強固な組織として課題の解決に注力できるようになるでしょう。
ビジネスにおけるフレームワークの種類
ビジネスにおけるフレームワークには、さまざまな種類があります。ほんの一部ではありますが、ここではフレームワークの種類やそれぞれのフレームワークの用途について解説します。
思考の整理(論理的思考)に用いるフレームワーク
思考整理に用いられるフレームワークには次のようなものがあります。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、問題・課題を複数の階層に分けていき、それぞれを分解して解決策を発見するフレームワークです。階層が進むほど項目が枝葉に分かれる様が木のように見えるためこの名が付きました。
課題に対する全体像を把握しやすくなるほか、課題解決のアクションや優先順位付けに用いることもできます。
MECE(ミーシー)
MECEは物事や要素の重複、モレを可視化するフレームワークです。複数の要素・属性について重複やモレを把握することで、作業のムダを省き、正確かつ効率的に物事を進めることができます。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーとは、結論を頂点に据え、その下に複数の「根拠」を細分化していくフレームワークです。結論に対する根拠、および根拠を証明する事例やデータなどを可視化できるため、論点や目的を提示したいときによく用いられています。
情報の整理、分析に使うフレームワーク
情報の整理や分析には、以下のフレームワークがよく用いられています。
SWOT分析
SWOT分析は、自社を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つに分けて現状を把握したり、評価を行ったりするフレームワークです。
課題の洗い出しに活用しやすいフレームワークで、内部環境・外部環境をもとに課題と改善点を可視化することができます。
3C分析
3C分析とは、「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3要素から事業の方向性、問題点を可視化するフレームワークです。
市場(顧客)のニーズ、競合の状況を踏まえて自社の独自性などの強み、弱みを洗い出します。起業や新規プロジェクトの立ち上げには必須ともいえるフレームワークといえるでしょう。
4P分析
4P分析とは、「商品(Product)」「価格(Price)」「流通や販売方法(Place)」「販売促進(Promotion)」の順に分析をして、商品の価格や流通ルート、プロモーションの方向性を決めるためのフレームワークです。
マーケティングによく用いられますが、商品開発や新規プロジェクト立ち上げ時などさまざまなシーンでも用いられます。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、商品・サービスを販売する過程に沿って強み・弱みを把握するフレームワークです。
顧客の手元に商品やサービスが届くまでの複数段階のうち、誰が(どの部署が)何を、いつ、どんなふうに実行するか整理するうえで便利なフレームワークとなっています。
業務効率改善に使うフレームワーク
業務効率改善によく用いられるフレームワークには次の4つがあります。
PDCA
PDCAとは「計画(Plan)」「実行(Do)」「検証(Check)」「改善(Action)」のサイクルで業務などの改善をしていくフレームワークです。どれか1つを行うのではなく、各過程を繰り返し行うことで改善を目指します。
OODA
OODAとは、「観察(Observe)」「判断(Orient)」「意思決定(Decide)」「行動(Act)」というサイクルを繰り返し行うフレームワークです。PDCAとよく似ていますが、OODAは「まず様子を見て仮説を立ててから行動を計画し、実行する」というサイクルのため、状況判断がしにくい場面などで用いられます。
ECRS(イクルス)の原則
ECRS(イクルス)の原則とは、業務を「排除(Eliminate)」「結合(Combine)」「交換(Rearrange)」「簡素化(Simplify)」の視点から検討し、業務改善を行うフレームワークです。
具体的には不要な業務をやめたり、複数業務を統合して同時に行ったりするほか、既存業務や工程を効率よく行えるよう変更したり、業務過程を簡素化したりするフレームワークとなります。業務について改めてムダを見直し、効率化できる箇所がないかを洗い出すことで、生産性の向上が期待できるでしょう。
4象限マトリクス
4象限マトリクスとは、タスクを4つの領域に分け、適切な優先順位をつけるフレームワークです。
まず現在あるタスクに対し、「重要性」「緊急性」の2つに分けます。そこからさらに細分化し、「緊急かつ重要」「緊急ではないが重要」「緊急だが重要ではない」「緊急でも重要でもない」という4領域にそれぞれ振り分けていきます。そうすると「緊急かつ重要」なタスクからこなしていけばよいということになり、効率的に業務を進めることができるのです。
マーケティング分析に使うフレームワーク
マーケティング分析では以下のフレームワークが良く用いられています。
AIDMA
AIDMAとは、消費者が商品・サービスの購入を決めるまでのプロセスを表すフレームワークです。
- Attention(注意)……商品について認知する
- Interest(関心)……商品に興味を持つ
- Desire(欲求)……商品がほしいと感じる
- Memory(記憶)……商品を思い出す
- Action(行動)……商品を購入する
各段階において適切なマーケティング施策を考える際に用いられます。ただし、デジタルマーケティングにおいては後述する「AISAS」が使われるケースが多いです。
AISAS
AISASとは、消費者がインターネットで商品を検索・購入する行動を表すフレームワークです。
- Attention(注意)……商品について認知する
- Interest(興味)……商品に興味を持つ
- Search(検索)……商品について検索する
- Action(行動)……商品を購入する
- Shere(共有)……商品について共有する
特徴は「検索」「共有」というプロセスをたどることです。たとえば「気になっていた化粧品をネットで調べたら自分に合っていそうなので購入した。使用感が良かったのでSNSで感想を投稿した」という流れはよくありますが、AISASにそのまま当てはまります。
AISASのフレームワークを用いて検索や共有されるようなマーケティング施策(SEO対策やSNS投稿キャンペーンなど)を行えば、売上を伸ばすことにつながります。
フレームワークの活用方法
ビジネスフレームワークはただやるだけではなく、何かの施策や意思決定に活用して初めて意味があります。
つまり、以下のようなステップでフレームワークを取り入れ、課題の解決や目標達成に向けた行動をとることが重要となります。
- 課題について仮説を立てる
- 最適なフレームワークを選び、実行する
- フレームワークの結果をもとに分析を行う
- 分析をもとに課題と改善策を決定する
- 改善策を可視化、できるものから実行していく
自社が抱える課題は何か?そしてそれはどの部署、チーム、プロセスにあるのか?といったことを考えて仮説を立て、解決に役立つフレームワークを選定します。
そしてフレームワークの結果をもとに詳しい分析を行い、課題解決・目標達成をするための施策、戦略を決定しましょう。このとき、自社で蓄積しているデータ(顧客データや営業データ、開発データなど)を活用することでより具体的な施策を設定しやすくなります。
改善策や戦略については可視化して自社内で共有し、達成できるものから少しずつ取り組んでいきます。
また改善ができたかどうか振り返り、PDCAを回しながら効果を検証、再改善していくことも重要です。
フレームワークをうまく活用しながらビジネスを効率よく、かつ生産的に行い、成果を生み出す組織を作り上げましょう。