従業員が会社を退職する際に、会社の人事労務担当が退職者に渡さなければならない書類は複数あり、そのなかのひとつに「退職証明書」というものがあります。
また、退職証明書のほかにも、「離職票」や「離職証明書」というものもあり、それらがどのような書類なのか、そしてどのように取得するのかについて把握しておく必要性があります。
そこでこの記事では、「退職証明書」の概要について、「離職票」や「離職証明書」との違いを含めて、詳しくご紹介していきたいと思います。
退職証明書とは?
退職証明書とは、退職者がそれまで働いていた会社を退職したということを証明するための書類です。
退職証明書は公的な書類ではありませんが、退職者の再就職にあたって、再就職先が前の職場を退職した証明として求めた際など、退職者から請求された際にはすぐに発行しなければならないものです。
またそのほかにも、「離職票」が何らかの理由によって手元にない場合に、離職票の代替書類として、国民健康保険や国民年金への加入手続きの際に使用することができます。
離職票とは?退職証明書との違い
「離職票」とは、正式名称を「雇用保険被保険者離職票」と呼び、雇用保険に加入している退職者が、再就職をするまでに受けられる失業給付受給の手続きを行う際に必要となる書類です。
退職時に、すでに再就職先や起業が決定していつ場合は、失業にあたらず失業給付は受けられないため、離職票の発行は不要となります。
先述のとおり、国民健康保険や国民年金への加入手続きの際には、離職票の代替えとして退職証明書を使用することができますが、失業給付を受け取る際には離職票が必須となります。退職証明書では仮受付までしかできないので注意しましょう。
退職証明書が会社から発行されるのに対して、離職票はハローワークから発行される書類であるため、人事担当者が、退職者からの希望に応じて、ハローワークへ離職票の発行申請を行うことになります。
ただし、退職する従業員の年齢が59歳以上(退職時)の場合は、本人が希望しない場合においても離職票の発行が必要となるので注意しましょう。
離職証明書とは?離職票や退職証明書との違い
「離職証明書」は、離職票と同じく失業給付や雇用保険に関する書類で、離職票を発行するための書類です。
離職票がハローワークによって発行される書類であるのに対し、離職証明書はハローワークで離職票の発行申請を行うために、会社が発行する書類です。
退職証明書が公文書ではないのに対し、離職証明書は公的書類に該当します。
従業員の退職時に会社から退職者へ渡す書類
従業員が退職する際に、会社から退職者へ渡す書類は以下のとおりです。
【退職者に渡す書類として人事が用意するもの】
種別 | 退職者に渡す書類 |
---|---|
雇用保険関係 | ・「離職票」 ・雇用保険被保険者証(会社が保管している場合) |
健康保険関係 | ・健康保険資格喪失証明書 (退職者が国民健康保険へ加入する場合のみ) |
税金関係(所得税) | ・源泉徴収票 |
税金関係(住民税) | ・給与支払報告書(再就職先が決定している場合) ・特別徴収に係る給与所得者異動届出書 (再就職先が決定している場合) |
その他 | ・「退職証明書」 |
「雇用保険被保険者証」は、従業員が雇用保険に加入した際に発行されているものです。会社で雇用保険被保険者証を保管している場合は、退職する従業員へ返却が必要です。
また、「健康保険資格喪失証明書」は、退職者が退職後に国民健康保険へ加入する場合に必要となるものです。退職者が退職後に国民健康保険へ加入する予定がなく、再就職先の健康保険に加入する場合については、健康保険資格喪失証明書の発行は必要ありません。
「給与支払報告書」や「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」についても、退職後の再就職先が決まっている場合のみ、必要となる書類です。
所得税に関わる書類として発行する「源泉徴収票」は、退職後の確定申告や再就職先での年末調整の際に必要となる書類です。従業員が退職日した日から1ヶ月以内に発行するようにしましょう。
退職証明書の書き方
退職証明書は公文書ではなく、各会社で作成します。
特段決まったフォーマットはありませんが、記載内容については「労働基準法」によって定められています。
退職証明書に記載する項目としては挙げられるものは、おもに以下のものとなりますが、実際に記載する項目については、退職する従業員が希望する項目のみとなります。
退職者が希望しない項目については記載してはならないと、労働基準法によって定められているので注意しましょう。
参考)労働基準法第22条3項
- 雇用期間
- 業務内容、種類
- 役職
- 賃金
- 退職理由
また、退職証明書を発行したあと、退職者の紛失や破損によって再発行の請求があった場合は、会社は従業員が退職した日より2年間については、退職者からの退職証明書の再発行の依頼に応じる必要があります。
退職証明書の発行は会社の義務?
労働基準法第22条によって、退職証明書の発行は会社の義務だと定められています。
会社が正当な理由なく退職証明書の発行・交付を行わない場合は、「労働基準法第120条1項」の違反に該当し、30万円以下の罰金が課せられます。
離職票の発行手続き
退職証明書とならび従業員の退職時に渡す書類となっている「離職票」は、ハローワークにて発行される書類であるため、会社からハローワークへ発行申請を行う必要があります。
まずは、59歳以上の退職者に該当しない場合は、退職者に離職票の発行の要否を確認しましょう。
離職票の発行申請に必要となる「離職証明書」を用意します。離職証明書は、所轄のハローワークにて入手することができます。入手した離職証明書へ必要事項を記入し、退職者の署名・捺印を受けましょう。
離職票の発行申請は、ハローワークの窓口のほか、e-Gov電子申請からも行うことができます。e-Gov電子申請を利用する際には、電子署名が必須となっているため、あらかじめ電子証明書を認証局から入手しておくようにしましょう。
ハローワークに離職証明書を提出する際には、「雇用保険被保険者資格喪失届」も合わせて提出します。
雇用保険被保険者資格喪失届とは、退職者が雇用保険を脱退する際に提出するもので、離職票を発行しない場合においても、雇用保険被保険者資格喪失届の提出は必要です。
退職日の翌々日から10日以内が提出期間となります。
ハローワークにて発行された離職票を受け取ったら、退職者へ離職票(「離職票-1」・「離職票-2」)を郵送などで送付します。
ハローワークからは、退職者へ送る離職票のほか、「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書」と「離職証明書(事業主控)」も発行されます。これは会社側で確認し保管するためのものなので、退職者へ送ってしまわないようにしましょう。
離職票の発行は会社側の義務?
離職票の発行・交付については、「雇用保険法第76条3項」にて発行義務が定められており、退職証明書と同様、会社に義務付けられているものです。
退職者が59歳未満であり離職票の発行を望まない場合については、発行の必要がありませんが、それ以外の場合において正当な理由なく離職票の発行・交付を行わない場合は、「雇用保険法第83条4項」の違反に該当し、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられることを覚えておきましょう。