新しい事業を始める際には、誰しもが成功を夢見るもの。しかし事業には失敗するリスクもあります。
事業に失敗する原因とは何なのでしょうか? またもし事業が失敗した場合、どうすればよいのでしょうか。
ここでは事業が失敗する際によくある原因や、失敗例から学ぶ対策方法をご紹介します。また万が一事業に失敗してしまった場合に取るべき行動についても解説するので、ぜひご覧ください。
事業に失敗する確率はどのくらい?
中小企業庁が2017年に発表した中小企業白書によると、「起業後の企業生存率」は5年以内で81.7%。つまり、18.3%の企業が5年以内に倒産していることになります。
事業や企業の廃業・倒産には、「事業に失敗したから」という理由以外にもさまざまな背景が考えられます。資金不足や後継者不足などがその主たるものでしょう。
ただ、資金不足に陥る理由として、特に多いのが「事業の失敗により収益が減ったこと」「設備投資などの費用を回収できなかったこと」などが考えられます。そうなれば、かなりの確率で「事業の失敗」が絡んでいる可能性が高いでしょう。
事業失敗の原因とは?よくある要因5つ
事業に失敗する原因としてよくあるのが、以下の5つです。
- 初期投資のしすぎなどで資金がショートした
- 事業計画書があいまいな内容だった
- 事業拡大に失敗した
- ブームに乗ったものの流行が終わった
- ニーズのない商品・サービスで起業した
それぞれ詳しく見ていきましょう。
初期投資のしすぎなどで資金がショートした
事業失敗の原因でもっとも多いのが、資金のショート(支払い資金の不足)です。
- 大掛かりな初期投資をしたものの業績がふるわず、回収できなかった
- そもそもの資金計画の詰めが甘かった
- 収益に対し人件費、家賃、設備費などの運転資金が多くかかって赤字になった
起業や新規事業を始める際には、ある程度の初期投資も必要です。しかし「おそらく回収できるはず」など根拠なく楽観的に考えるのは危険です。資金計画があいまいなまま起業したり、新規事業を始めたりする行為はハイリスクだと心得ましょう。
事業計画書があいまいな内容だった
あいまいな内容の事業計画書を作成した場合、途中で事業の方向性にブレが生じやすくなります。
「ブレ」はやがて迷走へと変わり、結果として失敗の原因になってしまうのです。
事業計画書はビジネスの“航海図”のようなもの。事業を順調に進めるためには、事業についてさまざまな視点から、細かく計画立てておく必要があります。
事業拡大に失敗した
事業を拡大しようとして失敗したケースは数多くあります。事業拡大には会社を成長できるメリットがある一方、資金面などのリスクも背負います。
リスクの方が大きいのにもかかわらず、目先の利益や成功に囚われて事業を展開すれば、当然失敗に終わるでしょう。
ブームに乗ったものの流行が終わった
事業の成功のために「流行を取り入れたビジネスを始めよう」と考える方は多く見られます。
しかし流行に乗って事業を始めた場合、ブームが去ったあとまったく業績がふるわず、失敗してしまうケースもかなり多いのです。近年でいうと「タピオカ屋」がその代表例といえるでしょう。
ニーズのない商品・サービスで起業した
新たに事業を始める際は「顧客のニーズを満たすもの」を生み出すことが重要です。需要のない商品やサービスを生み出しても、事業が成功することはほぼありません。
仮に「新たな需要」ができてニーズにマッチするようになったとしても、それまでの間に収益が得られなければ、負債や倒産は避けられません。また起業したての事業者や会社がニーズを「生み出す」ことは難しいのが一般的です。
実際の事業失敗例から学ぶ! 失敗するパターンとは?
「事業の失敗」について考える場合は、実際の失敗例を知ることが重要。3つの失敗事例を見てみましょう。
事業失敗のケース1:コンビニチェーンのQR決済アプリ
有名な事業の失敗事例に、「大手コンビニエンスストアチェーンのQR決済アプリ」が挙げられます。
同社がQR決済アプリをリリースした当時は、さまざまな分野の企業が電子マネー事業へ参入し始めた時期でした。全国展開チェーンの電子マネーということで注目を集めていましたが、セキュリティに重大な欠陥があり、不正利用が多発。
結果的に2019年9月にサービスは終了。開発スケジュールの不足、セキュリティシステムのチェック不足などが失敗につながってしまいました。
事業失敗のケース2:夜間保育園の開業
事業失敗の2ケースめは、夜間保育園です。この夜間保育園は開園から1年で負債を抱えたまま閉鎖してしまいました。
もともと事業主は起業ノウハウを学びつつ、十分な準備期間を設けていたといいます。しかしいざ開業してみると、利用者の料金滞納や子どものお迎えトラブル、保育士の確保などにより経営が難航。預かる子どもの人数に対し経費の採算が合わず、結果的に閉園へと追い込まれてしまったのです。
夜間保育園はニーズの高い事業ではありました。しかしこの場合は「現状をよく調査せず、見切り発車で事業内容を決定してしまった」というのが失敗の原因です。
事業失敗のケース3:有名ECサイトのスマートフォン
世界的に有名な企業でも、事業に失敗することは珍しくありません。2014年に発売したスマートフォンがそのもっともたる例です。
世界的有名ECサイトを手掛ける企業が開発したスマートフォンは、リリース直後に大きな注目を集めました。
しかし価格に対し性能が低く、ユーザーの評価も低いものでした。
リリース当初は2年契約・199ドルで売り出されたスマートフォンも、最終的にはほぼ半額の0.99ドルへと値下がりすることに。この値下がりがさらに「不人気機種」という印象を強化してしまい、失敗に終わりました。
事業の失敗原因は、顧客が持つ「価格」「性能」の両ニーズを満たせなかったこと。および、そのニーズを把握しないまま商品を開発してしまったことです。
事業の失敗を防ぐ4つの対策とは?
事業の失敗例を3つ見てきましたが、結局のところどうすれば事業失敗を阻止できるのでしょうか。
事業失敗を防ぐために重要な4つのポイントをお伝えします。
- 顧客のニーズを細かく把握する
- ニーズを満たせる商品・サービスを、適正な価格で提供する
- 資金計画はシビアに、細かく
- 商品やサービスの開発、改善を怠らない
事業の失敗例を見てみると、「顧客ニーズのリサーチ不足」が顕著です。「顧客はこういうものを求めているだろう」という思い込みで動くと、顧客の真のニーズとずれた商品・サービスが生まれやすくなります。そこには「顧客の心理」が含まれていないからです。
事業を始める際は、とにかく顧客目線でリサーチを徹底しましょう。顧客の「顕在ニーズ」だけではなく、深いところにある「潜在ニーズ」を満たすものを生み出せば、事業の成功につながります。
またとことんシビアに、細かく資金計画を立てることも重要です。成功することを前提にするのではなく、上手くいかない場合を前提にした資金計画を組めば、大きな損失を出しにくくなります。資金計画と現状にずれが生じるようなら、途中で軌道修正も必要になるでしょう。
事業失敗で融資(借金)が返せなくなったら?
事業に失敗しないための対策をお伝えしてきましたが、「努力もむなしく失敗し、融資が返済できなくなってしまった」という場合はどうすればよいのでしょうか。
まずは融資元の金融機関へ相談
金融機関から融資を受けていたものの、返済ができなくなった……という場合は、なるべく早く融資元へ相談をしましょう。滞納前に相談することで、何らかの対応(返済の猶予など)をしてもらえる可能性もあります。
返済計画の猶予(リスケジュール)を依頼する
事前に融資元へ相談した場合、返済計画に猶予をもらえることがあります。これは「リスケジュール」と呼ばれるもので、1年ほど利息のみの返済に切り替えるケースが多く見られます。
返済額の負担を減らしてもらっている間に、経営の立て直しを行いましょう。
追加融資の申し込みをする
金融機関に事業計画書を元に相談すると「追加融資」が受けられる場合があります。日本政策金融公庫では「ファクタリング」と呼ばれているものです。審査に通るかは事業計画書の内容次第となりますが、追加融資が受けられれば経営の立て直しに役立てられます。
事業失敗で倒産する場合は
リスケジュール、追加融資などの策を尽くしても経営が回らない場合の最終手段は「倒産」です。
会社を倒産させるには、「破産手続き」が必要です。
破産手続きの流れ
破産手続きは弁護士に依頼する必要があります。
②裁判所が審議し、「破産決定」となったら倒産が確定
③管財人から事情聴取、調査を受ける
④債権者集会で残った財産の分配について決定
①~④が完了するまでには平均して半年程度かかります。
負債を抱えている場合は、倒産が確定した時点で免責(支払い責任が免除される)となります。
破産したその後の生活はどうなる?
破産手続きが終わったあとは、負債の返済が免除される代わりに、7~10年は借金やローンの利用ができなくなります。また、破産が決定するまでの収入については、裁判所が管理をするため自由に使えません。
ただし、破産が確定したあとならこの限りではなく、収入も自由に使えます。
事業に失敗した場合、破産手続きをすることで借金の返済義務がなくなります。ただし、会社に対する社会的な信用、および信用情報にしばらくキズが付くのは避けられません。
事業の失敗を防ぐには、あらかじめ「失敗の原因」を知っておくことが重要。そのうえで、どうすれば成功するのかを追求することが大切です。