起業をする際の選択肢に個人事業主と法人とがあります。どちらを選ぶかで、設立にかかる費用や税務の面で大きな差が出てきますので、起業の際はじっくり考えてから、個人事業主にするか法人にするか決めるようにしましょう。
ここでは、起業するなら知っておきたい個人事業主と法人の違いや、それぞれのメリット、デメリットなどをご紹介します。
個人事業主と法人の違い
個人事業主とは、事業を営む個人のことです。飲食店であれば「○○屋」「○○軒」、サービス業であれば「○○建設」などの屋号を持って営業することが多くなります。
「株式会社」「有限会社」「合同会社」などがついていない店名、事業名を屋号と呼び、会社(法人)と区別します。そのため、個人事業主の代表者は「社長」とは呼ばれません。
個人事業主の事業年度は全員1月1日~12月31日で、この期間の売り上げや経費を税務署に報告し、それに応じた税金を納付します。申告の時期は翌年2月15日~3月15日です(確定申告をします)。
一方法人というのは、会社や店などを立ち上げ、個人とは違う別の人格(法人格)として権利や義務の主体になる資格を与えられたものです。分かりやすく言えば、Aさんが会社を設立し法人化したとしましょう。Aさんはその会社の社長(A社長)です。AさんとA社長は同一人物ではありますが、Aさんは会社のお金を自由にできません。会社のお金を管理運用するのは、あくまでA社長であり、AさんとA社長(会社)の財布は別もの。支払う税金も、所得税と法人税に分かれます。
個人事業主と法人、選び方のポイント
基本的に、法務局に会社設立(法人化)の手続きをせずに事業を始めたら、個人事業主になります。
法人にするか、個人事業主のままで事業を続けるのかは、「いますぐ法人化したい!」という強い意思がなければ、しばらく事業をやってみてから判断するといいでしょう。
法人化するかどうかは、以下のようなポイントに注意して決めるようすることをおすすめします。
年商で判断する
一般的な判断基準として、年商が800~1000万円を超える場合は、法人にしたほうが節税メリットを得やすくなります。法人の維持には年間30万円程度かかりますが、所得税よりも法人税のほうが安いので、ある程度の年商があれば節税することで黒字にすることが可能です。
事業が個人だけで回せているかどうかで判断する
個人事業を始めてみたはいいけど、わからないことが多すぎる、または忙しくて目が回る、などという場合は、従業員や分野ごとの専門家を雇う必要が出てきます。その際は法人化し、会社を設立したほうが有利であると言えます。
事業拡大をしたいかどうかで判断する
個人事業が軌道に乗って人気も顧客も増えたから事業を拡大したい、と考えるのであれば、法人化したほうがいいと言えます。開業当初から事業展開を構想しているのであれば、法人からスタートしてみてもいいかもしれませんが、それなりのリスクがあることも覚えておきましょう。
個人事業主は税務署に開業届を提出するだけで始めることができます(届出をしなくても、確定申告の際に個人事業主と認定されます)。比較的大きなリスクなく事業を始められますが、事業が大きくなれば法人化したほうがメリットが大きくなることもあります。
事業を始めようと考えている方、または個人事業主として働いている方は、ここで紹介したことを参考にして、法人にするかどうか検討してみるようにしてください。