「経費」というと会社や個人事業主だけのもの、と思われがちですが、実は副業でも経費が認められるのをご存じでしょうか?
ここでは副業の「経費」について、いくらまで・どのくらいの範囲まで認められるのかを解説。さらに白色申告の場合の「家事按分」や固定資産の扱いについてもご紹介します。
経費が認められる副業収入の種類は?
副業による収入が給与以外の「所得」である場合、その年の1~12月にかかった経費を計上できます。
確定申告で経費を申告すると、税金の計算に使われる「課税所得」を減らせるメリットがあります。
【給与収入所得+副業で得た報酬(所得)】-給与所得控除など各種控除-経費=課税所得
課税所得額が少なくなれば、最終的に課せられる所得税・住民税が変わってきます。
副業にお金を使った場合は、できる限り経費として計上することをおすすめします。
副業で経費が認められる収入の種類
経費が認められる副業収入には以下の3つがあります。
所得の内容 | 副業の具体例 | |
---|---|---|
事業所得 | 継続性や安定性、収益性がある職業として認知されている事業 | 「職業」として継続した働き方をすると、副業でも事業所得と判断される場合が多い
|
不動産所得 | 不動産により得た収入 | 不動産賃貸など |
雑所得 | 事業所得など、9種類の収入区分(※)に含まれない収入 | 継続性、反復性がない副業=雑所得に分類される場合が多い
|
※事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得
副業による収入がこの3つのどれかに該当する場合、経費の計上が認められます。
事業所得と雑所得の区別は税務署の判断にもよりますが、表記のとおり「継続して利益を得ているか」にフォーカスが当てられる場合が多いようです。
自分で判断できない場合は、最寄りの税務署へ確認しておくと安心です。
アルバイトやパートで副業をしている場合、経費計上できる?
アルバイトやパートで副業をしている場合は、経費を計上できません。
仮にアルバイトの副業で交通費などの費用が掛かったとしても、確定申告で経費として認められないため注意しましょう。
なお、アルバイトなどで副業をしている人(給与所得者)の場合は、給与所得控除が利用できます。
副業で経費として認められるのはいくらまで?どこまで計上できる?
「副業における経費はいくらまで計上できる?」と気になる方は多いかもしれません。
経費額には上限が設けられていません。副業のためだけに使ったお金であれば、原則としてすべて経費にできます。
副業で経費として認められる出費には、さまざまなものがあります。
- 自宅兼オフィスの家賃、光熱費、インターネット料金(※条件あり)
- 打ち合わせに使ったカフェのコーヒー代
- 副業スキルアップ用の書籍、資料
- 報酬受け取り時の銀行振込手数料(受け取り側負担の場合)
- 副業の勉強として参加した研修、セミナー代
- 事務用品などの消耗品費
- 業務委託で他の人に仕事を頼んだ場合の「外注費」
- 取引先に郵便物や荷物を送った費用(通信費、荷造運賃)
- 取材で使った電車などの交通費
- 副業で車を出したときのガソリン代 など
経費になるかどうかは、「副業の仕事に関係しているか」「収益(売り上げ)に貢献しているか」を基準に判断すると良いでしょう。
なお、経費になる項目は業種によっても変わります。
副業フリーランスが経費計上できるもの
- パソコンやタブレット端末、周辺機器、机や椅子などの購入費
- 副業関係で使用するアプリケーション、ソフト、ツールの購入費(10万円未満)
※10万円未満は「消耗品費」、10万円以上は「固定資産」として扱いが異なる
ネットショップなどの物販系副業の場合、経費計上できるもの
- ネットショップ作成サービスのシステム利用料、販売手数料
- 販売商品の仕入れ費、商品の発送費用、商品保管用の倉庫の賃料
- 取引先との打ち合わせ飲食代、冠婚葬祭のご祝儀・香典など
- チラシ、ネット広告などの広告掲載料
不動産賃貸業の副業で経費計上できるもの
- 賃貸物件にかかる固定資産税、不動産取得税
- 賃借人負担部分以外の光熱費(水道・ガス・電気代)
- 物件の管理手数料
副業では全額経費にできないものも?「家事按分」の方法をチェック
副業で「プライベートと事業で共用している出費」に関しては、全額を経費計上できません。
自宅兼オフィスの
- 家賃
- 水道光熱費
- インターネット料金
- スマホ料金
自家用兼副業用マイカーの
- ガソリン代 など
これらを経費として計上するには、副業にかかった分の割合(事業割合)を計算する必要があります。いわゆる「家事按分」と呼ばれる方法です。
<家賃の場合>
家賃(円)×仕事スペースとして使っている面積(%)=経費計上できる1ヶ月分の家賃額
電気代の場合は「1ヶ月のうち副業で何%くらい使っているか」、車の場合は「副業に使った走行距離の割合」が事業割合になります。
1ヶ月の利用料金、ガソリン代に事業割合をかければ、副業で使った分の経費額がわかります。
副業経費の家事按分は白色申告・青色申告で条件が変わる
家事按分が使えると家賃や光熱費などの一部も経費として認められ、節税につながる可能性があります。
しかし、家事按分が認められる条件は白色申告・青色申告で異なります。
- 業務で使用する割合が50%以上であること
- 業務とプライベートの使用割合がはっきり区別できること
【青色申告の場合】
- 合理的な按分割合であれば、事業割合の是非は問われない
白色申告のほうが、家事按分として認められる条件が厳しいことが分かります。
本格的な事業として家事按分をし、節税を目指すのであれば、青色申告の申請も検討してみましょう。
副業で10万円以上のパソコンを買ったら?経費になる?
副業用に10万円以上のパソコンなどを購入した場合は、「固定資産」扱いになります。
厳密に言うと「10万円以上で、かつ1年以上使うもの」を固定資産と呼びます。
- 10万円未満、または使用年数が1年未満……「消耗品費」などで計上する
- 10万円以上で、かつ1年以上使うもの……「固定資産」となり、減価償却の対象
固定資産として判断されるものには、以下のようなものが挙げられます。
- パソコン
- コピー機
- タブレット端末
- オフィス家具
- 車 など
固定資産は「減価償却」する必要あり
白色申告の場合、固定資産の全額をまとめて経費計上することはできません。
その代わりに「減価償却」を行い、購入額から耐用年数を割った金額で経費計上します。
<例>
30万円の副業用パソコンを購入した場合。
パソコンは法定耐用年数が「4年」と決まっているため、
30万円÷4年=1年間で経費計上できる額 75,000円(/年)
→75,000円ずつ、4年間の経費計上が可能。
※「パソコンを買ってプライベートと副業の半分ずつ使う」という場合は、事業割合が50%となり、家事按分をする必要があります。
なお、上記のように毎年決まった金額を経費として減価償却する方法を「定額法」といいます。
減価償却には「定率法」という計算方法もあります。こちらは残りの資産額に対し、同じ割合をかけた金額を経費計上するという方法です。
10~20万円未満の固定資産は「一括償却資産」として計上もできる
購入したときの金額が10~20万円未満の場合は、「一括償却資産」として計上することも可能です。
一括償却資産で処理する場合、耐用年数は「3年」となります。このとき物品の種類や取得時期は関係なく、一律で3年とすることができます。
<例>
15万円のパソコンを買った場合。
一括償却資産で扱うと、本来の耐用年数(4年)に関係なく「3年」で計算。
その年の減価償却費は「資産の金額×当期の月数÷36カ月」で算出できるため、
15万円×12ヶ月÷36ヶ月=経費計上できる額 5万円(/年)
→5万円ずつ3年間の経費計上が可能となります。
副業では「開業準備」にかかったお金も経費にできる
副業の経費では、開業準備にかかったお金も経費に含められます。
たとえば「個人事業主として開業し、副業をするために起業セミナーへ参加した」という場合。
この場合、セミナーにかかった参加費用を「開業準備費」として経費計上できます。
- 起業セミナーへの参加費
- 副業用HPのレンタルサーバー代、ドメイン利用費
- 市場調査に行った際のガソリン代や交通費
- 勉強のための書籍代
- 副業用に作った名刺の作成料金 など
経費の領収書、レシートは「5年間」の保管義務あり!
副業経費の支払いでもらったレシート、領収書、支払明細書などは「証拠書類」として保管しなくてはなりません。
保管期間は「5年間」です。ひと月ごとに封筒またはファイルなどに分け、保管しておくとよいでしょう。
- 副業に関係のないものが含まれるレシート:経費にした部分に線を引く
- 副業で家賃などを家事按分した場合:振込明細書などに割合(%)をメモしておく
クレジットカードを利用してネットで購入・利用したものは、「購入明細(メールや購入ページなど)」「クレカ会社発行の支払明細書」を合わせて保管しておきましょう。
また先述のとおり、開業準備にかかったお金も経費計上ができます。領収書やレシート、支払い明細などは大切に取っておきましょう。
副業では経費計上できる!しっかりと記録・保管をしておこう
副業をする場合、事業に使ったお金はしっかりと経費として記録しておきましょう。少しでも多く経費計上することで、課税対象になる「所得」が減り、結果的に節税へとつながります。
また、白色申告で副業経費を申告するには、年間の収支を記した「収支内訳書」を作成する必要があります。
収支内訳書の作成には帳簿付けが必須です。近年では無料で利用できる白色申告帳簿付けツールなどもありますので、上手に活用してみましょう。