企業において追求の対象となる「利益」。利益を得ないと事業の存続は難しく、発展や拡大もできません。また会計上の利益にはさまざまな種類があり、それぞれ企業の経営状態をチェックする尺度として利用できます。
ここでは、利益についての基礎知識を徹底解説。利益の意味や種類、収益との違いなど、経営に役立つ知識をわかりやすくご説明します。
利益とはなに?
利益は企業が獲得を目指すもののひとつであり、「売上から製造・販売・管理等にかかった費用を差し引いた残りのお金」を指します。「企業の儲け」と単純化して考えるとわかりやすいでしょう。
また利益の定義については、会計での話なのか、経済学・マネジメント的な話なのかによっても変わってきます。
ここではまず「会計上の利益」と、マネジメントの父、ピーター・ドラッカーが考える「利益」についてお伝えしていきます。
会計上の「利益」
会計において利益は、「売上から費用を差し引いた、残りの“儲け”」のことを指します。
単に「利益」といった場合、こちらの意味、定義で捉えておくとよいでしょう。
会計上の利益は、損益計算書(決算書のひとつ)にはっきりと記載されています。
よって、決算書類を見れば、企業の利益や利益のもとになった活動などが浮き彫りになるのです。
ちなみに、企業の会計では「キャッシュフロー計算書」という書類を作成する場合があります。
これは上場企業のみに作成義務がある書類で、一定期間に行われた“現金の出入り”が記録してあるのが特徴です。
ただ、利益は掛取引なども含みますが、キャッシュフローは「現金のみ」をカウントするため、厳密な利益を調べたい場合には向いていません。両者を混同しないように注意しましょう。
ピーター・ドラッカーの「利益」に対する解釈
会計上の利益は“売上から費用を差し引いた儲け”のことを指しますが、“マネジメントの父”と呼ばれるピーター・ドラッカーは、利益を次のように定義しています。
“利益は「企業が社会的存在としての意味ある活動をするための『条件』や『手段』である」”
利益が目的なのではなく、あくまでも社会的に貢献をするための活動条件であり、活動のための手段である、という考え方です。ドラッカーからすれば企業の目的は“顧客の創造”であり、利益が目的ではありません。
利益は「顧客を創造できているか」「企業の社会的機能が正常化」をはかる尺度として存在している、というのがドラッカーの思想です。
このように、経済学やマネジメントから見た「利益」の定義は、会計上の利益とは少し意味合いが異なります。
両方の定義を知っておくと、文脈に応じた意味をくみ取りやすくなるでしょう。
損益計算書上の利益には5つの種類がある!
会計上の「利益」には、さまざまな種類があります。これらは5つに分類されていますが、それぞれ含まれている利益の種類、および差し引くべきものがそれぞれ異なります。
- 売上総利益(粗利益、粗利)
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
売上総利益(粗利益、粗利)
売上総利益は「粗利益」「粗利」とも呼ばれる利益で、売上高から売上原価(製造業の場合は製造原価)を差し引いた残りの利益です。
この“残りの利益”を見ると、会社の商品、サービスでどれくらいの儲けを得たかがわかります。
単純な利益を調べたい場合は、売上総利益をチェックしたり、過去の年度と比較したりするとよいでしょう。
営業利益
営業利益は、「売上総利益」から販管費(販売費と一般管理費)を差し引いた利益です。
販管費は「販売のために直接かかる宣伝費」や「会社の一般的な管理費」という意味です。
営業利益はあくまでも「主たる事業で得た利益」であり、受取利息などの「営業外収益」は含まれていません。
つまり営業利益を見れば、「企業の主軸となる事業活動でどれくらいの儲けが得られたか」がわかります。事業活動が順調にいっている企業ほど、営業利益は高くなります。
経常利益
経常利益とは、営業利益に「営業外収益」を加えた利益から、営業外活動に費やした費用(支払利息や社債利息等)を差し引いたあとの利益です。
営業外収益には「受取利息」「受取配当金」等の、財務活動で獲得した収益を指します。
つまり経常利益をチェックすれば、企業の事業全体で得た利益が分かるのです。
税引前当期純利益
法人企業には、その年度の所得に応じて「法人税」「法人事業税」などの税金が課せられます。
この各種税金を差し引く前の利益が「税引前当期純利益」です。
税引前当期純利益には経常利益のほか、臨時的に発生する「特別利益」が含まれます。
そこからさらに、突発的に発生する費用の「特別損失」を差し引いたものが税引前当期純利益です。
税引前当期純利益は「税が引かれる前の純粋な利益」であり、法人税等が決定すると金額が変化します。
当期純利益
当期純利益は、税金を差し引いたあとの「最終的な儲け」です。
実際には各種税金を差し引いたのち、「法人税等調整額」と呼ばれる金額を加減したあとの金額が、当期純利益になります。
法人税等調整額を加減する理由は、法人事業税が損金として計上できるから、というのが理由です。
法人税などの各種税金は法定税率で計算できますが(表面税率)、法人事業税を損金算入した場合は実際に負担する税率・税額が変化します。こうした「法人事業税の損金算入」を考慮した税率は、「法定実効税率」と呼ばれます。
利益と収益の違いは?
利益と混同されやすいのが「収益」です。
収益とは、端的に言うと「純売上高」「預金の利息」「不動産売却」といった“資産の増加”を指します。
一方の利益は、「売上から費用を差し引いた儲け」のこと。
つまり収益から費用を除いたものが利益になる、というわけです。
- 利益
- 収益
収益(売上)からかかった費用を差し引いた残り。儲けのこと
本業となる事業やそれに付随する営業活動、臨時的な活動で生じる利益をまとめたもの。「企業の収入」と考えると分かりやすい。
なお、収益には大きく分けて3種類があります。
営業収益
営業収益はメインとなる収益で、企業が手掛ける営業活動で生じる「純売上高」のことです。
営業収益を得るには資産が不可欠ですが、会計書類で財務分析を行う場合、“営業収益が総資産に対しどれくらいの割合であるか”を調べることが多いです(総資本回転率)。
営業外収益
営業外収益は、文字通り「営業以外で発生する収益」を指します。
たとえば預金の利息、保有株式の配当金、保有不動産の賃貸収入などは営業外収益にあたります。
これらは営業活動で生じる収益ではなく、メインの収入源ではないので、いわば“おまけ”のような収入です。
特別利益
特別利益とは、不動産の売却、長期保有していた株式、証券売却による利益など、臨時的・突発的に発生する利益です。利益といいつつ、定期的に発生する費用ではないため、「収益」としてみなすケースが多いです。
不動産の売却などが行われた年度は、特別利益が多くなります。ただし、だからといって全体的な「利益」が増えるとは限りません。特に資金繰りが悪化している企業の場合、保有不動産を売却して負債の補てん等を行う場合が多いです。経営状態をチェックする場合は、特別利益だけに注視したり、頼ったりすることがないようにしましょう。
利益と密接なかかわりがある「損益分岐点」とは?
利益と密接なかかわりのある言葉として「損益分岐点」があります。
損益分岐点とは、「会社の売上げが赤字にも黒字にもならない状態」です。
会社を立ち上げた当初は、売上高よりも費用(変動費+固定費)が多く、赤字になる場合があります。
その状態から売上を伸ばすと、費用と収益のバランスがプラスマイナスゼロになるタイミングが訪れます。これが損益分岐点です。
損益分岐点を過ぎるころには、販売数の増加や規模拡大などによって費用も増えているでしょう。
しかし、それを上回る売上があればどうでしょうか。変動費が大きく跳ね上がらない限りは、売上から費用を差し引いた残りが「利益」として手元に残るはずです。
とはいえ、売上が費用を上回る(=利益を得る)というのは、自然的に発生する現象ではありません。
企業側は、「損益分岐点を超えて利益を得るにはどうすればいいのか?」を考え、具体的な数値目標を立てなければなりません。さらに、その目標を達成するための計画、戦略を立て、行動に移していく必要があります。
損益分岐点については、こちらのコラムでも解説しています。合わせてご参考になさってください。
https://virtualoffice-resonance.jp/column/breakeven-point/
事業を続けるためには利益が必要不可欠!
会社の経営、および事業の継続・拡大には、利益が必要です。いくら売上高が伸びていても、実際に手にする利益が微々たるものであれば、経営は立ち行かなくなってしまいます。
また、利益の重要性は会社だけにとどまりません。個人事業主やフリーランスも、利益を大きくしていくことで生活も安定し、充実した仕事ができるようになります。
いま一度「利益とは何か」を理解するとともに、より多くの利益を生み出せるよう戦略を立てていきましょう。