ビジネスの場では封書やはがきで取引先、顧客等へ連絡をする機会も多いもの。手紙や荷物を送る際は、宛名書きのマナーを守り、先方に失礼がないようにしたいですよね。
ここでは、ビジネスで知っておきたい「宛名書き」の知識を解説。差出先住所や宛名の記入位置、敬称の使い方などをくわしくご紹介します。
宛名書きの基本となる「縦書き」の記入位置は?
ビジネスにおいて、封書やはがきを送る際にはタテ書きで宛名を書くスタイルが一般的です。
タテ書きで宛名を書く際には、次の図のように必要事項を記入しましょう。
封筒の宛名書き
封筒の宛名書きにおいては、表・裏両方に必要な情報を記入します。
【表面】
①切手
……封書を送る場合、左上に送料分の切手を貼付します。
②郵便番号
……発送先の郵便番号7ケタをアラビア数字で記入します。はっきり読みやすい字で書きましょう。
③送り先の住所
……送る相手の住所を郵便番号の右に揃え、1字下げて記入します。
建物名、棟、部屋番号なども省略せず記載しましょう。縦書きで宛名を書く場合は漢数字を使います。
④会社・部署名
……住所よりさらに一字分下げた位置から、会社名と部署名、課名などを記載します。
株式会社は「㈱」など省略せず書くのがマナーです。
また、前株(会社名の前に株式会社をつける)か後株(会社名の後に株式会社をつける)かもあらかじめ確認しておき、先方に失礼がないようにしましょう。
⑤発送相手の氏名
……発送相手が個人であれば、相手の氏名を記入します。会社名よりさらに1字下げ、やや大きめの字で記入しましょう。相手が役職付きの方であれば、氏名の上に役職を記入します。
氏名の下には空白をあけ、「様」を書き加えましょう。
なお、役職名が長い場合は、会社名を記入したあと改行して役職名を書きます。その後また改行し、1字下げて氏名を記入します。
【裏面】
⑥「〆」のマーク
……のり付け位置には封緘したことを示す「〆」を書き加えます。こちらはのり付けをしたあと、投函するまでのタイミングで記入すればOKです。
ただし、複写式の書類等を封筒で送る場合は書かなくても問題ありません。
⑦差出年月日(投函日)
……封書をポスト等に投函した日を記入します。
⑧発送元の連絡先
……発送元の「郵便番号」「住所」「会社名・部署名」「氏名」を記入します。
送付先の宛名では敬称を記入しましたが、発送元は敬称を書かないでください。
仮に上司から送付を依頼された場合であっても、「○○部長」などの敬称は不要です。
はがきの宛名書き
暑中見舞いや年賀状、移転などの簡単な連絡についてははがきで行う場合もあるかと思います。
はがきで先方に連絡をする場合も、タテ書きで宛名を記入するのが一般的です。
ただし、表面に差出人の連絡先を記入する点は封書と異なります。
①切手
……自社製の私製はがきの場合は切手(2023年時点では63円切手)を貼付しましょう。
切手が印刷されている官製はがきの場合は不要です。
②郵便番号
……相手の郵便番号をわかりやすく記入します。にじみにくい筆記具で記入するとなおよいでしょう。
③送り先の住所
……封書の場合と同様に、送る相手の住所を郵便番号の右に揃え、1字下げて記入します。
封筒よりも書くスペースが少ないため、文字の大きさに要注意です。
④会社・部署名
……住所よりさらに一字分下げた位置へ、会社名と部署名、課名などを記載します。
長くなる場合は改行しましょう。
⑤発送相手の氏名
……相手の氏名を1字下げ&やや大きめの字で記入します。
相手が役職付きの方であれば、氏名の上に役職を記入します。
個人宛ての場合は「様」を忘れないようにしましょう。
⑥発送元の連絡先
……発送元の住所、会社名&部署名、氏名、郵便番号を記入します。
送付先より大きな字にならないよう、小さめの字で書くことを意識しましょう。
なお、内容によっては裏面にまとめて発送元の情報を書く場合もあります(年賀状など)。
複写式の書類を同封する場合は「書類を入れる前」に宛名を書く
契約書類など、複写式の書類を封書で送る場合は、書類を入れる前に封筒の宛名書きを済ませておきましょう。
複写書類が入った封筒の場合、封をしたあとに宛名を書くと、書いた字がそのまま中の書類に複写されてしまいます。
書類の再発行・再送付などの余計な手間やコストを減らすためにも、「封筒の宛名は中身を入れる前に書く」と癖づけておくことをおすすめします。
横書きで宛名を書くときの記入位置は?
ヨコ書きで宛名を書く場合も、タテ書きの場合とほぼ同じです。
①切手
②郵便番号
③送り先の住所
④会社・部署名
⑤発送相手の氏名
⑥「〆」のマーク
⑦差出年月日(投函日)
⑧発送元の連絡先
なお、使用する封筒がもともとヨコ書き用のデザインであった場合、切手を左上に、発送先の郵便番号を右側に記入する場合もあります。封筒のデザインによって臨機応変に対応しましょう。
宛名につける「敬称」はどうすればいい?
宛名を書くときに知っておきたいのが「敬称」の使い方です。
郵便物を個人宛に送付する場合は「様」を使います。
担当者名がはっきり分かっている場合、特定の人物にのみ閲覧してほしい文書を送る場合などは個人名+様で問題ないでしょう。
一方、特定の相手ではなく会社全体や部署に送付する場合は「○○株式会社 御中」「○○部署 ご担当者様」などを用いて宛名を作成します。
仮に「会社の誰宛に送ればいいのか分からない」「担当者の名前が把握できていない」という場合、御中やご担当者様をつけることで失礼にならずにすみます。
なお、ビジネスでは「返信用封筒を同封し、書類を返送する」といったシーンも多く見られます。
自身が宛名を記入した返信用封筒を同封する場合、「宛」や「行」を使うのがマナーです。
これは、自分に対し敬称となる「様」や「御中」をつけるのを避けるためでもあります。
- 「宛」……返信用封筒を同封した側が個人の場合に使う。
- 「行」……返信用封筒を同封した側が組織(部署や課など)の場合に使う。
なお、返送をする側は「宛」「行」を、それぞれ「様」「御中」の敬称に直す必要があります。
二重線で「宛」または「行」を消し、右側に「様」または「御中」を書き加えてから返送します。
書類の送付状は手書き?PC作成でもいい?
ビジネスにおいては、封書を送付するときに「送付状」を添えて送るのがマナーとされています。送付状は「添え状」「送り状」とも呼ばれる書面で、
- 何の書類を
- 何通入れたか
- 返信アリの場合はいつまでに返信がほしいか
などを1枚の紙にまとめます。
送付書類が複数にわたる場合は、送り状を添えて送ると先方も内容物を確認しやすくなります。
送り状は手書き・印刷どちらでもOK
送り状は手書きでも、PCで作成・印刷したものでもかまいません。
むしろ近年は手書きのほうが少なく、PCで送り状のテンプレートを作成しておき、用途に応じて内容を追加・変更、印刷して同封するケースがほとんどです。
送り状の作成例
送り状の内容は送付する書類によっても変わりますが、おおむね次の8点を記載します。
①送付日
②送付先の会社名・部署名・個人名(御中や様などの敬称を忘れずに)
③差出人の情報(会社名、郵便番号、住所、電話番号、担当者)
④表題
⑤頭語、時効のあいさつ
⑥送付理由について、および結語
⑦書類の内容と部数
⑧以上(この書面が終わりであることを示します)
ここで知っておきたいのが「頭語と結語はペアになる言葉を使用する」という点です。
ビジネスでよく使われる頭語と結語
そもそも頭語・結語とは、手紙でいきなり本題から書き出すのを防ぐための言葉です。
ビジネスにおいての頭語には「拝啓」「拝呈」「謹啓」「急啓」などがあり、結語には「敬具」「拝具」「敬白」「草々」などがあります。組み合わせが決まっているので、間違えないように使用しましょう。
拝啓(謹んで申し上げます) ⇔ 敬具(謹んで申し上げました)
拝呈(謹んで申し上げます) ⇔ 拝具(謹んで申し上げました)
謹啓(高い敬意を持ち、謹んで申し上げます) ⇔ 敬白(謹んで申し上げました)
急啓(取り急ぎご連絡します) ⇔ 草々(走り書きで申し訳ありませんでした)
ちなみに「謹啓」は相手を特に敬うシーンで使う頭語で、送付状で使うにはやや堅苦しすぎる印象を与えます。よって、特段の理由がなければ「拝啓・敬具」でOKです。
また頭語結語には「前略~草々」「~かしこ(結語)」などの言葉もありますが、前略は比較的くだけた手紙のやり取りで用いられることが多く、ビジネスにはやや不向きです。また「かしこ」は女性のみが使う「さようなら」の結語であり、どちらかというと私信の手紙で使うものなので、こちらも避けた方が無難です。
宛名書きマナーをマスターしよう!
デジタル化が進むビジネスの取引において、昨今ではメールやチャットツールなどでのやり取りが増えています。その一方で、パンフレットなどの紙媒体や紙の契約書、請求書など、アナログ媒体の送付機会も未だ多く存在しています。
いざというときに恥をかかないためにも、また相手に失礼にならないためにも、宛名書きのマナーをしっかりと身につけておきたいですね。もし分からなくなったら、本記事を参考にしてみてください。