会社員が副業で得た収入は「雑所得」として扱われることが多いもの。雑所得は収入から必要経費を差し引いて所得を申告しますが、いったいどのような費用が必要経費となるのでしょうか?
ここでは雑所得における必要経費の考え方や、具体的に経費にできるものの種類、確定申告時の注意点を解説します。
雑所得とはどんな所得?
所得税法では、10種類の所得が決められています。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
利子所得から一時所得までにはそれぞれ明確な定義が決められています。
そのうちのいずれにも当てはまらない収入が「雑所得」として扱われるのです。
会社員の副業は「雑所得」!雑所得として扱われる収入の種類
雑所得には、公的年金で受け取るお金のほか、「不定期で継続性・反復性のない本業以外の収入」が含まれています。
- 公的年金
- 原稿料
- 講演料
- 印税や広告収入
- FX取引、先物取引などの所得
- 外貨建預貯金で発生した為替差益
- 暗号資産(仮想通貨)の売却益
サラリーマンが副業をして得た収入は、基本的に「雑所得」に分類されます。
会社員が得る雑所得の具体例
- クラウドソーシングでライティングの仕事を受注し、原稿料を得た
- ブログや動画、SNSなどでアフィリエイト収入を得た
- スキルを活かしてセミナー講師として登壇、講演料をもらった
- 時々フリマアプリに商品を出品し、売上を得ている
- ビットコインの売却により利益を得た
- 書籍を出版して印税を得た
上記のようなケースでは雑所得として扱い、必要に応じて確定申告をおこないます。
副業の内容次第では事業所得として扱う場合もある
会社員の副業であっても、事業として継続・反復・収益性の高い収入を得ていると判断できる場合は「事業所得」として申告します。
事業所得として確定申告をしたい場合は、青色申告を利用するとよいでしょう。青色申告だけの特別控除が受けられたり、その年度の赤字を次年度以降に繰り越し(純損失の繰越控除)できたりするメリットがあります。
雑所得で確定申告が必要になる条件は?
会社員の副業では、収入から必要経費を差し引いて残った「所得」が20万円を超える場合、確定申告が必要です。
副業の収入-収入を得るために支払った経費=所得(雑所得の金額)
仮に副業の収入が30万円だったとしても、収入から必要経費を差し引いたあとの所得金額が19万円であれば、確定申告がいらないということになります。
雑所得では必要経費が計上できる!経費計上できるものや条件は?
必要経費とは、所得を得るために直接必要になった費用です。雑所得においては、必要経費を差し引くことができます。
とはいえ、どのような費用が「必要経費」としてカウントされるのか、いまいちピンと来ていない方も多いのではないでしょうか。ここでは、雑所得で必要経費に計上できるものの例を解説します。
雑所得のうち経費計上できる費用の具体例
雑所得を得ている方が経費計上できる費用としては、以下のようなものが挙げられます。
- パソコン、タブレットなどの購入費
- カメラ
- ネット回線や副業用スマホ料金
- 電気代、水道費
- 家賃
- 取材などの交通費
- 打ち合わせの飲食代や茶菓子代
- コピー用紙などの事務用品
- コワーキングスペースなどの利用料
一部の経費については、家事按分したうえで必要経費として認められるケースがあります。ただしその条件については確定申告の方法で大きく変わるため、注意が必要です。
パソコン、タブレットなどの購入費(消耗品費/固定資産)
副業に使うパソコンやタブレットなどの購入費は経費として計上でき、10万円未満の端末であれば「消耗品費」として計上可能です。
一方、10万円を超える場合は原則「固定資産」として扱われ、減価償却費として耐用年数に応じて必要経費として計上します。固定資産には品目ごとに所定の「耐用年数が決められており「減価償却費」として数年に分けて経費計上する必要があるのです。
パソコンを買った場合は、4年に分けて購入代金を分割しながら必要経費として計上していきます。
仮に30万円のパソコンを購入した場合、30÷4=1年あたり7.5万円ずつを経費として減価償却していくことになります。
また、「一括償却資産」の制度が使えるケースもあります。
これは10万円~20万円未満の固定資産に対し、3年で減価償却ができるという制度です。パソコンの耐用年数は通常4年ですが、一括償却資産として申告すれば1年あたりに経費計上できる金額が多くなります。(総額は変わりません)。
カメラ(消耗品費/固定資産)
仕事の撮影用にデジカメや一眼レフなどのカメラを購入した場合も、経費計上ができます。
パソコンと同じく、10万円以下は「消耗品費」として計上・申告し、10万円を超える場合は原則「固定資産」として処理しましょう。
ネット回線や副業用スマホ料金(通信費)
雑所得を得ている方は、副業に使用したインターネット回線料金や、副業用スマホの通信費も必要経費として計上できます。
プライベートと共用している場合でも経費計上は可能です。その場合、事業に使っている割合の分だけを必要経費として計上します(家事按分)。
電気代、水道料金(水道光熱費)
副業で雑所得を得る際に使用した電気代、水道料金も必要経費として認められることがあります。たとえばオフィスを借りて副業をしている場合などがこれに当てはまります。
自宅で副業をしている場合は、ネット料金のケースと同じく家事按分が必要になります。
家賃(地代家賃)
家賃についても他の固定費(通信費や水道光熱費)と同じで、副業に使った割合(面積等)に応じた家事按分をして必要経費とします。帳簿では「地代家賃」で経費計上します。
取材などの交通費(旅費交通費)
取材や打ち合わせ、副業に使う商品や材料の購入にかかった交通費も、必要経費として計上できます。帳簿上は「旅費交通費」として記録しましょう。
打ち合わせの飲食代や茶菓子代(接待交際費)
雑所得の申告時には、副業の打ち合わせで利用したお店の飲食代や茶菓子、手土産代なども必要経費として計上が可能です。これらは帳簿上「接待交際費」として記録します。
コピー用紙などの事務用品(消耗品費)
副業に使用したコピー用紙やボールペン、プリンター(10万円以下)などの事務用品費も「消耗品費」として必要経費に含めることができます。
コワーキングスペースなどの利用料(地代家賃や雑費など)
副業で作業をするために借りたコワーキングスペースや、自宅代わりに利用しているバーチャルオフィスの利用料金も必要経費として計上できます。
月額制のコワーキングスペースは「地代家賃」、ドロップインで使用した場合は「雑費もしくは会議費」として経費計上するとよいでしょう。
バーチャルオフィスの利用料金は、住所のみを借りるため「支払手数料」で処理をするケースが多いです。
経費の計上額に上限はある?
経費額や割合に上限はなく、下限もありません。
副業ワーカーの中には、「大した経費がかかっていないから」と経費を申告しない方もいます。
しかし、少しでも経費がかかっているのならばきちんと記録し、申告すべきでしょう。必要経費を申告することで課税される所得税額が減り、納付すべき税額が減らせる可能性があるからです。
雑所得で必要経費を申告する際の注意点
雑所得で必要経費を申告する際には、あらかじめ以下の3つの注意点を知っておきましょう。
- プライベートと共用するものは家事按分が必要
- 領収書、レシートは集計し、5年間保管する(白色申告の場合)
- 経費は集計して帳簿をつけておく
- 雑所得20万円以下でも確定申告が必要になるケースもある
プライベートと共用するものは家事按分が必要
プライベートと共用しているもの(ネット回線や光熱費、家賃など)を経費にしたい場合、事業に使った割合のみを必要経費として計上できます。これを家事按分といいます。
インターネット回線料金(月7,000円)×副業に使った割合(50%)=毎月3,500円を必要経費として計上可。
ただし白色申告で確定申告をする場合は、副業の使用割合が50%を超えないと必要経費として認められません。
事業の使用割合が50%以下でも必要経費として計上をしたい場合は、青色申告(※)の利用が必要です。
※青色申告をする場合、雑所得ではなく「事業所得」として申告します。
領収書、レシートは5年の保管義務がある(白色申告の場合)
白色申告では、経費を証明する領収書・レシートなどの証憑に対し5年の保管期間が義務付けられています。
副業であっても、購入・利用したものの「領収書、レシート」は、5年間取っておきましょう。
領収書類は紙に貼ってファイリングしたり、月別・項目別に分類してから封筒に分けて入れておいたりする方法がおすすめです。
もし領収書がないと、万が一税務調査が入った場合に「経費を虚偽申告しているのでは」と疑われる原因になってしまいます。
経費は集計して帳簿をつけておく
雑所得の場合、帳簿付けや収支内訳書の提出は義務ではありません。
しかし、お金の流れを把握したり、最終的な必要経費を算出したりする際には、経費を「集計」しておく必要があります。
最近では無料で利用できる帳簿ソフトもありますし、Excelなどの表計算ソフトを利用してもかまいません。最低限「収入」と「かかった経費の額、科目、経費発生日」を記録しておきましょう。
雑所得20万円以下でも確定申告が必要になるケースもある
副業で得た雑所得が20万円以下の場合でも、次に当てはまる場合は確定申告が必要になります。
- 医療費控除や住宅ローン控除を受ける場合
- 年収2,000万円を超える人(会社員も含む)
- 個人事業主やフリーランス
- 年末調整を受けていない人
- 同族会社の役員・家族、貸付金の利子・資産の賃貸料をもらっている人
また、雑所得が20万円以下で確定申告がいらない場合でも「住民税」の申告は必要になるので、注意しましょう。
まとめ
雑所得を得ている人は、収入から必要経費を差し引いた所得の金額が課税対象となります。また会社員の場合は、本業の給与所得+副業の所得に対し税金が課せられる点も忘れないようにしましょう。
■代官山税理士法人 代表
■代官山社会保険労務士法人
■公認会計士 税理士 社会保険労務士
会計士試験合格後、監査法人に入社。幅広い事業の監査業務に従事。 その後、売上高数千億の一部上場企業(小売業)にて、企業内会計士として経理業務に従事。税理士として、決算書の作成、法人税申告書、相続税の相談から申告実務全般にも携わる。また社会保険労務士として事業会社において各保険の入退社手続き、役員及び従業員向けの退職金制度導入、就業規則の作成等に至るまでの労務を経験。社会保険の知識にも明るい。
ヒトとカネの融合的視点からのアドバイスを可能とする。
千葉大学法経学部経済学科卒
代官山税理士法人:https://blp-tax.com/
代官山社会保険労務士法人:https://blp-roumu.com/