「会社を作りたいが、何から始めればいいのかわからない……」このような方は、まず「会社の作り方」を学ぶことが大切です。
今回は会社設立の種類や準備、手続き、費用などをまとめてご紹介します。会社の作り方を知りたい人は、本記事で手続きや準備の流れを把握しておきましょう。
会社設立の大まかな流れと会社形態
会社の作り方の第一歩は「法人登記」をすること。
会社形態には4種類ある
法人形態には大きく分けて4種類があり、それぞれ異なるメリット・特徴があります。
- 株式会社
- 合同会社
- 合名会社
- 合資会社
このうちもっとも知名度が高く、信用を得やすいのは「株式会社」。
株式の発行により資金調達がしやすく、大規模な事業展開を想定している場合に向いている会社形態です。
会社設立の大まかな流れ
会社を作るには次の3ステップが必要です。
- 会社設立に必要な費用を準備する
- 「法人登記」をして会社を設立
- 登記後に必要な手続きをする
次項からは、「費用」「登記」「登記後の流れ」を順に解説していきます。
会社設立に必要な費用は?
会社の作り方で気になるのが「費用」ではないでしょうか?
会社設立にかかる費用は、会社形態や資本金額によって異なります。
ここでは、各会社形態の平均的な設立費用をご説明します。
株式会社 | 約20~25万円+資本金(1円から可) (内訳:定款の収入印紙代4万円、認証3~5万円+登記の登録免許税15万円+諸経費) ※登録免許税は資本金の額により変化あり |
---|---|
合同会社 | 約10万円+資本金(1円から可) (定款の収入印紙代4万円+登記の登録免許税6万円) ※登録免許税は資本金の額により変化あり |
合名会社、合資会社 | 約10万円 (定款の収入印紙代4万円+登記の登録免許税6万円) |
定款とは会社のルールブックのようなものです。
定款は紙かデータ(電子定款)で作成ができ、電子定款の場合は収入印紙代がかかりません。
少しでも会社設立費用を抑えたい場合は、電子定款を選ぶと良いでしょう。
なお、株式会社と合同会社では「資本金」を準備しなくてはなりません。日本の法律では「資本金1円」から会社設立ができます。
ただし資本金が少なすぎると、融資などで信用性を得にくくなる場合も。資本金は「3ヶ月~半年程度の運転資金」を目安に用意しておくことをおすすめします。
会社設立で重要な「登記」の手順
会社の作り方のスタートラインともいえる「登記」。ここでは、株式会社として登記する場合の流れをチェックしてみましょう。
①基礎情報の決定
②法人印(会社の実印)の作成
③定款の作成・認証
④資本金の払込
⑤登記に必要な書類の準備、法務局での申請
①基礎情報の決定
会社形態を決めます。
その後、法人登記のために必要な情報(定款の絶対的記載事項)を決めましょう。
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 発起人の氏名、住所
これら5つの絶対的記載事項は、定款に必ず記載すべき項目です。
事業目的には、「会社としてどのような事業・業務をするのか」を記入します。直近で始める事業だけではなく、将来的に行う可能性のある事業についても明記しておきましょう。
また本店所在地については、オフィスだけではなく自宅も利用可能です。
ただし自宅が商用利用できない場合(賃貸マンションなど)は、ビジネスに使えるオフィス・住所(バーチャルオフィス)を借りておく必要があります。
株式会社の場合は「株券発行」や「取締役の選任」、「株主総会の開催」などについても定款に記載します。
これらは決定した時点で定款に記載する必要がある事項で、「相対的記載事項」と呼ばれています。
②法人印(会社の実印)の作成
登記手続きの際には「法人印(法人実印)」が必要になります。
法人印の作成には2週間程度かかりますので、あらかじめ作成しておくとスムーズです。
③定款の作成・認証
株式会社の登記では定款の認証が必要条件となります。
①で決めた基本情報をもとに「定款」を作成しましょう。
定款の作り方がわからない場合は、法務局の公式サイトでテンプレートをダウンロードできます。
公証役場で定款の認証を受ける
定款を作ったら、公証役場で公証人から認証を受ける必要があります。
- 紙の定款の場合
- 電子定款の場合
紙の定款で認証を受けるには、予約が必要です。あらかじめ本店所在地を管轄する公証役場へ連絡を入れ、予約をしておきましょう。
電子定款で認証を受ける場合は、オンラインで申請が可能です。令和3年からは「登記・供託オンライン申請システム」を利用すれば、定款認証と株式会社の設立登記が同時にできるようになりました。
オンライン申請では、条件を満たせば申請から24時間以内に登記が完了します。
法務省:オンラインによる定款認証及び設立登記の同時申請の取扱いを開始しました
登記・供託オンライン申請システム
電子定款の作成にはマイナンバーカード(電子証明書付き)やICカードリーダ・ライタなどが必要です。また電子署名ソフト(Adobe Acrobatなど)、電子署名プラグインソフトなども必要になります。
なお、電子定款の場合はデータ送信後に公証役場へ足を運び、必要な費用の支払い、データの受け取りをする必要があります。
紙で提出する場合と支払いのタイミングが異なるため、注意しましょう。
定款認証に必要なもの
作成した定款を認証してもらうには、以下の準備物・費用が必要です。
- 定款:3部
- 発起人全員の印鑑登録証明書:各1通(3ヶ月以内に発行されたもの)
- 発起人全員の実印
- 認証手数料:資本金額に応じて30,000~50,000円
- 収入印紙:40,000円(※電子定款の場合は不要)
- 謄本代:1通250円(例:定款が1通8枚の場合は2,000円)
※代理人が申請する場合は「委任状」が必要です。
④資本金の払込
定款の認証が終わったら、発起人の個人口座へ資本金を払い込みます。
登記の際には「資本金の払い込み証明」が必要になるため、通帳の表紙、1ページ目、資本金の振り込みが分かる通帳ページをコピーしましょう。
⑤登記に必要な書類の準備、法務局での申請
登記に必要な書類を準備します。
- 登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙(納付用台紙に貼り付ける)
- 定款
- 発起人の決定書
- 取締役、代表取締役の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 資本金の払い込み証明書(通帳コピー)
- 印鑑届出書(法人印、個人印を押印)
- 登記事項を記載した書面、またはCD-R
必要書類が整ったら、法務局の窓口へ提出します。
法務局の窓口で申請をした場合は、申請日から10日前後で登記完了です。
登記のあとも手続きが必要!
登記が完了したら一段落……といいたいところですが、登記後にもさまざまな手続きが残っています。
手続きの目的 | 申請先 (本店所在地の管轄先) | 提出する書類 |
---|---|---|
法人税の届け出 | 税務署 |
|
法人住民税・法人事業税の届け出 |
| 法人設立届出書 |
健康保険、厚生年金の加入手続き | 年金事務所 | ・健康保険・厚生年金保険新規適用届 ・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 (※被保険者となる役員、従業員の全員分) ★健康保険被扶養者(異動)届 |
労働法に関連する届出 | 労働基準監督署 |
|
雇用保険の届け出 | ハローワーク |
|
法人銀行口座の開設 | 任意の銀行 | 定款、登記簿謄本(履歴次項全部証明書)などの証明書類、法人印などが必要 |
会社を作る際は、このように多くの手続きが必要になります。
あらかじめ必要な持ち物を準備しておき、スムーズに手続きができるよう流れを確認しておきましょう。
会社の作り方がわからないときは誰に相談すればいい?
実際に手続きを進めていると書類の書き方や準備などで細かな不明点が出てくる場合もあるでしょう。
もし会社の作り方で分からないことがあったとき、誰に相談すればよいのでしょうか?
1.登記について→「法務局」
登記について相談をするなら、法務局がおすすめです。
法人登記を受け付けている機関のため、登記に必要な準備や手順、提出物の書き方なども教えてもらえます。
法務局によっては、予約制で登記手続きのレクチャーを受けられるところもあります。
2.定款の作成・認証→「公証役場」
定款の作成や認証について質問するなら、公証役場へ尋ねてみましょう。
公証役場では定款の文面チェックや製本の仕方など、定款がスムーズに認証されるためのポイントを教えてくれます。定款のチェックのみであれば郵送やFAXで受け付けているため、一度相談されることをおすすめします。
3.起業の細かな疑問、手続きについて→「商工会議所や商工会」
商工会議所や商工会には、“起業の先輩たち”が多く在籍しています。在籍職員は民間団体で、かつ起業経験者であるため、会社の作り方についての細かな疑問を聞きやすいでしょう。
定期的に起業相談を行っている商工会議所、商工会も多いので、チェックしてみて損はありません。
会社設立のメリットとは?
ここまで会社を設立する手順について解説してまいりましたが、実際に会社を設立するとどのようなメリットが得られるのでしょうか。以下では、会社を設立するメリットを5つご紹介します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
社会的な信用・信頼を得やすくなる
個人事業主に比べて会社の設立には手間も時間も費用もかかります。また法人登記をした場合、代表者の氏名や住所、資本金額、役員の氏名などを記載した「登記簿謄本」を公開することになります。
そのため社会的な信用度が高く、対外的な印象アップにつながるメリットがあるのです。
信頼を得やすいということは当然ながらビジネスの取引において有利になりやすく、売り上げに繋げられる可能性も高まるでしょう。
節税効果が得られる
会社を設立して法人になると、節税効果が得やすくなる点もメリットです。
個人事業の場合は所得税が「累進課税」となり、5%から最大で45%の税率が課せられます。仮に課税所得が900万円だった場合、税率は33%となります。
一方、法人の場合は「法人税」が適用されますが、こちらは資本金1億円以下・年間所得800万円以下であれば15〜19%、800万円を超えた部分でも19%です。売上の多い大企業であっても23.20%のため、会社規模に関わらず個人事業に比べると税率は低くなるといえます。
また、後にご説明しますが、法人は経費計上できる範囲が広く、課税所得を減らしやすいというメリットもあります。こうした複数の要素から、会社化することで節税につながるといってよいでしょう。
融資や資金調達がしやすい
会社は個人事業主に比べると融資や資金調達がしやすいメリットもあります。
これは社会的信用度が高いことに加え、企業向けの融資制度が多いこと、株式会社の場合は株式の発行という資金調達方法があることなどが理由です。特に銀行の融資については、個人事業向けよりも大きな金額の融資が受けられる場合がほとんどです。
加えて補助金やベンチャーキャピタル、エンジェル投資家による投資、クラウドファンディングなど、会社という形態を手に入れることでさまざまな手段での資金調達がしやすくなります。
経費計上できる項目が増える
個人事業主と比較したとき、会社は経費計上できる項目が多くなります。
たとえば「生命保険料」は、個人事業主と会社で扱いが大きく異なります。個人事業主の場合は自身が被保険者となる場合の生命保険料を経費計上できません。一方、法人の場合は事業にかかわる費用として役員、従業員の生命保険料を経費として計上することができます。
そのほかにも役員報酬や人件費、旅費交通費や水道光熱費など、個人事業主に比べて会社は経費の範囲が広くなります。当然ながら節税に繋げやすくなる効果も期待できるでしょう。
有限責任になるため個人の資産を守りやすい
株式会社や合同会社を設立した場合、経営に対する責任は「有限責任」となります。これは、経営が悪化して負債が返済しきれない場合でも、出資金の範囲内でのみ支払い責任が生じるという意味です。
もっとわかりやすく言えば、会社側の負債が自身の出資した金額を上回っていても、出資額以上の支払い責任はない(=個人の資産は守られる)ということになります。
なお、個人事業主や合名会社、合資会社の一部社員については無限責任となり、負債の全額を支払う責任を負うため要注意です。
会社設立のデメリットはある?
会社設立にはメリットも多いですが、以下のようなデメリットもあります。
- 会社設立登記には費用と手間が必要になる
- 経理・事務作業の負担が増える
- 赤字の年でも法人住民税は納付しなければならない
個人事業の場合は無料で開業できますが、会社設立登記を行う場合は株式会社ならば最低でも22万円程度、合同会社なら10万円程度の費用がかかります。また登記書類の作成や定款の認証、登記手続きなどの手間と時間も必要です。
加えて、会社では法人税の申告や決算などを行う都合上、会計・財務などの事務負担が増える点もデメリットだといえます。ご自身では難しい場合、税理士へ委託する必要が生じる可能性もあるでしょう。
そのほかのデメリットとしては「赤字でも法人住民税が発生する」という点が挙げられます。
法人住民税の均等割については資本金や従業員数で計算されますので、赤字であっても納付の義務が生じるのです。
個人事業主が会社設立(法人化)するかどうかの判断材料とは
個人事業主はそのまま個人事業として継続をするか、会社設立(法人化)するかという2つの選択肢があります。個人事業主が会社を設立する理由としては、以下の3つが多いです。
- 法人化によって信頼を獲得したい
- 事業拡大をはかりたい(融資や出資で資金を調達し設備投資したい場合など)
- 節税対策をしたい
また、「法人化した方がいいのか?」と迷われる方には、判断材料として「消費税の納税義務が生じる課税売上高があるか」を知っておくと良いでしょう。
個人事業の課税売上高が1,000万円を超えた場合、超えた年の翌々年から消費税の納税義務が生じます。そこで、消費税の納税義務が生じることが確定した場合、翌年に法人化すれば免税期間を延長できるのです。
ちなみに、法人設立から2年間は消費税の納税が免除されます(免税期間の延長)。この仕組みをうまく活用することで節税に繋げられるため、ぜひ覚えておきましょう。
【関連リンク】
会社設立時に利用できる補助金・助成金がある
会社設立時には以下の補助金・助成金が利用できる可能性があります。
名称 | 概要 |
---|---|
小規模事業者持続化補助金 | 持続的な経営計画に基づく小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組み、業務効率化の取り組みにかかる経費の一部を補助する制度 |
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型) | 中小機構と都道府県、金融機関等が資金を拠出し、ファンド(基金)を造成し、その運用益により中小企業者等を支援する事業 |
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース) | 雇用機会が特に不足している地域等の事業主が、事業所の設置・整備を行い、併せてその地域に居住する求職者等を雇い入れる場合、設置整備費用及び対象労働者の増加数に応じて助成される(1年ごとに最大3回支給) |
IT導入補助金 | 様々な経営課題を解決するためのITツール導入を支援するための補助金 |
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 | 中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する制度 |
キャリアアップ助成金 | 非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度 |
事業承継・引継ぎ補助金 | 事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業等及び、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する制度 |
適用される要件等は制度ごとに異なりますので、詳細を確認した上で申し込みましょう。
バーチャルオフィスでも会社設立(登記)はできる?
会社設立をしたいと考えたときの懸念の一つに「どの住所で登記すべきか」というものがあります。登記住所の要件については特に制限はなく、自宅や賃貸オフィス、レンタルオフィスの住所はもちろんのこと、バーチャルオフィスの住所も法人登記に使用可能です。
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興味を持たれた方は、以下のページもご参考にしてみてください。
【関連リンク】
自分に合った会社の作り方を知ろう
会社の作り方は「会社形態」によってもさまざま。特に株式会社の場合は、必要な手順や準備、費用などをしっかりと確認しておく必要があります。
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