商品やサービスの申し込み、契約などをする際には「同意書」を書いたことがある方も多いでしょう。最近は書面だけでなく、アプリやWEBサイト等でも「個人情報の提供に関する同意」を行う機会が多く見られます。
そこで今回は、契約書類の中でも身近な「同意書」にフォーカス。
同意書の意味や法的効力、誓約書・承諾書との違いを解説します。また、同意書を提出する際のポイント、発行・受け取りを行う側が知っておきたい注意点についてもご説明しますので、ぜひご覧ください。
同意書とは?どのような法的効力を持つ書類?
同意書とは、相手がこれから行う法律行為・事実行為などに対し「同意」の意思をあらわすための書面です。
「相手の提示した条件などを受け入れ、承諾するための書類」ともいえます。
- 必要事項(法令に沿った条文、契約内容など)が網羅されている
- 本人の自署・押印をもって作成されている
上記の要素を満たした同意書を提出すると、「同意書を発行した側が提示した内容に同意したこと」が明確化されます。
これにより、発行側は説明義務を果たしたことが証明されたり、不完全な法律行為が明確化されたりする効果が得られるのです。
同意書の提出が求められる場面
同意書は日常のさまざまな場面で用いられます。
代表的なシーンとしては以下の場面が挙げられるでしょう。
- 個人情報の提供、扱いに関する同意
- 未成年者との契約締結
- 医療機関のインフォームドコンセント
- 危険を伴うアクティビティの利用時(注意事項についての同意) など
同意書に法的効力はあるのか?
同意書にはさまざまな法的効力があります。その内容は同意の種類・内容により異なりますが、おおむね以下の3つです。
- 事業者等が「説明義務」を果たしたことの証明になる
- 不完全な法律行為の補完、有効化
- 業法上で必要な要件(同意の取得)を満たすことができる
事業者等が「説明義務」を果たしたことの証明になる
事業者と消費者の「契約」には、消費者が不利にならないよう契約内容を説明する必要があります。
このとき「説明した契約内容」および「説明を受けました」という旨を明記した同意書を作成、取得すれば、「説明義務を果たした」という証明になるのです。
同意書を作成・取得しておけば、「あらかじめ説明をしたが説明を受けていないと言われた」などのトラブルを防ぐうえで効力を発揮します。
不完全な法律行為の補完、有効化
「不完全な法律行為」とは、未成年者などを対象にした法律行為を指します。
同意書には、この不完全な法律行為を有効化する効果もあるのです。
未成年者や障害、病気で判断が衰えている人などは、法律上は“単独で契約などの「法律行為」を行えない存在”として扱われます。
そのため、不完全な法律行為を補完、有効化する場合は、法律行為の法定代理人(保護者や弁護士など)、後見人、保佐人や補助人に対し、同意書を作成・取得しなくてはなりません。
「未成年者がエステサロンを利用する際に保護者(法定代理人)の同意書が必要になる」というケースを想像するとわかりやすいでしょう。
仮に同意が得られないまま契約をしたとしても、それは有効な法律行為として認められません。
「子どもが勝手に契約をしてしまったので取り消してほしい」といった申し出があれば、契約は無効になります。
そうなると、契約内容や役務の提供状況によっては、事業者側に損失が発生する可能性も高いでしょう。
同意書を作成・取得すれば、相手が未成年等であっても「法的に有効な契約」として成立します。
法律行為のできる法定代理人等が同意をした、という証拠になるからです。
業法上で必要な要件(同意の取得)を満たすことができる
業種によっては、業法上で「同意の取得」を求められる場合があります。
この場合、相手方から同意を取得することで、業務の提供が行えるようになります。
- 金融商品取引法(証券会社や投資信託委託会社など)
- 銀行法(銀行)
- 宅地建物取引業法(宅地建物の売買、賃貸など)
- 個人情報保護法
わかりやすい例でいえば「個人情報保護法」があるでしょう。
事業者が重要な機密情報である個人情報を扱う場合、
- 個人情報の利用目的
- 第三者提供の有無
- 個人情報開示請求
といった要項を記載した同意書を作成します。
この「同意書に消費者側が同意をすること」が、“事業者が消費者の個人情報を扱うための条件”となっているのです。(同意の取得要件)
事業者は同意なきまま、消費者の個人情報の利用や第三者提供、開示をすることはできません。
同意書と誓約書、承諾書の違いとは?
ここまでは同意書の意味や定義、法的効力について見てきました。
同意書と似た書類には「誓約書」「承諾書」などがありますが、同意書とはどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは同意書と誓約書、承諾書の違いをご紹介します。
誓約書との違い
誓約書は「何らかの行為、および“しないこと(不作為)”を約束し、その内容に対して義務を負うこと」を証明する書面です。
契約等の内容に対し同意を得る「同意書」に比べると、誓約書のほうが重い義務を負うケースがほとんどです。
仮に誓約書へサインした人が約束を守れなかった場合、あらかじめ決められた罰則などを受けることがあります。
承諾書との違い
承諾書は、同意書とほぼ同じ用途(何らかの事項において、同意を明確にする目的)で使われます。
ただし、どちらを使うかは法令・契約内容などによっても異なります。
「同意」を要求する場合は同意書を、「承諾」を要求する場合は承諾書を……というふうに使い分けられているのです。
同意書へ記入・送付する際のポイント&注意点は?
同意書へ記入し送付する際には、いくつかのポイントを押さえておきましょう。
契約書と同じく“法的効力がある”ことを理解し、内容を確認する
同意書には「説明義務完遂の証明」「法律行為の有効化」などの法的効力があります。
この法的効力は同意書が提出・受理された時点で発生するため、内容については必ず確認しておきましょう。
記入前には、自分が不利で相手だけが得をするような内容であったり、想定外の内容が含まれていたりしないかを必ずチェックします。
不明点は相手に確認してから同意を
内容を確認していて不明点や不審な点がある場合は、必ず相手方(提出先)へ確認をしましょう。
もし確認しないまま同意してしまうと、自分が不利な立場になったり、損をしたりすることもあります。
気になることがあれば、サイン・押印をする前に連絡するクセをつけ、納得したうえで同意するようにしましょう。
同意書はコピーを取っておき、手元に残しておく
同意書を送る際はかならずコピーを取っておき、コピー分は手元で保管しておきましょう。
コピーさえ手元にあれば、万が一トラブルや紛争が起こったときに内容を確認することができます。
仮に相手方が不当な主張・要求をしていても、コピーした同意書があれば、それが証拠となって身を守ってくれるケースもあるのです。
添え状をつけて提出する
同意書を相手方へ送る際には、添え状をつけて提出するとよいでしょう。
- 差し出す相手の会社名
- 会社または個人の住所、氏名、電話番号、FAX番号、Eメールアドレス
- 表題(〇〇同意書送付のお知らせ)
- 本文(同意書を送付する旨)
- 同封した書面の一覧(同意書やその他あればまとめて記載)
添え状を同封することで、どんな書類が誰から送られてきたか
大事な同意書は書留郵便で送る
重要度の高い同意書は、配達記録のついている書留郵便で送ることをおすすめします。
普通郵便で送った場合、郵便事故(郵便物の紛失など)が起きたときにトラブルに発展する可能性があるからです。
書留郵便は引き受けから相手方への配達完了まで記録されるほか、同意書がどこにあるのかを追跡することもできます。普通郵便に数百円を追加すると利用できるので、活用してみましょう。
同意書を受け取る側の注意点とは?
同意書を記入する際のポイント・注意点用意して受け取る側はどのような点に注意すべきでしょうか?
記載内容は全て漏れなく書いてあるかを確認
同意書で「法令への同意」「契約内容への同意」を得る場合、条文に沿って必要な同意事項を記載しなければなりません。このとき、抜け・漏れがあると、同意を得たあとにトラブルへ発展するおそれがあります。
同意書を作成する際には、必要な事項がすべて記載されているか、ダブルチェックを行うなどして厳重に確認をしましょう。
相手方の記入項目を確認する
相手方から記入済みの同意書が返送されてきたときは、記入してもらうべき内容が全て記載されているかを確認しましょう。抜けや漏れがあった場合は、記入者へ連絡し再度記入してもらいます。
なお、記入漏れを防ぐには「同意書の記入例」を用意し、同意書と合わせて送付するなどの対策が有効です。
また、返送用封筒に記入項目のチェックリストを掲載するなどの方法もあります。
双方の負担を減らすためにも、重要な同意書ほど“記入の抜け・漏れ”対策を万全にしておきましょう。
“同意を得た日”を明記してもらうよう念押しする
同意書の日付については相手方に必ず記入してもらいます。
同意した日付が空欄だと、記入者が書面に対していつ同意をしたのかわからず、同意が無効になってしまう場合があるからです。
同意日は必ず記入してもらうよう念押しすると同時に、同意日が空欄の場合は再送し、改めて同意日の記入を依頼しましょう。
同意書について理解し、トラブルを防ごう
同意書は事業者と消費者の間で「説明した内容に対し同意をした」という証明になります。
また契約を有効化したり、商品やサービスの提供、利用したりするために必要な要件としての役割もあるのです。
同意書があることでトラブル防止にもつながるため、意義や法的効力、作成のポイントをしっかりと理解しておきましょう。