起業するというと「お金がかかる」「ヒットするビジネスのアイデアがないと起業できない」と思っていませんか? 起業の仕方によっては、あまりお金をかけずに起業することも可能です。小さくビジネスを始めればうまくいかないときの軌道修正もしやすく、万が一ダメだったとしてもリスクは最小限で済みます。
ここでは、低コストで小さく始められる起業の仕方をご紹介します。「多額の起業資金は用意できないけれど、起業してみたい」「リスクの少ない方法で起業したい」という方は、ぜひご覧ください。
起業するには会社を設立するか個人事業主になる必要がある
起業についてお話しするにあたって、ぜひ知っておいてほしいのが「起業のスタイル」です。
起業には法人登記を行って会社を設立するか、個人事業主として開業する方法があります。
それぞれの起業の仕方にはメリット、デメリットの両方があり、どちらが向いているかは事業内容や規模によっても変わります。
- 法人格を獲得した「会社」のため社会的信用も高く、取引や採用で有利になる
- 株式会社になると株式発行ができ、資金調達がしやすい
- 個人の所得税に比べ、法人税のほうは税制優遇がある
- 個人事業に比べると高額な融資が受けやすい
- 資本金の準備や法人登記などの費用が必要
- 決算が必要になり、会計・税務処理などが複雑になる
- 個人事業に比べると、法人税や社会保険料などの負担が多くなる
- 無料で開廃業できる
- 確定申告や税務申告等の手続きは、法人に比べると簡単
- 利益が少ないうちであれば税負担も少ない
- 社会的信用は法人に比べると低い
- 経費の範囲が狭い
- 利益が増えるほど税負担が重くなる
- 受けられる融資額に限度がある
将来的に本格的なビジネスとして展開していきたい場合は、法人として会社を設立したほうが(長い目で見れば)利点が多いでしょう。一方、副業などのスモールビジネスとして続けたい場合は、個人事業でも全く問題ありません。
起業の仕方①:コストのかからない事業で小さく始める
ここからは、実際に低コストで起業する方法をご紹介していきます。
1つめの起業の仕方としては「コストのかからないスモールビジネスで起業する」方法です。
結論から言うと、上場企業のようにはじめからしっかりとした組織を作り、さまざまな商品・サービスを準備して起業をするのは、初めて起業される方にとってはかなり難易度が高い行為だといえます。
会社組織を形成するためには人材も集めなくてはなりませんし、商品・サービスの提供には仕入れや製造、マーケティングなどの下準備が必須です。また当然ながら、事業規模が大きいほどコストも多くなるので、その資金をいかに調達するかといった課題もあります。
一方、自宅や小規模のオフィス・店舗などを借りて行う「スモールビジネス」なら、そこまで多くの資金は必要ありません。扱う商品やサービスを最小限にすることで、最低限のコストのみで事業をスタートできます。
- ネットショップの運営
- コンサルティング業、セミナー講師
- 代行業
- レンタル業
- キッチンカー
- クリエイティブ職
- IT・WEB関連職
それぞれの特徴や起業するメリットを見ていきましょう。
ネットショップの運営
スモールビジネスとして最近注目されているのが、ネットショップの運営です。
オンライン上にお店が持てるネットショップは、家賃や光熱費もかからず、毎月の固定費を浮かせながら自分のショップが持てます。
また「BASE」「メルカリShops」などのネットショップ開設サービスを利用した場合、手軽におしゃれなショップが開設できるのも魅力。売上がない時は無料、売上が発生したときだけ手数料が発生というふうに、最小限のコストでネット販売ができます。個人事業や副業はもちろんのこと、法人としても利用可能です。
人件費をかけずに24時間販売ができるため、小売販売をしたい人にとってはかなり良いビジネススタイルかもしれません。
ただし、参入者が多い分、他のショップとの差別化(扱う商品や写真、商品説明、サービス面など)が大きな課題になる点に注意しましょう。
コンサルティング業、セミナー講師
企業向けのスモールビジネスとしては、企業や個人向けにコンサルティングを行ったり、セミナーを開催したりする仕事もおすすめです。
どちらも「自分の知識と経験、スキル」を商品として提供するため、原価率が低く、利益率が高くなるのが大きな利点といえます。
また、どちらも基本的には客先(または会場)へ出向いて営業するスタイルなので、大々的なオフィスも必要ありません。自宅で起業も十分可能なほか、ビジネス用の住所がほしい場合はバーチャルオフィスで住所のみを借りても事足ります。オフィスがいらなくなれば固定費も浮き、相対的により多くの利益を獲得しやすくなります。
代行業
家事代行や結婚式への出席代行、ベビーシッターなどの「代行業」は、個人~少人数で始めやすいビジネスです。
特別な資格、スキルもいらない代行業も多く、準備資金がほぼかからずに始められるのが大きな魅力といえるでしょう。
レンタル業
家具・家電や衣装、レジャーグッズなどのレンタル業も、小さくビジネスを始めたい人に向いています。
所有している土地が余っていれば、「レンタルスペース」として貸し出してもよいでしょう。
レンタル業ははじめにレンタル品を揃える費用、レンタル品の維持管理料などのコストがかかるものの、一度商品を揃えてしまえば繰り返し売上につながるメリットがあります。
売上を上げるポイントとしては、ニーズの高いもの、質の高いものを揃えることです。たとえば冠婚葬祭用の服や小物レンタルでは、ブランドもののフォーマル服や子ども用のフォーマル服などが人気です。
これは、「値段的に手が届かないけれど、一度着てみたい」「サイズがすぐに変わる子どものフォーマル服はレンタルで済ませたい」と感じる人が多いため、レンタル率が高くなるからです。
起業時には、そのジャンルにどのようなレンタルニーズがあるのか、調査したうえで商品をピックアップするとよいでしょう。
キッチンカー
たこ焼き屋や弁当屋、カフェ、パン屋などの「キッチンカー」は、飲食ジャンルで起業してみたい人におすすめ。店舗を持たないので家賃がかからず、移動しながらさまざまな土地で販売ができるようになります。
なおキッチンカーの飲食業で起業する場合は、食品営業許可を得る必要があります。
クリエイティブ職
クリエイティブなスキルを持っている人は、クリエイティブ職で起業してみるのもよい方法です。
クリエイティブ職の一例としては、イラストレーター、ライター、画家、写真家、動画制作者、音楽家、ヘアメイクアーティストなどがあります。
基本的に自宅または客先で作業が完結する業種ゆえ、オフィス代やそれに付随する固定費はほぼかかりません。
ただし、収益を上げるにはSNSを活用したマーケティング、営業活動が必須となります。
IT・WEB関連職
プログラミングを利用したシステム開発、アプリ開発や、WebデザインなどのWEB関連職も、小さく起業するのに向いています。こちらもクリエイティブ職と同様に、自宅でも作業ができ、固定費がほとんどかからない点が大きな魅力です。
ITやWEBの分野は今後も高い需要が見込まれており、アイデア次第では売上を伸ばすことも十分に期待できます。ベンチャーやスタートアップの中にも小さく始めて大企業に成長した例が多々あるので、将来性のある業種だといえるでしょう。
起業の仕方②:副業として始めて、軌道に乗ってから起業する
いきなり開業や会社を設立するのではなく、副業から始める起業の仕方もあります。
先ほどご紹介した「スモールビジネス」には、副業としても始められる仕事が多く存在します。
それらをまず副業で試してみて、軌道に乗ったら起業するのです。
この起業の仕方を実際に体現したのが、「価格.com」で有名な株式会社カカクコムです。
カカクコムの代表はもともと会社員で、価格.comはパソコンパーツの価格比較をするために副業で立ち上げたサイトでした。使い勝手や機能が話題となり、今では家電量販店やネットショップが登録をする有名サイトとして浸透しています。
副業から始めれば、稼げないようならやめるか、副業のまま細々と続ければよく、事業を畳む際のリスクも最小限で済みます。
起業の仕方③:フランチャイズオーナーとして起業する
「サポートを受けながら起業したい」という人は、フランチャイズオーナーになる選択肢もあります。
フランチャイズとは、すでに知名度のある商品・サービス、またその看板を使う“権利”をもらい、経営をすることを指します。オーナーになるには元の企業へ加盟料を支払い、権利を一定期間獲得する……という仕組みです。
フランチャイズ契約の加盟料は安ければ数十万円、高いと数百万円にのぼるケースもあり、人によっては「起業コストが高い」と感じるかもしれません。ただし、加盟したあとは開業までの手厚いサポートがあり、経営ノウハウの提供などが継続的に行われます。
またそもそもの商品やサービスの知名度が高く集客がしやすいこと、自身で商品開発をする手間やコストがないことなども、メリットに挙げられるでしょう。
フランチャイズチェーンによっては、加盟料などの初期費用が用意できない人へ向け、サポートを行っている場合もあります。資金面でわからないことがあれば、加盟前に参加する「相談会」で質問できるので、確認してみるとよいでしょう。
さまざまな起業の仕方から自分に合う方法を見つけよう
本記事では、低コストで始められる起業の仕方をご紹介しました。
起業を成功させるコツは「小さく始めること」、そして「コストを抑えること」。せっかく起業をしても、すぐに売上が獲得できるとは限りません。
また売上を獲得するには、起業前に「そもそもニーズがある事業なのか」「原価に対し利益が獲得できる提供価格はいくらで、競合はどのような価格設定にしているのか」といった市場調査も重要です。
これから起業したい人は、自分に合った起業の仕方を考えるとともに、事前調査や準備をしっかりと行ったうえで判断するようにしましょう。