会社の経費として支払うべき物品等を、あらかじめ従業員が支払うと、経費の立替となり立替精算が後日必要となります。
この立替精算は、経理の精算業務において頻繁に起こる業務であり、経理に携わる人であれば業務の流れや注意点について、しっかりと把握しておく必要があります。
そこでこの記事では、立替精算とはどのようなものか、業務の流れや注意点について、仮払金との違いを含めて解説いたします。
立替精算とは?
会社で業務を行う上で必要となる経費を、あらかじめ従業員が負担して支払うことを立替経費といい、従業員が一時的に負担している立替経費を会社が精算することを、立替精算といいます。
立替精算の業務を理解するためには、まずは立替経費と仮払金との違いについて理解しておく必要があります。
仮払金との違いは?
立替経費が全額あらかじめ従業員が負担して支払うのに対し、仮払金の場合は、会社から従業員に、経費として必要となる概算額の支払いを行います。
立替経費では、一時的に従業員が全額負担する必要性があることから、従業員にとって会社によって立替精算がなされるまで、自分の財布から立替経費の額だけ負担しておく必要があります。立替経費の額が大きければ大きいほど、従業員にとって負担が大きくなるでしょう。
その点、仮払金であれば、事前に概算額の支払いを会社から受けているので、もし負担が必要となった場合においても、わずかな負担だけで済みます。
仮払金における精算は、実際に従業員が経費を支払った後に、仮払金として受けた金額との過不足額について行うため、従業員の負担は経費のほんの一部で済むことが一般的です。
立替精算の手順
立替精算の手順の流れについて、詳しくみてきましょう。
立替精算の手順の流れ
1.従業員が経費を立て替える
従業員は業務に必要となるもの(経費にあたるもの)を購入する際、自分のお金で立て替えて支払う。
物品だけでなく旅費や交通費も含みます。
2.領収書(レシート)を受け取る
立替払いを行った証拠として、領収書やレシートを受け取る。
3.従業員が経費精算書を起票する
従業員が立替払いをした立替経費について、会社から支払いを受けるために、従業員が会社指定の経費清算書を起票し、領収書(レシート)を添付する。
4.従業員が上長に承認を得る
起票した経費清算書領収書について、上長に承認を得る。
5.経理が内容を確認し、経理処理(仕訳)する
経理担当者が、提出された経費精算書を確認し、経理処理(仕訳)を行う。
もし、内容に不備がある場合は、申請者に確認を行い、必要に応じて申請者へ差し戻しをします。
6.従業員へ精算金額が支払われる
経費清算書で申請した立替経費の額が、従業員へ支払われる。
立替精算のポイント
領収書について
経費を従業員が立て替えて支払う際に受け取る領収書の宛名は、会社名とするのが一般的です。会社によっては、領収書の代わりに明細が記載されているレシートを推奨している場合もあり、社内ルールの確認が必要です。
また、交通費や自動販売機など、領収書やレシートの発行ができないものについても、社内で細かいルールを設定しておくようにしましょう。
精算金額の支払いについて
立替精算金を従業員へ支払う方法は、社内ルールで毎月の指定日または給料日と定められているのが一般的です。
従業員への支払いは基本的に振込で行われ、振り込み手数料は会社負担となります。
精算金額の従業員への支払いを、なかには経費清算書の申請の都度支払うという会社もありますが、一般的には、振込手数料がかからないように、給与と一緒に振り込むのがよいとされています。
立替精算のルールは、会社ごとで独自のルールを設定している場合もあります。
詳細については会社のルールをよく確認するようにしましょう。
立替精算が発生する場面
立替精算が発生する場面として、おもなものは以下の通りです。
交通費
取引先へ訪問したり、貸会議室へ移動したりする時などに必要となる交通費です。
電車やバスなどの運賃やタクシー代、車での移動の場合は、ガソリン代や駐車場代などがあてはまります。
出張費
出張時に必要となる交通費や宿泊費、出張日当です。会社の旅費規程のルールで宿泊費の上限や、二役職別の出張日当などが定められています。
その他雑費・交際費
業務上必要となる文具や書籍、部品など、また取引先への手土産や会食費などが該当する場合もあります。
立替精算における注意点
申請者にあたる従業員にわかりやすいようルールを明確化する
立替精算には細かいルールがあり、仕組みも複雑であることから、ミスが多く発生しやすい業務です。
経費申請書の起票は、経理部以外の従業員が起票します。特に、初めて経費申請書を起票する従業員や、初めてでなくてもめったに経費申請書を起票しない従業員の場合は、書き間違えが起こりやすく、添付した領収書が途中で紛失してしまったりすることもよくあるので、注意が必要です。
立替精算は従業員本人に負担があるだけでなく、経理担当者の業務負担となりやすい部分です。
ミスを防ぐためにも、精算に関する社内ルールは、初めての従業員でもわかりやすいようにする必要があります。
申請期限に注意
従業員のなかには、業務に追われて経費申請書の申請期限を過ぎてしまったという話しはよく聞くことです。
従業員の立替精算を受ける権利の消滅時効は、民法により5年と定められています。
しかし、ルール上申請期限を長く設定してしまうと、経費申請書の起票を後回しにしてしまい、結果的に経理での経理処理や決算スケジュールにしわ寄せがくるので、注意が必要です。
一般的には、経理への申請書の提出期限については、領収書の受領日から〇日以内」または、「毎月〇日まで」などとルール決めをします。さらに、「上長の承認はその〇日まで」と期限について細かいルール設定をするのもよいでしょう。
また、ルールを守らない場合は始末書の提出など、罰則をもたせるなどして、不要な月またぎや年度またぎを防ぐようにしましょう。
電子帳簿保存法への対応
2022年1月より、電子帳簿保存法が改正され、すべての企業において電子取引の紙保存禁止が義務化されました。立替精算に関わる領収書も、データで授受したものは「電子取引」に該当します。
電子取引に該当する具体的なものは、ネットショッピングなどで購入したWEB明細書や、メールで領収書を受け取ったもの、EDIなどを介して領収書をデータで受け取ったものなどです。
従業員が立替精算の際に提出する領収書が電子データの場合についての具体的なルールについて、しっかりと定めておくようにしましょう。
まとめ
立替精算にまつわる業務の流れや、経理処理における注意点について、仮払金との違いを含めて解説いたしました。
立替精算は、経理処理申請書の起票が必要となる従業員にとっては、通常業務外の慣れない作業となり、ミスを起こしやすいものです。それに伴って、経理担当者にとっても負担が大きくなりやすいため、まずは、立替精算にまつわる社内ルールの明確化、そして社内へのルールの浸透が重要ポイントとなります。
ミスを抑え、業務を効率化させるためには、経理処理に関するデジタルツールを取り入れたり、法人カードを導入したりするのもよいでしょう。